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第28話 仙人から力を授かるのは主人公枠
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「良い加減に、我が使えそうな〝魔法〟についてが教えるのだ!」
カンの叫びは、イチカの書斎に響き渡った。まさに、カンカンに頭に来ている様だった。
「礼儀のなってない空き缶だな、全く」
「わりとお主には言われたくないが? お主は、無礼が服を着ているような男だろうに」
「しょうがないな。覚えたいもの、何だっけ? ラ○ウ?」
「〝魔法〟な、いきなりほぼ間違ってるでないか。世紀末覇者も捨てがたいが、そっちではない。我に秘孔があるかどうかも、怪しいしな」
空き缶の秘孔をついたら、ただ穴が穿つだけである。
「えっと、毬藻?」
「〝魔法〟だ。文字数と『ま』しか合ってないぞ。ボケが雑だな、全く」
「マジック?」
「マジックで合ってるような、合ってないような。言っておくが、種も仕掛けもないやつのほうだからな? 手品ではないからな?」
「ワガママか!」
「とんだ言いがかりだな! お主の微妙なボケに付き合ってやってる我の心の広さに、むしろ感謝すべきだと思うがな!」
空っぽの空き缶利用して、カンはイチカに対してガンガン文句を言うが、どこ吹く風でイチカは飄々としている。
「まほぉおおおおおお!」
「何だよ、まもの?」
「難聴系主人公か! 同じファンタジーなだけに、余計にイラッとくる聞き間違いをしよって! いい加減に、魔法の取得もとい魔力を覚えさせるのだ!」
「全く……今から魔力を覚えるために行く世界は、下手したら〝廃缶〟になるかもしれないから、時間稼ぎをしていたというのに……カン、君は勇者と死にたがりは違うんだよ」
突然、イチカのシリアスな表情と言葉にボディが凍りつく。その声と表情は、これまでのイチカとは、まさに異質であった。
「は? え? 〝廃缶〟? 潰れたら、ここに転生してくるのではないのか?」
「……潰れたらな」
「一体……どういう……」
そして、唐突に光だすカンの缶底。
「は!? またいきなり魔方陣!? ちょっ!? 待つのだ! 結局、全く魔法の〝魔〟の字も体感すらしてないのだがァアァアアアン!?」
「ちゃんと帰って来るんだぞぉお♪」
「見送りが軽いぃいええぇえぇ……えぇ……ぇぇ……」
そして、カンは新たな異世界へと旅立っていった。
果たしてカンは、一体何処に行ったのか。魔力を身につけ、魔法を使う事が出来るようになるのか。
それは、神のみぞ知ることであった。
「か……カァン……ここは一体……?」
「何じゃ、お主は。その姿で人語を話すとは、妖の類かの?」
眩い光が収まると、カンはまるで仙人の様な見た目の見知らぬ老人に見下ろされていた。そして案の定、空き缶の見た目で人語を発したカンを、怪訝な表情で見ていた。
「ご老人、我は妖ではない! 新種の空き缶である! もとい、将来の魔王である!」
「空き缶が話をしている時点で、十分に妖の括りで良いと思うがな。しかも、魔王などと不穏な事を口走っておるしの」
「そんなことより、ここは一体何処なのだ。ここであったのも、何かの縁。我は〝喋る空き缶〟のカンである。早速、情報提供を頼むぞ」
「空き缶の割に、随分と偉そうじゃの。しかも、〝名持ち〟とは……まぁ、良い。久し振りの客人じゃしの、良くぞ参った。ここは仙道を極めんとする仙人達が嘗て集まっていた場所じゃ。今ではもう、ワシ一人なってしまったがの」
そう告げる白髪の老人は、寂しげにしながらも、カンを見ながら少し楽しげに微笑むのだった。
『妖怪"喋くり缶"に向かってこの場所を説明してくれるなんて、優しく温厚で、強いご老人だね。このご老人との出会いは、カンのこれからの進むべき道を変える分岐点になる気がしてならないよ』
カンと老人の出会いを、書斎から観ているイチカは、目を細めながら呟いた。
「イチカ……誰が妖怪〝喋くり缶〟だ! ただの玩具の商品名みたいになっとるではないか! どうせ例えるなら、もっと大妖で例えよ!」
「〝だいだらボッチ缶〟?」
「まさかの例えに、メンタルが抉られるカァアァアン!?」
『しかし、運が良かったね。魔力的なものを覚えるには、不思議な力を扱える人のところに行けば、何か掴めるかもしれないよ』
「うむ、一理ある。しかし、それなら初めから魔力を扱える人物のいる世界へと飛ばせばよかろうに。二度手間になるではないか」
『では、先ず仙人から、不思議パワーを学び取ってくるのだ』
「軽いな。そして、我の話を聞け」
カンがイチカに喚いている姿は、相変わらず独り言を話しているようにしか、他人には見えない。
結果、やはり仙人の老人もカンを、物凄く可哀想な目で見下ろしていた。
「そっちが、我の話を聞かぬなら、次からこちらもイチカを無視するぞ!」
『ほほう……今日は確か、資源ゴミの回収日だったな……残り一本の空き缶を捨てて……』
「声を大にして、ちゃんときちっとツッコミをさせてもらおう! さぁ! ドドォンとこい!」
それはもう、声を大にして宣言する。
「……帰ってくれぬか?」
そして、老人に引かれる。
「いつの間にか、仙人がめっちゃ引いておるぅうう! しかし、ここで逃してなるものか!」
〝仙道〟なる術が、強者へと至る可能性を与えてくれるかもしれない。この人物と出会ったカンは、この機を逃す訳にはいかなかった。
「ご老人! 我に〝仙道〟なる術をご教授願いたい!」
「……空き缶にじゃと?」
「そう! 空き缶に!」
「……我の知り合いに、魔術を使える魔女がいるのだが、そっちに行ってみてはどうじゃ? ほれ、やっぱり魔法とか胸が高鳴るじゃろ? 胸があるか知らぬが」
「なんと!? 良いのか!? 実は、魔法が使いたかったのだ!」
「ふぅ、助かった……では、そっちに飛ばすでな」
「ん? 今、物凄く厄介者払い出来て安堵したような顔をしていたような?」
「……仙道奥義〝竜巻暴風破〟ぁあああ!」
「奥義まで出して厄介払いカァアアアアアン!?」
巨大な竜巻が、老人の突き出した両手から現れると、一瞬にしてカンを上空へと運び去ってしまった。
「くるくるカァアアアアン!?」
『流石にこれは、僕も予想外かな……まぁ、これもまた面白くて問題無い!』
「聞こえておるからなぁあああ! カァアアアアン! 風圧でボディがペコペコ鳴ってるぅうう!?」
悲鳴とともに、カンの冒険は舞台を移すのであった。
カンの叫びは、イチカの書斎に響き渡った。まさに、カンカンに頭に来ている様だった。
「礼儀のなってない空き缶だな、全く」
「わりとお主には言われたくないが? お主は、無礼が服を着ているような男だろうに」
「しょうがないな。覚えたいもの、何だっけ? ラ○ウ?」
「〝魔法〟な、いきなりほぼ間違ってるでないか。世紀末覇者も捨てがたいが、そっちではない。我に秘孔があるかどうかも、怪しいしな」
空き缶の秘孔をついたら、ただ穴が穿つだけである。
「えっと、毬藻?」
「〝魔法〟だ。文字数と『ま』しか合ってないぞ。ボケが雑だな、全く」
「マジック?」
「マジックで合ってるような、合ってないような。言っておくが、種も仕掛けもないやつのほうだからな? 手品ではないからな?」
「ワガママか!」
「とんだ言いがかりだな! お主の微妙なボケに付き合ってやってる我の心の広さに、むしろ感謝すべきだと思うがな!」
空っぽの空き缶利用して、カンはイチカに対してガンガン文句を言うが、どこ吹く風でイチカは飄々としている。
「まほぉおおおおおお!」
「何だよ、まもの?」
「難聴系主人公か! 同じファンタジーなだけに、余計にイラッとくる聞き間違いをしよって! いい加減に、魔法の取得もとい魔力を覚えさせるのだ!」
「全く……今から魔力を覚えるために行く世界は、下手したら〝廃缶〟になるかもしれないから、時間稼ぎをしていたというのに……カン、君は勇者と死にたがりは違うんだよ」
突然、イチカのシリアスな表情と言葉にボディが凍りつく。その声と表情は、これまでのイチカとは、まさに異質であった。
「は? え? 〝廃缶〟? 潰れたら、ここに転生してくるのではないのか?」
「……潰れたらな」
「一体……どういう……」
そして、唐突に光だすカンの缶底。
「は!? またいきなり魔方陣!? ちょっ!? 待つのだ! 結局、全く魔法の〝魔〟の字も体感すらしてないのだがァアァアアアン!?」
「ちゃんと帰って来るんだぞぉお♪」
「見送りが軽いぃいええぇえぇ……えぇ……ぇぇ……」
そして、カンは新たな異世界へと旅立っていった。
果たしてカンは、一体何処に行ったのか。魔力を身につけ、魔法を使う事が出来るようになるのか。
それは、神のみぞ知ることであった。
「か……カァン……ここは一体……?」
「何じゃ、お主は。その姿で人語を話すとは、妖の類かの?」
眩い光が収まると、カンはまるで仙人の様な見た目の見知らぬ老人に見下ろされていた。そして案の定、空き缶の見た目で人語を発したカンを、怪訝な表情で見ていた。
「ご老人、我は妖ではない! 新種の空き缶である! もとい、将来の魔王である!」
「空き缶が話をしている時点で、十分に妖の括りで良いと思うがな。しかも、魔王などと不穏な事を口走っておるしの」
「そんなことより、ここは一体何処なのだ。ここであったのも、何かの縁。我は〝喋る空き缶〟のカンである。早速、情報提供を頼むぞ」
「空き缶の割に、随分と偉そうじゃの。しかも、〝名持ち〟とは……まぁ、良い。久し振りの客人じゃしの、良くぞ参った。ここは仙道を極めんとする仙人達が嘗て集まっていた場所じゃ。今ではもう、ワシ一人なってしまったがの」
そう告げる白髪の老人は、寂しげにしながらも、カンを見ながら少し楽しげに微笑むのだった。
『妖怪"喋くり缶"に向かってこの場所を説明してくれるなんて、優しく温厚で、強いご老人だね。このご老人との出会いは、カンのこれからの進むべき道を変える分岐点になる気がしてならないよ』
カンと老人の出会いを、書斎から観ているイチカは、目を細めながら呟いた。
「イチカ……誰が妖怪〝喋くり缶〟だ! ただの玩具の商品名みたいになっとるではないか! どうせ例えるなら、もっと大妖で例えよ!」
「〝だいだらボッチ缶〟?」
「まさかの例えに、メンタルが抉られるカァアァアン!?」
『しかし、運が良かったね。魔力的なものを覚えるには、不思議な力を扱える人のところに行けば、何か掴めるかもしれないよ』
「うむ、一理ある。しかし、それなら初めから魔力を扱える人物のいる世界へと飛ばせばよかろうに。二度手間になるではないか」
『では、先ず仙人から、不思議パワーを学び取ってくるのだ』
「軽いな。そして、我の話を聞け」
カンがイチカに喚いている姿は、相変わらず独り言を話しているようにしか、他人には見えない。
結果、やはり仙人の老人もカンを、物凄く可哀想な目で見下ろしていた。
「そっちが、我の話を聞かぬなら、次からこちらもイチカを無視するぞ!」
『ほほう……今日は確か、資源ゴミの回収日だったな……残り一本の空き缶を捨てて……』
「声を大にして、ちゃんときちっとツッコミをさせてもらおう! さぁ! ドドォンとこい!」
それはもう、声を大にして宣言する。
「……帰ってくれぬか?」
そして、老人に引かれる。
「いつの間にか、仙人がめっちゃ引いておるぅうう! しかし、ここで逃してなるものか!」
〝仙道〟なる術が、強者へと至る可能性を与えてくれるかもしれない。この人物と出会ったカンは、この機を逃す訳にはいかなかった。
「ご老人! 我に〝仙道〟なる術をご教授願いたい!」
「……空き缶にじゃと?」
「そう! 空き缶に!」
「……我の知り合いに、魔術を使える魔女がいるのだが、そっちに行ってみてはどうじゃ? ほれ、やっぱり魔法とか胸が高鳴るじゃろ? 胸があるか知らぬが」
「なんと!? 良いのか!? 実は、魔法が使いたかったのだ!」
「ふぅ、助かった……では、そっちに飛ばすでな」
「ん? 今、物凄く厄介者払い出来て安堵したような顔をしていたような?」
「……仙道奥義〝竜巻暴風破〟ぁあああ!」
「奥義まで出して厄介払いカァアアアアアン!?」
巨大な竜巻が、老人の突き出した両手から現れると、一瞬にしてカンを上空へと運び去ってしまった。
「くるくるカァアアアアン!?」
『流石にこれは、僕も予想外かな……まぁ、これもまた面白くて問題無い!』
「聞こえておるからなぁあああ! カァアアアアン! 風圧でボディがペコペコ鳴ってるぅうう!?」
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