54 / 99
第54話 まさか正しく伝わるとはね
しおりを挟む
『知らない場所で一人でいると、その場の雰囲気に悶々と不安になりやすいだろうね。そう、カイン君にとって、例え中身が空っぽでアルミの空き缶でペコッペコだとしても、カンを手に持っている事は、誰もいないよりは1mm程マシ、かもしれないかもしれない』
「さして大事な事でもないのに、二回も〝かもしれない〟を繰り返すな。むしろ、何故断定せぬのだ」
カイン=アーキは女性教諭に言われた通りに、入学式が行われていた会場の壁際に移動していた。
不安そうにしながらも、手には空き缶を潰さないように優しく持ちながら、大きな嘆息を吐いていた。
「カインよ、ため息を吐くと幸せが逃げるぞ」
「……いやいや、君の所為だからね? 本当に一体、何なの君は?」
手に持つ空き缶に向かって、カインは呟いた。何も知らない者が見れば、壁にもたれかかりながら、缶コーヒーを飲んでいる少年である。
「我が何者なのか……側面に書いてあるので、読んだ方が早いであろう」
「側面? 本当だ、個人情報がダダ漏れだね……って、え?」
カインは、ある文字に目が止まって、思わず言葉を失った。
・・・・・・・
名前:カン
称号:
風龍の玩具
借金缶 NEW!
種族:空き缶(Lv.9)
体力:18(最大18)
魔力ストック:10(最大10)
ちから:0
すばやさ:0
かたさ:2
まりょく:7
※補正
『魔沼ヨゴレ呪い』効果により魔力増加(+2)
『風龍の玩具』効果により魔力増加(+5)
技能:
言語理解(全異世界の誰とでも話が出来る)
常時発動M型(Lv.9)
熱耐性(Lv.2)
寒耐性(Lv.2)
ヨゴレ耐性(Lv.3)
風龍の戯れ(Lv.2)
魔力暴走(Lv.1)
状態:
魔沼ヨゴレの呪い(Lv.2)
絶対服従※イチカに100万MPを返済するまで NEW!
召喚中※カイン=アーキを主とする NEW!
現在地:
魔法学園マジカーノ
・・・・・・・
「このMって……」
『カイン君、先ずそこに注目するとは、中々センスが高いね』
「ふっ、今度はどんな意味にとらえるか。今回は召喚獣とやらであるからして、モンスターのMとかであろうか」
イチカとカンが、それぞれの思惑を呟くと、カインが気持ち手を震わせながら呟く。
「……空き缶なのに……変態なんだね……」
カイン=アーキは正確にMの意味を捉え、そっと床に置いたのだった。
「嘘ぉおおカァアアアアン!? どうして一文字で、伝わったのカァアアアアン!?」
『正確に伝わったんなら、逆に問題ないだろうに。何を発狂してるのさ。頭冷やす為に、ボディにクーラーボックスに余ってる氷を転送してやろうか?』
「それ頭ではなくて、完全に身体を冷やしにかかってるではないか! 世界を超えてまで、嫌がらせをするんではないカァアン!」
『あぁあ、またそんな一人ツッコミしてたら、カイン君に引かれるよ』
「ふっ、イチカも気付いておるのだろう? すでに多少の声なら、全然聞こえないくらいの場所まで引かれているのだ!」
『お、おぅ……ファイト!』
「信頼関係の崩壊カァアアン」
カンが早くもカインにドン引き変態認定された事にへこんでいると、カインが意を決した顔で近づいてきた。
「カン……だったね」
「そうである、我はカンである」
「どんなに変態缶でも、僕の初めての召喚獣……召喚缶、略してショウカンなんだ。これからきっと、物凄く大変だろうけど頑張ろうね」
「おぉお、普通に受け入れてくれたぁあ。しかし、何故意味もなく略す。それに、物凄く大変とは、どういう意味なのだ」
「え? だって、この学園は召喚士を育成する魔法学園だから。主な授業内容は、召喚獣を強くする補助魔法や回復魔法覚えることだし、そもそもココでは召喚獣同士を戦わせて強くする所だからね。カンはこれから、色んな召喚獣と戦闘することになるよ?」
「……何となくそうではないかとは思っていたが、改めて言われると、とても嫌だな」
「普通召喚獣は、死亡するような傷を負った場合には、精霊界に強制送還されて死なないんだけど……カンはどうなんだろうね?」
「……どうなんだ? どうなるのだ?」
大事なことなので、カンは二回繰り返し、口に出して問いかけた。それは勿論、目の前にいないが、今も自分を見ているであろうイチカに対してだった。
『〝カンは、嫌な予感を感じながらもある自分の言葉を思い出していた〟』
「何故に、ナレーション風で話すのだ?」
『〝カンは、魔力の制御を覚えるまでは、転生なぞしない! そうでなければ消滅しても構わない! と宣言していた事を〟って事だったよね?』
「でっち上げられたぁああ!? 我は、そんなカッコいい事などは言っておらぬカァアアアアン!? さっさと、この世界の召喚獣仕様に、我も適用させるのだぁああ!」
『そもそもハードモードを望んだのは、カンだし。自業自得でしょ』
「おのれぇええ! 貴様ぁあああ!」
「あ、先生が来たよ。もう、先生前でもブツブツ独り言を言わないでよね?」
「独り言扱いは、相変わらずなのカァアアアアン!? しかし、これはもう既に反射の域に達しておるので、黙ることは出来ぬ!」
『空き缶も、パブロフの犬になれるんだね』
「カン!」
いきなり吠える空き缶に、カインのメンタルは地味にダメージを受けるのであった。
「さして大事な事でもないのに、二回も〝かもしれない〟を繰り返すな。むしろ、何故断定せぬのだ」
カイン=アーキは女性教諭に言われた通りに、入学式が行われていた会場の壁際に移動していた。
不安そうにしながらも、手には空き缶を潰さないように優しく持ちながら、大きな嘆息を吐いていた。
「カインよ、ため息を吐くと幸せが逃げるぞ」
「……いやいや、君の所為だからね? 本当に一体、何なの君は?」
手に持つ空き缶に向かって、カインは呟いた。何も知らない者が見れば、壁にもたれかかりながら、缶コーヒーを飲んでいる少年である。
「我が何者なのか……側面に書いてあるので、読んだ方が早いであろう」
「側面? 本当だ、個人情報がダダ漏れだね……って、え?」
カインは、ある文字に目が止まって、思わず言葉を失った。
・・・・・・・
名前:カン
称号:
風龍の玩具
借金缶 NEW!
種族:空き缶(Lv.9)
体力:18(最大18)
魔力ストック:10(最大10)
ちから:0
すばやさ:0
かたさ:2
まりょく:7
※補正
『魔沼ヨゴレ呪い』効果により魔力増加(+2)
『風龍の玩具』効果により魔力増加(+5)
技能:
言語理解(全異世界の誰とでも話が出来る)
常時発動M型(Lv.9)
熱耐性(Lv.2)
寒耐性(Lv.2)
ヨゴレ耐性(Lv.3)
風龍の戯れ(Lv.2)
魔力暴走(Lv.1)
状態:
魔沼ヨゴレの呪い(Lv.2)
絶対服従※イチカに100万MPを返済するまで NEW!
召喚中※カイン=アーキを主とする NEW!
現在地:
魔法学園マジカーノ
・・・・・・・
「このMって……」
『カイン君、先ずそこに注目するとは、中々センスが高いね』
「ふっ、今度はどんな意味にとらえるか。今回は召喚獣とやらであるからして、モンスターのMとかであろうか」
イチカとカンが、それぞれの思惑を呟くと、カインが気持ち手を震わせながら呟く。
「……空き缶なのに……変態なんだね……」
カイン=アーキは正確にMの意味を捉え、そっと床に置いたのだった。
「嘘ぉおおカァアアアアン!? どうして一文字で、伝わったのカァアアアアン!?」
『正確に伝わったんなら、逆に問題ないだろうに。何を発狂してるのさ。頭冷やす為に、ボディにクーラーボックスに余ってる氷を転送してやろうか?』
「それ頭ではなくて、完全に身体を冷やしにかかってるではないか! 世界を超えてまで、嫌がらせをするんではないカァアン!」
『あぁあ、またそんな一人ツッコミしてたら、カイン君に引かれるよ』
「ふっ、イチカも気付いておるのだろう? すでに多少の声なら、全然聞こえないくらいの場所まで引かれているのだ!」
『お、おぅ……ファイト!』
「信頼関係の崩壊カァアアン」
カンが早くもカインにドン引き変態認定された事にへこんでいると、カインが意を決した顔で近づいてきた。
「カン……だったね」
「そうである、我はカンである」
「どんなに変態缶でも、僕の初めての召喚獣……召喚缶、略してショウカンなんだ。これからきっと、物凄く大変だろうけど頑張ろうね」
「おぉお、普通に受け入れてくれたぁあ。しかし、何故意味もなく略す。それに、物凄く大変とは、どういう意味なのだ」
「え? だって、この学園は召喚士を育成する魔法学園だから。主な授業内容は、召喚獣を強くする補助魔法や回復魔法覚えることだし、そもそもココでは召喚獣同士を戦わせて強くする所だからね。カンはこれから、色んな召喚獣と戦闘することになるよ?」
「……何となくそうではないかとは思っていたが、改めて言われると、とても嫌だな」
「普通召喚獣は、死亡するような傷を負った場合には、精霊界に強制送還されて死なないんだけど……カンはどうなんだろうね?」
「……どうなんだ? どうなるのだ?」
大事なことなので、カンは二回繰り返し、口に出して問いかけた。それは勿論、目の前にいないが、今も自分を見ているであろうイチカに対してだった。
『〝カンは、嫌な予感を感じながらもある自分の言葉を思い出していた〟』
「何故に、ナレーション風で話すのだ?」
『〝カンは、魔力の制御を覚えるまでは、転生なぞしない! そうでなければ消滅しても構わない! と宣言していた事を〟って事だったよね?』
「でっち上げられたぁああ!? 我は、そんなカッコいい事などは言っておらぬカァアアアアン!? さっさと、この世界の召喚獣仕様に、我も適用させるのだぁああ!」
『そもそもハードモードを望んだのは、カンだし。自業自得でしょ』
「おのれぇええ! 貴様ぁあああ!」
「あ、先生が来たよ。もう、先生前でもブツブツ独り言を言わないでよね?」
「独り言扱いは、相変わらずなのカァアアアアン!? しかし、これはもう既に反射の域に達しておるので、黙ることは出来ぬ!」
『空き缶も、パブロフの犬になれるんだね』
「カン!」
いきなり吠える空き缶に、カインのメンタルは地味にダメージを受けるのであった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
変人奇人喜んで!!貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない!〜
赤井水
ファンタジー
クロス伯爵家に生まれたケビン・クロス。
神に会った記憶も無く、前世で何故死んだのかもよく分からないが転生した事はわかっていた。
洗礼式で初めて神と話よく分からないが転生させて貰ったのは理解することに。
彼は喜んだ。
この世界で魔法を扱える事に。
同い歳の腹違いの兄を持ち、必死に嫡男から逃れ貴族にならない為なら努力を惜しまない。
理由は簡単だ、魔法が研究出来ないから。
その為には彼は変人と言われようが奇人と言われようが構わない。
ケビンは優秀というレッテルや女性という地雷を踏まぬ様に必死に生活して行くのであった。
ダンス?腹芸?んなもん勉強する位なら魔法を勉強するわ!!と。
「絶対に貴族にはならない!うぉぉぉぉ」
今日も魔法を使います。
※作者嬉し泣きの情報
3/21 11:00
ファンタジー・SFでランキング5位(24hptランキング)
有名作品のすぐ下に自分の作品の名前があるのは不思議な感覚です。
3/21
HOT男性向けランキングで2位に入れました。
TOP10入り!!
4/7
お気に入り登録者様の人数が3000人行きました。
応援ありがとうございます。
皆様のおかげです。
これからも上がる様に頑張ります。
※お気に入り登録者数減り続けてる……がむばるOrz
〜第15回ファンタジー大賞〜
67位でした!!
皆様のおかげですこう言った結果になりました。
5万Ptも貰えたことに感謝します!
改稿中……( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )☁︎︎⋆。
ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません
野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、
婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、
話の流れから婚約を解消という話にまでなった。
ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、
絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
最強転生悪役令嬢は人生を謳歌したい!~今更SSクラスに戻れと言われても『もう遅い!』Cクラスで最強を目指します!~【改稿版】
てんてんどんどん
ファンタジー
ベビーベッドの上からこんにちは。
私はセレスティア・ラル・シャンデール(0歳)。聖王国のお姫様。
私はなぜかRPGの裏ボス令嬢に転生したようです。
何故それを思い出したかというと、ごくごくとミルクを飲んでいるときに、兄(4歳)のアレスが、「僕も飲みたいー!」と哺乳瓶を取り上げてしまい、「何してくれるんじゃワレ!??」と怒った途端――私は闇の女神の力が覚醒しました。
闇の女神の力も、転生した記憶も。
本来なら、愛する家族が目の前で魔族に惨殺され、愛した国民たちが目の前で魔族に食われていく様に泣き崩れ見ながら、魔王に復讐を誓ったその途端目覚める力を、私はミルクを取られた途端に目覚めさせてしまったのです。
とりあえず、0歳は何も出来なくて暇なのでちょっと魔王を倒して来ようと思います。デコピンで。
--これは最強裏ボスに転生した脳筋主人公が最弱クラスで最強を目指す勘違いTueee物語--
※最強裏ボス転生令嬢は友情を謳歌したい!の改稿版です(5万文字から10万文字にふえています)
※27話あたりからが新規です
※作中で主人公最強、たぶん神様も敵わない(でも陰キャ)
※超ご都合主義。深く考えたらきっと負け
※主人公はそこまで考えてないのに周囲が勝手に深読みして有能に祀り上げられる勘違いもの。
※副題が完結した時点で物語は終了します。俺たちの戦いはこれからだ!
※他Webサイトにも投稿しております。
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる