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第六章 凱歌の行方
救いの声は三代目聖団長!?
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「動けッ!動けッ!動けッ!動けえッッ!!」
──渾身の精神力注入により錬装磁甲の出力も急上昇、これにより鉄柵前に横倒しとなっていた青き鎧戦士はゆっくりと両腕を上げて妖仙獣の攻撃を阻止しようとする。
『──どうやらエグメド鋼の硬さに負けて呀門の刃も勢いを無くしてきたようだ…となると、いよいよ必殺技に違いねえ噛みつきを仕掛けてくるか?
しかし、それをモロに食らえば絶対に脱出は不可能──噛み砕かれねえまでも時間切れに持ち込まれて結局負けちまうことに変わりはねえ…だがよ、その前に何とか立ち上がって、必殺のドリルパンチを目ン玉に叩き込んでやるぜ…!』
この強気の内的独白にはある根拠があった──心なしか、磁甲の動きがスムーズになってきた感があるのだ…もしや、精神集中の度合いに比例して体表面温度が急激に上昇して粘液そのものを溶解させつつあるのかもしれぬ!
「きっとそうだ!
ピンチはチャンス──この試練によって、錬装者・冬河黎輔はさらに一段高いレベルに進化したのだッ!!」
“ギギャギギャアッッ!!”
鋭刃殺法では埒が明かぬと判断したか、遂に成人の親指大の牙が総計百本余りもギラつく大口を開いた呀門は、前肢を攻撃から捕獲モードに切り替えて獲物に迫る。
「アホがッ!テメエの思いどおりいくかよッ!!」
一度の覇闘において三度まで認められる全身発光を再び起こし、ゴロゴロと必死に転がって魔手を逃れた黎輔はバイザーを開いて機眼を復活させ、渾身の力を振り絞って起き上がった。
「動くッ!さっきより遥かにスムーズにッ!!
これなら──勝てるッッ!!」
もちろん正常時に比べればかなり遅いスピードだが、ほんの2分ほど前までほとんど彫像と化していた訳であるから、まさに形勢逆転といってもよいであろう。
この変化には当の錬装者自身が最も驚いていたが、そんな彼をさらに震撼させる衝撃の事態が発生した!
──冬河くん、頑張ってるね。
はじめまして、私は桂城慧斗。
絆獣聖団・三代目聖団長です。
一瞬、幻聴かと我が耳を疑った冬河黎輔であったが、事前に仕入れていた〈極秘情報〉がそうではないことを告げていた。
「──え、ええッ!?
も、もしかしてあなたは聖蘭様のお兄さん…!?」
振り向いてくるであろう妖仙獣に対して身構えつつ返答するシルブレストに、若き聖団長は好意的な含み笑いで応じる。
──ははは、そのとおり…いつも〈妹〉を応援してくれてありがとう。
その熱心さに報いて…というのは何だか傲慢だが、いずれ彼女との肩肘張らない形での対面の席もセッティングしてさしあげるつもりだ──もちろん今すぐにとはいかないがね…。
「エーッ!?す、凄えッ!!ホ、ホントですかッ!?
──ゼ、ゼヒお願いしますッッ!!!」
──謹んで承知した…何しろキミは私の【聖団再生プロジェクト】において必要不可欠な人材なんだからね…こちらとしても、より緊密な…いや、できるなら家族的な関係を結んでおきたいんだ…!
そのためには、敵の面前で、しかも取るに足らない〈人外戦力〉相手に恥をかかせてしまう訳にはいかん…そこで、新開発技術の【遠隔式限界力解除】によってキミの錬装磁甲の潜在性能を1900PSまで引き上げた──どうかね?かなり動きが回復してきただろう…?
「は、はい!ここまで戻れば充分戦えますッ!!」
夢の〈ファーストコンタクトwith聖蘭様〉に加え、いきなりの〈VIP待遇確約〉──押し寄せる吉報に有頂天となった次期中国支部首督は、勇気百倍で宣言し、突進してきた巨大な魔蟲を闘牛士のごとく素早い横移動でかわし、「食らえッ!!」と絶叫しつつ4本の円錐型ドリルが唸る右拳を、濁った緑色でソフトボールよりも大きい奇怪極まる左眼球に思いきり叩き込む!
“キゲギゲギギャアアアッッッ!!!”
スピニング・コーンが潜り込むやたちまち噴出する大怪虫の土留色の血液!──だが青き鎧戦士は構うことなく届くところまで拳を押し込んでゆく…。
『どうやら呀門、頭蓋骨は無論、脳らしきものも少なくとも頭部にはねえようたな…となると、ココを破壊してもトドメはさせねえってことか…ということは──!』
とりあえず敵の視力だけは奪っておくため、一旦腕を引き抜いた黎輔は動きの止まった妖仙獣の頭頂部を踏み台にして右側面に飛び移ると、着地と同時に今度は左拳を右目に突き立てる。
再び魔蟲の苦鳴が場内に轟きわたり、光城玄矢の表情は苦虫を噛み潰したかのごとく歪み、那崎恭作のそれは歓喜に上気したが、宗 星愁は後輩とは対象的に険しく眉根を寄せて俯いていた。
「何かおかしい…あれほど急激に錬装磁甲がパワーアップするなど考えられんことだ…。
たしかに〈火事場の馬鹿力〉が発揮されたという見方もできようが、もしそうだとしても、元の状態に復活させるくらいが限度のはず…!
しかし、今の黎輔から受ける力感は覇闘開始前をはるかに凌駕しているみたいじゃないか──?」
「たしかに、そう言われればそうとも見えますけど…それだけ彼がこの危機をバネにして急激に進化したということは考えられないですか…?」
されど顔を上げ、攻勢をかける青き錬装者を睨んだ支部最強者は頑なに首を振った。
「ああ、考えられないね…。
おそらく何らかの外部的助力──いやそれをやるのは本部以外に考えられんが、それによってアイツの錬装磁甲の能力がフルに解放されたんだ…!
──だが、もちろんこれは絶対厳禁の違反行為なんだぞッ!!」
──渾身の精神力注入により錬装磁甲の出力も急上昇、これにより鉄柵前に横倒しとなっていた青き鎧戦士はゆっくりと両腕を上げて妖仙獣の攻撃を阻止しようとする。
『──どうやらエグメド鋼の硬さに負けて呀門の刃も勢いを無くしてきたようだ…となると、いよいよ必殺技に違いねえ噛みつきを仕掛けてくるか?
しかし、それをモロに食らえば絶対に脱出は不可能──噛み砕かれねえまでも時間切れに持ち込まれて結局負けちまうことに変わりはねえ…だがよ、その前に何とか立ち上がって、必殺のドリルパンチを目ン玉に叩き込んでやるぜ…!』
この強気の内的独白にはある根拠があった──心なしか、磁甲の動きがスムーズになってきた感があるのだ…もしや、精神集中の度合いに比例して体表面温度が急激に上昇して粘液そのものを溶解させつつあるのかもしれぬ!
「きっとそうだ!
ピンチはチャンス──この試練によって、錬装者・冬河黎輔はさらに一段高いレベルに進化したのだッ!!」
“ギギャギギャアッッ!!”
鋭刃殺法では埒が明かぬと判断したか、遂に成人の親指大の牙が総計百本余りもギラつく大口を開いた呀門は、前肢を攻撃から捕獲モードに切り替えて獲物に迫る。
「アホがッ!テメエの思いどおりいくかよッ!!」
一度の覇闘において三度まで認められる全身発光を再び起こし、ゴロゴロと必死に転がって魔手を逃れた黎輔はバイザーを開いて機眼を復活させ、渾身の力を振り絞って起き上がった。
「動くッ!さっきより遥かにスムーズにッ!!
これなら──勝てるッッ!!」
もちろん正常時に比べればかなり遅いスピードだが、ほんの2分ほど前までほとんど彫像と化していた訳であるから、まさに形勢逆転といってもよいであろう。
この変化には当の錬装者自身が最も驚いていたが、そんな彼をさらに震撼させる衝撃の事態が発生した!
──冬河くん、頑張ってるね。
はじめまして、私は桂城慧斗。
絆獣聖団・三代目聖団長です。
一瞬、幻聴かと我が耳を疑った冬河黎輔であったが、事前に仕入れていた〈極秘情報〉がそうではないことを告げていた。
「──え、ええッ!?
も、もしかしてあなたは聖蘭様のお兄さん…!?」
振り向いてくるであろう妖仙獣に対して身構えつつ返答するシルブレストに、若き聖団長は好意的な含み笑いで応じる。
──ははは、そのとおり…いつも〈妹〉を応援してくれてありがとう。
その熱心さに報いて…というのは何だか傲慢だが、いずれ彼女との肩肘張らない形での対面の席もセッティングしてさしあげるつもりだ──もちろん今すぐにとはいかないがね…。
「エーッ!?す、凄えッ!!ホ、ホントですかッ!?
──ゼ、ゼヒお願いしますッッ!!!」
──謹んで承知した…何しろキミは私の【聖団再生プロジェクト】において必要不可欠な人材なんだからね…こちらとしても、より緊密な…いや、できるなら家族的な関係を結んでおきたいんだ…!
そのためには、敵の面前で、しかも取るに足らない〈人外戦力〉相手に恥をかかせてしまう訳にはいかん…そこで、新開発技術の【遠隔式限界力解除】によってキミの錬装磁甲の潜在性能を1900PSまで引き上げた──どうかね?かなり動きが回復してきただろう…?
「は、はい!ここまで戻れば充分戦えますッ!!」
夢の〈ファーストコンタクトwith聖蘭様〉に加え、いきなりの〈VIP待遇確約〉──押し寄せる吉報に有頂天となった次期中国支部首督は、勇気百倍で宣言し、突進してきた巨大な魔蟲を闘牛士のごとく素早い横移動でかわし、「食らえッ!!」と絶叫しつつ4本の円錐型ドリルが唸る右拳を、濁った緑色でソフトボールよりも大きい奇怪極まる左眼球に思いきり叩き込む!
“キゲギゲギギャアアアッッッ!!!”
スピニング・コーンが潜り込むやたちまち噴出する大怪虫の土留色の血液!──だが青き鎧戦士は構うことなく届くところまで拳を押し込んでゆく…。
『どうやら呀門、頭蓋骨は無論、脳らしきものも少なくとも頭部にはねえようたな…となると、ココを破壊してもトドメはさせねえってことか…ということは──!』
とりあえず敵の視力だけは奪っておくため、一旦腕を引き抜いた黎輔は動きの止まった妖仙獣の頭頂部を踏み台にして右側面に飛び移ると、着地と同時に今度は左拳を右目に突き立てる。
再び魔蟲の苦鳴が場内に轟きわたり、光城玄矢の表情は苦虫を噛み潰したかのごとく歪み、那崎恭作のそれは歓喜に上気したが、宗 星愁は後輩とは対象的に険しく眉根を寄せて俯いていた。
「何かおかしい…あれほど急激に錬装磁甲がパワーアップするなど考えられんことだ…。
たしかに〈火事場の馬鹿力〉が発揮されたという見方もできようが、もしそうだとしても、元の状態に復活させるくらいが限度のはず…!
しかし、今の黎輔から受ける力感は覇闘開始前をはるかに凌駕しているみたいじゃないか──?」
「たしかに、そう言われればそうとも見えますけど…それだけ彼がこの危機をバネにして急激に進化したということは考えられないですか…?」
されど顔を上げ、攻勢をかける青き錬装者を睨んだ支部最強者は頑なに首を振った。
「ああ、考えられないね…。
おそらく何らかの外部的助力──いやそれをやるのは本部以外に考えられんが、それによってアイツの錬装磁甲の能力がフルに解放されたんだ…!
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