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第二章  聖剣皇子、乱舞の果てに…!?

夢見ノ者IN凶夢空間(後編)

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 されど、怒りが頂点に達している聖剣皇子にはもう二度とこの相手と言葉を交わす意思はなく、凄まじい殺気を漲らせつつ金色の両刃剣を目にも止まらぬ迅さで左右に振るい、紫の魔強具ごと叩っ斬らんとする!

「おわわわわわッ!?」

 と、どこまで本気なのか判然とせぬ悲鳴を上げるバアルだが、決して後退はせず上腕部(のみならず全身を)をビッシリと覆い尽くす二センチ四方の四角錐の鋼棘及び両肘から伸び出た四十センチ強の偃月刀で巧みに刃を受け流し、双方の金属武器が激突するたびにギャジッ!ギャジッ!という剣呑な響きが両雄の鼓膜を震わす。

 ──果たして互いの誇りを懸けた武具のぶつかり合いは、どちらに軍配が上がるか?

「このペースなら、ボクは一晩中だって撃ち合えるぜッ!

 さあそっちはどうだい四元総代!?

 キミの場合は全身装甲じゃない訳だから一瞬の気の弛みが大怪我を誘発することになるよなッ!?

 ンじゃまあ、を気長に待つとしようかネッ!?」

 ──この挑発が呼び水となったか、素早く刃を反転させた蓮馬は、あたかも弓弦を引き絞るかのように剣先を引いてタメをつくると、「うりゃあああああッッ!!!」という裂帛の気合と共に紫の魔強士の喉元を貫かんと必殺の突きを繰り出す!

 されどある程度この動きを予期していたか、バアルは決してよけようとはせず〈真剣白刃取り〉の要領で両掌で聖剣を挟み込もうとするが──これは完全に裏目に出た!

 最強特抜生は紫の魔強士の両掌が刃に触れんとしたその刹那に斬凶閃刃波を放っていたのだ!

「ぬぐわああああッ!?」

 大きく拡散したことで何らのダメージも与え得なかった一発目とは異なり、完璧に凝縮した術者会心の一撃を顔面に直撃されたバアル=シェザードは今度こそ真正の苦鳴を迸らせて大きくのけ反った!

「悪魔めッ、止めだッ!!──死ねえええいッッ!!!」

 この絶好機にまたしても瞬間移動の秘技を発動したか、一瞬にして敵の頭上五メートルに舞った朱き鳥人は、愛剣を大きく振りかぶって気合一閃、憎き標的を唐竹割りにすべく急降下する!

 されど勝負の分かれ目であるまさにこの時、信じられぬ事態が聖剣皇子の〈肛門〉を襲った!

「はッ!?あッ、ああッ…!!」

 ──つい数十分前、恋人の右手中指によるを受けた人体屈指の“デリケートゾーン”…あろうことか、そこが攻撃目標とされてしまうとは!?

「うぐッ!な、何だこの感触はッ!?

 ひょっとして何らかのが!?…し、しかしいつ私の体内に…はッ、も、もしやあの時…!?」

 心当たりは二つ──一つ目は紫の魔強士との初遭遇ファーストコンタクトの際、遠距離用飛行態勢である〈光球〉と化していたバアルの体当たりをかわした瞬間。

 そして二つ目はさきほどニセ高瀬花凛にしがみつかれたおよそ十数秒間であるが…。

『そんなことはどうでもいい、とにかく今は眼下の敵を斬り捨てることに集中しろッ!!』

 ──されどアナルを完全に塞がれたのみならず、信じ難いことにことを察知してしまったとあっては、その斬撃の手元が狂うのもやむを得ず、紫の魔強士は“空中スウェーバック”で死地からの脱出に難なく成功した。

 こうして再び向き合うこととなった両者の距離はおよそ八メートル…かくなる上は自己に課した禁を破り、相手に事の次第を問い質さずにはいられなかった。

「キサマッ!私の臀部…いや体内に何を植え付けたッ!?」

 この切羽詰まった糾弾に、魔強士族の悪童はけたたましい哄笑で応じる。

「あッははははははッッ!!

 そりゃよりにもよってお尻に【蟠瞳蟲】を押し込まれたとあっちゃあ、どんなに怒髪天に達してても

 しかもボクのは便利屋リドが不幸な旋堂クンに埋め込んだの〈量産型〉とは違って、正真正銘万能匠ベグニの親爺の手に成る“兵器転用”可能な特注品だからねえ──その威力はこれからキミも味わうことになるが、モノスゴイものらしいぜ…!!」

「くッ…だ、誰がそんな穢らわしい兵器を受けるかあッッ!!」

「気持ちは十分理解できるけどねえ…、

 しかしながら蟠瞳蟲ブツはシッカリとお尻の穴に潜り込んじゃってる訳だから、どうしても一旦、四神躰極夢(だっけ?)とやらは解除して取り出す必要があるんじゃないかな…!?」

 ──ほんとうは必死に笑いを堪えているくせに、あくまでも沈痛な声音を装ってしたバアルを“必ず叩っ斬る!!”と殺意を込めて睨み据えた後、疲労困憊の四元蓮馬は最後の精神力を振り絞って現段階で可能な最大距離を定めると、母校方面目がけて瞬間移動を試みた!

 尤もこれは敵の言うとおりなるべく安全な場所において躰極夢を解除するためであったのだが、こんな最悪の状況で最高難度の離れ技をものにできるはずもなく、異物のさらなる膨張とそれに伴う異様な震動ヴァイブレーションによって、もはや進退窮まることとなってしまったのである!

「はあああああッ!こ、このままでは裂けてしまうッ!!

 ──

 わ、私は…もう…あ、ああ…気が遠くなってゆく…!!」

 かくて失神状態となって躰極夢を〈強制解除〉してしまった四元蓮馬は、辛うじて分身である黄金の聖剣のみは死守するかのように握りしめたまま重力の法則に従い、瞑目した美しい頭部を下にして黒いビキニパンツ一丁のあられもない姿で落下してゆくのであった…。



 












 
 
 
 



 


 



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