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第二章 常磐
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風呂から上がっても、紫蘭の目は潤んだままだった。
「ごめん…湊…」
「なんでおまえが謝ってんだよ…」
「だって…俺のせいで蹴られた…それに、あんなこと…」
「大したことねえよ…俺だって昔、ここでお職張ってたんだ」
「でも…あんな無理やり…」
「大丈夫だから」
紫蘭の頭にバスタオルを被せて、髪を拭いてやった。
「明日、病院行こうな…」
「えっ…いいよ…傷、大したことない…」
「いや、尻の傷甘く見るなよ?」
裂傷の酷いのはいつまで経っても治らない。
やっぱり医者に診てもらって、薬を出してもらわないことにはどうにもならないんだ。
紫蘭の客筋はよかったから今までこんなことなかったが…
俺が常磐のときには、こういう客も稀にいたもんだ。
「それに、病気の検査もしなきゃならねえ」
「え…?」
「ああいうのは、きっと他でも同じことしてる。念には念を入れておかないと、おまえが損するし客にも迷惑かけることになる」
「…そう、だね…わかった…あの…」
「ん?」
「湊…も、検査受けてね…?」
「あ、ああ…わかったから…」
しょんぼりと項垂れる紫蘭の頭をぽかりと叩いてやった。
「紫蘭は今まで運が良かったんだよ」
「…え…?」
「俺はね、現役の頃、ああいうのに何人も当たったよ」
「湊…」
「でも、その度に祐也さんにきっちり話つけて、今みたいにちゃんとしてくれるようになったんだ」
「そうなんだ…」
紫蘭は感心したように俺を見上げた。
半分本当で、半分嘘。
客に暴力は…あいつ以外は、そう何回もあった訳じゃない。
皆、ここのバックがヤクザだということはなんとなく知っているんだろうし。
おいらんじゃなくなったって、このくらいの嘘はなんでもない。
紫蘭のためなんだから。
「だから、俺に感謝しろよ?」
「…うん。湊のお陰なんだね…」
「わかったら、髪乾かすぞ」
「うん…」
紫蘭の髪を乾かし終わったら、そのまま奥の座敷に寝かせた。
「明日はちゃんと病院行って、しっかり休もうな?」
「わかった…」
スタンドライトの明かりを消すと、俺も布団に横になった。
「おやすみ、紫蘭」
「おやすみ…湊…」
朝方、痛みで目が覚めた。
左頬はマックスで腫れ上がってて、上手く左目も開けられない。
「いててて…」
思わずちょっと呻きながら起き上がった。
「う……」
ケツも、痛い。
腰まで痛みが地味に来てる。
「湊…?」
「なんでもない。寝てろ」
居間に入って台所の襖を開けた。
「ねえ…湊、こっち向いて?」
紫蘭は後ろに着いてきてた。
「寝てろって…」
台所に入って冷凍庫から氷を取り出した。
これは冷やしておかないとまずい…
氷嚢があったからそこに氷を入れて水を少し入れた。
振り返ると、まだ紫蘭は入り口に立っていた。
「湊…」
昨日の夜よりも、真っ青な顔をしてる。
「どうしようっ…凄い腫れてる…」
紫蘭の顔は口元が少し腫れているだけで。
見た目は俺のほうが重傷だな…
「大丈夫だって…」
乾いたタオルを取って、布団に戻る。
「おまえももうちょっと寝てろ?な?」
「どうしよう…湊…」
オロオロと俺の枕元に座り込んだ
「ごめん…湊…」
「なんでおまえが謝ってんだよ…」
「だって…俺のせいで蹴られた…それに、あんなこと…」
「大したことねえよ…俺だって昔、ここでお職張ってたんだ」
「でも…あんな無理やり…」
「大丈夫だから」
紫蘭の頭にバスタオルを被せて、髪を拭いてやった。
「明日、病院行こうな…」
「えっ…いいよ…傷、大したことない…」
「いや、尻の傷甘く見るなよ?」
裂傷の酷いのはいつまで経っても治らない。
やっぱり医者に診てもらって、薬を出してもらわないことにはどうにもならないんだ。
紫蘭の客筋はよかったから今までこんなことなかったが…
俺が常磐のときには、こういう客も稀にいたもんだ。
「それに、病気の検査もしなきゃならねえ」
「え…?」
「ああいうのは、きっと他でも同じことしてる。念には念を入れておかないと、おまえが損するし客にも迷惑かけることになる」
「…そう、だね…わかった…あの…」
「ん?」
「湊…も、検査受けてね…?」
「あ、ああ…わかったから…」
しょんぼりと項垂れる紫蘭の頭をぽかりと叩いてやった。
「紫蘭は今まで運が良かったんだよ」
「…え…?」
「俺はね、現役の頃、ああいうのに何人も当たったよ」
「湊…」
「でも、その度に祐也さんにきっちり話つけて、今みたいにちゃんとしてくれるようになったんだ」
「そうなんだ…」
紫蘭は感心したように俺を見上げた。
半分本当で、半分嘘。
客に暴力は…あいつ以外は、そう何回もあった訳じゃない。
皆、ここのバックがヤクザだということはなんとなく知っているんだろうし。
おいらんじゃなくなったって、このくらいの嘘はなんでもない。
紫蘭のためなんだから。
「だから、俺に感謝しろよ?」
「…うん。湊のお陰なんだね…」
「わかったら、髪乾かすぞ」
「うん…」
紫蘭の髪を乾かし終わったら、そのまま奥の座敷に寝かせた。
「明日はちゃんと病院行って、しっかり休もうな?」
「わかった…」
スタンドライトの明かりを消すと、俺も布団に横になった。
「おやすみ、紫蘭」
「おやすみ…湊…」
朝方、痛みで目が覚めた。
左頬はマックスで腫れ上がってて、上手く左目も開けられない。
「いててて…」
思わずちょっと呻きながら起き上がった。
「う……」
ケツも、痛い。
腰まで痛みが地味に来てる。
「湊…?」
「なんでもない。寝てろ」
居間に入って台所の襖を開けた。
「ねえ…湊、こっち向いて?」
紫蘭は後ろに着いてきてた。
「寝てろって…」
台所に入って冷凍庫から氷を取り出した。
これは冷やしておかないとまずい…
氷嚢があったからそこに氷を入れて水を少し入れた。
振り返ると、まだ紫蘭は入り口に立っていた。
「湊…」
昨日の夜よりも、真っ青な顔をしてる。
「どうしようっ…凄い腫れてる…」
紫蘭の顔は口元が少し腫れているだけで。
見た目は俺のほうが重傷だな…
「大丈夫だって…」
乾いたタオルを取って、布団に戻る。
「おまえももうちょっと寝てろ?な?」
「どうしよう…湊…」
オロオロと俺の枕元に座り込んだ
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