ボクらは魔界闘暴者!

幾橋テツミ

文字の大きさ
上 下
19 / 60
第ニ章【パーフェクト・アイドル】の香り

戦友Nからの伝言

しおりを挟む
 いきなり、尻ポケットのスマホが鳴った。

 こと聴力に関する限り、遥かに人間を凌駕するハンゾウが素早く振り返って、凄まじい殺気を込めた視線を突き刺してくる。

「オイ、ちょっと待てよ!」

 左手で小型絆獣を制しつつ画面を見ると、そこには

 “那崎恭作”

 の文字があった。

「はい、もしもし?」

 と応えながら部屋を出た黎輔だが、何故か相手からの返事がない…。

 沈黙は二十秒は続いただろうか、その間、彼の脳裡はある不吉な予感に占められていた。

 そしてそれが正しかったことは恭作自身によって証明された。

「……!」

『やはりそうか…』

 来るべきものが来た…というより明日は我が身、というのが黎輔の正直な感想だったが、ここで彼に離脱されるということは、中国支部にとって大打撃以外の何ものでもない…。

「そうですか…。

 ここで恭くんに抜けられるのは本当に痛いけど…〈召喚および〉が掛かった以上は仕方ないよね…。

 ──あ、そうなると妹さんも一緒に…?」

 現在二十歳の彼には五歳下の妹・弓葉がおり、彼女もまた聖団員として現在県北某所の秘密施設に週末返上で通いつめ、実戦経験を有する二人の元操獣師に師事して厳しい模擬操獣訓練に励んでいる。

 …ここでようやく相手の声に生気が戻った感があった。

「ああ…そうなる。

 尤も、出発は同時じゃないけどな…。

 どうやら弓葉あいつ、結構期待されてるみたいで絶対に特級操獣師ドゥルガーが務まるっていう確証が得られるまでみっちり仕込んでから送り出すって方針らしいんたよね…。

 まあ、予定では三ヶ月後ってことみたいだ…」

「そうか…いろいろ寂しくなるな…」

 “中国支部の放送局スピーカー”こと剛駕嶽仁からの情報によればこの弓葉嬢は“伝説のマドンナ”こと萩邑りさらの再来ともいうべき超絶的美少女であり、密かに彼女との邂逅を待ちわびている黎輔にとっては危機感を煽られる痛恨のバッドニュースであった。

「じゃあで送別会やろうよ、オレたち若い者だけでさ!

 ──明日は応援に来てくれるんだろ?

 闘了後でもいいからさッ!!」

「ああ、そうだな…さっき星さんにも誘われたし…。

 あっ、そういや光城家むこうが[BB]を申し込んで来たんだって?」

「…情報が早いな…。

 そうなんだよ…尤も申し入れてきた玄矢トップの言葉尻からは奴らの意向というより総大将シャザラの厳命っていうニュアンスだったけどな…」

「……」

「…まあそれはさておき、光城玄矢って野郎の声を聴いたのはオレも初めてだったけど、めっちゃ手強そうな印象受けたな…。

 ぶっちゃけ、嶽さんじゃ厳しいと思う…。

 やっぱここは“最強”の宗 星愁先輩の出番だと思ったわ、今さら遅えけど…」

「…まあ、ここまで来た以上、あとは天命に委ねるしかないだろう…。

 そっちはそっちでNo.2の次男坊と妖仙獣をまとめて相手にするんだろ?

 …めっちゃ大変じゃん、もし自分だったらと思うとゾッとするぜ…」

「…まあ、何とか20分保たせりゃいいんだからな…そんなに心配はしてないっていうか、悪い展開は考えないようにしてる」

「ああ、そこが覇闘のいいとこだよな。

 何とか眼の前の敵だけ何とかすりゃあ、地上に戻っていつもの日常空間に復帰できる…。

 その点、片道切符だけ握らされて異世界むこうにブッ飛ばされる身の何と悲惨で心細いことよ…!」

 尤もな慨嘆に掛ける言葉もない黎輔だが、やはりここでもいずれ自分も…との思いからか心底から同情する気にもなれない…。

「うちら日本人が所属する軍団チームは何ってったけな…たしか星拳…」

「【星拳鬼會】だ。

 手強き敵勢力に拳星會館ってのがあるんだからややこしい話だよな…。

 尤もそれも当然というべきか、“後見役”の玉朧拳師って方は拳星そこからっていうんだからさ…」

 恭作の言葉に黎輔も強く相槌を打つ。

「あっ、それはオレも聞いた!

 でも事実だとしたら、あまりいい趣味とは思えんなあ…余りにも未練タラタラじゃないの…。

 ホントはオマエ、空手の大組織にふんぞり返ってドヤ顔したかったんとちゃうか?ってな…」

「…でも、創始者の紫羽家が妖術鬼シャザラに見込まれたのはっていうことだ…。

 ということは、紫羽氏というのは絆獣聖団からも妖帝星軍からも自陣に取り込みたいと思われるほどに戦士として傑出した血族ということだろう…。

 それに、オレが調べたところでは玉朧拳師が家伝の空手道に背を向けたのは、どうやらご自身の中国拳法志向の強さが主因らしいぜ…」

「へえ、そうなのか…。

 さすがに詳しいな、我が支部随一の格闘技マニアだけのことはある…。

 まあ、の嶽さんと違って“真の事情通”の星さんも同意してくれたけど、とことんロクな年寄がいない絆獣聖団にあって玉朧拳師あのヒトだけは例外らしいって常々言ってるから、マジメな恭くんとはきっとウマが合うと思うよ…!」

 



 







 



 

 



 




 






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※毎週、月、水、金曜日更新 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。 ※追放要素、ざまあ要素は第二章からです。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...