ボクらは魔界闘暴者!

幾橋テツミ

文字の大きさ
上 下
20 / 60
第ニ章【パーフェクト・アイドル】の香り

そろそろ寝なくっちゃ…。

しおりを挟む

対抗戦当日の朝。俺は緊張や不安というよりも対抗戦に出るのが嫌すぎてゲロりそうになっていた。心の底からドタキャンしたい。誰か代役で出て欲しい。俺には無理。この学園の貧弱生物ですよ?? 人間が亜人に勝てないのは常識だと思うんだけど、華薇先生を見てるとそうでも無いかもと思い込んぢゃうのかな…ここの生徒も先生たちも。

「「はぁ・・・帰りたい」」

俺と妹華の叶わぬ願いの言葉が重なる。こういう所は兄妹だなとしみじみ思う。然し、今更とやかく言ってもどうしようもない。ここに来た時点で帰るという選択肢は無くなっている。今あるのは『敗北』と『降参』のどちらかの選択肢のみ。俺的にはすぐさま降参したいところなんだが、タッグマッチともなるとペアが同意しなければ無効になってしまう。最悪な事に俺のペアは陽汰先輩である為、降参の選択肢は元から排除されているに決まっている。結局、俺に残された選択肢は『勝利』と『敗北』のどちらか。正直、怪我する前に安全に敗北したい。まぁ、無理だと思うが。

「さて、そろそろ開会式だ。行こうか」

陽汰先輩が舞台の袖から、俺達に声をかける。どうやら対抗戦の前に出場メンバーの発表がもうそろ始まるらしい。俺達が席を立つとそのタイミングで、舞台から司会者の声が響き始める。

「今日は待ちに待った一年に一度の対抗戦!!今年も生徒会チームと風紀委員会チームが互いの全てをかけて火花を散らす!!では、先ずは生徒会チームの紹介です!!」

それを合図に壁に貼り付けられたモニターに生徒会のメンバーが映し出されていく。

「先鋒! 生徒会会計・青柳シェロぉぉおお!!そして、彼女のパートナーはなんと!妹絶対主義お兄様!青柳ユウぅぅうううう!!」

どうやら先鋒から大将へという順番で舞台に出ていくらしい。

「よし、行くか。シェロ」

「・・・足だけは引っ張らないでくださいね」

ユウ先輩がシェロさんを肩に座らせて舞台へと緊張もなく堂々と出ていく。歓声が湧き、その後も次々とメンバー紹介が行われ、大将の番が来た。

「お待たせしまた!最後は我らが生徒会長!!誰よりも正義感が強く生徒だけでなく教師からも熱い信頼を寄せられし男!!聖桐陽汰ぁぁあ!!」

そう紹介が終えると先程まで以上の歓声が響き渡る。本当に陽汰先輩は大人気らしい。そんな人の後に俺の紹介とか辛すぎる。

「彼のパートナーは、先程紹介した久慈宮妹華さんのお兄さんであり、華薇先生の下僕で有名な二年生!!久慈宮兄太ぁぁあ!!」

・・・・?? 華薇先生の下僕?俺ってそんな風に思われてたのか…。

「みんな、今日は応援よろしく頼むよ」

「・・・・」

陽汰先輩は舞台に出て、司会者からマイクを受け取ったあと、そう声掛けをする。既に生徒達の大半が生徒会チームに寄っていることだろう。

「それでは、次は風紀委員会チームの紹介を始めます!先鋒!! 全男子の心をへし折ってきた氷結女王こと雪柳結七ゆきやなぎゆいなぁぁあ!!」

その紹介と共に現れたのは、俺の中学時代の後輩だ。枝毛ひとつない美しい白髪と凛とした表情は、慈愛園の男子共の心を撃ち抜くには十分だろう。

「そして次はパートナー・・・・」

次々と風紀委員メンバーが紹介されていく中で、副将で魔宙先輩の名前があがった。それに関しては俺以外にも生徒会メンバーや観客も驚いていた。風紀委員長なら大将戦に出ると思っていた。然し、順番を決めるルールに、大将は必ず生徒会長と風紀委員長のみとは記載されていなかった。という事は、アイツが大将戦に出るというわけだ。

「まさかまさかの風紀委員長が副将との事で驚きですが、気になる大将はコイツだぁぁあああ!!風紀委員会の番犬!天風狗兎ぅぅううう!!」

その紹介と共に、天風が姿を現し、舞台に既に立っていた俺に敵意のこもった視線を向けてくる。勿論、目を合わせることはしない。こんなめんどい奴の相手をするほど俺も暇ではない。というか単純に関わりたくないだけだったりする。

「ふんっ。僕の事を無視するとは相変わらず君は舐めているようだね、久慈宮兄太」

司会者からマイクを奪い取り、そう声をかけてくる。まさかマイクを使用しての発言とは、観客から変に注目されてしまうじゃないか。予想通り観客がざわめき始める。

「はははっ!随分と躾のなってない番犬だね。でも、兄太君には役不足だと思うよ、淫魔風紀委員長」

「あら、そちらこそウチの番犬を舐めてると痛い目を見るわよ、ガリ勉君」

バチバチと陽汰先輩と魔宙先輩が火花を散らす。正直、俺を巻き込まないで欲しいし、役不足なのはこっちだと思うんですが。

「ふんっ。大将戦を楽しみにしているんだな、久慈宮兄太」

「・・・帰りたい」

弱音を吐く俺にそう言葉を吐き捨てて、天風がマイクを司会者に返す。

「とても盛り上がっていますが、まずは先鋒戦!! 出場選手以外は舞台裏での待機をお願いします!」

司会者の進行で、舞台には先鋒戦に出場するメンバーだけが残る。

「では先鋒戦!生徒会チームからは青柳兄妹!!そして風紀委員会チームからは雪柳姉妹!! そして気になる最初の種目は--」

巨大なモニターにルーレットが映し出され、数回まわった後に、針がとある部分で止まる。

「第一種目!!互いの嘘を見抜け!その名も【ブラフゲーム】!!」

司会者が種目名をそう声高らかに告げた。

「ブラフゲーム・・・余裕ですね」

「俺たち、青柳兄妹に負けはねえ!」

余裕満々な青柳兄妹と、

「足を引っ張らないでね、八宵やよい

「 そっちこそ足引っ張んなよ、クソ姉貴」

仲の悪そうな雪柳結七と雪柳八宵。

「それでは第一種目【ブラフゲーム】開幕です!!」

司会者の合図により、対抗戦が始まった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移したところで

緑窓六角祭
ファンタジー
普通の男子高校生である篠崎陽平はどうやらクラスごと異世界に転移したらしいのだが、よくわからないので、友人の栗木と佐原と3人で手探りで地味にやってくことにした。 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません ※カクヨム・アルファポリス重複投稿

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

処理中です...