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終章 大動乱の果てに待つもの
黒き狂拳士の逆襲(前編)
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新たな戦略を固めた闘盟軍総帥が獣戦機軍総司令官のカディルフを呼び出そうと楕円形の〈指令用端末〉を取り出したその瞬間を見計らったかのように、室内にけたたましいサイレンが鳴り響いた!
「何だ?一体何が起こったのだッ!?」
血相を変えたザナルク=シェザードが怒鳴るや否や、当主の音声(命令)のみに反応する、邸内の全てを管理する人工頭脳【アヴィラ】が天井中央部のスピーカーから即座に返答した。
“帝界聖衛軍ノ重機動兵団ガ多数接近中デス。
目下確認サレテイルノハ、人型機兵【オルソン】十六体トソノ後方ニ星型爆撃機【ジャルドー】九機…機兵は四体ズツ、爆撃機ハ三機ズツ編隊ヲ組ミ、既ニセクルワ半島ノ〈中央線〉ヲ突破シタ模様…”
「な、何だとッ!?
闘盟軍の《セクルワ防衛網》の自動迎撃システムは一体何をしているッ、よりによってこの非常事態に突然故障してしまったとでもいうのかッ⁉」
一瞬の空白を措いて応答が再開されたが、呆然たる三人の魔強士族の鼓膜に届けられたのは老人と若者の声色を無理やり合成したかのような、ある意味人工頭脳の機械音声よりも人工的な奇怪なる〈声〉であった。
“ふはははははッ!
ここで優秀なるアヴィラ氏にはしばしの間退席してもらい、不肖ながらこのわたくしが司会を務めさせて頂くことにする…!
闘盟軍総帥ザナルク=シェザードよ、たかだか半島の中央線を侵された程度で随分動揺しているではないかッ⁉
となると、盤石と盲信していた防衛網を軽々と突破された現在、もはや生きた心地もしてはおらぬのではないかッ!?
ふっふふふふッ、されど真の恐怖はこれからだぞ…!
キサマと魔強士族を《第二次暗黒時代》…いや、今度という今度こそは根絶やしに追い込むまではこの“崩壊の連鎖”は止まることはないのだからな…!!”
「──キサマは誰だッ!?
声を聞く限りレゼックではないのは明らかだが、それならあの名を挙げるのも汚らわしい裏切り者の老いぼれ念術師かッ!?」
紫の魔少年の鬼気迫る絶叫が安癒室の白い壁を震わせ、たっぷり数秒間の沈黙を経た後、スピーカーの向こうに潜む何者かが徐ろに名乗りを上げた。
“…ヌーロスのことを言っておるのならお門違いだぞ──何故ならば彼は…いや、ヤツは、かねてより老いさらばえた自分の躰を捨ててこのオレの肉体を乗っ取ろうと企んでやがってな…。
もちろんそんな邪悪なもくろみを許せる訳がねえ──そこで互いの存亡を賭けた死物狂いの〈精神戦争〉が展開された結果、天罰覿面、逆にオレ様に長年蓄積してきた全ての念術能力を奪取されたって訳だ…!
当然ながら、魂魄の喪失した因業ジジイの肉体はとっくに朽ち果てている…。
そして今やペトゥルナワス最強の念術師…否、戦士となったこの黒瀧晶悟はまずレゼックを完全に支配下に置いて聖衛軍の指揮権を握った後、密かに敬愛してきた銀魔星首領・ゼモンこと四元蓮士郎先輩に魔強士族殲滅という共通利益のための講和協議を申し入れ、みごとに成立させたのだ!
なお、キサマらが蓮馬を捕獲したことを先輩はとっくに把握しているものの、既にその存在は彼の意識から完全に消去されていることを付言しておく──!!」
「──黒瀧!?
リドごときに手も足も出なかったあのヘタレがヌーロスを屠り、その全存在を掠奪しただとッ!?
全く信じられん…されどあの口ぶりからはどうやら真実であると認めざるを得んようだ…しかも、聖衛軍を乗っ取り、銀魔星と同盟を結んだというのかッ…!?
だ、だがどうしても分からんのはあのアリの子一匹通さぬはずの防衛網が何故、巨大な飛行兵器群の侵入を許してしまったのかということ…!!」
“グワッハハハハハッッ!!!”
先程の哄笑とはレベルの違う、魔笑ともいうべき、音量・悪意が桁違いの凄まじい笑声を浴びせられて三者は思わず耳を塞いだが、征服者は構わずこの超常現象の裏側を暴露した。
”クッククク…おい小僧、我ら星渕特抜生の底力を甘く見るなよな…!
今回、テメエら腐れ魔強士族どもを誅戮するために送り込んだ《鋼の斬込隊》にゃあな、オレや四元先輩は無論のこと、新たに銀魔星に加わった後輩三名や、現在、一時的に囚われの身になってる十一人の遠征隊…そして何よりもキサマらが主導したド汚え策謀で若い命を荒涼たる地獄砂漠に散らせてしまった我が生涯の好敵手・八重樫龍貴先輩の怨霊が放射してのけた《超凶念波》がたっぷりとコーティングされてるんだよッ!!
つまり、この“ハイバーステルスパワー”によって忍者(知ってるか?)そこのけの潜入のエキスパートになった連中がチャチないわゆるレーダー網を突破するなんざあ訳のねえこったが──もちろん付与された能力はそれだけじゃねえ…!
さあこれから、我ら特抜生──いや、地上人の恐ろしさを骨の髄まで叩き込んでやるぜえッ!!
──ええ?覚悟はできてんのかよッ!?
何の根拠もない自己マンで〈最強〉を名乗りくさってきた、滑稽極まる井の中の蛙の異世界野郎どもッッ!!!」
「何だ?一体何が起こったのだッ!?」
血相を変えたザナルク=シェザードが怒鳴るや否や、当主の音声(命令)のみに反応する、邸内の全てを管理する人工頭脳【アヴィラ】が天井中央部のスピーカーから即座に返答した。
“帝界聖衛軍ノ重機動兵団ガ多数接近中デス。
目下確認サレテイルノハ、人型機兵【オルソン】十六体トソノ後方ニ星型爆撃機【ジャルドー】九機…機兵は四体ズツ、爆撃機ハ三機ズツ編隊ヲ組ミ、既ニセクルワ半島ノ〈中央線〉ヲ突破シタ模様…”
「な、何だとッ!?
闘盟軍の《セクルワ防衛網》の自動迎撃システムは一体何をしているッ、よりによってこの非常事態に突然故障してしまったとでもいうのかッ⁉」
一瞬の空白を措いて応答が再開されたが、呆然たる三人の魔強士族の鼓膜に届けられたのは老人と若者の声色を無理やり合成したかのような、ある意味人工頭脳の機械音声よりも人工的な奇怪なる〈声〉であった。
“ふはははははッ!
ここで優秀なるアヴィラ氏にはしばしの間退席してもらい、不肖ながらこのわたくしが司会を務めさせて頂くことにする…!
闘盟軍総帥ザナルク=シェザードよ、たかだか半島の中央線を侵された程度で随分動揺しているではないかッ⁉
となると、盤石と盲信していた防衛網を軽々と突破された現在、もはや生きた心地もしてはおらぬのではないかッ!?
ふっふふふふッ、されど真の恐怖はこれからだぞ…!
キサマと魔強士族を《第二次暗黒時代》…いや、今度という今度こそは根絶やしに追い込むまではこの“崩壊の連鎖”は止まることはないのだからな…!!”
「──キサマは誰だッ!?
声を聞く限りレゼックではないのは明らかだが、それならあの名を挙げるのも汚らわしい裏切り者の老いぼれ念術師かッ!?」
紫の魔少年の鬼気迫る絶叫が安癒室の白い壁を震わせ、たっぷり数秒間の沈黙を経た後、スピーカーの向こうに潜む何者かが徐ろに名乗りを上げた。
“…ヌーロスのことを言っておるのならお門違いだぞ──何故ならば彼は…いや、ヤツは、かねてより老いさらばえた自分の躰を捨ててこのオレの肉体を乗っ取ろうと企んでやがってな…。
もちろんそんな邪悪なもくろみを許せる訳がねえ──そこで互いの存亡を賭けた死物狂いの〈精神戦争〉が展開された結果、天罰覿面、逆にオレ様に長年蓄積してきた全ての念術能力を奪取されたって訳だ…!
当然ながら、魂魄の喪失した因業ジジイの肉体はとっくに朽ち果てている…。
そして今やペトゥルナワス最強の念術師…否、戦士となったこの黒瀧晶悟はまずレゼックを完全に支配下に置いて聖衛軍の指揮権を握った後、密かに敬愛してきた銀魔星首領・ゼモンこと四元蓮士郎先輩に魔強士族殲滅という共通利益のための講和協議を申し入れ、みごとに成立させたのだ!
なお、キサマらが蓮馬を捕獲したことを先輩はとっくに把握しているものの、既にその存在は彼の意識から完全に消去されていることを付言しておく──!!」
「──黒瀧!?
リドごときに手も足も出なかったあのヘタレがヌーロスを屠り、その全存在を掠奪しただとッ!?
全く信じられん…されどあの口ぶりからはどうやら真実であると認めざるを得んようだ…しかも、聖衛軍を乗っ取り、銀魔星と同盟を結んだというのかッ…!?
だ、だがどうしても分からんのはあのアリの子一匹通さぬはずの防衛網が何故、巨大な飛行兵器群の侵入を許してしまったのかということ…!!」
“グワッハハハハハッッ!!!”
先程の哄笑とはレベルの違う、魔笑ともいうべき、音量・悪意が桁違いの凄まじい笑声を浴びせられて三者は思わず耳を塞いだが、征服者は構わずこの超常現象の裏側を暴露した。
”クッククク…おい小僧、我ら星渕特抜生の底力を甘く見るなよな…!
今回、テメエら腐れ魔強士族どもを誅戮するために送り込んだ《鋼の斬込隊》にゃあな、オレや四元先輩は無論のこと、新たに銀魔星に加わった後輩三名や、現在、一時的に囚われの身になってる十一人の遠征隊…そして何よりもキサマらが主導したド汚え策謀で若い命を荒涼たる地獄砂漠に散らせてしまった我が生涯の好敵手・八重樫龍貴先輩の怨霊が放射してのけた《超凶念波》がたっぷりとコーティングされてるんだよッ!!
つまり、この“ハイバーステルスパワー”によって忍者(知ってるか?)そこのけの潜入のエキスパートになった連中がチャチないわゆるレーダー網を突破するなんざあ訳のねえこったが──もちろん付与された能力はそれだけじゃねえ…!
さあこれから、我ら特抜生──いや、地上人の恐ろしさを骨の髄まで叩き込んでやるぜえッ!!
──ええ?覚悟はできてんのかよッ!?
何の根拠もない自己マンで〈最強〉を名乗りくさってきた、滑稽極まる井の中の蛙の異世界野郎どもッッ!!!」
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