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第二章 聖剣皇子、乱舞の果てに…!?
新たな魔強士族─その名は…!?
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学園長室に駆け込んだ松神彩羅は、高級感漂うマホガニー製の執務机にスポーツバッグを放り出すと、直ちに四元蓮馬に連絡を入れた。
およそ半年前に妹の紹介で対面した際、番号交換だけは済ませていたものの実際にコールするのははじめてであり、さらに先程、黒瀧晶悟から彼とアポを取ることの困難さを聞かされていたこともあって繋がる確信は持てなかったがもちろん今はなりふり構っている場合ではない(本人があくまでも着信拒否するのなら最愛の恋人である妹の口から出動要請させるまでだ)!
──されど日頃の行いがいいせいか、“歴代最強特抜生”はあっさりと電話に出た。
「あっ、もしもし四元クン?
よかったー、あたしにはちゃんと出てくれたのネッ!
ゴメンね、大切な時間にお邪魔しちゃって…でも、どうしてもキミの力を借りなきゃならない緊急事態が勃発しちゃったのよ!!
──エッ?学園にペトゥルナワスの魔強士族が現れたんだろうって?…スゴい、どうしてそれが分かったのッ!?
え?…はー、なるほど【夢見ノ者】ならではの超感知力ねえ…にしても凄すぎるわ…!
へ?遠征長?──あっ、ああ黒ちゃんね…ええ、そーなのよ、彼、残された学園長を救出するとか豪語して独りで秘密資料室に乗り込んでったんだけど…大丈夫なのかしら…?
えーッ、何ですって!?
現れたのが蓮馬が心眼で捉えたとおりリド=シェザードって奴なら到底黒瀧の手に負える相手じゃないって…!!
だったらヤバいじゃない!キミがこの帰宅ラッシュ時に自慢のバイクをどんなに飛ばしても最低でも一時間はかかるでしょッ?その間に彼、殺されちゃうじゃないのよッ!!
一体、どーすりゃいいのッ!?
──えッ?“最後の手段として【影朱雀】を使います”って…何なのよ、それ?あッ、待って!ちゃんと説明しなさいよッ、あたしを誰だと思って…」
唐突に切られたスマホを手に呆然と佇む理事長令嬢は肌に微かな冷気を感じ、とりあえず着替えを済まさなければと赤いスポーツバッグに手を伸ばした…。
──黒瀧晶悟に憑依した?“戦師”ヌーロスが発した言葉に対するリド=シェザードの反応は冷ややかなものであった。
「──いきなり何を言い出すのかと思えば…どうやら“ペトゥルナワス最強念術師”も寄る年波には勝てずとうとう耄碌してしまったものと見えるが、それにしてもあまりにもお門違いの赦し難き侮辱というべきだ…!
全く、誇り高きシェザード一族のこの私が一体いつ、こともあろうに敵側の…それも異世界獣民ごときに恋をしたなどという証拠があるというのだ?」
この沈着冷静な抗弁に、依然として蹲ったままの漆黒の拳士は微塵も動揺のそぶりを見せず静かに返答する。
「ふふ、やはりしらばくれるか…。
まあムリもないわ、これが明るみとなれば、目下破竹の快進撃を続ける“最強魔強士族”【シェザード闘盟軍】の士気にも多大なる負の影響を及ぼすことであろうからな…!
──されどリドよ、まさか血肉を分けた兄弟たちにまでその欺瞞が通用すると過信している訳ではあるまいな…!?」
「何を愚かな…もとより有りもせぬ事柄を、何故にして兄や弟に隠す必要がある!?
いかに衰えたりとはいえ、これがかつては天地に勇名を轟かせた“はぐれ魔強士”によるセリフかと思うと、共に天を戴かざる存在とは十二分に弁えつつも、今日この日まで見えざる縁で結ばれし同族として怒りよりもまずいたたまれぬ思いに駆られるわ…」
「ふっ、見えざる縁ときたか…悪いことは言わん、そのような無知蒙昧にして浅薄極まる認識は今この瞬間に捨て去るがよい…まかり間違ってもキサマらなどに〈同族〉などと見立てられるくらいなら、生来の傲慢さ故に曇りきった眼に“永遠の奴僕”として映じておるのであろう獣民どもの〈守護者〉として蛇蝎視される方がよほど我が心の平安に寄与するのでな…!」
「──そうか、ならばそういうことにしておこう…!
しかしこれでキサマの名は永遠に裏切り者と同義として魔強士族の辞書に刻まれることになった訳だ…全く、世には奇特な御仁が存在するものよ…!」
だがこの嘲罵には構わず、晶悟=ヌーロスは先程からの話題を蒸し返した。
「さてもリドよ…おまえは実際のところ、兄弟たちから自身の性癖を真に隠し果せておると自惚れておるのか?そうだとしたら、それはあまりにも無邪気な見立てというものだぞ──そもそも四元蓮馬がやがて学園に出現すると何の根拠があって言い切れるのだ…!?」
「──何?
一体どういうことだ…!?」
ふふふふふ、と不気味な含み笑いと共にゆらりと立ち上がった黒瀧晶悟は、右手人差し指で白い魔強士を指し示しつつ雷のごとき大音声で断言した。
「愚か者めがッ!!
誰あろう三兄弟の末弟・バアル=シェザード──まさにこの瞬間、人知れず地上世界に《光現》した彼奴が、犬猿の仲であるキサマの恋路を妨害すべく今まさに四元の前に立ち塞がったのが視えぬのかッッ!!!」
およそ半年前に妹の紹介で対面した際、番号交換だけは済ませていたものの実際にコールするのははじめてであり、さらに先程、黒瀧晶悟から彼とアポを取ることの困難さを聞かされていたこともあって繋がる確信は持てなかったがもちろん今はなりふり構っている場合ではない(本人があくまでも着信拒否するのなら最愛の恋人である妹の口から出動要請させるまでだ)!
──されど日頃の行いがいいせいか、“歴代最強特抜生”はあっさりと電話に出た。
「あっ、もしもし四元クン?
よかったー、あたしにはちゃんと出てくれたのネッ!
ゴメンね、大切な時間にお邪魔しちゃって…でも、どうしてもキミの力を借りなきゃならない緊急事態が勃発しちゃったのよ!!
──エッ?学園にペトゥルナワスの魔強士族が現れたんだろうって?…スゴい、どうしてそれが分かったのッ!?
え?…はー、なるほど【夢見ノ者】ならではの超感知力ねえ…にしても凄すぎるわ…!
へ?遠征長?──あっ、ああ黒ちゃんね…ええ、そーなのよ、彼、残された学園長を救出するとか豪語して独りで秘密資料室に乗り込んでったんだけど…大丈夫なのかしら…?
えーッ、何ですって!?
現れたのが蓮馬が心眼で捉えたとおりリド=シェザードって奴なら到底黒瀧の手に負える相手じゃないって…!!
だったらヤバいじゃない!キミがこの帰宅ラッシュ時に自慢のバイクをどんなに飛ばしても最低でも一時間はかかるでしょッ?その間に彼、殺されちゃうじゃないのよッ!!
一体、どーすりゃいいのッ!?
──えッ?“最後の手段として【影朱雀】を使います”って…何なのよ、それ?あッ、待って!ちゃんと説明しなさいよッ、あたしを誰だと思って…」
唐突に切られたスマホを手に呆然と佇む理事長令嬢は肌に微かな冷気を感じ、とりあえず着替えを済まさなければと赤いスポーツバッグに手を伸ばした…。
──黒瀧晶悟に憑依した?“戦師”ヌーロスが発した言葉に対するリド=シェザードの反応は冷ややかなものであった。
「──いきなり何を言い出すのかと思えば…どうやら“ペトゥルナワス最強念術師”も寄る年波には勝てずとうとう耄碌してしまったものと見えるが、それにしてもあまりにもお門違いの赦し難き侮辱というべきだ…!
全く、誇り高きシェザード一族のこの私が一体いつ、こともあろうに敵側の…それも異世界獣民ごときに恋をしたなどという証拠があるというのだ?」
この沈着冷静な抗弁に、依然として蹲ったままの漆黒の拳士は微塵も動揺のそぶりを見せず静かに返答する。
「ふふ、やはりしらばくれるか…。
まあムリもないわ、これが明るみとなれば、目下破竹の快進撃を続ける“最強魔強士族”【シェザード闘盟軍】の士気にも多大なる負の影響を及ぼすことであろうからな…!
──されどリドよ、まさか血肉を分けた兄弟たちにまでその欺瞞が通用すると過信している訳ではあるまいな…!?」
「何を愚かな…もとより有りもせぬ事柄を、何故にして兄や弟に隠す必要がある!?
いかに衰えたりとはいえ、これがかつては天地に勇名を轟かせた“はぐれ魔強士”によるセリフかと思うと、共に天を戴かざる存在とは十二分に弁えつつも、今日この日まで見えざる縁で結ばれし同族として怒りよりもまずいたたまれぬ思いに駆られるわ…」
「ふっ、見えざる縁ときたか…悪いことは言わん、そのような無知蒙昧にして浅薄極まる認識は今この瞬間に捨て去るがよい…まかり間違ってもキサマらなどに〈同族〉などと見立てられるくらいなら、生来の傲慢さ故に曇りきった眼に“永遠の奴僕”として映じておるのであろう獣民どもの〈守護者〉として蛇蝎視される方がよほど我が心の平安に寄与するのでな…!」
「──そうか、ならばそういうことにしておこう…!
しかしこれでキサマの名は永遠に裏切り者と同義として魔強士族の辞書に刻まれることになった訳だ…全く、世には奇特な御仁が存在するものよ…!」
だがこの嘲罵には構わず、晶悟=ヌーロスは先程からの話題を蒸し返した。
「さてもリドよ…おまえは実際のところ、兄弟たちから自身の性癖を真に隠し果せておると自惚れておるのか?そうだとしたら、それはあまりにも無邪気な見立てというものだぞ──そもそも四元蓮馬がやがて学園に出現すると何の根拠があって言い切れるのだ…!?」
「──何?
一体どういうことだ…!?」
ふふふふふ、と不気味な含み笑いと共にゆらりと立ち上がった黒瀧晶悟は、右手人差し指で白い魔強士を指し示しつつ雷のごとき大音声で断言した。
「愚か者めがッ!!
誰あろう三兄弟の末弟・バアル=シェザード──まさにこの瞬間、人知れず地上世界に《光現》した彼奴が、犬猿の仲であるキサマの恋路を妨害すべく今まさに四元の前に立ち塞がったのが視えぬのかッッ!!!」
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