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冒険者とNPC
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「ん? フレンドメール?」
俺は、何かを報せる音が聞こえたので、メニュー画面を開くと、『フレンドメール』が点滅していた。点滅箇所に触れると、ソラの声が聞こえてきた。
「『今、ログインしました! 魔王様、もしよかったら一緒に遊びませんか?』」
「フレンドメールとは、相手に言葉を届ける事のできる仕組みか。中々良くできているな」
俺が、この世界の理に感心していると、後ろから再度声が聞こえた。
「魔王様! やっぱり! フレンドメール返してくださいよぉ!」
ソラが頬を膨らませて、何やら怒っている様子だが、それは仕方がなかった。
「返せと言われてもな、使い方が分からなかったんだ」
「……メールの使い方が分かんないって、どんなとこに住んでたんですか……」
「勿論、魔王城だが?」
「あぁ……うん、分かりました。それじゃ、今日は何します?」
「別に俺は何でも構わん。特に目的がある訳でもないからな」
「なら、冒険者の基本はモンスター討伐! 戦って戦って強く……あっ」
ソラが何かを思い出したという顔をした為、俺は先に口を開いた。
「俺は自分の力みで十分だ。それに無職で都合が良いからこの職でいるのだから、ソラは気にする事はない」
「え?……でも」
「それに、パーティをまた組むんだろう? 仲間同志で要らぬ気遣いは不要だ」
「仲間!?……ふふふ、そうですよね! 仲間に要らぬ気遣いは、不要なのです! さぁ、私のレベル上げに付き合ってください! 魔王様!」
「その切り替えの良さが、ソラの良いところだな」
途端に遠慮がなくなったソラを見ながら、俺は感心していた。
その後、クエスト案内所に二人で行き、初心者でも受けられそうなクエストを見繕って貰い、街の外へと出かけた。
俺は、狩場と呼ばれる場所へと移動しながら、ソラにこの世界の疑問を尋ねていた。
「この世界には、夜はないのか?」
「あぁ、VRじゃないゲームだとあんまり気になりませんけど、ここだと気になりますよね。この『the Creation Online』は『夜フィールド』はありますが、世界全体が夜になる事はないみたいです。なので、街は基本的にいつも明るいですね」
「だから、ずっと明るかったのか」
「え?」
「いや、何でもない。その『夜フィールド』とは何なのだ?」
「『夜フィールド』とは、ネット情報によると、中級レベルの狩場にあるらしいです。森や草原、海などで一定時間経つとある区間だけ暗くなる場所があるそうで、そこを夜フィールドと呼んでいるらしいです」
「この辺にはないのか?」
俺は、一部の場所だけを限定的に夜にするという、この世界の理に興味が湧きソラに尋ねた。
「この辺りは、まだ初心者エリアですから、夜フィールドは発生しない筈ですね。夜フィールドになると発生するモンスターも強力になるらしいので」
夜フィールドではになると自然発生するモンスターが、強くなるらしい。どんな理屈だと言うのだろうか。
「ん? 街はずっと明るいと言ったな。街に住む者達は、寝ないのか? 街にいるのは、冒険者ばかりではなかったぞ」
「さぁ? 寝ないんじゃないですか? 冒険者以外って事は、NPCですよね?」
「寝ないだと!? それでは、疲れが取れぬではないか!」
俺は、流石に寝ないという返答には驚きを隠せなかった。寝ないと、人は辛い筈だ。
「いやいや、そんなに驚かないで下さいよ。また、細かい所を気にしますね魔王様は」
「細い事か?」
「NPCなんですから、別に眠らなくたって問題ないでしょう? ここは、そういう世界だと思うのが一番ですよ」
「そういう世界か……」
俺は、昨日ソラがログアウトしてから、街を見て回っていた。
「プレイヤーと言うのが転移してくる冒険者で、NPCというのは元からこの世界に住んでいる原住民達の事か」
度々耳にする『プレイヤー』と『NPC』という区別の言葉を、街中を歩きながら理解した。
「しかも、プレイヤーはNPCに対して、傲慢な奴が多い」
プレイヤーがNPCだと思われる人に対して、暴言を吐いている姿は少なくない。
「ちっ! NPCにも、攻撃可能だったりしたら、ストレス発散になるのによ」
「運営に、要望出してみるか?」
「イタズラする奴が出てくるからダメなんだろ? はっはっは」
街には、薬草やアイテム、武器防具等を売っている店には、プレイヤーが売り出している店とNPCが売っている店があった。そして、NPCが売っている店では、やはり態度の悪いプレイヤーが度々見られた。
そして、復活の神殿を見に行った時に、立っていた神官に復活の事について尋ねると、更に驚いた。
「我々は、冒険者の方達と違い復活する事はありません。死ねば、それで終わりなのです」
「何故、冒険者だけが、復活出来るのだ?」
「それは、ここがそういう世界である為です。言うなれば、神のお決めになった世界の理です」
「片や不死身で、片や死ねば終わり。不思議に思った事はないのか? 理不尽だとは、思わないのか?」
俺がそう問いかけると、神官は不思議そうな顔をしながら答えを返してきた。
「あなたは、不思議な事を気にするのですね。それが、世界の理であるのに、何故疑問や理不尽だとか思うのですか?」
「……それも、そうだな。時間を取らせた、悪かったな」
「いえいえ、また分からない事があれば来てください。いつもここにいますから」
俺は、その神官の青年と別れ、街の中央にある噴水のある広場の長椅子に腰掛けた。
先程、プレイヤーとNPCを『鑑定』してみると、NPCは一つの魂の情報に、一つの肉体の情報を読み取る事が出来た。
しかし、プレイヤーは二つの魂の情報に、一つの肉体の情報だったのだ。
そして、プレイヤーに肉体の鑑定結果に、気になる言葉があった。
『擬似肉体』
プレイヤーとは『二つの魂の情報』と『擬似肉体』を持ち、この世界において『不死者』である者達のことであり、NPCとは根本的に異なる生命体だった。
明らかに次元の異なる生物と言わざる得ないような生命体が、同じ世界において活動をしているという事に、俺は困惑していた。
「何なのだ、この世界は」
俺は、その歪とも言える状況を見ながら、この世界の事を考えていた。
「魔王様? もうすぐ狩場に着きますよぉ。ぼぉっとしてないでくださいよ! シャキシャキっとレベル上げしちゃいますよ!」
俺が、また考え事をしている間に、目的の狩場に着くところだとソラが声をあげていた。
そして、俺はソラを見ていると、不思議そうな顔をしながらソラが口を開いた。
「どうしたんですか? 私の顔に何か付いてます?」
「いや、大丈夫だ。さぁ、レベル上げとやらをしよう」
「はい! 張り切ってやっちゃいましょう!」
ソラは、そう言いながらモンスターに向かって駆け出していった。
俺は、そんなソラの後ろ姿を見ながら呟いた。
「美宇宙……か」
その名前は、どこか懐かしくもあり、何故か切ない気持ちに俺をさせたのだった。
俺は、何かを報せる音が聞こえたので、メニュー画面を開くと、『フレンドメール』が点滅していた。点滅箇所に触れると、ソラの声が聞こえてきた。
「『今、ログインしました! 魔王様、もしよかったら一緒に遊びませんか?』」
「フレンドメールとは、相手に言葉を届ける事のできる仕組みか。中々良くできているな」
俺が、この世界の理に感心していると、後ろから再度声が聞こえた。
「魔王様! やっぱり! フレンドメール返してくださいよぉ!」
ソラが頬を膨らませて、何やら怒っている様子だが、それは仕方がなかった。
「返せと言われてもな、使い方が分からなかったんだ」
「……メールの使い方が分かんないって、どんなとこに住んでたんですか……」
「勿論、魔王城だが?」
「あぁ……うん、分かりました。それじゃ、今日は何します?」
「別に俺は何でも構わん。特に目的がある訳でもないからな」
「なら、冒険者の基本はモンスター討伐! 戦って戦って強く……あっ」
ソラが何かを思い出したという顔をした為、俺は先に口を開いた。
「俺は自分の力みで十分だ。それに無職で都合が良いからこの職でいるのだから、ソラは気にする事はない」
「え?……でも」
「それに、パーティをまた組むんだろう? 仲間同志で要らぬ気遣いは不要だ」
「仲間!?……ふふふ、そうですよね! 仲間に要らぬ気遣いは、不要なのです! さぁ、私のレベル上げに付き合ってください! 魔王様!」
「その切り替えの良さが、ソラの良いところだな」
途端に遠慮がなくなったソラを見ながら、俺は感心していた。
その後、クエスト案内所に二人で行き、初心者でも受けられそうなクエストを見繕って貰い、街の外へと出かけた。
俺は、狩場と呼ばれる場所へと移動しながら、ソラにこの世界の疑問を尋ねていた。
「この世界には、夜はないのか?」
「あぁ、VRじゃないゲームだとあんまり気になりませんけど、ここだと気になりますよね。この『the Creation Online』は『夜フィールド』はありますが、世界全体が夜になる事はないみたいです。なので、街は基本的にいつも明るいですね」
「だから、ずっと明るかったのか」
「え?」
「いや、何でもない。その『夜フィールド』とは何なのだ?」
「『夜フィールド』とは、ネット情報によると、中級レベルの狩場にあるらしいです。森や草原、海などで一定時間経つとある区間だけ暗くなる場所があるそうで、そこを夜フィールドと呼んでいるらしいです」
「この辺にはないのか?」
俺は、一部の場所だけを限定的に夜にするという、この世界の理に興味が湧きソラに尋ねた。
「この辺りは、まだ初心者エリアですから、夜フィールドは発生しない筈ですね。夜フィールドになると発生するモンスターも強力になるらしいので」
夜フィールドではになると自然発生するモンスターが、強くなるらしい。どんな理屈だと言うのだろうか。
「ん? 街はずっと明るいと言ったな。街に住む者達は、寝ないのか? 街にいるのは、冒険者ばかりではなかったぞ」
「さぁ? 寝ないんじゃないですか? 冒険者以外って事は、NPCですよね?」
「寝ないだと!? それでは、疲れが取れぬではないか!」
俺は、流石に寝ないという返答には驚きを隠せなかった。寝ないと、人は辛い筈だ。
「いやいや、そんなに驚かないで下さいよ。また、細かい所を気にしますね魔王様は」
「細い事か?」
「NPCなんですから、別に眠らなくたって問題ないでしょう? ここは、そういう世界だと思うのが一番ですよ」
「そういう世界か……」
俺は、昨日ソラがログアウトしてから、街を見て回っていた。
「プレイヤーと言うのが転移してくる冒険者で、NPCというのは元からこの世界に住んでいる原住民達の事か」
度々耳にする『プレイヤー』と『NPC』という区別の言葉を、街中を歩きながら理解した。
「しかも、プレイヤーはNPCに対して、傲慢な奴が多い」
プレイヤーがNPCだと思われる人に対して、暴言を吐いている姿は少なくない。
「ちっ! NPCにも、攻撃可能だったりしたら、ストレス発散になるのによ」
「運営に、要望出してみるか?」
「イタズラする奴が出てくるからダメなんだろ? はっはっは」
街には、薬草やアイテム、武器防具等を売っている店には、プレイヤーが売り出している店とNPCが売っている店があった。そして、NPCが売っている店では、やはり態度の悪いプレイヤーが度々見られた。
そして、復活の神殿を見に行った時に、立っていた神官に復活の事について尋ねると、更に驚いた。
「我々は、冒険者の方達と違い復活する事はありません。死ねば、それで終わりなのです」
「何故、冒険者だけが、復活出来るのだ?」
「それは、ここがそういう世界である為です。言うなれば、神のお決めになった世界の理です」
「片や不死身で、片や死ねば終わり。不思議に思った事はないのか? 理不尽だとは、思わないのか?」
俺がそう問いかけると、神官は不思議そうな顔をしながら答えを返してきた。
「あなたは、不思議な事を気にするのですね。それが、世界の理であるのに、何故疑問や理不尽だとか思うのですか?」
「……それも、そうだな。時間を取らせた、悪かったな」
「いえいえ、また分からない事があれば来てください。いつもここにいますから」
俺は、その神官の青年と別れ、街の中央にある噴水のある広場の長椅子に腰掛けた。
先程、プレイヤーとNPCを『鑑定』してみると、NPCは一つの魂の情報に、一つの肉体の情報を読み取る事が出来た。
しかし、プレイヤーは二つの魂の情報に、一つの肉体の情報だったのだ。
そして、プレイヤーに肉体の鑑定結果に、気になる言葉があった。
『擬似肉体』
プレイヤーとは『二つの魂の情報』と『擬似肉体』を持ち、この世界において『不死者』である者達のことであり、NPCとは根本的に異なる生命体だった。
明らかに次元の異なる生物と言わざる得ないような生命体が、同じ世界において活動をしているという事に、俺は困惑していた。
「何なのだ、この世界は」
俺は、その歪とも言える状況を見ながら、この世界の事を考えていた。
「魔王様? もうすぐ狩場に着きますよぉ。ぼぉっとしてないでくださいよ! シャキシャキっとレベル上げしちゃいますよ!」
俺が、また考え事をしている間に、目的の狩場に着くところだとソラが声をあげていた。
そして、俺はソラを見ていると、不思議そうな顔をしながらソラが口を開いた。
「どうしたんですか? 私の顔に何か付いてます?」
「いや、大丈夫だ。さぁ、レベル上げとやらをしよう」
「はい! 張り切ってやっちゃいましょう!」
ソラは、そう言いながらモンスターに向かって駆け出していった。
俺は、そんなソラの後ろ姿を見ながら呟いた。
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