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第84話 勇者召喚した国で魔王に成りたいと叫んだらダメよ
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『グループが三つ出来れば、三つ巴……に、なるには勢力が均衡しなければならないと駄目だけど。これは、どうかな?』
「ボディがぺこベコぉおお!?」
カンは、ア・ルミ隊員の【錬金】の力によって、新たな力を手に入れていた。
『良かったね、カン。転移して割とすぐに、新しい力を手にしたじゃないか』
「新たな力というより、もはや他種族に転生したと言っても過言ではないカァン!?」
「カン缶長! どうやら、この三つ巴の状況を、王様に報告するみたいです」
「ほほう、だが三つ巴とか言うでない。もっと小さな声で喋るのカァン。恥ずかしいカァアン……」
『流石に、そういう羞恥心は持っているんだね』
全く三つ巴となっていない勢力関係に、カンはア・ルミ隊員に対して小声を要求していた。
「我々空き缶隊は、立派な第三勢力ですよ!」
「声が大きいカァン! 一人と一本のグループで、よくぞそこまで言い切れるカァン!?」
「さぁ、我々も行きましょう!」
カン缶長を掴んだア・ルミ隊員は、自信満々に他の二人のリーダーと共に、肩で風を切って歩いて行くのであった。
「かっちゃん! この子は、何なのカァン!?」
「……ん?」
かっちゃんは、聞こえないふりをした。
「いつから難聴系主人公になったカァン!? 絶対に聞こえておるカァン!?」
動揺するカンだったが、諦めずに今度は反対側を歩く葉桜に目を向けた。
「くっ、ならば! 葉桜よ! 学級委員長だったのなら、この子を知っているだろ! おぬしの同級生は、一体どうなっておるのカァン!」
「……よかったじゃないか、仲間ができて。だから、もう僕に絡まないでくれるかな」
「あからさまな棒読みの上に、単刀直入に拒否られたカァン!?」
「カン缶長、当たり前じゃないですか。二人は、我々のライバルグループですよ。そう、やすやすと話に乗ってきませんよ」
「絶対そうじゃない感じカァァアアァン!?」
「カン缶長! 王の間に着きました! 堂々と我々の行動指針を、ぶち上げて来てください!」
「そんな流れになるのカァン!? 決めてないぃいいカァアァン!?」
ア・ルミ隊員から告げられた言葉に、激しく動揺するカン。
「誰か他に、我を助けるべく入缶するものはおらぬのカァン!?」
『行動するには目的が必要だし、それを示さない限り、新しい隊員は入隊しないんじゃないかな』
「正論を言いよってぇえ! 我って、何の為に動けばいいのカァアン!?」
『はぁ、いつまで情けない姿を晒すのさ』
「なんだとカァン! 元はと言えば、おぬしが勝手に我を転移させたからではないカァアン!」
『そんな事は、かっちゃんや葉桜君達も同じじゃないか。それでも彼らは、自ら心に決めた決意で、前に進もうとしているんだよ。カンは、何のために転移を繰り返しているんだい?』
カンは、自らの目標を失おうとしていた。
何の為に、自分が強くなろうとしていたのか。
何処まで成り上がろうとしていたのか。
自分の夢は、何だったのか。
「……我の……心に決めた事とは……そうだ……我は……」
カンが、自らの心へと語りかける中、かっちゃんと葉桜は王へ、これからの行動について報告していた。
「うむ、葉桜殿達はこの世界にて生きていく選択をし、阿木殿達は元の世界への帰還を目指すという訳じゃな。そして、カン殿はどうするつもりなのだ?」
王は、二人からそれぞれのこれからの行動指針を確認すると、一応念の為にカンにも同じく尋ねたのだった。
その時、カンの熱い魂のこもった咆哮が、玉座の間に響くことになる。
「我は、魔王になるカァアァン!」
そして、静まり返る玉座の間。
数秒の沈黙の後、王が口を開く。
「……ほほう……残虐非道の限りを尽くすと言われ、この世界に生きる者たちにとっての最大の敵とも言える〝魔王〟になりたいと?」
「カン缶長……実は仲間と思いきや、ラスボスのパターンだったんですか!? ちょっと魔王とか重いんで、勘弁してください! 辞めさせて頂きます!」
ア・ルミ隊員は、カンの〝魔王宣言〟を聞いた結果、即断で脱退した。そして、カンをその場の床に置いて下がるであった。
「……は? ん? あれ? まさか?」
『ちょっと場を弁えて、独り言を言わないと。それに、独り言にしては大声過ぎたよねぇ』
「このタイミングで、全員が我の独り言を聞いたのカァン!?」
かっちゃんと蜜柑は、揃ってカンに警戒を向ける。
「ドMカン……そのMは、MAOUのMだったのか」
「カンちゃん……潰されて喜ぶ方のMだと思ってたよ、誤解してごめんね?」
「かっちゃん!? そっちのMではないカァン!? 蜜柑!? そっちのMで大体あってるカァン!?」
「まさか、魔王を目指す空き缶だったとはね。僕に突っかかってきたのは、僕の覇王としての器を探りに来たってところか」
「葉桜よ! 全部分かったぞみたいなドヤ顔するでない! 全く違うカァン!?」
カンは、周りにツッコミを入れるあまり、王の魔力が高まっている事に気付かなかった。
『そんな面白くもないツッコミを、周りにしている場合かな? 王様の魔力が、割と洒落ではない感じに高くなってるよ?』
イチカの言葉に、やっと事態がシリアスにむかっている事に、気がつき始めるカン。
「王が剣を!? 何故カァアン!?」
「この世界の、敵と成ろうとする者よ! 今ここで成敗してくれるわ!」
最上段に、王は剣を掲げる。
「ちょっと待つのカァン! 話せば分かるカァン! 正直、展開が急過ぎて思考が追いつかないカァン!?」
「問答無用! 奥義〝クロスメタルスラッシュ〟!」
「キャァアァン!? 効果抜群カァアァアン!?
そして玉座の間に、カンの断末魔が響いたのだった。
「ボディがぺこベコぉおお!?」
カンは、ア・ルミ隊員の【錬金】の力によって、新たな力を手に入れていた。
『良かったね、カン。転移して割とすぐに、新しい力を手にしたじゃないか』
「新たな力というより、もはや他種族に転生したと言っても過言ではないカァン!?」
「カン缶長! どうやら、この三つ巴の状況を、王様に報告するみたいです」
「ほほう、だが三つ巴とか言うでない。もっと小さな声で喋るのカァン。恥ずかしいカァアン……」
『流石に、そういう羞恥心は持っているんだね』
全く三つ巴となっていない勢力関係に、カンはア・ルミ隊員に対して小声を要求していた。
「我々空き缶隊は、立派な第三勢力ですよ!」
「声が大きいカァン! 一人と一本のグループで、よくぞそこまで言い切れるカァン!?」
「さぁ、我々も行きましょう!」
カン缶長を掴んだア・ルミ隊員は、自信満々に他の二人のリーダーと共に、肩で風を切って歩いて行くのであった。
「かっちゃん! この子は、何なのカァン!?」
「……ん?」
かっちゃんは、聞こえないふりをした。
「いつから難聴系主人公になったカァン!? 絶対に聞こえておるカァン!?」
動揺するカンだったが、諦めずに今度は反対側を歩く葉桜に目を向けた。
「くっ、ならば! 葉桜よ! 学級委員長だったのなら、この子を知っているだろ! おぬしの同級生は、一体どうなっておるのカァン!」
「……よかったじゃないか、仲間ができて。だから、もう僕に絡まないでくれるかな」
「あからさまな棒読みの上に、単刀直入に拒否られたカァン!?」
「カン缶長、当たり前じゃないですか。二人は、我々のライバルグループですよ。そう、やすやすと話に乗ってきませんよ」
「絶対そうじゃない感じカァァアアァン!?」
「カン缶長! 王の間に着きました! 堂々と我々の行動指針を、ぶち上げて来てください!」
「そんな流れになるのカァン!? 決めてないぃいいカァアァン!?」
ア・ルミ隊員から告げられた言葉に、激しく動揺するカン。
「誰か他に、我を助けるべく入缶するものはおらぬのカァン!?」
『行動するには目的が必要だし、それを示さない限り、新しい隊員は入隊しないんじゃないかな』
「正論を言いよってぇえ! 我って、何の為に動けばいいのカァアン!?」
『はぁ、いつまで情けない姿を晒すのさ』
「なんだとカァン! 元はと言えば、おぬしが勝手に我を転移させたからではないカァアン!」
『そんな事は、かっちゃんや葉桜君達も同じじゃないか。それでも彼らは、自ら心に決めた決意で、前に進もうとしているんだよ。カンは、何のために転移を繰り返しているんだい?』
カンは、自らの目標を失おうとしていた。
何の為に、自分が強くなろうとしていたのか。
何処まで成り上がろうとしていたのか。
自分の夢は、何だったのか。
「……我の……心に決めた事とは……そうだ……我は……」
カンが、自らの心へと語りかける中、かっちゃんと葉桜は王へ、これからの行動について報告していた。
「うむ、葉桜殿達はこの世界にて生きていく選択をし、阿木殿達は元の世界への帰還を目指すという訳じゃな。そして、カン殿はどうするつもりなのだ?」
王は、二人からそれぞれのこれからの行動指針を確認すると、一応念の為にカンにも同じく尋ねたのだった。
その時、カンの熱い魂のこもった咆哮が、玉座の間に響くことになる。
「我は、魔王になるカァアァン!」
そして、静まり返る玉座の間。
数秒の沈黙の後、王が口を開く。
「……ほほう……残虐非道の限りを尽くすと言われ、この世界に生きる者たちにとっての最大の敵とも言える〝魔王〟になりたいと?」
「カン缶長……実は仲間と思いきや、ラスボスのパターンだったんですか!? ちょっと魔王とか重いんで、勘弁してください! 辞めさせて頂きます!」
ア・ルミ隊員は、カンの〝魔王宣言〟を聞いた結果、即断で脱退した。そして、カンをその場の床に置いて下がるであった。
「……は? ん? あれ? まさか?」
『ちょっと場を弁えて、独り言を言わないと。それに、独り言にしては大声過ぎたよねぇ』
「このタイミングで、全員が我の独り言を聞いたのカァン!?」
かっちゃんと蜜柑は、揃ってカンに警戒を向ける。
「ドMカン……そのMは、MAOUのMだったのか」
「カンちゃん……潰されて喜ぶ方のMだと思ってたよ、誤解してごめんね?」
「かっちゃん!? そっちのMではないカァン!? 蜜柑!? そっちのMで大体あってるカァン!?」
「まさか、魔王を目指す空き缶だったとはね。僕に突っかかってきたのは、僕の覇王としての器を探りに来たってところか」
「葉桜よ! 全部分かったぞみたいなドヤ顔するでない! 全く違うカァン!?」
カンは、周りにツッコミを入れるあまり、王の魔力が高まっている事に気付かなかった。
『そんな面白くもないツッコミを、周りにしている場合かな? 王様の魔力が、割と洒落ではない感じに高くなってるよ?』
イチカの言葉に、やっと事態がシリアスにむかっている事に、気がつき始めるカン。
「王が剣を!? 何故カァアン!?」
「この世界の、敵と成ろうとする者よ! 今ここで成敗してくれるわ!」
最上段に、王は剣を掲げる。
「ちょっと待つのカァン! 話せば分かるカァン! 正直、展開が急過ぎて思考が追いつかないカァン!?」
「問答無用! 奥義〝クロスメタルスラッシュ〟!」
「キャァアァン!? 効果抜群カァアァアン!?
そして玉座の間に、カンの断末魔が響いたのだった。
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