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第20話 魔王級
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「……は!? 我は一体、何をしておるのだ!?」
再び意識を失っていたカンは、意識を取り戻すと同時に、多少混乱しながら叫び声をあげた。
その様子を、椅子に横柄に腰掛けながら見ていたイチカは、机の転生陣に転生してきたカンに対して話しかけた。
「おぉ、カンよ。潰れてしまうとは、情けない」
「おのれぇええええぇ! やはり貴様かぁあああ!」
"カンは転生により、Lv.4の空き缶になった"
「は!? ま、待つのだ! レベルアップだと!? 全く何もしてないのだが……まさか!?」
イチカに食ってかかろうとしていた矢先に、カンの意識に"世界の声"が聞こえてきた。
しかも世界の声は、カンのレベルが上がった事を知らせるものであった。
そして突然のレベルアップに驚いたカンだったが、少し落ち着くと実は思い当たる節があった。
「カンの転生回数を、しっかり忘れないようにしないとね」
「やはり転生カウンターか!? いつ強くなるのだぁぇえぇ!」
自身の唐突なレベルアップが、単なる転生回数を記録するものだとイチカに暗に示唆されたカンは、やけくそ気味に絶叫していた。
カンのそんな様子を見下ろしながらも、イチカは全く意に介さず話を続けようとしていた。
「さて、見事再び転生してレベルが上がった、カンよ」
「リセットボタンみたいに、ホイホイ転生させるでないわ! それに、わざわざ潰さなくても口で説明すれば、良いではないか!」
「"潰れて、転生したらレベル上がるよ"って? 先に説明してから確認しようとしたら、文句言いながら、止めろと駄々こねるでしょ?」
「当たり前だ!」
「本当、面倒くさい空き缶だなぁ」
「だいたいイチカは……」
結局どんな説明をしたところで、潰れて転生してみないと確認出来ないが、カンは簡単にその事を受け入れたくはなかった。
その事を煩くイチカに文句を言い始めると、わかりやすくイチカは嘆息をつきながら、部屋の片隅に並べられていた空き缶を指を差した。
「ん? アレがなんだと言うのだ。それにお主、少しばかり飲みすぎではないか?」
「しょうがないだろう。外に出かけたら、寒いからつい買って帰ってきちゃうんだよ」
「冬なのだ、寒いのはしょうがないだろう。で、それとさっきまでの話は関係ないであろう」
「溜まった空き缶のゴミ出しが、結構面倒でさ」
心底嫌そうな顔をしながらイチカは、説明を続ける。
「だから、なんなのだ?」
「カンのボディって、潰れたら消滅するでしょ?」
「……そうだな……おい……まさかと思うが……」
「アレ使えば、ゴミ出しとかしなくていいよね!」
「貴様ぁああ! そこに今すぐになおれぇえええ!」
「煩い。すぐ潰すぞ」
「理不尽な……」
圧倒的な理不尽をカンは受けながら、無駄に本気で威圧してくるイチカに対して何も言えなくなるのだった。
何か言えば、それを口実に再び潰されると察してしまい、これ以上この話を続けるのは危険だと、カンは判断したのだった。
「……まぁ、よい。そういえば、今の季節は冬なのだな。だが、我は空き缶だからかの? 特に寒くもないが」
「よほど潰される事が嫌とみえるね、明らさまに話をそらせてきたか……まぁ、カンは空き缶だから、熱い寒いはそもそも……は!? アルミの空き缶だって!?」
「ん? 何を今更言っておるのだ」
イチカは何か思いつくと、何故か驚愕の表情を見せた。
その様子を訝しむカンであったが、イチカはカンの問いかけを無視しながら、天井に目線を送ると、微かに口元を動かした。
そして次の瞬間、カンの意識に再び"世界の声が聞こえてくるのだった。
"カンは、熱耐性(Lv.2)を取得していた"
"カンは、寒耐性(Lv.2)を取得していた"
「取得していたとはなんだ! いたとは! 忘れとった様に取得しただと!?」
「よかったね。世界の理もカンみたいな矮小な存在の事なんて、すぐに忘れちゃうから仕方ないよ」
「やかましいわ! しっかり我を見ておけ、世界よ! まぁ、しかしだ。耐性関連の力を得たことは好ましいが……は!? 耐性試験をするとか、言い出さぬであろうな!」
カンの言葉を聞いたイチカは不敵に笑いながら、カンを指差すと徐ろに口を開いた。
「……メ○」
「魔王級ぅううぅううう!?」
「って、出来たら良いよね」
「……シャレにならんわ!?」
・・・・・・・
名前:カン
種族:空き缶(Lv.4) 1UP!
体力:13(最大13) 1UP!
技能:
言語理解
常時発動M型(Lv.3) 1UP
熱耐性(Lv.2) New!
寒耐性(Lv.2) New!
状態:傷無し
現在地:イチカの書斎
・・・・・・・
「……地味に他のレベルも上がったのだな……M型も……」
「さすがドM」
「……」
カンは、自身の成分表示に表記されている〝常時発動M型〟のレベルまでも上がっている事に、地味にメンタルダメージを受けるのだった。
再び意識を失っていたカンは、意識を取り戻すと同時に、多少混乱しながら叫び声をあげた。
その様子を、椅子に横柄に腰掛けながら見ていたイチカは、机の転生陣に転生してきたカンに対して話しかけた。
「おぉ、カンよ。潰れてしまうとは、情けない」
「おのれぇええええぇ! やはり貴様かぁあああ!」
"カンは転生により、Lv.4の空き缶になった"
「は!? ま、待つのだ! レベルアップだと!? 全く何もしてないのだが……まさか!?」
イチカに食ってかかろうとしていた矢先に、カンの意識に"世界の声"が聞こえてきた。
しかも世界の声は、カンのレベルが上がった事を知らせるものであった。
そして突然のレベルアップに驚いたカンだったが、少し落ち着くと実は思い当たる節があった。
「カンの転生回数を、しっかり忘れないようにしないとね」
「やはり転生カウンターか!? いつ強くなるのだぁぇえぇ!」
自身の唐突なレベルアップが、単なる転生回数を記録するものだとイチカに暗に示唆されたカンは、やけくそ気味に絶叫していた。
カンのそんな様子を見下ろしながらも、イチカは全く意に介さず話を続けようとしていた。
「さて、見事再び転生してレベルが上がった、カンよ」
「リセットボタンみたいに、ホイホイ転生させるでないわ! それに、わざわざ潰さなくても口で説明すれば、良いではないか!」
「"潰れて、転生したらレベル上がるよ"って? 先に説明してから確認しようとしたら、文句言いながら、止めろと駄々こねるでしょ?」
「当たり前だ!」
「本当、面倒くさい空き缶だなぁ」
「だいたいイチカは……」
結局どんな説明をしたところで、潰れて転生してみないと確認出来ないが、カンは簡単にその事を受け入れたくはなかった。
その事を煩くイチカに文句を言い始めると、わかりやすくイチカは嘆息をつきながら、部屋の片隅に並べられていた空き缶を指を差した。
「ん? アレがなんだと言うのだ。それにお主、少しばかり飲みすぎではないか?」
「しょうがないだろう。外に出かけたら、寒いからつい買って帰ってきちゃうんだよ」
「冬なのだ、寒いのはしょうがないだろう。で、それとさっきまでの話は関係ないであろう」
「溜まった空き缶のゴミ出しが、結構面倒でさ」
心底嫌そうな顔をしながらイチカは、説明を続ける。
「だから、なんなのだ?」
「カンのボディって、潰れたら消滅するでしょ?」
「……そうだな……おい……まさかと思うが……」
「アレ使えば、ゴミ出しとかしなくていいよね!」
「貴様ぁああ! そこに今すぐになおれぇえええ!」
「煩い。すぐ潰すぞ」
「理不尽な……」
圧倒的な理不尽をカンは受けながら、無駄に本気で威圧してくるイチカに対して何も言えなくなるのだった。
何か言えば、それを口実に再び潰されると察してしまい、これ以上この話を続けるのは危険だと、カンは判断したのだった。
「……まぁ、よい。そういえば、今の季節は冬なのだな。だが、我は空き缶だからかの? 特に寒くもないが」
「よほど潰される事が嫌とみえるね、明らさまに話をそらせてきたか……まぁ、カンは空き缶だから、熱い寒いはそもそも……は!? アルミの空き缶だって!?」
「ん? 何を今更言っておるのだ」
イチカは何か思いつくと、何故か驚愕の表情を見せた。
その様子を訝しむカンであったが、イチカはカンの問いかけを無視しながら、天井に目線を送ると、微かに口元を動かした。
そして次の瞬間、カンの意識に再び"世界の声が聞こえてくるのだった。
"カンは、熱耐性(Lv.2)を取得していた"
"カンは、寒耐性(Lv.2)を取得していた"
「取得していたとはなんだ! いたとは! 忘れとった様に取得しただと!?」
「よかったね。世界の理もカンみたいな矮小な存在の事なんて、すぐに忘れちゃうから仕方ないよ」
「やかましいわ! しっかり我を見ておけ、世界よ! まぁ、しかしだ。耐性関連の力を得たことは好ましいが……は!? 耐性試験をするとか、言い出さぬであろうな!」
カンの言葉を聞いたイチカは不敵に笑いながら、カンを指差すと徐ろに口を開いた。
「……メ○」
「魔王級ぅううぅううう!?」
「って、出来たら良いよね」
「……シャレにならんわ!?」
・・・・・・・
名前:カン
種族:空き缶(Lv.4) 1UP!
体力:13(最大13) 1UP!
技能:
言語理解
常時発動M型(Lv.3) 1UP
熱耐性(Lv.2) New!
寒耐性(Lv.2) New!
状態:傷無し
現在地:イチカの書斎
・・・・・・・
「……地味に他のレベルも上がったのだな……M型も……」
「さすがドM」
「……」
カンは、自身の成分表示に表記されている〝常時発動M型〟のレベルまでも上がっている事に、地味にメンタルダメージを受けるのだった。
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