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第2章 魔人どもの野望
殲闘者、魔海に咆ゆ
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「その体調でボクと闘ろうってのかい?
…止した方がいいと思うけどねえ!」
「ウルセエッ!
元々、テメエラ神牙教軍コソガ俺ノ〈聖戦〉ノメインターゲットダッ!
マズハ小癪ナ゙貴様ヲ血祭リニ挙ゲテ初陣ヲ飾ッテクレルッ!!」
この怪物にとって、“怒り”こそが何よりの原動力なのか、目にも止まらぬ迅さで繰り出される縦横無尽の斬撃には、先程までの悲壮感漂う気配とはまさに真逆の凶々しい殺気が漲っていた。
「ヘヘン、さすがは“製造元”があのクソ虫だけの事はある…、
可愛げってモンが全く感じられないネ!
態度によっちゃあ手当してやって、どうせ悲惨であろう身の上相談にでも乗ってやろうかなと思ってたんだけど…。
こうなりゃ仕方がない、“珍生物の標本”として、偉大なる教聖に献上してやるか!!」
2本の凶刃を流れるようなナイフ捌きで苦もなく防ぎ止めていた縻幽巴はこう宣言すると、脳天に振り下ろされた一撃を受けることなく一瞬にして水中に消え去った。
「卑怯ナッ!
逃ゲヤガッタナ、クソ龍坊主メガッ!?」
自身も潜水して追跡しようとする殲闘者だが、水中において“海の教軍超兵”を相手取る事の危険性に思い至り、とりあえず俯せとなって漂いながら襲撃に備える体勢となる。
…これで一応、どの方向から攻められても反撃は可能だが、果たして呼吸がいつまで保つか?
敵の領分で戦う以上絶対的な不利は否めず、いざ好機を摑んだならば、必ずや一撃で勝負を決めねばならぬ。
幸い、教軍超兵の急所の存在と位置は承知している…。
『龍坊主ハ“格闘ニシカ取リ柄ガ無イ低能種族”ト師ハ云ッテイタ…。
トイウコトハ、彼奴ハタイミングヲ見計ラッテ、必ズ俺ニ接近シテ来ル…!
…アリガタイコトニ、先程マデ悩マサレテイタ疲労感モ消エタヨウダ…。
奴メ、海中トイウコトデ調子ニ乗ッテイルノダロウガ、殲闘者ノ“戦地対応力”ヲ甘ク見ルナヨ!!
サア、早ク来ヤガレ!
尤モ、マサニソノ時ガ貴様ノ最期ダガナ!!』
戮弾電銃こそ宮殿脱出の際の戦闘で失ったものの、もとより海水に触れた時点で使用不能となるため未練はない。
『何ヨリモ手ニ馴染厶コイツコソガ俺ノ“真ノ相棒”ダ…。
龍坊主ノ爪牙ナンゾ足元ニモ及バン斬レ味ダッテコトヲソノ醜イ鱗マミレノ躰デ味ワワセテヤルゼ…!』
この燃え滾る殺意によって大洋も沸騰せよと心中で絶叫した殲闘者は、己の精神が凝固したかの如き双刃を改めて握りしめた…。
かくて長期戦に持ち込むことで怪物の体力消耗を狙った縻幽巴の思惑は崩れたかに見えたが、あくまでこの戦いを《受躰の儀》開始までの時間潰しの娯楽と捉える彼にとっては、むしろ長引くほど都合が良いのだった。
『アイツの全身の傷…あれは断じて魚族によって刻み付けられたものではないナ…、
ましてや未だ遮電蠕活帯に包まれたままの魔王蛸にやられたものであるはずも…。
となると、海底宮殿から逃げ出す際、統衞軍と一戦交えたとしか考えられないネ…。
恐らく、相手になったのは【斬撃機兵団】だな。
何でもロゼムス狂の陀兄によると、奴が自分自身のボディガードとして造った〈人工従者〉の“量産型”だとか…。
確か、発着場は火器厳禁で、連中が警備を担当してるんだっけ。
つまり、ボンクラな統衞軍兵士の目は欺けても、脱出口で待ち構えていた鋼鉄戦士の機眼は誤魔化せなかったってワケだね。
まあ今頃、御主人様を救うために本物が煌輪塔に現れて、長兄殿は孤軍奮闘の真最中かもしれんナ!
…さて、いくら肺と直結して(そうじゃね?)る大口とはいえ、そろそろ息継ぎタイムだろう、
ひひひ、んじゃ海冥毒でジワジワ痛ぶって楽しむとするか…!』
…止した方がいいと思うけどねえ!」
「ウルセエッ!
元々、テメエラ神牙教軍コソガ俺ノ〈聖戦〉ノメインターゲットダッ!
マズハ小癪ナ゙貴様ヲ血祭リニ挙ゲテ初陣ヲ飾ッテクレルッ!!」
この怪物にとって、“怒り”こそが何よりの原動力なのか、目にも止まらぬ迅さで繰り出される縦横無尽の斬撃には、先程までの悲壮感漂う気配とはまさに真逆の凶々しい殺気が漲っていた。
「ヘヘン、さすがは“製造元”があのクソ虫だけの事はある…、
可愛げってモンが全く感じられないネ!
態度によっちゃあ手当してやって、どうせ悲惨であろう身の上相談にでも乗ってやろうかなと思ってたんだけど…。
こうなりゃ仕方がない、“珍生物の標本”として、偉大なる教聖に献上してやるか!!」
2本の凶刃を流れるようなナイフ捌きで苦もなく防ぎ止めていた縻幽巴はこう宣言すると、脳天に振り下ろされた一撃を受けることなく一瞬にして水中に消え去った。
「卑怯ナッ!
逃ゲヤガッタナ、クソ龍坊主メガッ!?」
自身も潜水して追跡しようとする殲闘者だが、水中において“海の教軍超兵”を相手取る事の危険性に思い至り、とりあえず俯せとなって漂いながら襲撃に備える体勢となる。
…これで一応、どの方向から攻められても反撃は可能だが、果たして呼吸がいつまで保つか?
敵の領分で戦う以上絶対的な不利は否めず、いざ好機を摑んだならば、必ずや一撃で勝負を決めねばならぬ。
幸い、教軍超兵の急所の存在と位置は承知している…。
『龍坊主ハ“格闘ニシカ取リ柄ガ無イ低能種族”ト師ハ云ッテイタ…。
トイウコトハ、彼奴ハタイミングヲ見計ラッテ、必ズ俺ニ接近シテ来ル…!
…アリガタイコトニ、先程マデ悩マサレテイタ疲労感モ消エタヨウダ…。
奴メ、海中トイウコトデ調子ニ乗ッテイルノダロウガ、殲闘者ノ“戦地対応力”ヲ甘ク見ルナヨ!!
サア、早ク来ヤガレ!
尤モ、マサニソノ時ガ貴様ノ最期ダガナ!!』
戮弾電銃こそ宮殿脱出の際の戦闘で失ったものの、もとより海水に触れた時点で使用不能となるため未練はない。
『何ヨリモ手ニ馴染厶コイツコソガ俺ノ“真ノ相棒”ダ…。
龍坊主ノ爪牙ナンゾ足元ニモ及バン斬レ味ダッテコトヲソノ醜イ鱗マミレノ躰デ味ワワセテヤルゼ…!』
この燃え滾る殺意によって大洋も沸騰せよと心中で絶叫した殲闘者は、己の精神が凝固したかの如き双刃を改めて握りしめた…。
かくて長期戦に持ち込むことで怪物の体力消耗を狙った縻幽巴の思惑は崩れたかに見えたが、あくまでこの戦いを《受躰の儀》開始までの時間潰しの娯楽と捉える彼にとっては、むしろ長引くほど都合が良いのだった。
『アイツの全身の傷…あれは断じて魚族によって刻み付けられたものではないナ…、
ましてや未だ遮電蠕活帯に包まれたままの魔王蛸にやられたものであるはずも…。
となると、海底宮殿から逃げ出す際、統衞軍と一戦交えたとしか考えられないネ…。
恐らく、相手になったのは【斬撃機兵団】だな。
何でもロゼムス狂の陀兄によると、奴が自分自身のボディガードとして造った〈人工従者〉の“量産型”だとか…。
確か、発着場は火器厳禁で、連中が警備を担当してるんだっけ。
つまり、ボンクラな統衞軍兵士の目は欺けても、脱出口で待ち構えていた鋼鉄戦士の機眼は誤魔化せなかったってワケだね。
まあ今頃、御主人様を救うために本物が煌輪塔に現れて、長兄殿は孤軍奮闘の真最中かもしれんナ!
…さて、いくら肺と直結して(そうじゃね?)る大口とはいえ、そろそろ息継ぎタイムだろう、
ひひひ、んじゃ海冥毒でジワジワ痛ぶって楽しむとするか…!』
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