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第18話 空き缶は逃げられない
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『まさか、ドMのMがMASTERのMだと勘違いされるとはね。そんなことよりも、また暫く天気が崩れる予報が出ている方が、僕は心配かなぁ』
イチカはスマホで週間天気予報をチェックしながら、カンの事をどうでも良さそうに呟いた。
「貴様ぁ! 全部、聞こえておるぞ!」
『ほらほらぁ、僕の声は姫達には聞こえないんだから、独り言を言っている変な空き缶だと思われるよ?』
「我より天気の事を、大事そうにするからではないか! それに何やら我を置きっぱなしで、彼方は話し合いを始めたのだ」
カンの言う通りに、姫達はカンそっちのけで、何やら話し合いを始めており、カンの独り言には、全く反応を示していなかった。
その様子をカンの視界を共有しながら見ていたイチカは、ボソッと独り言を呟いた。
『やっぱり、流石にアレ以上の誘導は無理か』
「誘導だと?……一体何の話を……」
『ただMと書いてある表示を、MASTERの〝M〟と自然に勘違いすると思っているのかい? 異世界にアルファベットが、あるとでも?』
「……やはり、イチカの仕業であったかぁあああ!」
『そんなことより、何かしらそっちの様子が、動きを見せようとしているみたいだよ』
話し合いをしていた三人は、取り敢えず本当に伝説のマスタークラスの勇者であるかどうかを確認する事が大事だと結論付けた。
もし、表示の偽装等していると分かれば、その時は心置きなく潰してしまおうと言う結論に至っていた。
当然、カンには聞こえないように遮音の術を使用しての協議だったが、改めてカンに対して振り向いた時の彼らの雰囲気を察したカンは、若干寒気を感じていた。
「もう、既に嫌な予感しかしないのだが……」
「さて、カン様。貴方様が伝承に聞く"召還された時点で、既に最強で無双しまくる"という、伝説のマスタークラスの勇者であるかどうか確認させて頂きます」
「都合が良すぎるぞ! マスタークラスの勇者!?」
『まさにラノベの俺TUEEE系主人公が、お望みだったみたいだね。カンは、缶YOEEEE系だけど』
「やかましいわ! 我はこれからの成長に、絶賛期待中なのだ!」
カンが、姫の示したマスタークラスの勇者の詳細に愕然としながらも、イチカに対して自分の将来への期待度をアピールしていると、明らかに重戦士と言わんばかりの騎士が前に出来ていた。
「な……何か我に用があるのか? そういえば、先ほど何ぞ姫が"確認する"みたいな事を……」
「ゴムレス! さぁ、失礼のない様に全力で行きなさい!」
「押忍!」
「……冗談……ではないのだな……」
姫にゴムレスと呼ばれ出てきたのは、間違いなく誰が見ても筋肉ダルマと二つ名を送りたくなる大男だった。
そして自分の獲物である大金槌を肩に担ぎ、カンの目の前にどっしりと構えをとった。
その様子に、現実逃避が出来ずに、カンはおもわず呟いていた。そして精神を集中すると、カッと目を見開き自身の魔力を大金槌に注ぎ込んでいった。そして次の瞬間、ゴムレスの気合の掛け声が召喚の間響き渡ったのだった。
「武技〝メタルクラッシュ〟!」
「効果抜群ぅううう!?」
ゴムレスの大金槌は、カンに真っ直ぐと振り下ろされた。
その瞬間、大金槌に対してカンは、一歩も引かずに全身で受け止めようとしていた。
「逃げれないだけぇぇええぇ! ぎゃぁあああ! 」
カンが目の前に迫り来る大金槌に絶望し、心が折れかけたその時、頭の中に"世界の声"が響いてきたのだった。
"カンは、逃げようとした!"
"しかし、カンは逃げられなかった!"
"ゴムレスは、メタルクラッシュを放った!"
"メタルクラッシュは、カンに効果抜群だ!"
"カンは、痛恨の一撃を受けた!"
"カンは、ダメージ100を受け体力が0となった!"
"カンは、常時発動M型の効果が発動させ体力が1残った!"
『今、"世界の声"が聞こえたと思うけど、こんな感じに結構分かりやすい感じに聞こえるようにしておいたから、この間より自分の状況が分かりやすくなったでしょ』
「カ……カァ……アァン……分かった所で……寧ろ具体的になって……精神的に辛くなるだけ……カァン……」
カンが、世界の声に対してイチカが楽しそうに説明する様子に、今度こそ心が折れそうになっていた所に、今度は姫の明るい声が聞こえてきたのだった。
「まぁ! まさか、ゴムレスの会心の一撃を、全て受け止めるなんて!」
確かにカンは、ゴムレスの放ったメタルクラッシュを余すことなく自らの身体で受け止めた。
そしてその結果として、瀕死の状態ではあるものの生き残るという点においては、完璧に達成していた。
そして、その結果を、召喚の間の全員に見せつけたのだった。
その事に興奮した姫が、大いに感動しているのに対し、カンはそれどころではなかった。
「痛恨ぅえぇぇ……誰か回復魔法をぉおぉ……」
勇者召喚するぐらいの世界であれば、回復魔法ぐらいある筈と予想し、カンは助けを求めた。
カンの予想通りに、この世界は〝剣と魔法〟の世界であり、回復魔法も存在していた。しかし、カンの望みは決して叶えられる事はなかった。
「姫! まさしくこの空き缶は、マスタークラスの勇者さ……あっ」
そんな中、興奮した騎士団長が、カンに駆け寄った際に、反射的にカンを踏んでしまったのだ。そして、鈍い音を立てるとカンの意識は遠のいていくのだった。
イチカはスマホで週間天気予報をチェックしながら、カンの事をどうでも良さそうに呟いた。
「貴様ぁ! 全部、聞こえておるぞ!」
『ほらほらぁ、僕の声は姫達には聞こえないんだから、独り言を言っている変な空き缶だと思われるよ?』
「我より天気の事を、大事そうにするからではないか! それに何やら我を置きっぱなしで、彼方は話し合いを始めたのだ」
カンの言う通りに、姫達はカンそっちのけで、何やら話し合いを始めており、カンの独り言には、全く反応を示していなかった。
その様子をカンの視界を共有しながら見ていたイチカは、ボソッと独り言を呟いた。
『やっぱり、流石にアレ以上の誘導は無理か』
「誘導だと?……一体何の話を……」
『ただMと書いてある表示を、MASTERの〝M〟と自然に勘違いすると思っているのかい? 異世界にアルファベットが、あるとでも?』
「……やはり、イチカの仕業であったかぁあああ!」
『そんなことより、何かしらそっちの様子が、動きを見せようとしているみたいだよ』
話し合いをしていた三人は、取り敢えず本当に伝説のマスタークラスの勇者であるかどうかを確認する事が大事だと結論付けた。
もし、表示の偽装等していると分かれば、その時は心置きなく潰してしまおうと言う結論に至っていた。
当然、カンには聞こえないように遮音の術を使用しての協議だったが、改めてカンに対して振り向いた時の彼らの雰囲気を察したカンは、若干寒気を感じていた。
「もう、既に嫌な予感しかしないのだが……」
「さて、カン様。貴方様が伝承に聞く"召還された時点で、既に最強で無双しまくる"という、伝説のマスタークラスの勇者であるかどうか確認させて頂きます」
「都合が良すぎるぞ! マスタークラスの勇者!?」
『まさにラノベの俺TUEEE系主人公が、お望みだったみたいだね。カンは、缶YOEEEE系だけど』
「やかましいわ! 我はこれからの成長に、絶賛期待中なのだ!」
カンが、姫の示したマスタークラスの勇者の詳細に愕然としながらも、イチカに対して自分の将来への期待度をアピールしていると、明らかに重戦士と言わんばかりの騎士が前に出来ていた。
「な……何か我に用があるのか? そういえば、先ほど何ぞ姫が"確認する"みたいな事を……」
「ゴムレス! さぁ、失礼のない様に全力で行きなさい!」
「押忍!」
「……冗談……ではないのだな……」
姫にゴムレスと呼ばれ出てきたのは、間違いなく誰が見ても筋肉ダルマと二つ名を送りたくなる大男だった。
そして自分の獲物である大金槌を肩に担ぎ、カンの目の前にどっしりと構えをとった。
その様子に、現実逃避が出来ずに、カンはおもわず呟いていた。そして精神を集中すると、カッと目を見開き自身の魔力を大金槌に注ぎ込んでいった。そして次の瞬間、ゴムレスの気合の掛け声が召喚の間響き渡ったのだった。
「武技〝メタルクラッシュ〟!」
「効果抜群ぅううう!?」
ゴムレスの大金槌は、カンに真っ直ぐと振り下ろされた。
その瞬間、大金槌に対してカンは、一歩も引かずに全身で受け止めようとしていた。
「逃げれないだけぇぇええぇ! ぎゃぁあああ! 」
カンが目の前に迫り来る大金槌に絶望し、心が折れかけたその時、頭の中に"世界の声"が響いてきたのだった。
"カンは、逃げようとした!"
"しかし、カンは逃げられなかった!"
"ゴムレスは、メタルクラッシュを放った!"
"メタルクラッシュは、カンに効果抜群だ!"
"カンは、痛恨の一撃を受けた!"
"カンは、ダメージ100を受け体力が0となった!"
"カンは、常時発動M型の効果が発動させ体力が1残った!"
『今、"世界の声"が聞こえたと思うけど、こんな感じに結構分かりやすい感じに聞こえるようにしておいたから、この間より自分の状況が分かりやすくなったでしょ』
「カ……カァ……アァン……分かった所で……寧ろ具体的になって……精神的に辛くなるだけ……カァン……」
カンが、世界の声に対してイチカが楽しそうに説明する様子に、今度こそ心が折れそうになっていた所に、今度は姫の明るい声が聞こえてきたのだった。
「まぁ! まさか、ゴムレスの会心の一撃を、全て受け止めるなんて!」
確かにカンは、ゴムレスの放ったメタルクラッシュを余すことなく自らの身体で受け止めた。
そしてその結果として、瀕死の状態ではあるものの生き残るという点においては、完璧に達成していた。
そして、その結果を、召喚の間の全員に見せつけたのだった。
その事に興奮した姫が、大いに感動しているのに対し、カンはそれどころではなかった。
「痛恨ぅえぇぇ……誰か回復魔法をぉおぉ……」
勇者召喚するぐらいの世界であれば、回復魔法ぐらいある筈と予想し、カンは助けを求めた。
カンの予想通りに、この世界は〝剣と魔法〟の世界であり、回復魔法も存在していた。しかし、カンの望みは決して叶えられる事はなかった。
「姫! まさしくこの空き缶は、マスタークラスの勇者さ……あっ」
そんな中、興奮した騎士団長が、カンに駆け寄った際に、反射的にカンを踏んでしまったのだ。そして、鈍い音を立てるとカンの意識は遠のいていくのだった。
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