7 / 66
第一章 真夏の行事は〈異世界遠征〉!?
新遠征長、母校に帰る④
しおりを挟む
「もらったぞッ!八重樫龍貴ッッ!!」
──MAXで二分間は滞空可能な烈拳甲の〈反重力跳躍機能〉によって一気に決着を付けんと目論む黒瀧晶悟はのけ反る真紅の死神の素顔に向けて渾身の右ストレートを放たんとする──されど無意識のうちに?前方に突き出された龍貴の右掌から金色光で構成された魔龍が飛び出すのを察知し、舌打ちしつつ思いきり右へ移動した!
『──虚真龍かッ!?
触れたモノをことごとく消滅させる“最凶念龍”であるコイツだけは食らう訳にはいかんッ!!
だが、いかに天才念術師とはいえ渾身の前蹴りが完璧にクリーンヒットした瞬間に奥義を放てるとは…どこまでも恐るべき敵ッ!!」
──無論横移動でかわせるほど念龍の追跡能力は甘いものではなく、虚真龍の胴はほぼ直角に左方向へと折れ、漆黒の拳士へしゅるしゅると伸びてくる!
「ふざけるなッ!キサマなどに髪の毛一本くれてやるつもりはねえッッ!!」
毒づきながら指を揃えた貫手の状態で右手を突き出す晶悟だが、金龍に向けられた4本の指先から発射されたのは見えざる“真空の矢”であった!
シュババババババババッッッ!!!
生粋の念術師には及ばぬまでも、特抜生が目的意識を持ち、鍛錬の時間さえ費やせば細分化された各種戦闘術の精髄を摑み取ることは可能であり、拳兵団入りした晶悟は極論すれば念術のみで八重樫龍貴と渡り合うことまで想定し、意気に感じたヌーロスに師事して独自の攻撃念術の開発に励んでいたのであった。
「よしッ!決して全力投球されたものではないとはいえ、あの虚真龍とオレが放ったヌーロス師直伝の【霊嵐波】を地上人流にアレンジした【殺念矢】は相殺し合って龍貴の必殺技を見事に消し去った!!
続いてはその躰で直接、未熟な後輩の拙い念術を味わっていただこうッ!!」
されど黒瀧晶悟は気付いていなかった──殺念矢によって四散した際、虚真龍が撒き散らした凄まじい金光に視界が奪われた数秒の間に真紅の死神がそのトレードマークともいうべき妖麗な紅の仮面をその手に摑み、再装着していたことを!
「──くらえッッ!!!」
かくて再び唸りを上げた右貫手──されどその動作の途中でその事実を覚ったほんの一瞬の動揺、それを看過するほど八重樫龍貴は甘い相手ではなかった。
「ふはははははッ!バカめッ、やはりキサマは劣等生だなッ!!
──そんなロクデナシにはオールタイム念術部首席であるオレ様から特大の赤点をくれてやるわッッ!!!」
最大限の嘲弄を込めた絶叫と共に左掌から放たれたのは、宣言通りというべきか紅蓮に渦巻きつつ真っ赤な顎を全開にして突進する焔華龍であった!
「笑えねえ冗談で得意になってんじゃねえぞこの中退野郎がッ!
テメエこそバカの一つ覚えの念術ばっかに頼ってねえでまともなパンチの一発でも打ってみろってんだッ!!」
片手では約不足とばかりありったけの思念を込めた“両手殺念矢”で迎撃せんとする黒瀧晶悟だが、明らかに一撃目より心力を回復して発射された炎の猛龍の勢いは凄まじく、にわか仕込みの空念術が太刀打ちできる相手ではなかった──その証拠にたしかに両者の技は正面から激突したにもかかわらず焔華龍は微かに小揺るぎしただけでダブル殺念矢を大気中に四散させ、何事もなかったかのように漆黒の拳士の頭部を丸呑みしてのけたのである!
「うぐわああああああッッ!?」
先ほど見舞われた狂牙龍による激痛とは全く異なる、地獄の焔に脳そのものを炙られる灼熱地獄に空中でのたうち回る晶悟──彼我の実力差を省みることなく無謀にも敵の領域で勝負してしまった愚かさの報いは想像以上の、いっそ死を望むほどの苛烈さで自身に返されたのであった…。
「──今まさに地獄を味わっているキサマには何の慰めにもなるまいが、技の筋自体は悪くはない…だがな、いかに純度を高めようが、この道に殉じる覚悟を固めた念術師の《凝念》と門外漢の《思念》とでは天地ほどの隔たりがあるということだけは骨の髄から理解できたであろうッ!
──さて、たかが前座試合に思わぬ時間を食ってしまったが、そろそろ“セミファイナル”に取り掛かるとしようか?
先ほどから不肖の弟子のふがいなさに切歯扼腕していたのであろうが、お互いの予想通り、晶悟はブザマに散った…そろそろ姿を見せたらどうだ、自称“義の魔強士”ヌーロスよッ!!」
──されど真紅の死神が改めて視線を向けた宝心堂から返事をよこす者は無く、むしろ背後にただならぬ気配と温度を感知して龍貴が愕然と振り返った時、彼は文字通りの火ダルマとなった黒瀧晶悟にガッチリと抱きつかれていたのである!
──MAXで二分間は滞空可能な烈拳甲の〈反重力跳躍機能〉によって一気に決着を付けんと目論む黒瀧晶悟はのけ反る真紅の死神の素顔に向けて渾身の右ストレートを放たんとする──されど無意識のうちに?前方に突き出された龍貴の右掌から金色光で構成された魔龍が飛び出すのを察知し、舌打ちしつつ思いきり右へ移動した!
『──虚真龍かッ!?
触れたモノをことごとく消滅させる“最凶念龍”であるコイツだけは食らう訳にはいかんッ!!
だが、いかに天才念術師とはいえ渾身の前蹴りが完璧にクリーンヒットした瞬間に奥義を放てるとは…どこまでも恐るべき敵ッ!!」
──無論横移動でかわせるほど念龍の追跡能力は甘いものではなく、虚真龍の胴はほぼ直角に左方向へと折れ、漆黒の拳士へしゅるしゅると伸びてくる!
「ふざけるなッ!キサマなどに髪の毛一本くれてやるつもりはねえッッ!!」
毒づきながら指を揃えた貫手の状態で右手を突き出す晶悟だが、金龍に向けられた4本の指先から発射されたのは見えざる“真空の矢”であった!
シュババババババババッッッ!!!
生粋の念術師には及ばぬまでも、特抜生が目的意識を持ち、鍛錬の時間さえ費やせば細分化された各種戦闘術の精髄を摑み取ることは可能であり、拳兵団入りした晶悟は極論すれば念術のみで八重樫龍貴と渡り合うことまで想定し、意気に感じたヌーロスに師事して独自の攻撃念術の開発に励んでいたのであった。
「よしッ!決して全力投球されたものではないとはいえ、あの虚真龍とオレが放ったヌーロス師直伝の【霊嵐波】を地上人流にアレンジした【殺念矢】は相殺し合って龍貴の必殺技を見事に消し去った!!
続いてはその躰で直接、未熟な後輩の拙い念術を味わっていただこうッ!!」
されど黒瀧晶悟は気付いていなかった──殺念矢によって四散した際、虚真龍が撒き散らした凄まじい金光に視界が奪われた数秒の間に真紅の死神がそのトレードマークともいうべき妖麗な紅の仮面をその手に摑み、再装着していたことを!
「──くらえッッ!!!」
かくて再び唸りを上げた右貫手──されどその動作の途中でその事実を覚ったほんの一瞬の動揺、それを看過するほど八重樫龍貴は甘い相手ではなかった。
「ふはははははッ!バカめッ、やはりキサマは劣等生だなッ!!
──そんなロクデナシにはオールタイム念術部首席であるオレ様から特大の赤点をくれてやるわッッ!!!」
最大限の嘲弄を込めた絶叫と共に左掌から放たれたのは、宣言通りというべきか紅蓮に渦巻きつつ真っ赤な顎を全開にして突進する焔華龍であった!
「笑えねえ冗談で得意になってんじゃねえぞこの中退野郎がッ!
テメエこそバカの一つ覚えの念術ばっかに頼ってねえでまともなパンチの一発でも打ってみろってんだッ!!」
片手では約不足とばかりありったけの思念を込めた“両手殺念矢”で迎撃せんとする黒瀧晶悟だが、明らかに一撃目より心力を回復して発射された炎の猛龍の勢いは凄まじく、にわか仕込みの空念術が太刀打ちできる相手ではなかった──その証拠にたしかに両者の技は正面から激突したにもかかわらず焔華龍は微かに小揺るぎしただけでダブル殺念矢を大気中に四散させ、何事もなかったかのように漆黒の拳士の頭部を丸呑みしてのけたのである!
「うぐわああああああッッ!?」
先ほど見舞われた狂牙龍による激痛とは全く異なる、地獄の焔に脳そのものを炙られる灼熱地獄に空中でのたうち回る晶悟──彼我の実力差を省みることなく無謀にも敵の領域で勝負してしまった愚かさの報いは想像以上の、いっそ死を望むほどの苛烈さで自身に返されたのであった…。
「──今まさに地獄を味わっているキサマには何の慰めにもなるまいが、技の筋自体は悪くはない…だがな、いかに純度を高めようが、この道に殉じる覚悟を固めた念術師の《凝念》と門外漢の《思念》とでは天地ほどの隔たりがあるということだけは骨の髄から理解できたであろうッ!
──さて、たかが前座試合に思わぬ時間を食ってしまったが、そろそろ“セミファイナル”に取り掛かるとしようか?
先ほどから不肖の弟子のふがいなさに切歯扼腕していたのであろうが、お互いの予想通り、晶悟はブザマに散った…そろそろ姿を見せたらどうだ、自称“義の魔強士”ヌーロスよッ!!」
──されど真紅の死神が改めて視線を向けた宝心堂から返事をよこす者は無く、むしろ背後にただならぬ気配と温度を感知して龍貴が愕然と振り返った時、彼は文字通りの火ダルマとなった黒瀧晶悟にガッチリと抱きつかれていたのである!
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
世界を終わらせるつもりが、自分も終わり!?
雪夢
ファンタジー
ちょっと抜けている魔女が、うっかり魔力を使いすぎて、普段使わないテレポートを使ったら…転生しちゃった!?
40にもなって、子供の事が全く分からないので、周りに合わせてのんびり成長していきます。
連れてきた弟子?さて、忘れましたねぇ。
まったり物?ドタバタ物?冒険物?色々混ざったような作品です。
まったりと楽しんで書いているので、楽しんで読んでいただいたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる