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第三章 星渕特抜生VS魔強士族!
死神への弔鐘よ、地獄砂漠に響け①
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「暗殺計画だと?──それがどうしたというのだ?
そもそも、闘盟軍と銀魔星は戦争状態にあるのだから、闇市を訪れた私を狙ってこの地に巣食うゼモンの傀儡どもが動き出さぬ方が不自然というものだろうが…!」
明らかに期待していた反応とは真逆の静かな怒りの表明に、優男ナグマの白い顔は血の気を失ってさらなる蒼白となり、その痩身は瘧に罹ったかのように震えはじめた!
「わ…わたくしは…そ、そんなつもりでは…」
わななく両手を翳して失言?の赦しを乞う妖衣屋を金色の魔将が一瞥した瞬間、彼は自らの意思に反して平伏させられ、顔面は両先輩と同じく黒土の地面に擦り付けられていた!
「たとえ生き馬の目を抜く商売上の仇敵とはいえ、自らの手は汚すことなく第三者によって排除させようとのゲスな魂胆は気に入らんな…。
まあ、これがキサマら砂漠の獣民商人にとって何らかの教訓となるかは不明だが、行住坐臥の全てを闘争と心得る我が一族の信条の一つを明かしておこう──それはな、
“戦わずして他者の死を望む者は、既に自ら冥府の門を潜っている”
というものだ…!」
「……」
立ち竦む者たちは呼吸音さえ憚り、地を這う三人は瀕死の獣のごとき断続的な唸り声によって残り六名の〈楽観派〉の心情を早々に鞍替えさせていた…。
「どうやら分かってきたようだな、魔強士族…別けてもこのシェザード一族相手に安直な夢など見るべきではないということを…!
さて、それでは地下室に集約しているという我が購入品を中庭に荷揚げしてもらおうか…。
──何より、黄金巨鳥に乗り込んでいる我が妻も、コレクションに加える新たな品々を一刻も早く目にしたいと胸をときめかせているのでな…!」
「ははッ、かしこまりましたッ!!」
〈楽観派〉No.3であり、本音では目の上のたんこぶであったバロフとナグマの脱落によって“我が世の春の到来”を小賢しくキャッチして小躍りせんばかりの【史書屋】のロスコが、腕に巻いた素朴な造りながらも強力な短波通信機を口元に寄せて指令を発する。
「うむ、チストーか?ご苦労。
早速だが、お客様が無事ご到着され、注文の品々の速やかなお引渡しをご所望されておられる…そうだ、直ちにだ。
よし…頼んだぞ、くれぐれも迅速且つ懇切丁寧な作業をな…」
──この間、空中では動きが生じていた。
空輸機は降下を再開し、黄金巨鳥は僅かに前進して三階建ての料理屋の真上に移動したのだ。
「……!?」
色めき立つ闇商人たちを嘲笑うかのように金色の魔将は愉快そうな声音で宣った。
「ふふふ、黄金の巨鳥め、屋上に何かを見つけたようだな。
尤も私自身はとっくに気付いていたが…着地と同時に、中央の階段口から旧式魔強具に身を固めたチンピラが十人ばかり這い出してきたことをッ!
──よいか、ベラゼッド!
むろん心得ておろうが、一切の手出しは無用だぞッ!!」
この叫びが聴こえたものか、屋上の鉄柵にズラリと並んだヤベン一家の決死隊──全員がミゲーラ払下げの可動性重視の軽量装甲服を装着し、ルツォムから調達した呪面を被っている(むろん呪面も装甲服も意匠はまちまち)──が、利き腕の上腕部に四十センチほどの長さの不気味に黒光りする鋼の筒を嵌め込んでその開口部(銃口)を地上に向けており、真ん中に立つ何故か彼のみ蓬髪隻眼の素顔を晒した中年男の「撃てッ!!」という号令で一斉に発砲したのだ!
「ふうむ、【弑破玄獣砲】か…。
何とも古めかしい歴史の遺物を持ち出してきたものだが、なるほど、《旧式魔強具総払祭》にて使用するにはまことにふさわしい珍品というべきかな──尤も私にとっては祭りを彩る花火以上の意味合いは持たぬがッ!」
この言葉を発すると同時に、金色の魔強士は呪面がもたらす超人的射撃技術によって彼に集中する火線を巧みに躱しつつ、逃げ惑う闇商人たちの間を流れるように移動して無情にも彼らを魔銃の標的とするのであった。
「ぎぎゃッ!!」
「えげえッ!!」
「ぐぶほッ!!」
もとより命を捨てる覚悟で本任務に臨み、しかも霊薬屋から仕入れた戦闘用麻薬を投与されて恐怖心を消失させられ、さらに呪面装着者を襲う不可避の作用によって半ば夢幻状態にある狙撃者たちが馴染みの顔(されどほとんどが闇市における敵対者!)を確認したくらいで銃火を収めるはずもなく、哀れ砂漠の商人たちはスダイ=シェザードの身代わりとなってある者は頭を吹っ飛ばされ、またある者は五体を引き裂かれて僅か一分ほどの間に大地に釘付けにされていた三人も含め、ことごとく絶命したのであったが…。
たった二人だけ、死神の魔手を逃れし者たちがいた──予め八重樫龍貴実行隊長から“襲撃第一陣”の手筈を知らされていた〈悲観派〉両人である。
常に屋上に意識を集中させていた彼らは狙撃隊がぬっと鉄柵を乗り出した時には既に建物の壁に沿って全速力で駆け出しており、そのまま裏手の地下災害避難用階段に飛び込む算段であったのだが、直径一メートルほどの円型鉄蓋を力を合わせてずらし終えたまさにその時、頭上から金色の凶影が覆い被さるのを察知して凍り付いた!
その正体は、見上げるまでもなく明白であった。
「──やはりキサマら獣民どもに、我らが魔強士族の高貴な信条など聞かせても無意味であったか…。
言ったはずだぞ、
“戦わずして他者の死を望む者は、既に自ら冥府の門を潜っている”
とな…!」
されどミゲーラとジーギーがこの再度の〈金言〉を耳にすることはなかった。
スダイ=シェザードの存在を覚知した次の刹那には、同時に繰り出された左右の手刀が彼らの頭蓋を頸部に達するほど截ち割っていたからである!
そもそも、闘盟軍と銀魔星は戦争状態にあるのだから、闇市を訪れた私を狙ってこの地に巣食うゼモンの傀儡どもが動き出さぬ方が不自然というものだろうが…!」
明らかに期待していた反応とは真逆の静かな怒りの表明に、優男ナグマの白い顔は血の気を失ってさらなる蒼白となり、その痩身は瘧に罹ったかのように震えはじめた!
「わ…わたくしは…そ、そんなつもりでは…」
わななく両手を翳して失言?の赦しを乞う妖衣屋を金色の魔将が一瞥した瞬間、彼は自らの意思に反して平伏させられ、顔面は両先輩と同じく黒土の地面に擦り付けられていた!
「たとえ生き馬の目を抜く商売上の仇敵とはいえ、自らの手は汚すことなく第三者によって排除させようとのゲスな魂胆は気に入らんな…。
まあ、これがキサマら砂漠の獣民商人にとって何らかの教訓となるかは不明だが、行住坐臥の全てを闘争と心得る我が一族の信条の一つを明かしておこう──それはな、
“戦わずして他者の死を望む者は、既に自ら冥府の門を潜っている”
というものだ…!」
「……」
立ち竦む者たちは呼吸音さえ憚り、地を這う三人は瀕死の獣のごとき断続的な唸り声によって残り六名の〈楽観派〉の心情を早々に鞍替えさせていた…。
「どうやら分かってきたようだな、魔強士族…別けてもこのシェザード一族相手に安直な夢など見るべきではないということを…!
さて、それでは地下室に集約しているという我が購入品を中庭に荷揚げしてもらおうか…。
──何より、黄金巨鳥に乗り込んでいる我が妻も、コレクションに加える新たな品々を一刻も早く目にしたいと胸をときめかせているのでな…!」
「ははッ、かしこまりましたッ!!」
〈楽観派〉No.3であり、本音では目の上のたんこぶであったバロフとナグマの脱落によって“我が世の春の到来”を小賢しくキャッチして小躍りせんばかりの【史書屋】のロスコが、腕に巻いた素朴な造りながらも強力な短波通信機を口元に寄せて指令を発する。
「うむ、チストーか?ご苦労。
早速だが、お客様が無事ご到着され、注文の品々の速やかなお引渡しをご所望されておられる…そうだ、直ちにだ。
よし…頼んだぞ、くれぐれも迅速且つ懇切丁寧な作業をな…」
──この間、空中では動きが生じていた。
空輸機は降下を再開し、黄金巨鳥は僅かに前進して三階建ての料理屋の真上に移動したのだ。
「……!?」
色めき立つ闇商人たちを嘲笑うかのように金色の魔将は愉快そうな声音で宣った。
「ふふふ、黄金の巨鳥め、屋上に何かを見つけたようだな。
尤も私自身はとっくに気付いていたが…着地と同時に、中央の階段口から旧式魔強具に身を固めたチンピラが十人ばかり這い出してきたことをッ!
──よいか、ベラゼッド!
むろん心得ておろうが、一切の手出しは無用だぞッ!!」
この叫びが聴こえたものか、屋上の鉄柵にズラリと並んだヤベン一家の決死隊──全員がミゲーラ払下げの可動性重視の軽量装甲服を装着し、ルツォムから調達した呪面を被っている(むろん呪面も装甲服も意匠はまちまち)──が、利き腕の上腕部に四十センチほどの長さの不気味に黒光りする鋼の筒を嵌め込んでその開口部(銃口)を地上に向けており、真ん中に立つ何故か彼のみ蓬髪隻眼の素顔を晒した中年男の「撃てッ!!」という号令で一斉に発砲したのだ!
「ふうむ、【弑破玄獣砲】か…。
何とも古めかしい歴史の遺物を持ち出してきたものだが、なるほど、《旧式魔強具総払祭》にて使用するにはまことにふさわしい珍品というべきかな──尤も私にとっては祭りを彩る花火以上の意味合いは持たぬがッ!」
この言葉を発すると同時に、金色の魔強士は呪面がもたらす超人的射撃技術によって彼に集中する火線を巧みに躱しつつ、逃げ惑う闇商人たちの間を流れるように移動して無情にも彼らを魔銃の標的とするのであった。
「ぎぎゃッ!!」
「えげえッ!!」
「ぐぶほッ!!」
もとより命を捨てる覚悟で本任務に臨み、しかも霊薬屋から仕入れた戦闘用麻薬を投与されて恐怖心を消失させられ、さらに呪面装着者を襲う不可避の作用によって半ば夢幻状態にある狙撃者たちが馴染みの顔(されどほとんどが闇市における敵対者!)を確認したくらいで銃火を収めるはずもなく、哀れ砂漠の商人たちはスダイ=シェザードの身代わりとなってある者は頭を吹っ飛ばされ、またある者は五体を引き裂かれて僅か一分ほどの間に大地に釘付けにされていた三人も含め、ことごとく絶命したのであったが…。
たった二人だけ、死神の魔手を逃れし者たちがいた──予め八重樫龍貴実行隊長から“襲撃第一陣”の手筈を知らされていた〈悲観派〉両人である。
常に屋上に意識を集中させていた彼らは狙撃隊がぬっと鉄柵を乗り出した時には既に建物の壁に沿って全速力で駆け出しており、そのまま裏手の地下災害避難用階段に飛び込む算段であったのだが、直径一メートルほどの円型鉄蓋を力を合わせてずらし終えたまさにその時、頭上から金色の凶影が覆い被さるのを察知して凍り付いた!
その正体は、見上げるまでもなく明白であった。
「──やはりキサマら獣民どもに、我らが魔強士族の高貴な信条など聞かせても無意味であったか…。
言ったはずだぞ、
“戦わずして他者の死を望む者は、既に自ら冥府の門を潜っている”
とな…!」
されどミゲーラとジーギーがこの再度の〈金言〉を耳にすることはなかった。
スダイ=シェザードの存在を覚知した次の刹那には、同時に繰り出された左右の手刀が彼らの頭蓋を頸部に達するほど截ち割っていたからである!
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