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第一章 真夏の行事は〈異世界遠征〉!?
美剣士の呻きは真夏の蜃気楼(前編)
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秘密資料室に集合した十一名の特抜生と職員がブリーフィングが終了間際となり、今回遠征長を務める黒瀧晶悟が松神彩羅の赤いオープンスポーツカーの助手席に乗り込んで母校に今しも到着せんとした夕刻前、〈総代〉を務める四元蓮馬の姿はいかなる理由でか、O駅前に聳える三十階建て高級マンション17階の一室──しかもバスルームにあった。
部屋のオーナーは星渕学園理事長・松神駿一郎であり、現在は国立O大医学部二回生の三女・彩紗が長女の彩羅と二人で暮らしている。
東京の私大で十九世紀フランス文学を専攻する次女の彩芭は現在、一年休学して眷恋の地であるパリに留学中であった。
見事に発達した胸板──されどその表面は深窓の令嬢顔負けの白雪のごとき肌が輝いている──をのけ反らせて銀色にかがやく真鍮の高級シャワーヘッドから勢いよく迸る冷水を瞑目しつつ受け止める蓮馬はその凄まじい剣技とは対照的に清麗な美姫を彷彿とさせる容貌の主であり、濡れそぼつ長い睫毛一つとっても蠱惑的としか表現できぬ危険な美を内包していた。
──そして浴室の曇り硝子戸が音もなく開かれ、その肉体の魔力の虜である松神彩紗が全裸となってその背後に忍び寄ったのである…。
もちろん、“史上最強特抜生”とも評される若き美剣士は侵入者の存在を感知しているが、あえて今の態勢を崩そうとはせず、これ幸いとばかりにその背に荒々しくしがみついたのはそうする資格を充分に備えた美女であった。
「──蓮馬さまッ!!
ダメですッ!もう私、待ち切れませんッッ!!!」
感に堪えたかのような震え声で叫びつつ、白く逞しい背中に烈しい接吻を浴びせるショートヘアの松神彩紗はいかにも医学生らしい理知的な美貌をこの時ばかりは憧れのスターを前にした熱狂的崇拝者のごとく引き攣らせて今にも泣き出さんばかりである。
「──困った女性ですね、未だ【魂滴の儀】も終わってないというのに…」
決して咎めるというのではないが、どこか哀しげなその声音にハッと我に返った彩紗の表情は取り返しのつかないことをしてしまった悔恨に歪み、その飛沫に濡れた瞼の下の瞳にはみるみる涙の玉が溢れ出すのであった。
「ご、ごめんなさい…私、勝手に一人で興奮してしまって…何てはしたない真似を…!」
しなやかな指先でバルブを閉じた“星渕の聖剣皇子”はゆっくりと振り返ると、俯く理事長の三女の両頬を両掌で包んで優しく上向かせる。
「──どうして泣くのですか?
私もそれを心から希んでいるというのに…?」
顔に触れられた瞬間、まさに電気に撃たれたように全身を震わせた彩紗であったが、さらにこの言葉によって背中を氷柱の尖端で撫で上げられたかのごとき戦慄を味わったのであった。
ここで一旦瞑目した蓮馬は、先程までの冷水シャワーを浴びていた時と同じく顔を上向かせてただ一言、呟いた。
「…疼く」
──と。
次の刹那、聡明な医学生の頭部は有無を言わさぬ力でかき抱かれ、彼女の顔は激しく高鳴る若者の胸に強く押し当てられていた──!
そしてそのまま永遠ともいうべき十数秒間が刻まれた後、四元蓮馬は厳かに懇願した。
「──一滴残らず、飲み干してほしい…!
魂の滴は夜も更けてから存分に搾り取ってくれればいいから…!!」
心底待ち望んでいた赦しを得た松神彩紗は決意を込めて「はい」と頷き、紅唇を〈運命の人〉の肌に強く押し当てたままままゆっくりと跪いてゆく…。
──そして誇り高く天に冲する肉の剣先が顎に触れた瞬間、あたかも女豹が獲物に躍りかかるかのようにそれにむしゃぶりつき、一方の美しき生贄は運命を受け容れたかのごとく切ない呻きを上げながら襲撃者の頭頂を優しく押さえつつ上体をのけ反らせたのであった…。
部屋のオーナーは星渕学園理事長・松神駿一郎であり、現在は国立O大医学部二回生の三女・彩紗が長女の彩羅と二人で暮らしている。
東京の私大で十九世紀フランス文学を専攻する次女の彩芭は現在、一年休学して眷恋の地であるパリに留学中であった。
見事に発達した胸板──されどその表面は深窓の令嬢顔負けの白雪のごとき肌が輝いている──をのけ反らせて銀色にかがやく真鍮の高級シャワーヘッドから勢いよく迸る冷水を瞑目しつつ受け止める蓮馬はその凄まじい剣技とは対照的に清麗な美姫を彷彿とさせる容貌の主であり、濡れそぼつ長い睫毛一つとっても蠱惑的としか表現できぬ危険な美を内包していた。
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もちろん、“史上最強特抜生”とも評される若き美剣士は侵入者の存在を感知しているが、あえて今の態勢を崩そうとはせず、これ幸いとばかりにその背に荒々しくしがみついたのはそうする資格を充分に備えた美女であった。
「──蓮馬さまッ!!
ダメですッ!もう私、待ち切れませんッッ!!!」
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「──困った女性ですね、未だ【魂滴の儀】も終わってないというのに…」
決して咎めるというのではないが、どこか哀しげなその声音にハッと我に返った彩紗の表情は取り返しのつかないことをしてしまった悔恨に歪み、その飛沫に濡れた瞼の下の瞳にはみるみる涙の玉が溢れ出すのであった。
「ご、ごめんなさい…私、勝手に一人で興奮してしまって…何てはしたない真似を…!」
しなやかな指先でバルブを閉じた“星渕の聖剣皇子”はゆっくりと振り返ると、俯く理事長の三女の両頬を両掌で包んで優しく上向かせる。
「──どうして泣くのですか?
私もそれを心から希んでいるというのに…?」
顔に触れられた瞬間、まさに電気に撃たれたように全身を震わせた彩紗であったが、さらにこの言葉によって背中を氷柱の尖端で撫で上げられたかのごとき戦慄を味わったのであった。
ここで一旦瞑目した蓮馬は、先程までの冷水シャワーを浴びていた時と同じく顔を上向かせてただ一言、呟いた。
「…疼く」
──と。
次の刹那、聡明な医学生の頭部は有無を言わさぬ力でかき抱かれ、彼女の顔は激しく高鳴る若者の胸に強く押し当てられていた──!
そしてそのまま永遠ともいうべき十数秒間が刻まれた後、四元蓮馬は厳かに懇願した。
「──一滴残らず、飲み干してほしい…!
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──そして誇り高く天に冲する肉の剣先が顎に触れた瞬間、あたかも女豹が獲物に躍りかかるかのようにそれにむしゃぶりつき、一方の美しき生贄は運命を受け容れたかのごとく切ない呻きを上げながら襲撃者の頭頂を優しく押さえつつ上体をのけ反らせたのであった…。
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