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第三章 星渕特抜生VS魔強士族!

金色の魔将、地獄砂漠に降臨す!(前編)

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 魔強具闇市にとって運命の日ともいえる《第二十七回旧式魔強具総払祭》がついに開幕したが、前日までの狂騒的ともいえる賑わいがウソのように現場は閑散としていた。

 もちろん、原因は魔強士族の雄・スダイ=シェザードの訪問がもたらす“荒事への予感”が危険察知能力に秀でた行商人たちに忌避されたためである。

 尤も、厳格な〈市場の掟〉によって《総払祭》開催中、総数三百を超える専門店が商う各種旧式魔強具の価格は通常営業日より遥かに減額されるものの、何よりもペトゥルナワスの覇権を巡って【シェザード闘盟軍】と血みどろの抗争を展開中の銀魔星末端組織が次期当主スダイへ無謀な襲撃を計画しているという風聞が決定打となって、ほとんどの商談は昨日までに成約完了してしまっていたのだ。

 従って、期待に胸を膨らませてこの日を迎えられたのは、意外にも?“砂漠の魔強具ガラクタ”に興味を示した賓客の求めに応じて市場から提出された、膨大な品数をまとめた在庫リストにチェックを入れられたアイテムのオーナーのみであった。

 およそ四十年の歴史を有する当マーケットにあって、開市とほぼ同時に創業した老舗は広大な敷地の中心部に密集し、ほぼ例外なく風格ある石造りの店舗を構えていたが、彼らとて決して王国に認可されたであるとは限らず、一説によるとその半数が盗賊上がりと見做されているありさま。

 あまつさえ、闇市を形成する奇々怪々なショップの全てが盛業なはずはなく、色とりどりの天幕造りの店を出せるのはマシな方で、ほとんど屋台のように小さな〈移動式店舗〉こそが実に七割以上を占めていたのてあった。

 しかしさすがの審美眼というべきか、スダイ=シェザードが購入候補に選んだのは全て老舗店の秘蔵品のみであったのである。

 かくて選ばれし者の晴れがましい優越心と大規模開発に伴う市場閉鎖への危機感が相半ばする複雑な心境の彼らたちと、市場を仕切る砂漠商会の顔役らが寄合所でもある市場最大の料理店の中庭に集合してゲストの登場を今か今かと待ちわびていたのであった。

 そして地獄砂漠一面が朱い残照に染め上げられて暫く後、夜のとばりが下りようとしたまさにその刹那を見計らったかのように、闇市上空に突如として〈黄金の巨鳥〉が出現したのだ!

「うおっ、あ、あれを見ろッ!

 ま、まさかあの化け物が彼の乗り物なのかッ!?」

 逸早く異変を察知した、鉄色の一張羅コートに身を包んだ精悍な面構えの鎧屋ミゲーラが指差す先に一斉に視線を注いだ一同は、来訪者の意図を摑みかねて呆然とするばかりであった。

「訪問は空から行う──たしかにそう予告はされていたものの、よもやあのような巨大怪物を伴って登場するとは!?

 し、しかしあれほどの巨鳥がペトゥルナワスに存在するとは寡聞にも関知せぬのだが…」

 辛子色の豪奢な布地で誂えられたマントを誇らしげにまとった、砂漠商会の長老連の中で最も若く、現在の魔強具闇市の代表者ともいえるノーガが脂ぎった禿頭を紅潮させてしきりとかぶりを振る。

「いや、あれはおそらくシェザード一族子飼いの、“万能匠”の異名を取るベグニなる天才技術者が造り上げた機械生物に違いあるまい…もちろんあれほど豪奢な仕様ではないにしろ、近々の戦況によると闘盟軍はあのような形式の戦闘機械をさかんに前線に投入しておるらしいということだ…」

 最古参の【呪面屋】であり、ノーガの盟友として〈楽観派〉の最右翼でもあるバロフ(同業のルツォムは彼に注文を独占された)が随一の事情通ぶりを誇示するが、事態は既に次なる段階フェーズに移行していた。

「むうっ、怪鳥が金色の球体を吐き出したぞッ!

 だ、大丈夫なのかッ!?

 も、もしあれが爆弾だとしたら我々は一巻の終わりだッ!!」

 〈悲観派〉としてはミゲーラとただ二人だけこの場にばれた魔刃屋のジーギーが及び腰で絶叫するが、ここぞとばかりにバロフがを一喝した。

「バカめ、慌てるなッ!

 あれこそが魔強士族れんちゅうの飛行スタイルなのだッ!

 されどさすがであるな…当然の備えとはいえ、悲観派キサマらと昵懇のヤペン一家による暗殺計画をしっかりと織り込み、魔強具装着で乗り込んでくるとはッ…!!」



 

 




 
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