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第3章(終章)まつろわぬ者の旗
【死霊島】SOS!?
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“煌輪塔ホテル襲撃隊壊滅”の凶報を統衞陸軍初代司令官トゥーガに彼が左手首に巻いた統衞軍正式通信機〔争波環〕を通じてもたらしたのは、人ならぬ軍事独裁者と化した【人工司令】であったが、その情報自体に何らの痛痒を感じなかったのは人鬼外道たる彼らしい反応であったものの、さしもの魔人の心胆を寒からしめたのは三日以内に教率者を抹殺できぬ場合、彼との同盟を即時解消するに留まらず直ちに〈処刑対象〉とするという宣告であった!
されどその時彼は例のごとく愛人との爛れた痴戯の最中にあり、苛烈な呪念士修行に明け暮れた人間時代の反動もあってか燃え盛る肉欲はそれしきのことでは沈静化できず、頭を悩ます難題はとりあえず棚上げにして交信終了後速やかに行為を再開したのである…。
ちなみにこのプレイを持ちかけたのは元恋人と散々これに興じてきた教率者の侍女頭シャーメであり、薄青い照明に照らされた寝室の中央に引き出された黒いT字型十字架には主都の教民が誰一人として知らぬ者がいない隻眼の英雄が全裸で縛められているのであった…。
「あっ…はああッ!
おお、愛しきシャーメよ…教界屈指の美麗なる淑女と讃仰されるおまえにかくのごとき嗜虐的な淫欲が秘められていようとは…だ、だが私は劣弱なアイアスとは訳が違うぞッ!
──そうとも、おまえが繰り出すいかなる責めにも勇者の誇りをもって雄々しく耐え抜き、天響神に祝福されし聖なる我が剣をおまえの白い両脚の間に息づく魔性の源泉にみごと突き立てて見せようぞッ!」
この挑発に、腰まで届く輝く金髪を揺らめかせた美女は、左掌に乗せた金色の小鉢にしなやかな三本の右指を浸しつつ凄艶な微笑で応じた。
「──果たしてそうかしら?
もちろん、つい先程ぶざまな死を遂げたというあの男とは比較にならぬ克己力を有するのは自明としても、私にとってのこの責めの醍醐味は、殿方の脳内を煮え滾らせる女への妄執が飢えに屈するまさにその瞬間にあるのですわ──即ち、あと半日も経てば、今こそ誇り高く屹立しているあなたの性器は精を放つ意志すら喪失して惨めに萎れ、雄弁を弄したその唇は、ひたすらこの【乳蜜】を啜ることのみを欲し、あたかも哀れな虜囚のごとく赦しを懇願するのです…!」
かくて恋人の逞しい胸板に唇を寄せて囁いた妖美人は、掬い取った黄白色の粘液をまずは細かく震える喉元にたっぷりと塗りつけ、新たに指を浸してその鍛え抜かれた上半身全体を妖しい芳香を放つ魔蜜の画布としてゆく…。
「ほほほ、これで一杯目の器は空になったわ…でも安心下さいましね、蜜はたっぷりと用意されておりますから──けれど時間の経過と共に募る飢えに苛まれ、いかにそれを欲しようが、それこそこの私に心魂からの…そう、永久に取り消しできぬ降伏宣言をなさぬ限り、あなたの口に入ることは金輪際ありえなくってよッ!!」
こう宣言し、のけ反る英雄の喉元に熱烈な接吻を刻みつけた後、ぞろりと唇から長い舌(金色がかった肉色のそれは祭霊妃と同じく微細な突起で埋め尽くされていた!)を吐き出した麗しき女怪は、間髪入れず赤銅色の肌にまとわりついた乳蜜を舐め取る作業に取りかかったのであった…。
この淫靡なる挑戦を当然のごとく莞爾として受けて立った魔人であったが、実のところ人工司令によって窮地に立たされた彼の意識は、正体たる最極呪念士にとって今や唯一の“真正の手駒”というべき【死霊島】へと飛んでいたのである──!
だが、瞑目したトゥーガの脳内に映し出されたその光景は、つい5日前の海底宮殿への潜入以前とは似ても似つかぬ惨状を呈していたのであった!
『──ぬうッ!?…こ、これは一体どうしたことじゃッ!?
あ、あの凶々しい流星雨のごとき破壊光弾で表面を焦土と化しつつ天を乱舞する緑色の魔物──あ、あれこそは目下ラージャーラを席巻しおる聖団最強の魔空夜叉なる人型絆獣に違いないッ!
ぬ、ぬかったわッ!4体の水棲絆獣を警戒するあまり、空からあやつが我が海龍党の拠点を急襲するとは、全くの想定外じゃったッ!!
む、むろん島の兵士どもも擁する二百門の高射砲で応戦しておるものの、錬装者どもが駆る強襲戦闘機と連携しての波状攻撃に全く対応できておらぬではないかッ!
…こっ、これでは魔王蛸が出立した現在、陥落は時間の問題じゃッ!!
うぬぬぬぬッ、た、たわけめがッ!
一体、摩麾螺めは何をやっておるのじゃッ!?
昨日より《念信》による報告が一切途絶えておるばかりか、頭目たるこのワーズフの渾身の呼びかけに対し一切の反応を返そうともせぬではないかッ!?
ま、まさかこの最極呪念士が心魂込めて注ぎ込んだ【神命液】により“神牙教軍最強戦士”となったはずのあやつが錬装者ごときに敗れ去ったとてもいうのかッ!?
あ…ありえぬッ!たとえ死霊島が屈しようともそれだけはありえぬッッ!!
──お、おうッ?!』
眉根を寄せて苦悶するトゥーガを前にして全身を上気させるほどの興奮(それは多分に誤解に基づくものであったが)に襲われた侍女頭は、彼の肌を蹂躙しはじめた瞬間から内心の苦悩とは裏腹に些かも硬度を失わぬ肉柱を右手で玩弄していたのであるが、この程度では歴戦の色事師たる相手に何らのダメージをも与えられぬと判断して一気に非常手段に出た。
「オッホホホホホッ!
果たしてこの攻撃を受けてもしたり気な英雄面を保てていられるものかしらッ!?
──ねえ司令官ッッ!?」
次の刹那、性器から滑り落ちたしなやかな五本の指はいかなる戦士であろうとも鍛えようのない急所である双つの睾丸をしっかりと摑み取るや、渾身の力を込めて握りしめていたのである!
されどその時彼は例のごとく愛人との爛れた痴戯の最中にあり、苛烈な呪念士修行に明け暮れた人間時代の反動もあってか燃え盛る肉欲はそれしきのことでは沈静化できず、頭を悩ます難題はとりあえず棚上げにして交信終了後速やかに行為を再開したのである…。
ちなみにこのプレイを持ちかけたのは元恋人と散々これに興じてきた教率者の侍女頭シャーメであり、薄青い照明に照らされた寝室の中央に引き出された黒いT字型十字架には主都の教民が誰一人として知らぬ者がいない隻眼の英雄が全裸で縛められているのであった…。
「あっ…はああッ!
おお、愛しきシャーメよ…教界屈指の美麗なる淑女と讃仰されるおまえにかくのごとき嗜虐的な淫欲が秘められていようとは…だ、だが私は劣弱なアイアスとは訳が違うぞッ!
──そうとも、おまえが繰り出すいかなる責めにも勇者の誇りをもって雄々しく耐え抜き、天響神に祝福されし聖なる我が剣をおまえの白い両脚の間に息づく魔性の源泉にみごと突き立てて見せようぞッ!」
この挑発に、腰まで届く輝く金髪を揺らめかせた美女は、左掌に乗せた金色の小鉢にしなやかな三本の右指を浸しつつ凄艶な微笑で応じた。
「──果たしてそうかしら?
もちろん、つい先程ぶざまな死を遂げたというあの男とは比較にならぬ克己力を有するのは自明としても、私にとってのこの責めの醍醐味は、殿方の脳内を煮え滾らせる女への妄執が飢えに屈するまさにその瞬間にあるのですわ──即ち、あと半日も経てば、今こそ誇り高く屹立しているあなたの性器は精を放つ意志すら喪失して惨めに萎れ、雄弁を弄したその唇は、ひたすらこの【乳蜜】を啜ることのみを欲し、あたかも哀れな虜囚のごとく赦しを懇願するのです…!」
かくて恋人の逞しい胸板に唇を寄せて囁いた妖美人は、掬い取った黄白色の粘液をまずは細かく震える喉元にたっぷりと塗りつけ、新たに指を浸してその鍛え抜かれた上半身全体を妖しい芳香を放つ魔蜜の画布としてゆく…。
「ほほほ、これで一杯目の器は空になったわ…でも安心下さいましね、蜜はたっぷりと用意されておりますから──けれど時間の経過と共に募る飢えに苛まれ、いかにそれを欲しようが、それこそこの私に心魂からの…そう、永久に取り消しできぬ降伏宣言をなさぬ限り、あなたの口に入ることは金輪際ありえなくってよッ!!」
こう宣言し、のけ反る英雄の喉元に熱烈な接吻を刻みつけた後、ぞろりと唇から長い舌(金色がかった肉色のそれは祭霊妃と同じく微細な突起で埋め尽くされていた!)を吐き出した麗しき女怪は、間髪入れず赤銅色の肌にまとわりついた乳蜜を舐め取る作業に取りかかったのであった…。
この淫靡なる挑戦を当然のごとく莞爾として受けて立った魔人であったが、実のところ人工司令によって窮地に立たされた彼の意識は、正体たる最極呪念士にとって今や唯一の“真正の手駒”というべき【死霊島】へと飛んでいたのである──!
だが、瞑目したトゥーガの脳内に映し出されたその光景は、つい5日前の海底宮殿への潜入以前とは似ても似つかぬ惨状を呈していたのであった!
『──ぬうッ!?…こ、これは一体どうしたことじゃッ!?
あ、あの凶々しい流星雨のごとき破壊光弾で表面を焦土と化しつつ天を乱舞する緑色の魔物──あ、あれこそは目下ラージャーラを席巻しおる聖団最強の魔空夜叉なる人型絆獣に違いないッ!
ぬ、ぬかったわッ!4体の水棲絆獣を警戒するあまり、空からあやつが我が海龍党の拠点を急襲するとは、全くの想定外じゃったッ!!
む、むろん島の兵士どもも擁する二百門の高射砲で応戦しておるものの、錬装者どもが駆る強襲戦闘機と連携しての波状攻撃に全く対応できておらぬではないかッ!
…こっ、これでは魔王蛸が出立した現在、陥落は時間の問題じゃッ!!
うぬぬぬぬッ、た、たわけめがッ!
一体、摩麾螺めは何をやっておるのじゃッ!?
昨日より《念信》による報告が一切途絶えておるばかりか、頭目たるこのワーズフの渾身の呼びかけに対し一切の反応を返そうともせぬではないかッ!?
ま、まさかこの最極呪念士が心魂込めて注ぎ込んだ【神命液】により“神牙教軍最強戦士”となったはずのあやつが錬装者ごときに敗れ去ったとてもいうのかッ!?
あ…ありえぬッ!たとえ死霊島が屈しようともそれだけはありえぬッッ!!
──お、おうッ?!』
眉根を寄せて苦悶するトゥーガを前にして全身を上気させるほどの興奮(それは多分に誤解に基づくものであったが)に襲われた侍女頭は、彼の肌を蹂躙しはじめた瞬間から内心の苦悩とは裏腹に些かも硬度を失わぬ肉柱を右手で玩弄していたのであるが、この程度では歴戦の色事師たる相手に何らのダメージをも与えられぬと判断して一気に非常手段に出た。
「オッホホホホホッ!
果たしてこの攻撃を受けてもしたり気な英雄面を保てていられるものかしらッ!?
──ねえ司令官ッッ!?」
次の刹那、性器から滑り落ちたしなやかな五本の指はいかなる戦士であろうとも鍛えようのない急所である双つの睾丸をしっかりと摑み取るや、渾身の力を込めて握りしめていたのである!
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