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第21話 本心はルビの中
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「ふむふむ、カンの成分表示も充実してきた感じだね」
「充実するのは良いが、常に丸見えなのだが」
取り敢えず、常時発動M型(Lv.3)のレベルが上がっていたことをカンは棚上げし、成分表示が誰にでも見えることに、未だ不満がある様子を見せていた。
「何か問題でもあるのかい?」
「我の情報が、相手に筒抜けではないか」
「ふむふむ、それで?」
「敵に己の情報が筒抜けでは、分が悪くなるであろう」
イチカは成分表示に対するカンの反応に対して、一先ずは聞く姿勢を取っていた。
その態度にカンは、突然潰される様子が無いことを察し、成分表示に対してクレームをつけていた。
「ほうほう、ではどうしたいと?」
「勿論見えない様に、隠蔽や偽装を施してだな」
「……貴様……今……何と言った……」
珍しくカンの話を大人しく聞いていたイチカであったが、カンがある言葉を発した瞬間、般若の面のような表情へと変わってしまった。
「だから、相手に悟られぬように偽装をだな……」
「成分表示を偽装するだとぉおおお! この愚か者がぁああ!」
「はい?」
イチカの突然の激昂についていけないカンは、思わず間の抜けた返事を返してしまった。
そして、その反応は悪手だった。その結果、イチカの怒りの勢いが増すことになってしまっていた。
「消費者を舐めるなぁぁ!」
「……そっちの偽装とちゃう……」
「誠実に偽りなく、しっかりアピールしろ!!」
「アピール!? 話が進まぬぅう!」
ある意味脱線したまま話は進んでいるが、カンの指摘通りに本線としては全く話が進んでいなかった。
「だから、カンの成分表示をもう少し詳細化する試みを、これからしようと思うんだ」
「"だから"の意味が全く分からぬ上に、唐突過ぎる話の戻し方だな」
カンの叫びに反応したのか、イチカは急に真剣な顔を作ったと思ったら、急に本筋に話を戻した。
カンは、イチカの様子に心底呆れながらも、本筋に話が戻りそうで安堵したが、一応文句は言ってみるのであった。
「これが、新成分表示だ!」
「……無視か」
イチカが天を仰ぎながらも、指はカンを指すという若干痛々しいポーズをとりながら叫ぶと、カンのボディが淡く光だし、側面の成分表示の文字が動き出した。
そして、数分後にカンのボディから漏れ出していた光が消えていくと、動いていた成分表示文字も止まっていた。
・・・・・・・
名前:カン
種族:空き缶(Lv.4)
体力:13(最大13)
ちから:0 New!
すばやさ:0 New!
かたさ:2 New!
まりょく:0 New!
技能:
・言語理解
・常時発動M型(Lv.3)
・熱耐性(Lv.2)
・寒耐性(Lv.2)
状態:傷無し
現在地:イチカの書斎
・・・・・・・
「……0……0……2……0……なんか詳しく分かった方が、ショックがデカイ!?」
カンの成分表示には、これまでなかった項目が増えていた。
しかし、項目は増えていたが、そこに記載されていた数値は『かたさ』以外は"0"だったのだった。
カンは、表示された詳細に、やや予想通りと思いながらも、現実に数値で示されることにより大きなショックを受けていた。
「予想通り過ぎて、知りたくなかったわ!」
「己の力を改めて認識したカンよ、そろそろ旅立つかい」
「お主、本当に我の話を聞かんな……友から嫌われるぞ? それに、その所為で、我のメンタルはベコベコなのだが……」
カンは、自分の言葉を一切無視した言動をしているイチカに対して、怒りを通り過ぎて憐れみにも似た感情で問いかけた。
カンの言葉に心当たりがあったのか、やや顔をしかめるイチカだったが、負けじと口を開いた。
「五月蝿いよ……俺は成り上がる主人公って、格好良いと思うんだけどなぁ」
「成り上がり……」
イチカは、カンの"友から嫌われる"発言を完全に棚上げし、いよいよ本題に向けて言葉を続けていった。
そしてカンは、まんまと"ある言葉"に食いつき、釣り上げられてしまっていた。
「考えてみなよ。カンは、生物ですらないわけだ」
イチカはカンの"成り上がり"に対する憧れ思いを瞬時に見抜くと、ニヤリと口元を歪めながら言葉を続けた。
「空き缶だからの。無機物だが、我は生きてはいるぞ」
「確かに、生きてはいるね。だけれども、はっきりいって空き缶なんて、廃棄物なわけだ」
「……はっきり言い過ぎではないか?」
イチカからの攻撃は確実にカンの心を抉り、カンのメンタルボディはベッコベコにされてしまった。
その様子を見ながらも、イチカは言葉を止めることはなかった。
「魔物の底辺的な存在と広く認知されているスライムやゴブリンですら、空き缶の前では絶対的強者なわけだ」
「確かにそいつらと会っても、勝てる云々の前に、潰されるイメージしか湧かないのだが」
「そんな空き缶が、絶対的強者であるはずの魔物達に勝てたら……どう思う?」
イチカは口を完全に三日月型にしながら、嗤っていた。そして、悪魔の囁きのような甘い声でカンに問いかけたのだった。
「それは……燃える?」
「そうだ! それこそが、底辺中の底辺であるカンが、人に感動を与える物語となる唯一の方法なんだ!」
「ん? 何か心に引っかかるのだが……貴様の、本心を聞かせろ」
「……強制転移! 成り上がれ空き缶!」
「本心に悪意がぁあぁああ!? カァアアアアン!?」
そして、空き缶は"成り上がる"為に、次なる世界へ旅立っていったのだった。
「充実するのは良いが、常に丸見えなのだが」
取り敢えず、常時発動M型(Lv.3)のレベルが上がっていたことをカンは棚上げし、成分表示が誰にでも見えることに、未だ不満がある様子を見せていた。
「何か問題でもあるのかい?」
「我の情報が、相手に筒抜けではないか」
「ふむふむ、それで?」
「敵に己の情報が筒抜けでは、分が悪くなるであろう」
イチカは成分表示に対するカンの反応に対して、一先ずは聞く姿勢を取っていた。
その態度にカンは、突然潰される様子が無いことを察し、成分表示に対してクレームをつけていた。
「ほうほう、ではどうしたいと?」
「勿論見えない様に、隠蔽や偽装を施してだな」
「……貴様……今……何と言った……」
珍しくカンの話を大人しく聞いていたイチカであったが、カンがある言葉を発した瞬間、般若の面のような表情へと変わってしまった。
「だから、相手に悟られぬように偽装をだな……」
「成分表示を偽装するだとぉおおお! この愚か者がぁああ!」
「はい?」
イチカの突然の激昂についていけないカンは、思わず間の抜けた返事を返してしまった。
そして、その反応は悪手だった。その結果、イチカの怒りの勢いが増すことになってしまっていた。
「消費者を舐めるなぁぁ!」
「……そっちの偽装とちゃう……」
「誠実に偽りなく、しっかりアピールしろ!!」
「アピール!? 話が進まぬぅう!」
ある意味脱線したまま話は進んでいるが、カンの指摘通りに本線としては全く話が進んでいなかった。
「だから、カンの成分表示をもう少し詳細化する試みを、これからしようと思うんだ」
「"だから"の意味が全く分からぬ上に、唐突過ぎる話の戻し方だな」
カンの叫びに反応したのか、イチカは急に真剣な顔を作ったと思ったら、急に本筋に話を戻した。
カンは、イチカの様子に心底呆れながらも、本筋に話が戻りそうで安堵したが、一応文句は言ってみるのであった。
「これが、新成分表示だ!」
「……無視か」
イチカが天を仰ぎながらも、指はカンを指すという若干痛々しいポーズをとりながら叫ぶと、カンのボディが淡く光だし、側面の成分表示の文字が動き出した。
そして、数分後にカンのボディから漏れ出していた光が消えていくと、動いていた成分表示文字も止まっていた。
・・・・・・・
名前:カン
種族:空き缶(Lv.4)
体力:13(最大13)
ちから:0 New!
すばやさ:0 New!
かたさ:2 New!
まりょく:0 New!
技能:
・言語理解
・常時発動M型(Lv.3)
・熱耐性(Lv.2)
・寒耐性(Lv.2)
状態:傷無し
現在地:イチカの書斎
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「……0……0……2……0……なんか詳しく分かった方が、ショックがデカイ!?」
カンの成分表示には、これまでなかった項目が増えていた。
しかし、項目は増えていたが、そこに記載されていた数値は『かたさ』以外は"0"だったのだった。
カンは、表示された詳細に、やや予想通りと思いながらも、現実に数値で示されることにより大きなショックを受けていた。
「予想通り過ぎて、知りたくなかったわ!」
「己の力を改めて認識したカンよ、そろそろ旅立つかい」
「お主、本当に我の話を聞かんな……友から嫌われるぞ? それに、その所為で、我のメンタルはベコベコなのだが……」
カンは、自分の言葉を一切無視した言動をしているイチカに対して、怒りを通り過ぎて憐れみにも似た感情で問いかけた。
カンの言葉に心当たりがあったのか、やや顔をしかめるイチカだったが、負けじと口を開いた。
「五月蝿いよ……俺は成り上がる主人公って、格好良いと思うんだけどなぁ」
「成り上がり……」
イチカは、カンの"友から嫌われる"発言を完全に棚上げし、いよいよ本題に向けて言葉を続けていった。
そしてカンは、まんまと"ある言葉"に食いつき、釣り上げられてしまっていた。
「考えてみなよ。カンは、生物ですらないわけだ」
イチカはカンの"成り上がり"に対する憧れ思いを瞬時に見抜くと、ニヤリと口元を歪めながら言葉を続けた。
「空き缶だからの。無機物だが、我は生きてはいるぞ」
「確かに、生きてはいるね。だけれども、はっきりいって空き缶なんて、廃棄物なわけだ」
「……はっきり言い過ぎではないか?」
イチカからの攻撃は確実にカンの心を抉り、カンのメンタルボディはベッコベコにされてしまった。
その様子を見ながらも、イチカは言葉を止めることはなかった。
「魔物の底辺的な存在と広く認知されているスライムやゴブリンですら、空き缶の前では絶対的強者なわけだ」
「確かにそいつらと会っても、勝てる云々の前に、潰されるイメージしか湧かないのだが」
「そんな空き缶が、絶対的強者であるはずの魔物達に勝てたら……どう思う?」
イチカは口を完全に三日月型にしながら、嗤っていた。そして、悪魔の囁きのような甘い声でカンに問いかけたのだった。
「それは……燃える?」
「そうだ! それこそが、底辺中の底辺であるカンが、人に感動を与える物語となる唯一の方法なんだ!」
「ん? 何か心に引っかかるのだが……貴様の、本心を聞かせろ」
「……強制転移! 成り上がれ空き缶!」
「本心に悪意がぁあぁああ!? カァアアアアン!?」
そして、空き缶は"成り上がる"為に、次なる世界へ旅立っていったのだった。
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