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第83話 アルミ缶よりは、元に戻った感はあるかな?

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『新たな出会いは、新しい物語を生んだり生まなかったりするのだけれど、この出会いはどうなのかな?』
  
「近い! 顔が近いカァアァン!? 距離感の縮め方が、異常に早いカァアァン!?」
  
 カンを突然掴み上げた少女は、おもむろに手に持った空き缶を高く掲げた。
  
「私、有実ありみ 留実子るみこはこの喋る空き缶を、缶長としたチーム空き缶に入缶します!」

 そして、声高らかに宣言したのだった。
  
「缶長!? 入缶ってなにカァアァン!? われも知らない組織を、いきなり立ち上げるでないカァアァン!?」 
  
「カン缶長! わたくし、有実ありみ改めア・ルミ隊員が、早速入缶者を募ります!」
  
「突然の改名カァアン!? もう何コレ!? 展開について行けない! 誰かヘルプカァアァン!?」
  
 カンの叫びに、誰しもが目を逸らしたのだった。
  
「嘘カァアアアアン!?」
  
 結局クラス転移した三十三名と一本は、三つのグループ別れることになる。

 異世界で生きるとした葉桜をリーダーとする二十名、帰還を目的としたかっちゃんをリーダーとする十二名、そしてカンを缶長とする一本と一名の目的不明グループになったのだった。
  
「……かっちゃん……蜜柑……我を置いて行かないでカァン……」
  
「カン缶長! 他に入缶希望者はいませんでしたが、凹まないで下さい! 得体の知れない喋る空き缶について行こうとする様な変わり者は、このア・ルミ隊員以外にはいないみたいです!」
  
「自分で認めちゃうカァアン!? 自然に我を貶してるけど、本当に慕ってくれてるのカァアン!?」

 かっちゃんと蜜柑が自分から離れていったことは、淋しさとともに、ある問題点を発生させていた。
  
「我を回復出来るかっちゃんが離れていってしまったのは、正直痛いのカァン」

『確かに、カンを転生以外で直すことが出来た人物との別れは、正直痛いよね』
  
 かっちゃんは帰還希望グループのリーダーとなった為、蜜柑と共に帰還したい者たちと集まり、今後の事を話し合っていた。

『まるで、もうカンの事など頭の片隅にもないようだね』

「……カァン……」
  
「カン缶長! 大丈夫であります! ア・ルミ隊員も、カン缶長を直す事が出来るのであります!」

 相変わらず前髪と分厚い瓶底眼鏡の為に、ほぼ顔がわからないア・ルミ隊員がカンに対して敬礼しながら、驚きの言葉を発した。
  
「お主、何キャラなのだ一体……って、直せるとはまことカァアン!?」
  
「まことであります! 私の力をお見せいたしましょう!」
  
「ん? 見せる?」
  
「先ずは……せぃ!」
  
「ピギャン!?」

『隊長にアピールする為に、隊長を潰すとは、中々色々ぶっ飛んでいる隊員だね』
  
「カ……カィイン……」
  
 ア・ルミ隊員は、カン缶長に自己アピールする為に、全力でカン缶長を潰した。
  
 "カンは、ア・ルミ隊員からメタル(を)プッシュを受けた!"
 "カンは、ダメージ50を受けた! 体力が0になった!"
 "カンは、【常時発動M型(Lv.13)】の効果により体力が13に戻った!"

「女の子でも余裕で、痛恨の一撃ぃいいぃカァアン……って、何してくれるカァン!?」

「あれ? 潰したのに、また戻っちゃいましたね? ご自分で、直せるのでありますか?」

 折角潰したのにと思いながら、カンに対して首を傾げるア・ルミ隊員。
  
「我の一回だけのスキルカァアン! 何してくれカピャ!?」

 カンが次は直せないことを匂わせた瞬間、再びア・ルミ隊員はカンを潰した。

「な……何を……カァン……」

 辛うじて転生まで至るほどのダメージは入らなかったが、それでも酷く空き缶ボディは歪んでいた。

「コレでよし! ここからが、ア・ルミ隊員の真骨頂! ご覧あれ!〝錬金〟〝カン缶長プラス飲み終わった超薄型ペットボトル〟!」
  
「完全に……サイコな……な!? なんぞ、光が!? 怖いカァアアアアン!?」

 ア・ルミ隊員がカンの横に置いた〝飲み終わった超薄型ペットボトル〟とカンが、同時に光り始める。
  
 "カンは、【錬金】の素材として使用された!"
 "カンは、【錬金】により【超薄型ペットボトルカン】となった!〟

「ほら! ちゃんと直りましたよ!」

 それはこれ以上ないほどのドヤ顔で、ア・ルミ隊員が超薄型ペットボトルボディとなったカンを見下ろしていた。
  
「……ちゃんと? な訳あるカァアァン! 我のアイデンティを、何処にやったのカァアァン!?」
  
「超薄型ペットボトルを、素材に使用したことで、ほら! こんなことになっても、大丈夫!」

 おもむろにア・ルミ隊員がカンを拾い上げ、そして両手で思いっきり捻った。
  
「ヒギャァアァアアン!?」
  
「さらに小さくなっても、大丈夫!」

 そして今度は両手に力をこめて、カンを団子のように丸めて潰した。
  
「ひげやぺぎゃらかぁあらきゃぁああ!?」
  
「でも、伸ばせば……ふん!

「ギャァらギャカァアァン!?」

「ほら! だいたい元どおり!」
  
「殺すきカァアァン!? 全然元通りではないカァアァン! 折り目が酷いことになってるカァアァン!?」
  
「カン缶長! 心配いりません! どんどん傷ついたら、このア・ルミ隊員がどっかその辺の物を使って〝錬金〟しますから!」
  
「我の話を聞くカァアァン! どんどん融合されるとか、心配以外の要素がないカァアァアン!?」

 カンは、恐怖に慄きながら、情けない悲鳴をあげるのであった。
 
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