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第一章 真夏の行事は〈異世界遠征〉!?
新遠征長、母校に帰る⑧
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午後4時18分、星渕学園に到着した真紅のスポーツカーは松神家専用駐車ゾーンに滑り込んだ。
まず八重樫龍作が待つ学園長室に赴いて久闊を叙した後、四元蓮馬を除く遠征メンバーが一同に会する〈秘密資料室〉に赴いてはじめての顔合わせを済ませる予定であった。
「──ですが、この場に〈総代〉が不在というのはどうも納得いきませんね…。
何より四元自身にとっても遠征隊に対して示しがつかんでしょうに…」
このド正論にはさすがの“反駁女王”も真顔で頷かざるを得ないようであった。
「──全くだわね!
龍作ちゃんも本人と顔を合わせる度に忠告してるそうだけど、四元に唯一欠点があるとしたら、それは“傲慢すれすれのケタ違いに高いプライドから発する他者軽視”だと──それだからこそこれまでは彼の望む単独行を黙認してきた訳だけど、ペトゥルナワスの状況が遠征開始後最悪なことに加え、何より敵組織に取り込まれてしまった三名もの特抜生を奪還しなくちゃならない緊急事態であることも踏まえて、真性ナルシストさんの自尊心を満足させるために主将格を意味する〈総代〉っていうポジションをわざわざ用意してやったっていうのに、何が気に入らないっていうのかしら!?…あまりにもワガママ過ぎるわよッ!!
──黒ちゃんもねえ、一昨日彼と話したんなら遠征長としてもっと強硬に出席を促すべきだったのよッ!!」
「…まあねえ…学園長から教えられた番号に十回以上も掛けたにもかかわらず梨の礫で、日付の変わる頃にようやくアイツの方からTELしてきたんですが、“すみません、明日はとうしても外せない用事があるんです”とかヌカしやがって…!
まあ、それなら仕方ねえかなって無理やり納得したんですが、その外せない用事ってのがこともあろうに恋人との【魂滴の儀】だったとはね…!」
呆れてモノも言えん、とばかりの遠征長のボヤきに対し、理事長令嬢も憤懣やる方ないといった表情で頷く。
「さっきも言ったけど、あたしは儀式?自体には反対じゃないのよ…でも何も、〈全体ミーティング〉の当日にセッティングしなくてもいいじゃないのよねえ?
──しかもあたし、マヌケなことに当の彩紗にもまんまとダマされちゃったんだわ…!
“…ねえお姉ちゃん、実は明日、高校時代の親友でプロゲーマーのアミカちゃんが遊びに来るんだけど、彼女のコーチをマンツーマンで受けられるチャンスなんて滅多にないから丸一日ばり集中してゲーム三昧したいの…だから、悪いけど外泊して…ネ、お願い♡”だってさ…!!
──あの野郎、ウチに帰ったらどうしてやろーか…あ、そうだ!自室に専用冷蔵庫まで構えて秘蔵してる(しかも呆れたことに、時々白ワインに混ぜて飲んでるらしい!)〈ミルク瓶〉を一本残らず叩き割ってやるかッ!!」
「──それだけはやめといた方がいいですよ…もしそんな狼藉に及んだら、子孫断絶の凶報に怒り狂った“聖剣皇子”にまず間違いなく首を刎ねられちまうでしょうから…」
苦笑交じりで晶悟が応じた直後、ズボンの右ポケットから軽快な電子音が鳴り響いた。
「──誰だろう、まさか四元かな?
…だとしたらアイツ、【夢見ノ者】だけじゃなく本物の精神感応者でもあることになるが…?」
取り出したスマホを確認し、
「…何だ、学園長からです」と彩羅に告げて電話に出た彼は、
「あ、ご苦労さまです!只今無事到着…」と応えたところで絶句した。
「──えッ、何ですって!?
何かあったんですか、よく聴こえませんッ!
そもそも学園長、今どこにいらっしゃるんですかッ!?…あ、秘密資料室!──ええ、もちろん場所は存じてますともッ!!
たしかそこには遠征メンバーが勢揃いしているはずですよね!?
うむ?…もしかして学園長、ケガされてるんですか!?凄く苦しそうな声ですがッ!?
──ええッ、な、何ですって!?
ペトゥルナワスの魔強士軍団が突如出現して特抜生全員を連れ去ったですってええッッ!!??」
まず八重樫龍作が待つ学園長室に赴いて久闊を叙した後、四元蓮馬を除く遠征メンバーが一同に会する〈秘密資料室〉に赴いてはじめての顔合わせを済ませる予定であった。
「──ですが、この場に〈総代〉が不在というのはどうも納得いきませんね…。
何より四元自身にとっても遠征隊に対して示しがつかんでしょうに…」
このド正論にはさすがの“反駁女王”も真顔で頷かざるを得ないようであった。
「──全くだわね!
龍作ちゃんも本人と顔を合わせる度に忠告してるそうだけど、四元に唯一欠点があるとしたら、それは“傲慢すれすれのケタ違いに高いプライドから発する他者軽視”だと──それだからこそこれまでは彼の望む単独行を黙認してきた訳だけど、ペトゥルナワスの状況が遠征開始後最悪なことに加え、何より敵組織に取り込まれてしまった三名もの特抜生を奪還しなくちゃならない緊急事態であることも踏まえて、真性ナルシストさんの自尊心を満足させるために主将格を意味する〈総代〉っていうポジションをわざわざ用意してやったっていうのに、何が気に入らないっていうのかしら!?…あまりにもワガママ過ぎるわよッ!!
──黒ちゃんもねえ、一昨日彼と話したんなら遠征長としてもっと強硬に出席を促すべきだったのよッ!!」
「…まあねえ…学園長から教えられた番号に十回以上も掛けたにもかかわらず梨の礫で、日付の変わる頃にようやくアイツの方からTELしてきたんですが、“すみません、明日はとうしても外せない用事があるんです”とかヌカしやがって…!
まあ、それなら仕方ねえかなって無理やり納得したんですが、その外せない用事ってのがこともあろうに恋人との【魂滴の儀】だったとはね…!」
呆れてモノも言えん、とばかりの遠征長のボヤきに対し、理事長令嬢も憤懣やる方ないといった表情で頷く。
「さっきも言ったけど、あたしは儀式?自体には反対じゃないのよ…でも何も、〈全体ミーティング〉の当日にセッティングしなくてもいいじゃないのよねえ?
──しかもあたし、マヌケなことに当の彩紗にもまんまとダマされちゃったんだわ…!
“…ねえお姉ちゃん、実は明日、高校時代の親友でプロゲーマーのアミカちゃんが遊びに来るんだけど、彼女のコーチをマンツーマンで受けられるチャンスなんて滅多にないから丸一日ばり集中してゲーム三昧したいの…だから、悪いけど外泊して…ネ、お願い♡”だってさ…!!
──あの野郎、ウチに帰ったらどうしてやろーか…あ、そうだ!自室に専用冷蔵庫まで構えて秘蔵してる(しかも呆れたことに、時々白ワインに混ぜて飲んでるらしい!)〈ミルク瓶〉を一本残らず叩き割ってやるかッ!!」
「──それだけはやめといた方がいいですよ…もしそんな狼藉に及んだら、子孫断絶の凶報に怒り狂った“聖剣皇子”にまず間違いなく首を刎ねられちまうでしょうから…」
苦笑交じりで晶悟が応じた直後、ズボンの右ポケットから軽快な電子音が鳴り響いた。
「──誰だろう、まさか四元かな?
…だとしたらアイツ、【夢見ノ者】だけじゃなく本物の精神感応者でもあることになるが…?」
取り出したスマホを確認し、
「…何だ、学園長からです」と彩羅に告げて電話に出た彼は、
「あ、ご苦労さまです!只今無事到着…」と応えたところで絶句した。
「──えッ、何ですって!?
何かあったんですか、よく聴こえませんッ!
そもそも学園長、今どこにいらっしゃるんですかッ!?…あ、秘密資料室!──ええ、もちろん場所は存じてますともッ!!
たしかそこには遠征メンバーが勢揃いしているはずですよね!?
うむ?…もしかして学園長、ケガされてるんですか!?凄く苦しそうな声ですがッ!?
──ええッ、な、何ですって!?
ペトゥルナワスの魔強士軍団が突如出現して特抜生全員を連れ去ったですってええッッ!!??」
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