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第3章(終章)まつろわぬ者の旗
雅桃…魔天使の覚醒
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表向きは同じ組織に属する仲間ではあっても、深層心理では完全に敵と見做していた四人の聖団員を屠り去った鄭 雅桃は、ようやく想い人へと相棒の嘴を向けて10レクト手前まで接近すると、胸奥から離脱させた結翔珠で白い柱に磔となった萩邑りさらへと遂に到達した。
それと同時にあたかも貝紫色のシャボン玉が弾けるようにエネルギーシールドが消滅するのももどかしげに姿を現した最年少特級操獣師が操念螺盤上で感極まって絶叫する。
「りさら様…私の最愛の女性ッ!!
雅桃が…あなたの雅桃が救けに来ましたよッ!!
もう…もう大丈夫ですッッ!!」
息も接する距離で放たれた魂の叫びが届いたか、がっくりと垂れていた美しき操獣師の頭が僅かに揺らぐと、しばらくそのまま静止した後、ゆっくりと上方へと持ち上げられてゆく…。
「あ、あ…よ、良かった!
気が…気がついたんですねっ!?
うわあああああッ!!
やっと…やっと逢えたッッ!!」
白い胸元に深く貌を埋めて感涙にむせぶ妹分をようやく認識したか、りさらの黒瞳の光が次第に強まり、遂に彼女の紅唇から言葉が紡ぎ出された…。
「雅桃…、
やっと…やっと来てくれたのね…!
…ありがとう…!
それにしても私…、
どうしてこんな所に…?」
「あなたはずっと狙われてたんです!
…今まで仲間を装っていた四匹の化け物にッ!!
でも…どうか安心して下さい、
…アイツら全員、あたしがまとめて地獄へ送ってやりましたからッ!!」
「…そうなの…?
だとしたら、雅桃…、
あなた…本当に強くなったわね…!
もう、私なんて足元にも及ばないくらい…。
でも…本当にありがとう…!
これでやっと…私たちの聖団も本来の姿に戻ることが出来た訳ね…」
「そうですよ、本当にその通りです!
これからはりさら様とあたしで聖団をリードして、一刻も早く神牙教軍をやっつけてラージャーラに平和をもたらすんです!!
…それで…その後は…いつまでも…、
二人でずっと永遠に平和に幸せに暮らすんですッッ!!!」
しばらくの沈黙の後、りさらが口を開くが、何人の耳朶をも快く打つその声音は、美しさはそのままに深く沈んでいた…。
「そうね…、
そうなったらホントにいいけれど…。
でもね、雅桃…、
その夢はどうやら叶いそうもない…。
何故なら私…この柱からどうしても逃れられないのよ…!」
それはまさに、りさらを発見した瞬間から雅桃の脳裡を占めていた懸案であった。
まさに超自然的な不可視の力によって十字状に釘付けにされている美しき操獣師を解放する術は果たしてあるのか…?
いざ戦闘を了えた現在、この難問を前にした魔天使に為す術はなく、唯一採り得る選択肢は閃煌紫燕の鋼の嘴によって柱を限界値まで砕き、【砦】にりさらを搬送して“天響神の工匠”たる無元造房の手に委ねることである…!
──あの人たちなら…、
そうよ、中でもNo.1の大天才であるソートンさんなら、きっと何とかしてくれるに違いないわ!!
この解決策を憂愁の佳人に告げようと雅桃が貌を上げようとしたまさにその時!
あろうことか、彼女の奮戦によってこの世から跡形もなく消滅し、二度と耳にすることを免れ得たはずの、あの呪われし濁声が背後から鼓膜を不快に震わせたのだ!!
「き~っひひひひひひッ!!
残念だったね雅桃!…そして萩邑ッ!!
このあたし…“伝説の殺戮姫”こと竹澤夏月総隊長は不死身だよッ!!
どうだい萩邑、いくらもがいても全く身動き出来ないだろ!?
当たり前さッ!
その柱はあたしが忌まわしい半生から生まれ変わるために、全身全霊の超念力で創り出したまさに“執念の結晶”なんだからねッ!!」
愕然と振り向いた雅桃の目に飛び込んできたのは、閃煌紫燕の頭上に禍々しく漂う、消滅寸前の地獄絆獣から間一髪で脱出していた黒ずんだ紫色の結翔珠…!
だがそれは球形ではなく、この世における最悪の形態…、
即ち、竹澤夏月の醜貌と化していた!
…あまりの恐怖に一言も発し得ず、全身を震わせる雅桃とそれすらも叶わぬりさらを前に、非定型のエネルギー体という新たな怪物と化した夏月は舌なめずりしつつ問うた。
「ねえ、萩邑に雅桃…、
オマエたちの肉を生きたまま啖えば、こんなあたしでも少しは美しくなれるかねえ…?」
…そんな最凶最悪の愚問に、一体誰が答えられるというのか!?
そして、質問者も決して返答を期待してはいなかった…何故ならば!
…殺戮姫は問いを発すると同時に二人に飛びかかっていたからだ!!
「いやああああああああッッッ!!!!」
かくて雅桃はりさらと共に絶叫し、そして遂に長き悪夢から覚醒したのであった…!
それと同時にあたかも貝紫色のシャボン玉が弾けるようにエネルギーシールドが消滅するのももどかしげに姿を現した最年少特級操獣師が操念螺盤上で感極まって絶叫する。
「りさら様…私の最愛の女性ッ!!
雅桃が…あなたの雅桃が救けに来ましたよッ!!
もう…もう大丈夫ですッッ!!」
息も接する距離で放たれた魂の叫びが届いたか、がっくりと垂れていた美しき操獣師の頭が僅かに揺らぐと、しばらくそのまま静止した後、ゆっくりと上方へと持ち上げられてゆく…。
「あ、あ…よ、良かった!
気が…気がついたんですねっ!?
うわあああああッ!!
やっと…やっと逢えたッッ!!」
白い胸元に深く貌を埋めて感涙にむせぶ妹分をようやく認識したか、りさらの黒瞳の光が次第に強まり、遂に彼女の紅唇から言葉が紡ぎ出された…。
「雅桃…、
やっと…やっと来てくれたのね…!
…ありがとう…!
それにしても私…、
どうしてこんな所に…?」
「あなたはずっと狙われてたんです!
…今まで仲間を装っていた四匹の化け物にッ!!
でも…どうか安心して下さい、
…アイツら全員、あたしがまとめて地獄へ送ってやりましたからッ!!」
「…そうなの…?
だとしたら、雅桃…、
あなた…本当に強くなったわね…!
もう、私なんて足元にも及ばないくらい…。
でも…本当にありがとう…!
これでやっと…私たちの聖団も本来の姿に戻ることが出来た訳ね…」
「そうですよ、本当にその通りです!
これからはりさら様とあたしで聖団をリードして、一刻も早く神牙教軍をやっつけてラージャーラに平和をもたらすんです!!
…それで…その後は…いつまでも…、
二人でずっと永遠に平和に幸せに暮らすんですッッ!!!」
しばらくの沈黙の後、りさらが口を開くが、何人の耳朶をも快く打つその声音は、美しさはそのままに深く沈んでいた…。
「そうね…、
そうなったらホントにいいけれど…。
でもね、雅桃…、
その夢はどうやら叶いそうもない…。
何故なら私…この柱からどうしても逃れられないのよ…!」
それはまさに、りさらを発見した瞬間から雅桃の脳裡を占めていた懸案であった。
まさに超自然的な不可視の力によって十字状に釘付けにされている美しき操獣師を解放する術は果たしてあるのか…?
いざ戦闘を了えた現在、この難問を前にした魔天使に為す術はなく、唯一採り得る選択肢は閃煌紫燕の鋼の嘴によって柱を限界値まで砕き、【砦】にりさらを搬送して“天響神の工匠”たる無元造房の手に委ねることである…!
──あの人たちなら…、
そうよ、中でもNo.1の大天才であるソートンさんなら、きっと何とかしてくれるに違いないわ!!
この解決策を憂愁の佳人に告げようと雅桃が貌を上げようとしたまさにその時!
あろうことか、彼女の奮戦によってこの世から跡形もなく消滅し、二度と耳にすることを免れ得たはずの、あの呪われし濁声が背後から鼓膜を不快に震わせたのだ!!
「き~っひひひひひひッ!!
残念だったね雅桃!…そして萩邑ッ!!
このあたし…“伝説の殺戮姫”こと竹澤夏月総隊長は不死身だよッ!!
どうだい萩邑、いくらもがいても全く身動き出来ないだろ!?
当たり前さッ!
その柱はあたしが忌まわしい半生から生まれ変わるために、全身全霊の超念力で創り出したまさに“執念の結晶”なんだからねッ!!」
愕然と振り向いた雅桃の目に飛び込んできたのは、閃煌紫燕の頭上に禍々しく漂う、消滅寸前の地獄絆獣から間一髪で脱出していた黒ずんだ紫色の結翔珠…!
だがそれは球形ではなく、この世における最悪の形態…、
即ち、竹澤夏月の醜貌と化していた!
…あまりの恐怖に一言も発し得ず、全身を震わせる雅桃とそれすらも叶わぬりさらを前に、非定型のエネルギー体という新たな怪物と化した夏月は舌なめずりしつつ問うた。
「ねえ、萩邑に雅桃…、
オマエたちの肉を生きたまま啖えば、こんなあたしでも少しは美しくなれるかねえ…?」
…そんな最凶最悪の愚問に、一体誰が答えられるというのか!?
そして、質問者も決して返答を期待してはいなかった…何故ならば!
…殺戮姫は問いを発すると同時に二人に飛びかかっていたからだ!!
「いやああああああああッッッ!!!!」
かくて雅桃はりさらと共に絶叫し、そして遂に長き悪夢から覚醒したのであった…!
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