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第四章 【覇闘】直前狂騒曲
錬装者煉獄篇②ほとんどホラーな〈未確認情報〉
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「──聖蘭様のお兄さんが三代目ッ!?
…それって事実ですか…!?」
呆然とする冬河黎輔に複雑な薄笑いを向けながら剛駕嶽仁は頷いた。
「おうよ、そのとおり…。
そもそも4月1日でもねえのにこんな冗談口走るワケねえだろうが…!
まあ、お口アングリになるのもムリはねえ…さすがのオレにしてからがたっぷり1分間は沈黙を余儀なくされたほどだからな…」
されど困惑の極にある少年の次の言葉は得意気な嶽仁の神経をすっかり逆撫でしてしまった。
「──このことは、星さんもご存知なんですかね…?」
『コイツ、事ここに及んで星愁をオレの上位に位置付けようとしやがるのか!?』と訊き手の意図を正確に覚った〈備前の覇王〉は小面憎き後輩を睨み据えつつ吐き捨てる。
「…さあ、どうだかな?
たしかにあの野郎がまともな聖団員ならとてもアクセスすべきじゃねえ“闇の情報源”と繋がってることはたしかなようだが、これは組織内においても【九氏族】をはじめごく僅かな要人しか知らされてない〈超極秘情報〉だ…とても奴ごときが入手可能とは思えねえな…。
ちなみに、一応、中国支部首督ってことになってる冬河家に対してはこのオレさま直々に伝えてくれとのことだった──つまりこの論法だと中国支部におけるこの〈備前の覇王〉の位は首督以上ってことになっちまうが、まあこれが掛け値なしの指導部の評価なんだろうなぁ…。
だが、おまえはまだ若いんだ、決して落ち込む必要はないぜ…。
第一なあ、あの口だけで細々と個人施術院を切り回してるような“C調整体師”がこんな特ダネを摑んだら皆の面前で黙ってられるはずがねえだろうがッ!?」
普段の黎輔であれば敬愛する兄貴分に対するこの私怨に満ちた誤情報を忽ち(心中で)嘲笑するところだが、内容が(あの鮮烈な夢とも部分的に符合していることも含め)あまりに衝撃的すぎて文字通り頭の中が真っ白の思考停止状態に陥っているためか、ただ瞑目して俯くのみであった…。
この好反応を、自分が図星を言い当てたことによると曲解した嶽仁は、さらにどこまでが事実か判断しかねる“背筋も凍る裏話”を開陳する。
「最初に釘を差しておくが、これは何も星愁が席を外してるから話す与太話じゃないぜ…。
──時間もねえからズバリ核心を言うとだな、目下…というかかなり以前から〈絆獣聖団中国支部錬装者〉宗 星愁には重大なスパイ疑惑が掛けられてるのさ…!」
一瞬、以前からその正気を危ぶんできた巨漢が遂に発狂したかと戦慄した冬河少年だが、その深刻且つ沈痛な表情を見るにつけ、とにかくこの〈怪情報〉を神田口本人から吹き込まれたことだけは事実なのだろうととりあえず拝聴してみることにはしたものの、しかしそれはあまりにも信じ難い超展開というものであった!
「そ、そんなバカなッ!?」
しかし反射的に発せられたこの当然すぎる反論を、いつになく厳粛な居ずまいの剛駕嶽仁が放ったメガトン級の爆弾発言が木っ端微塵に粉砕してのけたのである!
「言いたいことは分かる…オレだって戦友ともいうべきアイツが実は敵だったなんてそれこそブラックジョーク、昨日がエイプリルフールだとしても脳が受け付けねえよ…。
だがな黎輔…ガキのオマエにゃなおさら残酷な〈この世の現実〉ってヤツを突き付けることになっちまうが、どうかこれも大人の階段を一歩登るための試練として受け止めてくれ…。
──実はな、この疑惑を本部に進言したのは、誰あろうラージャーラに出征直前の萩邑りさら嬢なんだよ…!!」
…それって事実ですか…!?」
呆然とする冬河黎輔に複雑な薄笑いを向けながら剛駕嶽仁は頷いた。
「おうよ、そのとおり…。
そもそも4月1日でもねえのにこんな冗談口走るワケねえだろうが…!
まあ、お口アングリになるのもムリはねえ…さすがのオレにしてからがたっぷり1分間は沈黙を余儀なくされたほどだからな…」
されど困惑の極にある少年の次の言葉は得意気な嶽仁の神経をすっかり逆撫でしてしまった。
「──このことは、星さんもご存知なんですかね…?」
『コイツ、事ここに及んで星愁をオレの上位に位置付けようとしやがるのか!?』と訊き手の意図を正確に覚った〈備前の覇王〉は小面憎き後輩を睨み据えつつ吐き捨てる。
「…さあ、どうだかな?
たしかにあの野郎がまともな聖団員ならとてもアクセスすべきじゃねえ“闇の情報源”と繋がってることはたしかなようだが、これは組織内においても【九氏族】をはじめごく僅かな要人しか知らされてない〈超極秘情報〉だ…とても奴ごときが入手可能とは思えねえな…。
ちなみに、一応、中国支部首督ってことになってる冬河家に対してはこのオレさま直々に伝えてくれとのことだった──つまりこの論法だと中国支部におけるこの〈備前の覇王〉の位は首督以上ってことになっちまうが、まあこれが掛け値なしの指導部の評価なんだろうなぁ…。
だが、おまえはまだ若いんだ、決して落ち込む必要はないぜ…。
第一なあ、あの口だけで細々と個人施術院を切り回してるような“C調整体師”がこんな特ダネを摑んだら皆の面前で黙ってられるはずがねえだろうがッ!?」
普段の黎輔であれば敬愛する兄貴分に対するこの私怨に満ちた誤情報を忽ち(心中で)嘲笑するところだが、内容が(あの鮮烈な夢とも部分的に符合していることも含め)あまりに衝撃的すぎて文字通り頭の中が真っ白の思考停止状態に陥っているためか、ただ瞑目して俯くのみであった…。
この好反応を、自分が図星を言い当てたことによると曲解した嶽仁は、さらにどこまでが事実か判断しかねる“背筋も凍る裏話”を開陳する。
「最初に釘を差しておくが、これは何も星愁が席を外してるから話す与太話じゃないぜ…。
──時間もねえからズバリ核心を言うとだな、目下…というかかなり以前から〈絆獣聖団中国支部錬装者〉宗 星愁には重大なスパイ疑惑が掛けられてるのさ…!」
一瞬、以前からその正気を危ぶんできた巨漢が遂に発狂したかと戦慄した冬河少年だが、その深刻且つ沈痛な表情を見るにつけ、とにかくこの〈怪情報〉を神田口本人から吹き込まれたことだけは事実なのだろうととりあえず拝聴してみることにはしたものの、しかしそれはあまりにも信じ難い超展開というものであった!
「そ、そんなバカなッ!?」
しかし反射的に発せられたこの当然すぎる反論を、いつになく厳粛な居ずまいの剛駕嶽仁が放ったメガトン級の爆弾発言が木っ端微塵に粉砕してのけたのである!
「言いたいことは分かる…オレだって戦友ともいうべきアイツが実は敵だったなんてそれこそブラックジョーク、昨日がエイプリルフールだとしても脳が受け付けねえよ…。
だがな黎輔…ガキのオマエにゃなおさら残酷な〈この世の現実〉ってヤツを突き付けることになっちまうが、どうかこれも大人の階段を一歩登るための試練として受け止めてくれ…。
──実はな、この疑惑を本部に進言したのは、誰あろうラージャーラに出征直前の萩邑りさら嬢なんだよ…!!」
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