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第三章 血染めの【覇闘札】
招かれざる者、朝を穢す
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早朝トレーニングを済ませた星愁がシャワーを使うのは当然であるため、黎輔は儀式の痕跡を消し去るべくたっぷりとシャンプー&ボディソーブを使用した。
さて、いざ〈賢者タイム〉となってみると、これまで目を背けてきた“現実”の重さがずっしりと両肩にのしかかってくる。
『昨晩までは何とかなると思ってたけど、いざ当日を迎えてみると徐々に怖さが忍び寄ってきたぜ…。
1対2かあ…ちきしょうめ、妖帝星軍の真の狙いは一体何なんだよ…?
覇闘札二枚をみすみす捨ててまで引き合う成果ってのは?
──一つ考えられるのは、自惚れる訳じゃないが“聖団の未来を担うホープ”の一人には違いないはずのオレをなりふり構わず潰すことで将来の禍根を絶とうってことか…!?』
かくのごとき懸念を胸に全身をバスタオルで拭っていると、父・恒典の愛車である黒い外国製SUVのディーゼル音が不快に鼓膜を震わせた。
どうやら、地元開催の機会逃すまじとばかりに勇躍乗り込んで来たらしい。
「ちっ、どうせ何もしねえ…じゃねえや、できもしねえくせにノコノコ現れやがって…!
全くシラケるぜ、このクソ親父!
そんなに首督面がしてえのかよ、いいトシこいてガキみてえに覇闘札挿し込んだアルバム後生大事に抱えてさ!」
だが次の瞬間、決戦を控えてナーバスとなっている若き錬装者の神経をさらに逆撫でする事態が勃発した。
“ムガビガキイイイイィッッ!!!”
黎輔にとってある意味最大の天敵ともいえる小型絆獣が、一日千秋の想いで待ちわびた恋人を迎えるかのような金切り声を挙げて合宿所の占領していた一室から広場へ飛び出したのだ。
『ふん…“鬼畜オヤジ”と“ド畜生エテ公”の文字通り犬も食わねえチクチクタッグか…、
──全くいいコンビだぜ、前世は夫婦だったんじゃね?
それよりあの色狂いのクソザル、どうせ電気消してねえのはいいとしても、SILKY⚔BLADESのDVDキズだらけにしてねえだろうな?』
だが、第三者による辛辣なコメントなどどこ吹く風、相思相愛の人獣ペアは挨拶代わりの熱い抱擁によって改めて互いの絆を確かめ合っていた…。
「おお、ハンゾウよ、元気しちょったかッ!?
あのやっちもねえひねくれ小僧(黎輔)にイジメられなんだかや!?
どうやらその様子じゃ大丈夫じゃったようじゃの!
せえにしてもぼっこう重とうなったもんじゃ!
まさかおめえ、このまますくすくとでっこうなってしめえにゃあホンモンの絆獣になるんじゃなかろうの!?
そねえなコトんなったら、さすがのワシも餌代まかないきれんけえ、怪獣ショーでもやってぎょうさん見物人集めてでえれえ稼いでぼっけえ食費出してもらわにゃあおえりゃあせんで!分かっちょろうの!!」
岡山弁丸出しのデカいダミ声で愚にもつかない妄言を吐き散らしつつ、若づくりを狙ったものか茶色に染めた短髪にスクエアサングラスをずり上げた日焼けした容貌はそれなりに整ってはいるものの、そのファッションセンスは根本的に狂っており、良く言って極楽鳥、そのものズバリで例えるなら昭和のヨタモン以外の何者でもないド派手な赤いアロハシャツに豹柄の短パンと紫のビーチサンダルを引っ掛けるという、“間違っても関わり合いになりたくないアブナイ田舎のオッサン”そのものといった風情の冬河恒典は、よっこらしょと呟きつつ有毒爬虫類を連想させるケバケバしい緑色の“鎧猿”を地面に下ろした。
「何を吐かしやがる、このクソジジイがッ!!
今に見てろよ、いつまでもテメエの足元から目ェ背けて調子に乗ってっと、そーっと忍び寄ってたコワ~い鬼っ子に寝首を掻かれるってことを思い知らせてやるぜッ!
その時になって泣いて前非を悔いてもそれこそ後の祭りってもんだ…せいぜいキ◯ガイ絆獣共々、首を洗って覚悟しときなッッ!!」
さて、いざ〈賢者タイム〉となってみると、これまで目を背けてきた“現実”の重さがずっしりと両肩にのしかかってくる。
『昨晩までは何とかなると思ってたけど、いざ当日を迎えてみると徐々に怖さが忍び寄ってきたぜ…。
1対2かあ…ちきしょうめ、妖帝星軍の真の狙いは一体何なんだよ…?
覇闘札二枚をみすみす捨ててまで引き合う成果ってのは?
──一つ考えられるのは、自惚れる訳じゃないが“聖団の未来を担うホープ”の一人には違いないはずのオレをなりふり構わず潰すことで将来の禍根を絶とうってことか…!?』
かくのごとき懸念を胸に全身をバスタオルで拭っていると、父・恒典の愛車である黒い外国製SUVのディーゼル音が不快に鼓膜を震わせた。
どうやら、地元開催の機会逃すまじとばかりに勇躍乗り込んで来たらしい。
「ちっ、どうせ何もしねえ…じゃねえや、できもしねえくせにノコノコ現れやがって…!
全くシラケるぜ、このクソ親父!
そんなに首督面がしてえのかよ、いいトシこいてガキみてえに覇闘札挿し込んだアルバム後生大事に抱えてさ!」
だが次の瞬間、決戦を控えてナーバスとなっている若き錬装者の神経をさらに逆撫でする事態が勃発した。
“ムガビガキイイイイィッッ!!!”
黎輔にとってある意味最大の天敵ともいえる小型絆獣が、一日千秋の想いで待ちわびた恋人を迎えるかのような金切り声を挙げて合宿所の占領していた一室から広場へ飛び出したのだ。
『ふん…“鬼畜オヤジ”と“ド畜生エテ公”の文字通り犬も食わねえチクチクタッグか…、
──全くいいコンビだぜ、前世は夫婦だったんじゃね?
それよりあの色狂いのクソザル、どうせ電気消してねえのはいいとしても、SILKY⚔BLADESのDVDキズだらけにしてねえだろうな?』
だが、第三者による辛辣なコメントなどどこ吹く風、相思相愛の人獣ペアは挨拶代わりの熱い抱擁によって改めて互いの絆を確かめ合っていた…。
「おお、ハンゾウよ、元気しちょったかッ!?
あのやっちもねえひねくれ小僧(黎輔)にイジメられなんだかや!?
どうやらその様子じゃ大丈夫じゃったようじゃの!
せえにしてもぼっこう重とうなったもんじゃ!
まさかおめえ、このまますくすくとでっこうなってしめえにゃあホンモンの絆獣になるんじゃなかろうの!?
そねえなコトんなったら、さすがのワシも餌代まかないきれんけえ、怪獣ショーでもやってぎょうさん見物人集めてでえれえ稼いでぼっけえ食費出してもらわにゃあおえりゃあせんで!分かっちょろうの!!」
岡山弁丸出しのデカいダミ声で愚にもつかない妄言を吐き散らしつつ、若づくりを狙ったものか茶色に染めた短髪にスクエアサングラスをずり上げた日焼けした容貌はそれなりに整ってはいるものの、そのファッションセンスは根本的に狂っており、良く言って極楽鳥、そのものズバリで例えるなら昭和のヨタモン以外の何者でもないド派手な赤いアロハシャツに豹柄の短パンと紫のビーチサンダルを引っ掛けるという、“間違っても関わり合いになりたくないアブナイ田舎のオッサン”そのものといった風情の冬河恒典は、よっこらしょと呟きつつ有毒爬虫類を連想させるケバケバしい緑色の“鎧猿”を地面に下ろした。
「何を吐かしやがる、このクソジジイがッ!!
今に見てろよ、いつまでもテメエの足元から目ェ背けて調子に乗ってっと、そーっと忍び寄ってたコワ~い鬼っ子に寝首を掻かれるってことを思い知らせてやるぜッ!
その時になって泣いて前非を悔いてもそれこそ後の祭りってもんだ…せいぜいキ◯ガイ絆獣共々、首を洗って覚悟しときなッッ!!」
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