イセカン!?〜異世界の空き缶に転生した我だけれど、諦めずに魔王に成ってみせるカァアン!〜

イチ力ハチ力

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第67話 縁は異なもの味なもの

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「で、なんで此処に戻ってきてるの?」

 普通にイチカの書斎の机の上に戻ってきているカンに向かって、イチカは問いかけた。

「カインに〝帰還リターン〟を使われて、戻ってきたのだ」

「なんか一緒に泣いて、分かり合った感じじゃなかった? あのあと、すぐに帰ってきたよね」

「……夕御飯の時間らしくてな。さくっと〝帰還リターン〟と……カァン」

「そっか……どんまい……」

「ガチめに憐れむでないカァアアァアン!」

 そして、カンは泣いた。

 実際は、特に空き缶の口やボディから水漏れするわけでなく、そんな雰囲気にボディをカタカタを悲しそうに震わすのであった。

「まぁ、少しは打ち解けたような雰囲気があったような無かったような、そんな曖昧なノリが、空き缶ぽくてよかったよ」

「確かに、その場の勢いノリだけだった気もするカァン」

「実際問題として、カイン君の魔力をカンが生かす為には色々課題があるね。代表的になのは、膨大すぎる魔力の制御だね」

「魔力の暴走か……」

「そうだね。折角膨大な魔力を使って風龍を具現化出来ても、カンの言うことを全く聞かないんじゃ、意味がないからね」

「しかし、一体どうすれば……」

「本物に直接、聞いてみれば良いんじゃない?」

「本物? ということは?」

「そい、転移っと」

 ノートパソコンのエンターキーを勢いよく叩くイチカ。

「エンターキーをタタァン! ってしたいだけじゃないのカァアアアン!?」

 カンは眩い光に包まれると、地上から遥かに離れた何処かの上空に転移させられたのだった。

「おちるぅカァアァアン!? デジャブカァアァン!?」

 ひたすら上空から自由落下するカン。地味にビビってメンタルにダメージが入っており、体力は徐々に減少している。

〝なんじゃ、この間の空き缶ではないか〟

 そんな唯々落ちてゆく空き缶に、どっしりとした声で話しかける者が現れた。

「りゅりゅりゅぅううぅうう!?」

 優雅に空を翔るは、以前にカンを遊んでいた風龍であった。

『前に、カンを蹴鞠みたいに遊んでいた風龍みたいだね。覚えてる? というか、あっちは覚えてそうだから、覚えてないとか言ったら、どうなるかわかりそうなものだけれど』

「勿論我はおおお覚えておるとも!? むしろ、そちらが我を覚えていてくれたことに驚きなのカァアン!?」

 しっかり覚えていることをアピールしながら、自分を卑下する空き缶。

〝普通こんな上空に、空き缶を捨てる奴なんぞおらんからな〟

「覚えられ方の印象が、廃棄物ゴミくくりだった! 我はゴミではない故に、改めて捨てないでカァアァアアン!?」

『人語を話す人外と言えば、先ずは龍が思い浮かぶのは、某龍玉の影響でだろうかね。〝我の願いを、かなえたまえぇえ〟とか言っていみたいよね? 試しに言ってみれば?』
  
「カィン!? キャン!? 我で、リフティングするでない!?」

 イチカの言葉に、反応する余裕が今のカンにはなかった。

 カンが転移した先には、以前にカンを遊んでいた風龍がおり、今回も同じくカンをリフティングして遊んでいたからだった。

 しばらくカンで遊んでいると、風龍はある事に気が付いた。
  
〝なんじゃ、空き缶。空き缶のくせに、我の魔力を帯びておるではないか〟
  
「カィン! 己が! コイン!? こうやって! 遊んでおった! キャイン! からであろう! そろそろ止めい! 話もまともにできぬではないカァアアァン!」

 勇気をもって大声で、今の待遇に不満をあげると、風龍はカンで遊ぶのを一先ずやめた。
  
〝普通そんなことぐらいで、誰かの魔力に、染まるなんて事はないがの〟
  
「は!? まさか我は、選ばれし者!?」
  
〝きっと、中身が空っぽだったかじゃろうな。空き缶だけにの〟
  
「上手い事言おうとするでないわ! やかましいわ!」
  
〝お主の方が、やかましいわ。カンカンとの〟

 カンに文句を言われた風龍は、再びリフティングを再開した。そして、再び鳴り響く空き缶の金属音であった。
  
「だから、リフティングをやめてカァアァアン!?」
  
 カンを楽しげに尾でリフティングしていた風龍は、ひとしきり遊ぶと満足して再びその場から去ろうとした。
  
「待つのじゃ! 風龍殿ぉお!」
  
〝なんじゃ、一発芸でもみせてくれるのかの〟
  
「違う方向で、いきなりハードル高くしすぎカァアン!? そうではない! 風龍の制御の仕方を教えて欲しいのだ!」

 その場をカンを揶揄いながら立ち去ろうとしていた風龍は、カンのある言葉に反応した。

 そして、その巨体を空中で静止させた。
  
〝……我の制御だと?〟

 そして、分かりやすく怒気が滲み出る迫力の籠った声で、カンに問う。
  
「え? いや、本人でなくてですね?」
  
〝空き缶の分際で、龍を従えようだとぉおおお!〟
  
『おぉお。これぞ、龍の逆鱗に触れるというやつだね。迫力満点だね、こりゃ』
  
「スティ!」

 慌てすぎてカンは、悪手を重ねる。
  
〝ほう、今度は我を犬扱いとは、何処まで呆れる空き缶よ〟
  
「今のは確かに我が悪いが、先程の〝風龍の制御〟と言うのは、お主ではなくて、我が魔力で創り出した風龍のことなのカァアン!?」
  
〝ぬぅ? 制御出来ぬほどの【魔力龍の具現化】を、空き缶がしたと言うのか?〟
  
「我というより、我を召喚した召喚士なのカァン」
  
〝ほほう、それほどに魔力出力を誇る者がおるのか……〟

 カンに魔力を供給した人物に、風龍は興味を示したようだった。
  
「しかし、制御が出来ぬのであれば意味がないのだ! 我が、壊されちゃうのカァアァン!?」
  
〝そうであろうな。ふむ……お主の飼い主に興味が湧いたし、良かろうではないか〟
  
「おぉお! 恩に着るカァアアン!」
  
〝この一撃に耐えたら、コツぐらいは教えてやろう〟
  
「……え? はい? ん? この展開は?」
  
 風龍はカンに向かって、大きく顎門を開けた。そしてその中心には異様なほど密度の高い魔力が収束していた。
  
〝龍をから力を得たいのであれば、それ相応の力を示すのだな〟
  
「ちょ!? 待っ……」
  
ガァアアァアアアァアアアアアア風龍の咆哮!〟

 まるで千里先まで轟くような風龍の咆哮が、カンに向かって放たれたのであった。
 
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