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第39話 どうしてそうなるかなぁ
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『カウントダウンというのは、どうしてもこうも心躍るんだろうね。ただ、カウントダウンイベントなんて、そうそう無い訳で……んん? おやおや? ここに、今にも潰れそうな空き缶がいるね』
楽しそうに、イチカは呟く。
「我が潰れるカウントダウンも、始まりそうな勢いぃいぃい!」
焦る空き缶のカン。
『へぇ……ということは? 3……2……1……』
「カウントスタートの数が小さ過ぎるわ! 始まりがいきなカウント3は、厳しいぞ! それに、我がカウントダウンを欲しがったみたいな反応をやめよ!」
『なんだよ、さっきのフリだろ? 空気を読んでカウントを始めたのに、どう言う了見なんだよ』
「だから、特に振ってないと言っておるだろうが!」
カンは、リュウとマークの戦いには、全く参加していない蚊帳の外だった。その為、騒がしく喚いているものの、少し心には余裕がある状態であった。
「我を無視して、リュウとやらが化け物になったマークと戦っておるんだが……そろそろ、我も何かした方が良いのだろうか?」
上から目線のその言葉に反応したのは、当然イチカであった。
『なるほど……即ち、化け物になったマークに踏まれたいんだね。3……2……1……』
「我のどの発言を受け取ったら、そうなるのだ!? 我が不幸にしからならないカウントダウンとめてぇええ!?」
イチカのカウントが進むと同時に、カンのすぐ近くでリュウとマークが戦い出した。
それはまるで、カンの周りでタップダンスでもするかの様だった。
「ファ!? 危な!? ちょ!? カァン!?」
そしてリズム良く聞こえるカンの悲鳴は、まるでダンスに合わせて鳴る手拍子の様だった。
カンの悲鳴に合わせるかの如く、二人の戦いも激しさを増していった。
『カン、少し落ち着いたらどうだい。どうせ、遅かれ早かれ踏み潰されるんだからさ。何、戦いを自分から盛り上げてるのさ』
「鬼だな! お主はやっぱり鬼神だったのだな!」
『もう、しょうがないなぁ。神だなんて褒められたら、頑張るしかないじゃないか』
「神が付いていたとしても、それは決して褒めておらんわ!」
そんな中、リュウと化け物となったマークの戦いは、まさに壮絶を極めていた。
元々国家を守るエージェントのエースだったリュウと、その相棒だったマーク。
何がマークを裏切りに走らせたのか、リュウの頭の中にはその疑問で支配されつつあった。
そして、化け物となってしまったマークを、自分が確実に止めを刺せるのかという迷いが大きくなるにつれ、リュウは時間が経つにつれ劣勢なっていった。
「マーク……何がお前を、そこまで追い詰めたんだ!」
「……展開が我らと温度差が甚だしいこと、この上ないな。我らは、シリアスの現場に居てはいけないのだろうな」
『そうだろうね』
同じ二人組でも、カンとイチカの雰囲気は、この状況においても緩かった。
「ぐぁ!」
「リュウ!? 大丈夫カァアン!?」
そんな時、カンは大声でリュウを心配する声をあげた。
しかしコレが、まるで自分がマークに変わる新しい相棒だと言わんばかりに、周りにカンがアピールしている様に、マークには聞こえた。
「……その空き缶。まるで自分が、リュウの相棒だと言っている様じゃないか」
めざとくそれに反応するマークの視線の先には、カンが居たのだった。
「どうしてそう思ったカァアアアアン!?」
「そこの空き缶……君は、僕からマイクを奪おうとしている、泥棒缶かい?」
「泥棒缶……とは? ちょっと我にも、意味が分かりかねるのだが?」
先程までリュウにだけ向けられていた殺気を、今はカンにまで向けられていた。
有り体に言えば、カンはマークを〝挑発〟した様な状態になり、敵としてエンカウントされたのだった。
『どうやら、マークはリュウへの相棒としての信頼を色々拗らせた結果、遂には憎しみへと転換してしまった様だね。その心を組織に利用され、既に頭まで改造されてしまっていた……という、情報がカミペディアに新たに更新されているよ。そして、化け物と化してしまった彼は、もう前の彼には二度と戻れなくなってしまった……だそうだよ』
「長台詞での説明ありがとう!? そして、色々重いカァアン!? 希望は!? 希望は何処にあるカァアアアアン!?」
「くっ……やめろ……その空き缶は、息子へのプレゼントなんだ……」
「さっき思いっきり投げたがな!? でも、気に入ってくれてありがとう!」
傷付き地面に転がっていたリュウは、気力を振り絞り中々会えない息子へのプレゼントを守る為に立ち上がった。
「ふはははは! 妬けちゃうね……」
マークはリュウの様子を見ると、更に憎悪に歪んだ表情をしながらカンを拾い上げ、しっかりと手に持ったのだった。
「まさか……カ……カァアアン? 嘘であろう? 本気なのカァアン?」
「……この空き缶がぁああああ!」
「マーク! やめろぉおおおお!」
リュウは、マークが何をしようとしているのかを察し、それを阻止しようと駆け寄りながら叫んだ。
『見た目としては、空き缶を潰そうとしているだけの、いたって平和的な状況なんだけどね』
「窮地でしかないカァアァアアアン!?」
イチカの冷静なコメントに対し、カンの悲痛な叫びがその場に響き渡ったのだった。
楽しそうに、イチカは呟く。
「我が潰れるカウントダウンも、始まりそうな勢いぃいぃい!」
焦る空き缶のカン。
『へぇ……ということは? 3……2……1……』
「カウントスタートの数が小さ過ぎるわ! 始まりがいきなカウント3は、厳しいぞ! それに、我がカウントダウンを欲しがったみたいな反応をやめよ!」
『なんだよ、さっきのフリだろ? 空気を読んでカウントを始めたのに、どう言う了見なんだよ』
「だから、特に振ってないと言っておるだろうが!」
カンは、リュウとマークの戦いには、全く参加していない蚊帳の外だった。その為、騒がしく喚いているものの、少し心には余裕がある状態であった。
「我を無視して、リュウとやらが化け物になったマークと戦っておるんだが……そろそろ、我も何かした方が良いのだろうか?」
上から目線のその言葉に反応したのは、当然イチカであった。
『なるほど……即ち、化け物になったマークに踏まれたいんだね。3……2……1……』
「我のどの発言を受け取ったら、そうなるのだ!? 我が不幸にしからならないカウントダウンとめてぇええ!?」
イチカのカウントが進むと同時に、カンのすぐ近くでリュウとマークが戦い出した。
それはまるで、カンの周りでタップダンスでもするかの様だった。
「ファ!? 危な!? ちょ!? カァン!?」
そしてリズム良く聞こえるカンの悲鳴は、まるでダンスに合わせて鳴る手拍子の様だった。
カンの悲鳴に合わせるかの如く、二人の戦いも激しさを増していった。
『カン、少し落ち着いたらどうだい。どうせ、遅かれ早かれ踏み潰されるんだからさ。何、戦いを自分から盛り上げてるのさ』
「鬼だな! お主はやっぱり鬼神だったのだな!」
『もう、しょうがないなぁ。神だなんて褒められたら、頑張るしかないじゃないか』
「神が付いていたとしても、それは決して褒めておらんわ!」
そんな中、リュウと化け物となったマークの戦いは、まさに壮絶を極めていた。
元々国家を守るエージェントのエースだったリュウと、その相棒だったマーク。
何がマークを裏切りに走らせたのか、リュウの頭の中にはその疑問で支配されつつあった。
そして、化け物となってしまったマークを、自分が確実に止めを刺せるのかという迷いが大きくなるにつれ、リュウは時間が経つにつれ劣勢なっていった。
「マーク……何がお前を、そこまで追い詰めたんだ!」
「……展開が我らと温度差が甚だしいこと、この上ないな。我らは、シリアスの現場に居てはいけないのだろうな」
『そうだろうね』
同じ二人組でも、カンとイチカの雰囲気は、この状況においても緩かった。
「ぐぁ!」
「リュウ!? 大丈夫カァアン!?」
そんな時、カンは大声でリュウを心配する声をあげた。
しかしコレが、まるで自分がマークに変わる新しい相棒だと言わんばかりに、周りにカンがアピールしている様に、マークには聞こえた。
「……その空き缶。まるで自分が、リュウの相棒だと言っている様じゃないか」
めざとくそれに反応するマークの視線の先には、カンが居たのだった。
「どうしてそう思ったカァアアアアン!?」
「そこの空き缶……君は、僕からマイクを奪おうとしている、泥棒缶かい?」
「泥棒缶……とは? ちょっと我にも、意味が分かりかねるのだが?」
先程までリュウにだけ向けられていた殺気を、今はカンにまで向けられていた。
有り体に言えば、カンはマークを〝挑発〟した様な状態になり、敵としてエンカウントされたのだった。
『どうやら、マークはリュウへの相棒としての信頼を色々拗らせた結果、遂には憎しみへと転換してしまった様だね。その心を組織に利用され、既に頭まで改造されてしまっていた……という、情報がカミペディアに新たに更新されているよ。そして、化け物と化してしまった彼は、もう前の彼には二度と戻れなくなってしまった……だそうだよ』
「長台詞での説明ありがとう!? そして、色々重いカァアン!? 希望は!? 希望は何処にあるカァアアアアン!?」
「くっ……やめろ……その空き缶は、息子へのプレゼントなんだ……」
「さっき思いっきり投げたがな!? でも、気に入ってくれてありがとう!」
傷付き地面に転がっていたリュウは、気力を振り絞り中々会えない息子へのプレゼントを守る為に立ち上がった。
「ふはははは! 妬けちゃうね……」
マークはリュウの様子を見ると、更に憎悪に歪んだ表情をしながらカンを拾い上げ、しっかりと手に持ったのだった。
「まさか……カ……カァアアン? 嘘であろう? 本気なのカァアン?」
「……この空き缶がぁああああ!」
「マーク! やめろぉおおおお!」
リュウは、マークが何をしようとしているのかを察し、それを阻止しようと駆け寄りながら叫んだ。
『見た目としては、空き缶を潰そうとしているだけの、いたって平和的な状況なんだけどね』
「窮地でしかないカァアァアアアン!?」
イチカの冷静なコメントに対し、カンの悲痛な叫びがその場に響き渡ったのだった。
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