ボクらは魔界闘暴者!

幾橋テツミ

文字の大きさ
上 下
59 / 60
第六章 凱歌の行方

救いの声は三代目聖団長!?

しおりを挟む
「動けッ!動けッ!動けッ!動けえッッ!!」

 ──渾身の精神力サイコパワー注入により錬装磁甲の出力も急上昇、これにより鉄柵前に横倒しとなっていた青き鎧戦士はゆっくりと両腕を上げて妖仙獣の攻撃を阻止しようとする。

『──どうやらエグメド鋼の硬さに負けて呀門ヤツの刃も勢いを無くしてきたようだ…となると、いよいよ必殺技に違いねえを仕掛けてくるか?

 しかし、それをモロに食らえば絶対に脱出は不可能──噛み砕かれねえまでも時間切れに持ち込まれて結局負けちまうことに変わりはねえ…だがよ、その前に何とか立ち上がって、必殺のドリルパンチスピニング・コーンを目ン玉に叩き込んでやるぜ…!』

 この強気の内的独白にはある根拠があった──心なしか、磁甲の動きがスムーズになってきた感があるのだ…もしや、精神集中の度合いに比例して体表面温度が急激に上昇して粘液そのものを溶解させつつあるのかもしれぬ!

「きっとそうだ!

 ピンチはチャンス──この試練によって、錬装者・冬河黎輔はさらに一段高いレベルに進化したのだッ!!」

“ギギャギギャアッッ!!”

 鋭刃殺法では埒が明かぬと判断したか、遂に成人の親指大の牙が総計百本余りもギラつく大口を開いた呀門は、前肢を攻撃から捕獲モードに切り替えて獲物に迫る。

「アホがッ!テメエの思いどおりいくかよッ!!」

 一度の覇闘において三度まで認められる全身発光を再び起こし、ゴロゴロと必死に転がって魔手を逃れた黎輔はバイザーを開いて機眼を復活させ、渾身の力を振り絞って起き上がった。

「動くッ!さっきより遥かにスムーズにッ!!

 これなら──勝てるッッ!!」

 もちろん正常時に比べればかなり遅いスピードだが、ほんの2分ほど前までほとんど彫像と化していた訳であるから、まさに形勢逆転といってもよいであろう。

 この変化には当の錬装者自身が最も驚いていたが、そんな彼をさらに震撼させる衝撃の事態が発生した!

──冬河くん、頑張ってるね。

 はじめまして、私は桂城慧斗。

 絆獣聖団・三代目聖団長です。

 一瞬、幻聴かと我が耳を疑った冬河黎輔であったが、事前に仕入れていた〈極秘情報〉がそうではないことを告げていた。

「──え、ええッ!?

 も、もしかしてあなたは聖蘭様のお兄さん…!?」

 振り向いてくるであろう妖仙獣に対して身構えつつ返答するに、若き聖団長は好意的な含み笑いで応じる。

──ははは、そのとおり…いつも〈妹〉を応援してくれてありがとう。

 その熱心さに報いて…というのは何だか傲慢だが、いずれ彼女との肩肘張らない形での対面の席もセッティングしてさしあげるつもりだ──もちろん今すぐにとはいかないがね…。

「エーッ!?す、凄えッ!!ホ、ホントですかッ!?

 ──ゼ、ゼヒお願いしますッッ!!!」
 
──謹んで承知した…何しろキミは私の【聖団再生プロジェクト】において必要不可欠な人材なんだからね…こちらとしても、より緊密な…いや、できるならを結んでおきたいんだ…!

 そのためには、敵の面前で、しかも取るに足らない〈人外戦力〉相手に恥をかかせてしまう訳にはいかん…そこで、新開発技術の【遠隔式限界力解除】によってキミの錬装磁甲の潜在性能を1900PSまで引き上げた──どうかね?かなり動きが回復してきただろう…?

「は、はい!ここまで戻れば充分戦えますッ!!」

 夢の〈ファーストコンタクトwith聖蘭様〉に加え、いきなりの〈VIP待遇確約〉──押し寄せる吉報に有頂天となった次期中国支部首督は、勇気百倍で宣言し、突進してきた巨大な魔蟲を闘牛士のごとく素早い横移動でかわし、「食らえッ!!」と絶叫しつつ4本の円錐型ドリルが唸る右拳を、濁った緑色でソフトボールよりも大きい奇怪極まる左眼球に思いきり叩き込む!

“キゲギゲギギャアアアッッッ!!!”

 スピニング・コーンが潜り込むやたちまち噴出する大怪虫の土留色の血液!──だが青き鎧戦士は構うことなく届くところまで拳を押し込んでゆく…。

『どうやら呀門コイツ、頭蓋骨は無論、脳らしきものも少なくともようたな…となると、ココを破壊してもトドメはさせねえってことか…ということは──!』

 とりあえず敵の視力だけは奪っておくため、一旦腕を引き抜いた黎輔は動きの止まった妖仙獣の頭頂部を踏み台にして右側面に飛び移ると、着地と同時に今度は左拳を右目に突き立てる。

 再び魔蟲の苦鳴が場内に轟きわたり、光城玄矢の表情は苦虫を噛み潰したかのごとく歪み、那崎恭作のそれは歓喜に上気したが、宗 星愁は後輩とは対象的に険しく眉根を寄せて俯いていた。

「何かおかしい…あれほど急激に錬装磁甲がパワーアップするなど考えられんことだ…。

 たしかに〈火事場の馬鹿力〉が発揮されたという見方もできようが、もしそうだとしても、元の状態に復活させるくらいが限度のはず…!

 しかし、今の黎輔アイツから受ける力感は覇闘開始前をはるかに凌駕しているみたいじゃないか──?」

「たしかに、そう言われればそうとも見えますけど…それだけ彼がこの危機をバネにして急激に進化したということは考えられないですか…?」

 されど顔を上げ、攻勢をかける青き錬装者を睨んだ支部最強者は頑なに首を振った。

「ああ、考えられないね…。

 おそらく何らかの外部的助力──いやそれをやるのはが、それによってアイツの錬装磁甲の能力がフルに解放されたんだ…!

 ──だが、もちろんこれは絶対厳禁の違反行為なんだぞッ!!」
 










 





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※毎週、月、水、金曜日更新 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。 ※追放要素、ざまあ要素は第二章からです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

処理中です...