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第三章 血染めの【覇闘札】
またもやカード変更!?ザケんじゃねえッ!!
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黒のタンクトップとスパッツ、シューズでおよそ2時間弱の林道ランニング主体の朝稽古を終えた中国支部のエース・宗 星愁が戻ったのは恒典到着後からおよそ10分後であった。
さしもの極道オヤジも彼に対してだけは人並みに気を遣うのか、交わした挨拶もそれなりに慇懃なものであった。
「さすがじゃなあ、今日は出番じゃないっちゅうのに朝早くから一人だけ黙々とトレーニングしちょるとは!
これぞまさしく”エースの自覚”っちゅうヤツじゃな…いや全く、お世辞抜きに頭が下がるわ!!
それに引き換え、ウチのドラ息子とあのウドの大木ときた日にゃあ…!」
その吐き捨てるような口ぶりからは、“万年冷戦状態”にある次男坊のみならず、今回敵将との大一番に臨む剛駕嶽仁に対しても並々ならぬ悪感情を抱いていることが窺えた。
「まあ、二人とも私とは違って大物ですからね…。
覇闘前夜にぐっすり眠れるなんて逆に大したものだと思いますよ…」
だがその庇い立てを無視するかのようにしゃがみ込んだ恒典はたちまちじゃれついてくるハンゾウの頭を揺すぶるように撫でつつ毒づいた。
「ふん、そんなわきゃあなかろうが…。
とにかく覇闘は結果が全てじゃ…せえも今回の相手は最強の光至教勢、ワシャあ全敗を覚悟しとるよ…。
まーこれで“天下の弱小支部”は今回も皆の笑いものになるのはほぼ確実じゃ、あー恥ずかしいッ!」
ここで浮かべていた愛想笑いを消し去り、真顔に戻った星愁も腕組して頭を振った。
「確かに、光城玄矢…彼についてはおそらく妖帝星軍においても筆頭に挙げられる強者と私も認めていますが、今回いかなる思惑があってか、黎輔と戦うはずだった副将格の威紅也と妖仙獣を組ませた[BB]を申し入れてきましてね…」
しかし、ここでも事実上の中国支部首督である冬河家当主の反応は星愁の意表を突くものであった。
「そのくれぇ、知っとるわ!
じゃけどのォ、実ァ明け方に先方から電話があったんじゃ!
それによるとなあ…、
“大変申し訳ないが、更なる事態の急変もあって今回の光城威紅也の出陣は不可能になった…従ってBBは取り下げさせてもらい、ご子息の相手は予告した妖仙獣のみとして頂きたい。
もちろん光城家側の勝手な都合で再度変更願う以上、ペナルティとして2枚の覇闘札は進呈する。
──だが」
この親父にしてはレアといえるシリアスな表情と口ぶりに、支部最強錬装者も思わず口元を引き締めつつ次の言葉を待つ。
「…もし妖仙獣が勝利した場合は、1枚だけは返却してもらえぬか”…とか言うてきおったんじゃがの…」
まさに懸念した通りの展開てあったが、それゆえに感情を制御しかねた星愁は思わず激昂した。
「まさか…受諾したんじゃないでしょうね、その勝手極まる申し出をッ!?」
“頼もしき切り札”に対して冷静沈着のイメージしか抱いたことかなかった冬河恒典にしてみればこの反応は完全に想像の外であって、小型絆獣の長い手を握ったままぽかんと口を開き、拳を震わせて仁王立ちする前方の黒い影を呆然と見上げるのみである…。
「昨日のBBといい今朝の申し入れといい、得手勝手にクルクルと方針を変える向こうサイドにどうしてこちらが一々合わせてやらなきゃならんのですかッ!?
ましてや、覇闘札の減額に応じてやるなどとんでもない話ですッ!
どう考えても、その場で受け容れる必要はなかった…百歩譲って応じるとしても、せめて覇闘の結果を見た上で…仮に黎輔が負けたように見えても、そもそも相手がヒトではないのだからいくらでも難癖のつけようはあったんだッ!
つまり、向こうの勝ち方にこちらが納得した場合に限り最悪1枚返すのも吝かではない、と突っぱねるべきだったんですッ!!」
「…う、うーん…たしかに…まぁそう言われてみりゃあそうかもしれんがのォ…。
せーでもなあ、それじゃとなーんかセコいような気ィしてなぁ、ワシとしてもしょーがなかったんじゃて…」
もちろん、星愁が今がなり立てた駆け引き戦術などたとえ寝ぼけ眼でなかったとしてもこの男の脳内になど閃くはずはなかったが、それ以前の問題として電話越しではあったものの“妖帝星軍の使者”の第一声を耳にした瞬間からその形容し難き艶麗さに魅了され尽くし、生来乏しい思考力を根こそぎ消去されてしまっていたのである。
そしてそれは誰あろう、【極術身装】への初変身の反動現象として一時は瀕死の状態にあったはずの、総大将たる妖術鬼の愛娘なのであった!
さしもの極道オヤジも彼に対してだけは人並みに気を遣うのか、交わした挨拶もそれなりに慇懃なものであった。
「さすがじゃなあ、今日は出番じゃないっちゅうのに朝早くから一人だけ黙々とトレーニングしちょるとは!
これぞまさしく”エースの自覚”っちゅうヤツじゃな…いや全く、お世辞抜きに頭が下がるわ!!
それに引き換え、ウチのドラ息子とあのウドの大木ときた日にゃあ…!」
その吐き捨てるような口ぶりからは、“万年冷戦状態”にある次男坊のみならず、今回敵将との大一番に臨む剛駕嶽仁に対しても並々ならぬ悪感情を抱いていることが窺えた。
「まあ、二人とも私とは違って大物ですからね…。
覇闘前夜にぐっすり眠れるなんて逆に大したものだと思いますよ…」
だがその庇い立てを無視するかのようにしゃがみ込んだ恒典はたちまちじゃれついてくるハンゾウの頭を揺すぶるように撫でつつ毒づいた。
「ふん、そんなわきゃあなかろうが…。
とにかく覇闘は結果が全てじゃ…せえも今回の相手は最強の光至教勢、ワシャあ全敗を覚悟しとるよ…。
まーこれで“天下の弱小支部”は今回も皆の笑いものになるのはほぼ確実じゃ、あー恥ずかしいッ!」
ここで浮かべていた愛想笑いを消し去り、真顔に戻った星愁も腕組して頭を振った。
「確かに、光城玄矢…彼についてはおそらく妖帝星軍においても筆頭に挙げられる強者と私も認めていますが、今回いかなる思惑があってか、黎輔と戦うはずだった副将格の威紅也と妖仙獣を組ませた[BB]を申し入れてきましてね…」
しかし、ここでも事実上の中国支部首督である冬河家当主の反応は星愁の意表を突くものであった。
「そのくれぇ、知っとるわ!
じゃけどのォ、実ァ明け方に先方から電話があったんじゃ!
それによるとなあ…、
“大変申し訳ないが、更なる事態の急変もあって今回の光城威紅也の出陣は不可能になった…従ってBBは取り下げさせてもらい、ご子息の相手は予告した妖仙獣のみとして頂きたい。
もちろん光城家側の勝手な都合で再度変更願う以上、ペナルティとして2枚の覇闘札は進呈する。
──だが」
この親父にしてはレアといえるシリアスな表情と口ぶりに、支部最強錬装者も思わず口元を引き締めつつ次の言葉を待つ。
「…もし妖仙獣が勝利した場合は、1枚だけは返却してもらえぬか”…とか言うてきおったんじゃがの…」
まさに懸念した通りの展開てあったが、それゆえに感情を制御しかねた星愁は思わず激昂した。
「まさか…受諾したんじゃないでしょうね、その勝手極まる申し出をッ!?」
“頼もしき切り札”に対して冷静沈着のイメージしか抱いたことかなかった冬河恒典にしてみればこの反応は完全に想像の外であって、小型絆獣の長い手を握ったままぽかんと口を開き、拳を震わせて仁王立ちする前方の黒い影を呆然と見上げるのみである…。
「昨日のBBといい今朝の申し入れといい、得手勝手にクルクルと方針を変える向こうサイドにどうしてこちらが一々合わせてやらなきゃならんのですかッ!?
ましてや、覇闘札の減額に応じてやるなどとんでもない話ですッ!
どう考えても、その場で受け容れる必要はなかった…百歩譲って応じるとしても、せめて覇闘の結果を見た上で…仮に黎輔が負けたように見えても、そもそも相手がヒトではないのだからいくらでも難癖のつけようはあったんだッ!
つまり、向こうの勝ち方にこちらが納得した場合に限り最悪1枚返すのも吝かではない、と突っぱねるべきだったんですッ!!」
「…う、うーん…たしかに…まぁそう言われてみりゃあそうかもしれんがのォ…。
せーでもなあ、それじゃとなーんかセコいような気ィしてなぁ、ワシとしてもしょーがなかったんじゃて…」
もちろん、星愁が今がなり立てた駆け引き戦術などたとえ寝ぼけ眼でなかったとしてもこの男の脳内になど閃くはずはなかったが、それ以前の問題として電話越しではあったものの“妖帝星軍の使者”の第一声を耳にした瞬間からその形容し難き艶麗さに魅了され尽くし、生来乏しい思考力を根こそぎ消去されてしまっていたのである。
そしてそれは誰あろう、【極術身装】への初変身の反動現象として一時は瀕死の状態にあったはずの、総大将たる妖術鬼の愛娘なのであった!
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