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第3章(終章)まつろわぬ者の旗
雅桃…狂夢の決着!?
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「シ…士京兄さん…!
何て姿に…‼
あ、あんなに…二人で…、
無事に還ろうって約束したのに…!
うっ、うううッ…!
…よ、よくも…よくもあの美しかった兄さんをその汚い手に掛けてくれたなっ!
こっ、このクソババアがあッ!
な、何で…何でオマエみたいな化け物がこの世に生きてるんだッ⁉
ええッ、何でだ!? 何でなんだよオオオオッ!!!」
嘴を思いっきり開いた閃煌紫燕の喉奥から凄まじい勢いで連射される鮮やかな紫光の破壊光弾…だが、その時には地獄絆獣の姿はそこには無く、その手からそっと放たれた鄭 士京の首だけが残されていた!
「ああっ!?
…いけないッ!!」
故人にとっても最愛の存在であろう妹が叫んだ時には既に遅く、光弾に直撃された朱雀の頭部は瞬時に砕け散りつつ琥珀色の大気に溶け去ってしまったのであった…。
かくて呆然自失状態の雅桃の頭上から勝ち誇った殺戮姫の大音声が降り注いできた!
「おお…遂にやっちまったね…!
全く、おまえという悪魔の娘はどれだけ罪を重ねれば気が済むんだいッ!?
仲間殺しの次は事故死した兄ちゃんの、たった一つ遺された首までブチ砕いちまった!
言っとくけど、あたしは士京を殺しちゃいないよ!
あくまてもあの子は金色鬼鷲と相討ちになって、偶然通りかかったあたしは落下中の彼の首を回収してやったに過ぎないんだからね!!
…まあそれはともかく、あたしの戦士としての勘に誓って断言するが、聖団史上最悪の狂った殺人鬼であるおまえのことだ、いずれは呪われた独占欲の命じるままに大好きな萩邑も毒牙に掛けるに決まってるよッ!
いいかい雅桃、あたしはねえ、特級操獣師を束ねる総隊長として、それだけは絶対に防がなくっちゃならない!
そして、その手段は一つしかないということがハッキリしてる!
…きひひひひッ、
知りたいかい…?
…それはね…、
あたしがおまえたち二人の肉を啖い尽くし、絆獣聖団に最初から存在しなかったことにすることさッッ!!」
…遂に竹澤夏月という人間の〈正体〉が明らかとなったのであろうか?…されど鄭 雅桃にとってはかねてよりいつかこの時が来るだろうと想定していた通りの展開であったため、殆ど条件反射的な対応が可能であった。
「鬼婆アめっ、とうとう本性を現したなッ!!
笑わせるなよ、死んでもテメエなんかに喰われてたまるかッ!!
さあ、せっかく翼を持ってるんだ、決着は空で着けようじゃないか!?
だが、ホントにこの閃煌紫燕に着いてこれるのかよ、醜くて臭い老いぼれのくせにッ!?」
雅桃がここまでの罵言…否、生の本音を操獣師にとって神牙教軍をも凌駕する“不変の恐怖の対象”たる竹澤夏月総隊長に放ったのはもちろん初めてであったが、殺戮姫には単なる基本認識であったのであろう、身じろぎ一つするでもなく巌の如き声音で返答する…。
「…一つ忠告しといてやるが、あんまり年寄りを甘く見るもんじゃないよ…!
こちとら、伊達に30年近くもラージャーラの埃を吸ってきたワケじゃないんだからね…。
この右頬の傷はねえ、あたしの生命と引き換えに天響神から与えられた“絶対勝者の刻印”なんだよッ!!
いいかッ、笑わせるなとはこっちのセリフだ、この“伝説の殺戮姫”がテメエ如き昨日生まれたばっかのネンネに後れを取るなど100年経ってもあり得やせんわッッ!!!」
ここで妖獣もかくやと思わせる禍々しい牙を剥き出して限界まで開口した夏月は、現実の地獄絆獣の必殺技の一つである〔闇葬火〕…まさにその名の通りの漆黒の火焔を吐き出すが、100レクトに優に達する殺意の火線が到達した時には標的は既に殺戮姫の頭上高く逃れ去っていた。
「アッハハハハハッ!
バカめっ!そんなトロい攻撃がこのあたしに当たるワケないだろッ!!
この時代遅れめッ!
今の飛翔絆獣の飛び道具の流行は〈連射光弾〉なんだよッ!
こいつを喰らってとっとと砕け散りやがれっ、時代に付いていけねえこの化石めがッ!!」
ここでも夢の力学が発動したか、閃煌紫燕からは光弾がまさに無限に連続発射され、胸部に被弾した夏月は怯まず魔翼を羽ばたかせて上昇せんとするが、雅桃は頂点に達する怒りの操念波によって更に発射圧にブーストを掛け、穢らわしい怨敵をたとえ0.1レクトをも近付けぬ心算である。
「おごえごッ!…ばげびばッ!!」
これが経験の差を超える勢いというものか、完全に力負けした地獄絆獣はまさに巨大な“射的の的”と化して撃たれるがままに下降し、遂に地上に叩き付けられてしまったが、最年少特級操獣師は些かも追撃の手を緩めようとしない!
「これで分かっただろッ、この化け物がっ!
オマエの時代は終わったんだよッ!
これからの絆獣聖団はあたしとりさら様が仕切るッ!!
士京兄さんがいない錬装者どもなんて何の価値もないから全員操獣師の奴隷にして、あのメドゥーサにだってデカい顔はさせない!
まあ、自信の無さの裏返しの恐怖政治で皆をシメ上げてたアンタがのさばってた時代よりは確実に聖団は明るく、そして強くなるだろうね!
何せ、あたしとりさら様にはオマエに絶対的に欠けてる若さと…そして何よりも美しさが備わってるからね!!
スケベ野郎揃いの錬装者どもも歓んで奉仕に励むに決まってるよッ!
ひひひ…どうだい、羨ましいだろ!?
地上でも此処でも三本指に入る醜女さんよ!
まあとにかく、もうテメエに居場所は無いってこったッ!!
だから安心して本来の住処である地獄に還りなッ!
そこでもう一ぺん死ぬほど反省して、次に生まれて来る機会があったら(絶対に無いだろうけど!)…、
きゃっははははははッ!!
天響神さまに泣きついて、せめてあたしやりさら様に100万分の1ぐらいは近い容姿にしてもらいなよッッ!!!」
岩石だらけの大地に釘付けにされたまま全身を撃ちまくられる殺戮姫の巨体はやがて毒々しいまでに鮮やかな貝紫色の輝きに包まれて不可視となり、そしてその光芒が消え去ると同時にその呪われた痕跡を忌まわしき凶影として地表に刻印し、魔天使の脳中に紡がれる〈悪夢世界〉から塵一つ残すことなく滅尽し果てていったのであった…。
何て姿に…‼
あ、あんなに…二人で…、
無事に還ろうって約束したのに…!
うっ、うううッ…!
…よ、よくも…よくもあの美しかった兄さんをその汚い手に掛けてくれたなっ!
こっ、このクソババアがあッ!
な、何で…何でオマエみたいな化け物がこの世に生きてるんだッ⁉
ええッ、何でだ!? 何でなんだよオオオオッ!!!」
嘴を思いっきり開いた閃煌紫燕の喉奥から凄まじい勢いで連射される鮮やかな紫光の破壊光弾…だが、その時には地獄絆獣の姿はそこには無く、その手からそっと放たれた鄭 士京の首だけが残されていた!
「ああっ!?
…いけないッ!!」
故人にとっても最愛の存在であろう妹が叫んだ時には既に遅く、光弾に直撃された朱雀の頭部は瞬時に砕け散りつつ琥珀色の大気に溶け去ってしまったのであった…。
かくて呆然自失状態の雅桃の頭上から勝ち誇った殺戮姫の大音声が降り注いできた!
「おお…遂にやっちまったね…!
全く、おまえという悪魔の娘はどれだけ罪を重ねれば気が済むんだいッ!?
仲間殺しの次は事故死した兄ちゃんの、たった一つ遺された首までブチ砕いちまった!
言っとくけど、あたしは士京を殺しちゃいないよ!
あくまてもあの子は金色鬼鷲と相討ちになって、偶然通りかかったあたしは落下中の彼の首を回収してやったに過ぎないんだからね!!
…まあそれはともかく、あたしの戦士としての勘に誓って断言するが、聖団史上最悪の狂った殺人鬼であるおまえのことだ、いずれは呪われた独占欲の命じるままに大好きな萩邑も毒牙に掛けるに決まってるよッ!
いいかい雅桃、あたしはねえ、特級操獣師を束ねる総隊長として、それだけは絶対に防がなくっちゃならない!
そして、その手段は一つしかないということがハッキリしてる!
…きひひひひッ、
知りたいかい…?
…それはね…、
あたしがおまえたち二人の肉を啖い尽くし、絆獣聖団に最初から存在しなかったことにすることさッッ!!」
…遂に竹澤夏月という人間の〈正体〉が明らかとなったのであろうか?…されど鄭 雅桃にとってはかねてよりいつかこの時が来るだろうと想定していた通りの展開であったため、殆ど条件反射的な対応が可能であった。
「鬼婆アめっ、とうとう本性を現したなッ!!
笑わせるなよ、死んでもテメエなんかに喰われてたまるかッ!!
さあ、せっかく翼を持ってるんだ、決着は空で着けようじゃないか!?
だが、ホントにこの閃煌紫燕に着いてこれるのかよ、醜くて臭い老いぼれのくせにッ!?」
雅桃がここまでの罵言…否、生の本音を操獣師にとって神牙教軍をも凌駕する“不変の恐怖の対象”たる竹澤夏月総隊長に放ったのはもちろん初めてであったが、殺戮姫には単なる基本認識であったのであろう、身じろぎ一つするでもなく巌の如き声音で返答する…。
「…一つ忠告しといてやるが、あんまり年寄りを甘く見るもんじゃないよ…!
こちとら、伊達に30年近くもラージャーラの埃を吸ってきたワケじゃないんだからね…。
この右頬の傷はねえ、あたしの生命と引き換えに天響神から与えられた“絶対勝者の刻印”なんだよッ!!
いいかッ、笑わせるなとはこっちのセリフだ、この“伝説の殺戮姫”がテメエ如き昨日生まれたばっかのネンネに後れを取るなど100年経ってもあり得やせんわッッ!!!」
ここで妖獣もかくやと思わせる禍々しい牙を剥き出して限界まで開口した夏月は、現実の地獄絆獣の必殺技の一つである〔闇葬火〕…まさにその名の通りの漆黒の火焔を吐き出すが、100レクトに優に達する殺意の火線が到達した時には標的は既に殺戮姫の頭上高く逃れ去っていた。
「アッハハハハハッ!
バカめっ!そんなトロい攻撃がこのあたしに当たるワケないだろッ!!
この時代遅れめッ!
今の飛翔絆獣の飛び道具の流行は〈連射光弾〉なんだよッ!
こいつを喰らってとっとと砕け散りやがれっ、時代に付いていけねえこの化石めがッ!!」
ここでも夢の力学が発動したか、閃煌紫燕からは光弾がまさに無限に連続発射され、胸部に被弾した夏月は怯まず魔翼を羽ばたかせて上昇せんとするが、雅桃は頂点に達する怒りの操念波によって更に発射圧にブーストを掛け、穢らわしい怨敵をたとえ0.1レクトをも近付けぬ心算である。
「おごえごッ!…ばげびばッ!!」
これが経験の差を超える勢いというものか、完全に力負けした地獄絆獣はまさに巨大な“射的の的”と化して撃たれるがままに下降し、遂に地上に叩き付けられてしまったが、最年少特級操獣師は些かも追撃の手を緩めようとしない!
「これで分かっただろッ、この化け物がっ!
オマエの時代は終わったんだよッ!
これからの絆獣聖団はあたしとりさら様が仕切るッ!!
士京兄さんがいない錬装者どもなんて何の価値もないから全員操獣師の奴隷にして、あのメドゥーサにだってデカい顔はさせない!
まあ、自信の無さの裏返しの恐怖政治で皆をシメ上げてたアンタがのさばってた時代よりは確実に聖団は明るく、そして強くなるだろうね!
何せ、あたしとりさら様にはオマエに絶対的に欠けてる若さと…そして何よりも美しさが備わってるからね!!
スケベ野郎揃いの錬装者どもも歓んで奉仕に励むに決まってるよッ!
ひひひ…どうだい、羨ましいだろ!?
地上でも此処でも三本指に入る醜女さんよ!
まあとにかく、もうテメエに居場所は無いってこったッ!!
だから安心して本来の住処である地獄に還りなッ!
そこでもう一ぺん死ぬほど反省して、次に生まれて来る機会があったら(絶対に無いだろうけど!)…、
きゃっははははははッ!!
天響神さまに泣きついて、せめてあたしやりさら様に100万分の1ぐらいは近い容姿にしてもらいなよッッ!!!」
岩石だらけの大地に釘付けにされたまま全身を撃ちまくられる殺戮姫の巨体はやがて毒々しいまでに鮮やかな貝紫色の輝きに包まれて不可視となり、そしてその光芒が消え去ると同時にその呪われた痕跡を忌まわしき凶影として地表に刻印し、魔天使の脳中に紡がれる〈悪夢世界〉から塵一つ残すことなく滅尽し果てていったのであった…。
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