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第二章 聖剣皇子、乱舞の果てに…!?
紫の魔強士、実はポンコツ!?
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「リドの弟だと…!?
──そうか…たしかにペトゥルナワスにおいて、おまえたちは常に三兄弟と一括りにされて呼び習わされていたな…。
だがあれだけ次男のリドとはやり合ったというのに、何故か他の兄弟とは一度たりとて遭遇する機会がなかった…それがまさかこの地上において実現しようとは、実に妙な気分だ…!」
兄の宿敵が洩らした感慨にバアル=シェザードは小さく頷き、あたかもシャドーボクシングのように両拳を高速前後運動させながら宣った。
「そりゃ、ペトゥルナワスでお知り合いになる機会は乏しいでしょうよ…だってそもそもがボクとリドじゃ闘盟軍における立ち位置…いーや、〈格〉ってモンが根本的に異なってるんでねえ…!
分かり易く説明すると、基本的にアイツがやってるのは一族の〈便利屋〉に過ぎなくて、昨日は父上の命を受けてマルドス湖畔城に乗り込んで老いぼれのリゾルと一騎討ちをやらされたかと思えば、今日はスダイ兄さんに言いつけられてノコノコ地上にお邪魔して、大した脅威でもない遠征隊の諸君を根こそぎ拐っていったりさあ…まぁ要するに身内にいいようにコキ使われてるだけなんだけど、どこまでもおめでたい本人は魔強士族の代表として戦場を縦横無尽に駆け巡ってるつもりなんだからほとんど滑稽というか、いやこれぞホンマモンの道化役ってヤツだよねえ…うぷぷぷぷッ!!」
この物言いを鵜呑みにするならば眼前の末弟がリドに対して微塵も敬意を抱いていないことは明白であったが、星渕遠征隊〈総代〉として聞き捨てならぬ文言が含まれていたからにはとことん追求せねばならぬ。
「スダイ兄さん?──どうやらそれが長兄らしいが、何故に特抜生を連れ去った?
もし彼らを人質に使おうというのならムダなことだぞ…卑劣極まる悪魔どもの駒に使われるくらいなら、我ら誇り高き星渕の戦士たちは最終手段…否、現役の特権として赦され、その神秘の手法を身魂に刻み込まれた苦痛無き“無垢なる死”を選ぶ──天地神明に誓って断言するが、彼らがキサマらを利することは万に一つもないだろう…!」
されど特抜生拉致が人質としての利用目的のためであると決め付けられたのがよほど心外であったのか、紫の魔強士は右手と頭を激しく振りながら甲高い声で抗弁する。
「いーや、違うってば!!
スダイ兄さんの…じゃないやシェザード家の目的はねえ、連中を史上初の【異世界奇術団】に仕立て上げてペトゥルナワスの善良な民草のささやかな娯楽の一コマに加え、日々の勤労の活力の一助に…おわッ!?あ、アブねえッ!!」
調子に乗ってペラペラとまくし立てている間に朱き鳥人の全身から赫怒の証である紅蓮の霊光が噴き上がったと見えた次の刹那、大上段に掲げられた黄金の聖剣が「ありゃあああああッ!!八天蓮夢武法《斬凶閃刃波》ッッ!!!」という裂帛の叫びと共に振り下ろされ、その剣先から発生した金色のオーロラのごとき光焔が文字通り電光石火のスピードで標的目がけて殺到したのである!
「──ふざけるなッ!!
何よりも尊い血の絆で固く結ばれた我が同胞をよりにもよってキサマらの腐りきった娯楽の具に供するなど…この四元蓮馬の目の黒いうちは断じてそんなマネは赦さんッッ!!!」
かくて若き魔強士の眼前に迫る閃刃波は優に縦横十メートルに達する巨大な“光の十文字”となって押し寄せ、なす術もなく真正面から直撃されてしまったバアル=シェザードは「あひゃあああああッッ!!!」という情けない悲鳴を上げながら後方に大きく吹き飛ばされてしまったのであった!
──そうか…たしかにペトゥルナワスにおいて、おまえたちは常に三兄弟と一括りにされて呼び習わされていたな…。
だがあれだけ次男のリドとはやり合ったというのに、何故か他の兄弟とは一度たりとて遭遇する機会がなかった…それがまさかこの地上において実現しようとは、実に妙な気分だ…!」
兄の宿敵が洩らした感慨にバアル=シェザードは小さく頷き、あたかもシャドーボクシングのように両拳を高速前後運動させながら宣った。
「そりゃ、ペトゥルナワスでお知り合いになる機会は乏しいでしょうよ…だってそもそもがボクとリドじゃ闘盟軍における立ち位置…いーや、〈格〉ってモンが根本的に異なってるんでねえ…!
分かり易く説明すると、基本的にアイツがやってるのは一族の〈便利屋〉に過ぎなくて、昨日は父上の命を受けてマルドス湖畔城に乗り込んで老いぼれのリゾルと一騎討ちをやらされたかと思えば、今日はスダイ兄さんに言いつけられてノコノコ地上にお邪魔して、大した脅威でもない遠征隊の諸君を根こそぎ拐っていったりさあ…まぁ要するに身内にいいようにコキ使われてるだけなんだけど、どこまでもおめでたい本人は魔強士族の代表として戦場を縦横無尽に駆け巡ってるつもりなんだからほとんど滑稽というか、いやこれぞホンマモンの道化役ってヤツだよねえ…うぷぷぷぷッ!!」
この物言いを鵜呑みにするならば眼前の末弟がリドに対して微塵も敬意を抱いていないことは明白であったが、星渕遠征隊〈総代〉として聞き捨てならぬ文言が含まれていたからにはとことん追求せねばならぬ。
「スダイ兄さん?──どうやらそれが長兄らしいが、何故に特抜生を連れ去った?
もし彼らを人質に使おうというのならムダなことだぞ…卑劣極まる悪魔どもの駒に使われるくらいなら、我ら誇り高き星渕の戦士たちは最終手段…否、現役の特権として赦され、その神秘の手法を身魂に刻み込まれた苦痛無き“無垢なる死”を選ぶ──天地神明に誓って断言するが、彼らがキサマらを利することは万に一つもないだろう…!」
されど特抜生拉致が人質としての利用目的のためであると決め付けられたのがよほど心外であったのか、紫の魔強士は右手と頭を激しく振りながら甲高い声で抗弁する。
「いーや、違うってば!!
スダイ兄さんの…じゃないやシェザード家の目的はねえ、連中を史上初の【異世界奇術団】に仕立て上げてペトゥルナワスの善良な民草のささやかな娯楽の一コマに加え、日々の勤労の活力の一助に…おわッ!?あ、アブねえッ!!」
調子に乗ってペラペラとまくし立てている間に朱き鳥人の全身から赫怒の証である紅蓮の霊光が噴き上がったと見えた次の刹那、大上段に掲げられた黄金の聖剣が「ありゃあああああッ!!八天蓮夢武法《斬凶閃刃波》ッッ!!!」という裂帛の叫びと共に振り下ろされ、その剣先から発生した金色のオーロラのごとき光焔が文字通り電光石火のスピードで標的目がけて殺到したのである!
「──ふざけるなッ!!
何よりも尊い血の絆で固く結ばれた我が同胞をよりにもよってキサマらの腐りきった娯楽の具に供するなど…この四元蓮馬の目の黒いうちは断じてそんなマネは赦さんッッ!!!」
かくて若き魔強士の眼前に迫る閃刃波は優に縦横十メートルに達する巨大な“光の十文字”となって押し寄せ、なす術もなく真正面から直撃されてしまったバアル=シェザードは「あひゃあああああッッ!!!」という情けない悲鳴を上げながら後方に大きく吹き飛ばされてしまったのであった!
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