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第三章 星渕特抜生VS魔強士族!

真紅の死神、砂漠の妖艶夢(後編)

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 結局、生誕祭が終了するまで八重樫龍貴がリオーヌ=オーマと言葉を交わす機会はただの一度もなかったが、その夜、かつてないほどの孤独感に打ちのめされた彼は憑かれたかのように自慰を繰り返した。

 されど、異世界にてついに見出したこの〈希望の花〉を我が物とするために克服せねばならぬ難行苦行に想いを馳せる時、その胸中は決して薔薇色とは言い難く、むしろ夢半ばにて朽ち果ててしまうのではないかとの灰色の予想が渦巻いていたのである…。

『──だが、それにしても…』

 それがいかに条理に反する邪なものであれ、彼なりの大志を抱いて銀魔星の門を叩き、首領ゼモンの魁夷な姿に衝撃を受けて以来、ずっと抱き続けてきたある疑問があったのだが、今日、首領が実際に剣を振るう場面をついに目の当たりにして龍貴は一つの確信を得たのであった。

『間違いない──…!!』

 全身にまとった魔強具の和風な意匠、そして何よりもあの神技ともいえる剣捌き──それら全てを勘案しても、あの不気味な髑髏武者をのは十年前に行方不明となった“伝説の天才剣士”以外にあり得ぬはずであった!

の動機はおそらく、僭越ながらオレと同じく地上では不可能な〈絶対権力〉奪取への渇望──。

 されど彼が尊敬に値するのは、おそるべき短期間でゼモンなる架空の人格を創り上げて完璧に成りおおせ、泣く子も黙る“最強革命結社”銀魔星を乗っ取ってその絶大な力の礎をみごとに築き上げたことだ…。

 そしてとある帝界聖衛軍幹部の首という些少な手土産一つであっさりと入団を認めてくれたのも、この八重樫龍貴にかつての自分を見て取ったからに違いない…!』

 
 ──“薄紅色の聖空間”にて凄烈な肉の饗宴を繰り広げる龍貴とリオーヌであったが、事態はさらにを迎えていた。

 何と四つん這いとなった“真紅の死神”の肛門アヌスを、“碧色の妖天使”が後方から刺し貫いていたのである!

 奇怪極まることに、、龍貴のそれに劣らぬほど勃起したそれは獣の姿勢を強いられた若者に苦痛と快感が綯い交ぜとなった凄まじい絶叫を上げさせていたのであった!

「オッホホホホホッ!!

 どうやらサイズと硬度に問題は無い…それどころか些かハードさが勝っているようねッ!

 ひっひひひ…いいこと?  

 あなたの“魂の渇望”は最初からお見通しよ──即ち、この“両性具有の女神”リオーヌ=オーマに捧げられし生贄となってとことん犯され抜くということをねッ!!

 さあこれから私の渾身の突きを受けてこの世で最後の苦痛と快楽を味わい尽くし、その果てに全ての苦悩を霧散させて昇天するがいいわッッ!!!」

 かくてが開始され、八重樫龍貴は途切れることなき悲鳴を上げながら上体をのけ反らせ、痙攣する男根から無意識の内に白い樹液を夥しく迸らせていたのであった…!

 
 酒場の二階に設えられたヤペン一家構成員の居住区──その奥まった一室で目を覚ました流刑者の心を占めていたのは“漠然とした不安”であった。

 しかし、本人に言わせればそれは決して今夕に迫った暗殺計画の標的である“金色の魔将スダイ=シェザード”それ自体に対する恐怖ではない。

 そうではなく、今日までの生を通じて研鑽を重ね、当然ながら今回においても自らの運命を委ねるつもりの〈念術〉のパワーを確実に全開できるか否かを危惧していたのである…。

『…というのも忘れもせぬが、蛇息朧丸の魔力に絡め取られてからというもの、最大の副作用として我が念術の威力が著しく減殺されてしまったからだ!

 それを実感した瞬間の絶望と恐怖は未だ鮮明であるが、その穴埋めとして魔刃屋ジーギーから仕入れた剣に活路を見出そうと目論み、それなりに打ち込んだ修練の甲斐あってか“二の矢”としての自信は得たものの、生命を賭けた大一番にはやはり念術これで行くしかないとの思いは断ち難く、〈抹殺指令〉後は地獄の禁断症状に耐え抜き、幸いにもほぼ完全に技能を復活させることができたのだが…』

 寝汗を洗い流すべく、乾ききった砂漠を拠点とする組織の哀しさとして幹部ですら三日に一度と定められている貴重なシャワーの蛇口を捻りつつ、八重樫龍貴は瞑目したまま独りごちた。

「──ここがオレという人間のどうしようもない弱さというべきなのだが、最後の最後で誘惑に屈してしまったのだ…。

 だがしかし、今回の任務に伴う死の危険性リスクと未だ果たせぬリオーヌへの想いを天秤にかけたならば、やむを得ぬ決断であったともいえよう…!

 そしてそれが正解であった証拠に、今生で最後かもしれぬ目覚めにあたって、オレの胸には僅かな不安こそあれど、一抹の後悔もないと断言できる…!!」









 

 

 


 
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