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第50話 箔で立てている事がファンタジー

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『体当たりとは、誰にでも出来る方法でありながらも、攻撃力はそこそこ高い方法である』
  
「偉人の格言みたいな雰囲気で言うんじゃないカァアアアアアアン!?』
  
『例えばだけど、物凄い勢いで風に飛ばされた空き缶なんかがさ、身体に当たった日には、何て運が悪い日なんだと嘆いちゃうよね。すごい無駄に、痛い思いをしないと行けないわからさ』
  
「ひいぃいい!? どいてくれぇええ!」
  
 カンは、風龍の息吹ブレスに巻き込まれ、空き缶ボディがまるで弾丸のように風に乗せて、風龍の頭の上から打ち出された。

『男前だよ、カン。勇者に対する怒りが限界を超え、自らケリをつけたいという熱い想いが、無謀な行動に移させたんだね。まさにロケッツ頭突きとは、この事だね』
  
「シンプルにそして完璧なまでに、巻き込まれただけカァアアァン!? そこに我の意思はなかったカァアアアアン!?」  
  
「痛ッ!? 指に空き缶が!?」

「カィイイイン!?」
  
 カンは風龍に頼み発生した暴風を利用し、自らを聖剣をもつ勇者の指に体当たりを試みた、ような感じとなった。

 そして、奇跡は起きた。

 勇者からの斬撃を風でかわしながら風龍が気を利かせて、まるで誘導ミサイルのように風に乗り風にカンを乗せ勇者の指を見事に捉えたのだったかろうじて指ならダメージ入りそうと風龍が判断
  
「またボディに凹みカァアアアアン!?」

 この後に及んで、自分のボディの心配をするカン。
  
「痛っ!? しまっ……あぁあああああ!?」

 カンの目の前から、漫画の様に空に舞い上がり、星となる勇者。
  
「……カァアアアアン!? 勇者、飛んでいってしまったぞ!?」
  
 カン自らの決死の体当たりにより勇者が隙を見せた瞬間、カンと見事な連携で風龍がダメ押しのブレスを、実は重ねていた。

 その結果、勇者は空高く飛ばされてしまったのだった。

『どうやら風龍が、カンのロケッツ頭突きに合わせて、風龍の息吹ブレスを重ねたみたいだね』  

「なんとぉおお!? 我はいつの間に、風龍とコミュニケーションをとれるように!? 否、これはもう阿吽の呼吸というレベルの連携! 最早、風龍と我は一心同体と言って過言では無いカァアアァアン!」

『思いっきり過言だろうね。あ、そうだった』

 カンが調子に乗り、イチカは呆れていたが、ふと思い出したかのように口調を変えて、話を始めた。
  
〝ご契約通り、風龍の召喚を行いました。請求は100万MPですので、お支払いお願い致します〟
  
「……カァン?」

 きっとカンに首があったらなら、とぼけるような素振りで頭を傾けた事だろう。
  
「…………100万MP!? 手持ちはマックスでも17MPしかないんだが!?」

 そして、言葉の意味を理解すると、風龍の召喚への費用を払えないことを大声で叫んだ。
 
〝お支払い頂けないのですか?〟

「無理であるな」

〝三日以内のお支払いで、大丈夫ですが?〟

「三日だろうが、一ヶ月だろうが、我がそんなMPを支払えるわけないだろう。そもそも、イチカなのだから、知っているだろうが」

〝……本当に、よいのですね? このままだと契約違反により、ペナルティが発生しますよ?〟
  
「契約違反も何も、契約内容すら確認させてもらってないのだから、そもそもこんな契約自体が悪徳なのではないカァン? 出るとこ出てもよいのだぞ? それが嫌なら、我からの回収を諦めるのだな」
  
〝はい、ペナルティ執行!〟
  
「ん? クペキャ!?」

 短いカンの悲鳴とともに、カンの意識は遠のいていった。
 


「おぉ、カンよ。召喚の費用を支払い出来ずに、結局潰れてしまうとは情けない。支払いを踏み倒そうとするとは、何と愚かな空き缶なのだ」

 カンの目の前には、イチカが椅子に深く座り、ふんぞり返っていた。
  
「おのれぇええええ! どういうことなのカァアアアアン!?」
  
「あんまり激しく叫ぶと、凹むというより破れるよ。アルミはアルミでも、今のカンのボディはアルミ箔だからね」
  
「……は?」

 イチカから告げられた事実に、理解が追いつかないカンだったが、自身のボディの表示を確認して、事の重大さに気づいた。
  
 ・・・・・・・
 名前:カン
  
 称号:風龍の玩具 
  
 種族:空き缶(Lv.9) 1UP!  
  
 体力:18(最大18) 1UP!
  
 魔力ストック:10(最大10)
  
 ちから:0 
 すばやさ:0 
 かたさ:0 2DOWN! 
 まりょく:7 
  
 ※補正
 『魔沼ヨゴレ呪い』効果により魔力増加(+2) 
 『風龍の玩具』効果により魔力増加(+5) 
 『契約違反ペナルティ』効果によりボディがアルミ泊へ変化(かたさ0) NEW!
  
  
 技能:
  言語理解全異世界の誰とでも話が出来る
  常時発動M型(Lv.9) 1UP!
  熱耐性(Lv.2) 1UP!
  寒耐性(Lv.1)
  ヨゴレ耐性(Lv.3) 1UP!
  風龍の戯れ(Lv.2) 
  魔力暴走(Lv.1) 
  
 状態:
  魔沼ヨゴレの呪い(Lv.2) 1UP!
  契約違反ペナルティ NEW!
  
 現在地:
  イチカの書斎
 ・・・・・・・
  
「アルミ箔って何なのカァアアン!? ペコペコするぅぅう!?」

 案の定、イチカの書斎にカンの悲鳴がこだまするのであった。
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