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第76話 言わなきゃ良かった、という問題でもない
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『基本的に、非日常的な事が起きた場合に足元に置いてある空き缶など、誰の目にも止まらないよね。カン、ここは存在をウザいほどにアピールしないと、置いてかれるよ?』
「かっちゃん! 蜜柑! 我を持って行くのだ! ここに置いていかないで欲しいのカァァアアァン!?」
カンは、自分を置いて歩き出そうとした二人に必死に声をかけたのだった。
女神から与えられた【空き缶浮遊(Lv.1)】は消費魔力が〝0〟というまさしくチートと呼ぶに相応しかったが、あくまで空き缶がその場で浮くだけである為、移動が出来なかったのだ。
「消費魔力だけはチートの〝やや浮く〟だけでは、移動できぬカァアァン!」
「しょうがねぇなぁ。行くぞ、情けない声だすんじゃねぇよ」
「空き缶なんだから、もっとしっかりしなよ!」
「空き缶なんだからって、どういう意味がわからぬぅカァアァン」
かっちゃんと蜜柑の二人は、床に落ちている空き缶を回収した後、急いでクラスの列に戻るのだった。
『一日一善、立派なだね。床に落ちてる空き缶拾うなんて、若いのにしっかりした二人だよ』
「我を、当たり前の様にゴミ扱いするでないカァン。ときにお主達、元の世界に帰る事が出来るかどうか、女神や先程の姫に尋ねなくて良かったのか?」
「「え?」」
ふとしたカンの言葉に、二人は固まっていた。
「何を驚いておる。召喚されたのであれば、帰還する方法を聞かなくて良いのかと聞いておるのだ。我は自分の世界へと帰る方法を心得ておるが、お主達は良いのか?」
「確かに……なんで誰も確認しなかったんだ?」
「かっちゃん、私もカンちゃんに言われるまで、何もそんなこと思わなかったよ……」
「おぉ、我が〝ちゃん〟付けにランクアップしておる」
蜜柑の中で、カンの存在が今の指摘により、名前呼びするほどの価値ある物へと昇格した瞬間だった。
「なんか、呼び方がドMカンと被ってるのが気に入らないが……それにしても、どういうことだ?」
「これもまた、縁カァン」
「空き缶との縁なんぞ、求めてねぇよ」
かっちゃんと軽口を言い合いながらも、カンは小さなボディから今にも溢れてなくなりそうな記憶の中に、二人だけでなく全員が〝帰還〟のことを口にしなかった一つの可能性が浮かび上がった。
「可能性というと……ゲス勇者の【魅了】カァン」
「魅了? なんだそれ?」
「空き缶も、他の空き缶に欲情するの? ちょっとどころか、結構それは興味あるなぁ」
「蜜柑は、そんなキャラに成長しておったのカァン……〝魅了〟とはだな」
カンが魅了の効果について二人に説明しようとした時、前方から王の間に着いたとの声が聞こえた。
そして、カンが〝魅了〟の説明をする暇なく王の間へと、クラス一同が進んでいったのだった。
「二人の口と鼻の周りだけなら……持たせられるか」
カンは小さくそんな事を呟きながら、クラス全員と共に王の間に入ると、玉座にこれぞ王と言わんばかりの格好をした中年の男が座っていたのが見えた。
「おぉ、召喚者達よ! よくぞ参られた!」
よく通る声で、王は召喚者達に向かって声をかけた。
「あれが王か。大分若そうに見えるカァン」
「そうだな、漫画とか何かのイメージだと爺だもんな。だがあの王女の親なら、アレくらいの歳だろ。だが、それよりも……」
「ねぇ、かっカンちゃん。何か変な感じしない?」
「かっちゃんと我を、そん感じに略する蜜柑のセンスを変だと我は思うカァン」
「呼び名のセンスに関しては、ドMカンに同意する。それは置いておいて、蜜柑も感じるか。俺たち以外の雰囲気が、なんかおかしい。いや、俺たちと第一王女以外だな」
「ようやくお主達も気付いたカァン」
「なんだ、ドMカン何か知っているのか?」
「勿体ぶって引っ張って、大したことなかったら凹ますよ。人のセンスを変呼ばわりした腹いせに。かっちゃんも、あとでお仕置きね」
「なぜ、そんなに辛辣なのカァン!?」
「俺は関係ないだろう!?」
『何、美少女女子高校生に無碍に扱われ興奮してるのさ』
「さも事実かのように、呆れながら言うでないカァン!?」
「独り言はいいから、話を進めろよ」
「カンちゃんは、かまってちゃんなの?」
「蜜柑が、我に対してさっきから扱いが雑すぎるカァアァン!?」
『カン、蜜柑と相性が合う予感を感じ興奮しながらでも良いから、さっさと現状について話を始めてあげなよ』
「おぬしは、黙れ。我はいたって冷静カァン。ふぅ」
一つ息を吹く真似をしたカンは、勿体ぶりながら話を始めた。
「過去に、この手のやり口を得意としていた者と死闘を演じた事があったのカァン」
「「空き缶が?」」
「そうカァン。この空き缶がカァン」
そう言うと、カンは自身のボディに魔力が充填されていることを確認した。
「物は試しにやってみるカァン。かっちゃんよ、我を床の上に下ろすのだ」
「あぁ、わかったよ」
そして、床に置かれたカンは魔法を唱えたのだった。
「風を支配する偉大なる龍よ 我に力を! 〝風龍の戯れ〟カァアァン!」
『何、勝手に詠唱っぽいこと付け足したの?』
"カンは、【風龍の戯れ(Lv.3)】を発動した!"
"カンは、MPを15消費した!"
「下から風が!?」
「空き缶がスカートめくりって、とんだゲス缶だね!」
カンを中心として、風が吹き、女子高生達のスカートを捲りあげていた。
「ちがぁああああうカァアァアン!? そもそも足元にいる我は、見たい放題なのだから、完全に冤罪カァアァン!?」
「駄目だろ、それはそれで」
「ゲスというより、クズ缶」
『自白と言うことで、よいかな』
「カァン!?」
アルミボディが凍る程の冷たい声と、まさにゴミを見る目で見下されるカンであった。
「かっちゃん! 蜜柑! 我を持って行くのだ! ここに置いていかないで欲しいのカァァアアァン!?」
カンは、自分を置いて歩き出そうとした二人に必死に声をかけたのだった。
女神から与えられた【空き缶浮遊(Lv.1)】は消費魔力が〝0〟というまさしくチートと呼ぶに相応しかったが、あくまで空き缶がその場で浮くだけである為、移動が出来なかったのだ。
「消費魔力だけはチートの〝やや浮く〟だけでは、移動できぬカァアァン!」
「しょうがねぇなぁ。行くぞ、情けない声だすんじゃねぇよ」
「空き缶なんだから、もっとしっかりしなよ!」
「空き缶なんだからって、どういう意味がわからぬぅカァアァン」
かっちゃんと蜜柑の二人は、床に落ちている空き缶を回収した後、急いでクラスの列に戻るのだった。
『一日一善、立派なだね。床に落ちてる空き缶拾うなんて、若いのにしっかりした二人だよ』
「我を、当たり前の様にゴミ扱いするでないカァン。ときにお主達、元の世界に帰る事が出来るかどうか、女神や先程の姫に尋ねなくて良かったのか?」
「「え?」」
ふとしたカンの言葉に、二人は固まっていた。
「何を驚いておる。召喚されたのであれば、帰還する方法を聞かなくて良いのかと聞いておるのだ。我は自分の世界へと帰る方法を心得ておるが、お主達は良いのか?」
「確かに……なんで誰も確認しなかったんだ?」
「かっちゃん、私もカンちゃんに言われるまで、何もそんなこと思わなかったよ……」
「おぉ、我が〝ちゃん〟付けにランクアップしておる」
蜜柑の中で、カンの存在が今の指摘により、名前呼びするほどの価値ある物へと昇格した瞬間だった。
「なんか、呼び方がドMカンと被ってるのが気に入らないが……それにしても、どういうことだ?」
「これもまた、縁カァン」
「空き缶との縁なんぞ、求めてねぇよ」
かっちゃんと軽口を言い合いながらも、カンは小さなボディから今にも溢れてなくなりそうな記憶の中に、二人だけでなく全員が〝帰還〟のことを口にしなかった一つの可能性が浮かび上がった。
「可能性というと……ゲス勇者の【魅了】カァン」
「魅了? なんだそれ?」
「空き缶も、他の空き缶に欲情するの? ちょっとどころか、結構それは興味あるなぁ」
「蜜柑は、そんなキャラに成長しておったのカァン……〝魅了〟とはだな」
カンが魅了の効果について二人に説明しようとした時、前方から王の間に着いたとの声が聞こえた。
そして、カンが〝魅了〟の説明をする暇なく王の間へと、クラス一同が進んでいったのだった。
「二人の口と鼻の周りだけなら……持たせられるか」
カンは小さくそんな事を呟きながら、クラス全員と共に王の間に入ると、玉座にこれぞ王と言わんばかりの格好をした中年の男が座っていたのが見えた。
「おぉ、召喚者達よ! よくぞ参られた!」
よく通る声で、王は召喚者達に向かって声をかけた。
「あれが王か。大分若そうに見えるカァン」
「そうだな、漫画とか何かのイメージだと爺だもんな。だがあの王女の親なら、アレくらいの歳だろ。だが、それよりも……」
「ねぇ、かっカンちゃん。何か変な感じしない?」
「かっちゃんと我を、そん感じに略する蜜柑のセンスを変だと我は思うカァン」
「呼び名のセンスに関しては、ドMカンに同意する。それは置いておいて、蜜柑も感じるか。俺たち以外の雰囲気が、なんかおかしい。いや、俺たちと第一王女以外だな」
「ようやくお主達も気付いたカァン」
「なんだ、ドMカン何か知っているのか?」
「勿体ぶって引っ張って、大したことなかったら凹ますよ。人のセンスを変呼ばわりした腹いせに。かっちゃんも、あとでお仕置きね」
「なぜ、そんなに辛辣なのカァン!?」
「俺は関係ないだろう!?」
『何、美少女女子高校生に無碍に扱われ興奮してるのさ』
「さも事実かのように、呆れながら言うでないカァン!?」
「独り言はいいから、話を進めろよ」
「カンちゃんは、かまってちゃんなの?」
「蜜柑が、我に対してさっきから扱いが雑すぎるカァアァン!?」
『カン、蜜柑と相性が合う予感を感じ興奮しながらでも良いから、さっさと現状について話を始めてあげなよ』
「おぬしは、黙れ。我はいたって冷静カァン。ふぅ」
一つ息を吹く真似をしたカンは、勿体ぶりながら話を始めた。
「過去に、この手のやり口を得意としていた者と死闘を演じた事があったのカァン」
「「空き缶が?」」
「そうカァン。この空き缶がカァン」
そう言うと、カンは自身のボディに魔力が充填されていることを確認した。
「物は試しにやってみるカァン。かっちゃんよ、我を床の上に下ろすのだ」
「あぁ、わかったよ」
そして、床に置かれたカンは魔法を唱えたのだった。
「風を支配する偉大なる龍よ 我に力を! 〝風龍の戯れ〟カァアァン!」
『何、勝手に詠唱っぽいこと付け足したの?』
"カンは、【風龍の戯れ(Lv.3)】を発動した!"
"カンは、MPを15消費した!"
「下から風が!?」
「空き缶がスカートめくりって、とんだゲス缶だね!」
カンを中心として、風が吹き、女子高生達のスカートを捲りあげていた。
「ちがぁああああうカァアァアン!? そもそも足元にいる我は、見たい放題なのだから、完全に冤罪カァアァン!?」
「駄目だろ、それはそれで」
「ゲスというより、クズ缶」
『自白と言うことで、よいかな』
「カァン!?」
アルミボディが凍る程の冷たい声と、まさにゴミを見る目で見下されるカンであった。
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