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第二章 聖剣皇子、乱舞の果てに…!?
聖剣皇子、出陣決意!
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「ま、まさか…バアルが地上世界に…!?
だ、だが現在、奴は銀魔星の本拠地である〈精霊都市〉ガゾスを陥落させるという重大任務に服しているはず…!
しかもあそこには首領ゼモンの居城が存在するのだ…いかに闘盟軍の最精鋭部隊が投入されておるとはいえ、そして僭越にも父上から分不相応の大任を仰せつけられた彼奴の精神が未だ一廉の魔強士族の将のそれとは程遠いとはいえど、戦いの帰趨を左右する最重要の持ち場を離脱するなどあり得ぬッ!!」
しかしながら、全身から悽愴な殺気を発散させる烈拳士は淡々と所見を口にするのみである。
「されど奴はたしかに《光現》し、四元蓮馬と対峙しておる──キサマがこの厳然たる事実を感知できぬのはあまりにも熾烈な煩悩の焔に意識を爛れさせられているからとしか判断できぬが、戦意を撹乱させるため虚偽を述べ立てていると誤認されるのも業腹である故、この世界の時の単位として一分間待とうではないか──それだけの猶予があればいかに曇りきっているとはいえ自身の心眼で事態を把握できるであろう…!」
「ぬう…ということは、父上自らが何らかの意図をもってバアルを遣わしたとしか思えぬが…おそらくは未来への投資として大役を任せてはみたものの、あまりに荷が勝ちすぎたことに気付かれて自ら乗り出されたものであろうな…だからあれほど侵攻前に進言したというのに…!」
──漆黒の拳士と一体化した最強念術師がいかなる戦法を繰り出そうと即座に対処できる意識の網を十重二十重に張り巡らしつつ、同時に心眼を凝らしたリド=シェザードはかなり以前より敵視している実弟などではなく、常に意識に揺曳する四元蓮馬の幻像の行方を必死に追った──そして彼が視たものは…!?
──“聖剣皇子”が〈宿敵〉と見做すリド=シェザードの出現を察知したのは皮肉にも最愛の恋人の口中に“命のエキス”を放ったまさにその瞬間であり、“星渕のクレオパトラ”からの凶報を受けた時、シャワーを終えた二人は仲睦まじくお揃いのバスタオルで全身を拭っているところであったが、聡明な松神彩紗が姉に返答する蓮馬の口調から切迫する事態を察知したのはいうまでもない。
「──行かれるのですね、戦いに…!」
見事なまでに感情を排した静かなる問いに対し、戦士は万感の想いを込めてただ一言、「はい」とだけ応えた。
かくて美しい裸身で向き合う恋人たちは無言のままに思慕の視線を交わし合ったが、愛する男の最後かもしれぬ精を体内に受け入れた彩紗の肉体は神々しいまでの美しさに照り映えていた。
「きっと、戻ってこられるわね…?」
涙で潤みつつも、恋人の勝利を確信する乙女の透明に燃え立つ眼差しを眩しげに受け止めつつ、四元蓮馬は断言した。
「はい、必ず」
──と。
しかし、その声は彩紗自身の「蓮馬さまッ!!」という絶叫によってかき消され、彼は腕の中に飛び込んできた最愛の存在を我を忘れて抱きしめていた!
「必ず…必ず無事でここに…私のもとに帰ってきてッ!!
そして…【魂滴の儀】を二人だけの青春の過ち…いいえ、おっちょこちょいな私が企んだたちの悪いジョーク…そうよ、苦笑混じりの思い出話にしてしまってちょうだいッ!!
──お願いよッ、私の運命の人…そして未来の旦那様ッッ!!!」
だ、だが現在、奴は銀魔星の本拠地である〈精霊都市〉ガゾスを陥落させるという重大任務に服しているはず…!
しかもあそこには首領ゼモンの居城が存在するのだ…いかに闘盟軍の最精鋭部隊が投入されておるとはいえ、そして僭越にも父上から分不相応の大任を仰せつけられた彼奴の精神が未だ一廉の魔強士族の将のそれとは程遠いとはいえど、戦いの帰趨を左右する最重要の持ち場を離脱するなどあり得ぬッ!!」
しかしながら、全身から悽愴な殺気を発散させる烈拳士は淡々と所見を口にするのみである。
「されど奴はたしかに《光現》し、四元蓮馬と対峙しておる──キサマがこの厳然たる事実を感知できぬのはあまりにも熾烈な煩悩の焔に意識を爛れさせられているからとしか判断できぬが、戦意を撹乱させるため虚偽を述べ立てていると誤認されるのも業腹である故、この世界の時の単位として一分間待とうではないか──それだけの猶予があればいかに曇りきっているとはいえ自身の心眼で事態を把握できるであろう…!」
「ぬう…ということは、父上自らが何らかの意図をもってバアルを遣わしたとしか思えぬが…おそらくは未来への投資として大役を任せてはみたものの、あまりに荷が勝ちすぎたことに気付かれて自ら乗り出されたものであろうな…だからあれほど侵攻前に進言したというのに…!」
──漆黒の拳士と一体化した最強念術師がいかなる戦法を繰り出そうと即座に対処できる意識の網を十重二十重に張り巡らしつつ、同時に心眼を凝らしたリド=シェザードはかなり以前より敵視している実弟などではなく、常に意識に揺曳する四元蓮馬の幻像の行方を必死に追った──そして彼が視たものは…!?
──“聖剣皇子”が〈宿敵〉と見做すリド=シェザードの出現を察知したのは皮肉にも最愛の恋人の口中に“命のエキス”を放ったまさにその瞬間であり、“星渕のクレオパトラ”からの凶報を受けた時、シャワーを終えた二人は仲睦まじくお揃いのバスタオルで全身を拭っているところであったが、聡明な松神彩紗が姉に返答する蓮馬の口調から切迫する事態を察知したのはいうまでもない。
「──行かれるのですね、戦いに…!」
見事なまでに感情を排した静かなる問いに対し、戦士は万感の想いを込めてただ一言、「はい」とだけ応えた。
かくて美しい裸身で向き合う恋人たちは無言のままに思慕の視線を交わし合ったが、愛する男の最後かもしれぬ精を体内に受け入れた彩紗の肉体は神々しいまでの美しさに照り映えていた。
「きっと、戻ってこられるわね…?」
涙で潤みつつも、恋人の勝利を確信する乙女の透明に燃え立つ眼差しを眩しげに受け止めつつ、四元蓮馬は断言した。
「はい、必ず」
──と。
しかし、その声は彩紗自身の「蓮馬さまッ!!」という絶叫によってかき消され、彼は腕の中に飛び込んできた最愛の存在を我を忘れて抱きしめていた!
「必ず…必ず無事でここに…私のもとに帰ってきてッ!!
そして…【魂滴の儀】を二人だけの青春の過ち…いいえ、おっちょこちょいな私が企んだたちの悪いジョーク…そうよ、苦笑混じりの思い出話にしてしまってちょうだいッ!!
──お願いよッ、私の運命の人…そして未来の旦那様ッッ!!!」
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