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第12話 新たな力
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『カンは、少年に対して自分を踏み潰せと要求していた。全く信じられない程の、変態の極みである』
「直接的に、悪意を盛り込むでない。ナレーション風に言えば、許されると思うでないわ」
カンはイチカに文句を述べているが、実際問題として意思疎通を言葉で取れる生物が、嬉々として自分を踏んでくれと頼んできたら、変態だと認定されてもおかしくなかった。
「そんなことよりも、さぁさぁ! 我を踏み潰せ! かっちゃんよ!」
「……気持ち悪い……」
「え?」
カンは、少年の半泣きになりながらの呟きを聞き、この時点で漸く自分の要求した事の特殊性に考えが思い至った。
自分から進んで踏んで下さいと懇願するという事が、どういう方達の特殊スキルかという事を。
「本当に変態認定なのカァアアアン!? しかし、この際何でも良いのだ! 蜜柑と共に並んで立ちたければ、我を踏むのだぁああ!」
カンは、純粋な少年の心に自分がトラウマを植え付ける様な事を要求していたが、蜜柑を助ける為には必要な犠牲だと割り切って、かっちゃんに対して追い込みをかけていた。
「わかったよ! わかったから! えぃ!」
「ぐしゃぺきゃ!?」
かっちゃんは勇気を持って、気持ち悪い空き缶の側部を思いっきり右足で踏みつぶした。
虫相手であれば、割と残酷な事が出来てしまうような歳の頃でも、流石にゴミとは言え人語を話してくる存在を踏み潰すのは、かっちゃんの心に決して小さくない傷を与えたのだった。
『少年の心に、一生消えない傷を与えたんだね、カンは……見た目通りのゴミ屑だね』
「くぺ……きゃ……貴様……言葉でトドメを……刺しにくるで……ないわ……」
かっちゃんの右足で見事なまでにボディを踏みつけられながらも、カンはイチカの辛辣な言葉に苦しみながらも反応していた。
そして、カンを見事に踏み潰したかっちゃんは、右足に違和感を感じていた。
「あ!? 足に挟まっちゃった! 取らなきゃ!」
「ま……待つのだ! そのままで良いのだ!」
「え?」
かっちゃん少年が右足にカンが挟まった事に困惑し、思わず右足に挟まったカンを取ろうとした時、カンがそれを遮るように叫んだ。
カンの言葉に驚き、かっちゃんがその動きを止めた瞬間、彼の身に更なる変化が起きた。
それは、頭の中に突然声が聞こえてきたことだった。
"かっちゃんは、カンを装備した"
"かっちゃんは、攻撃力が1あがった"
"かっちゃんは、素早さが1さがった"
「誰の声!?」
「素早さはダウンカァアン!? 」
かっちゃんは、直接頭の中に響いてきた声に驚き、そして強烈な恐怖に襲われていた。
カンを踏み潰し装着した事により、カンと同一の存在と"世界の理"に認識された為に、かっちゃんにも"世界の声"が聞こえたのだった。
当然、その事を知らないただの一般人の少年にとっては、理解出来ない現象が増えただけであり、恐怖のあまり涙が目に溜まり、その場で固まってしまうのも仕方のない事であった。
『カンは、呪いの装備だったんだね』
「教会で浄化されてしまう!?」
カンは、呪われた装備の末路を想像した結果、安易に教会を思い浮かべ自身の存在が消える所まで想像していた。
その様子にイチカは呆れながら、現実的な対処策を述べた。
『普通に足から外してゴミ箱にポイで、呪われた"空き缶装備"は廃棄できるよ』
「理不尽!?」
どちらかと言うと、かっちゃんの方が理不尽な体験をしているのだが、カンは自分を装備した相手の能力がダウンした事にショックを受けており、少年を気遣う余裕さは皆無だった。
『そう言えば、ちゃんと自分のステータスは確認しているかい? 随分と自分を簡単に傷付けている様だけど、"自分が死なないとでも思っているのか"?』
「お主、その台詞が言いたいだけであろう……というか、ステータスの確認だと? どうやって確認するのだ?」
『今、カンも頭の中……いや、蓋材の中……カンの頭にあたるところってどこ? カンが見える様にステータス表記のイメージを送ってあげようかと思ったんだけど、送信先がわからないな』
「我に頭という部分があるかどうか一晩かけて議論したいところだが、我にもわからぬわ。どこでもイチカのイメージしやすいところを、頭にすればよい』
固まっているかっちゃんの右足に踏まれながら、カンは自身のステータスを確認しようとしていた。そしてカンの言葉にイチカは〝まぁ、どこでもいっか〟と適当にカンのステータスを送信したのだった。
「ぬ……何やらざわざわと身体に何か入ってくる感覚が……ぬ? これが我のステー……カァアアアアアン!?」
・・・・・・・
名前:カン
種族:空き缶(Lv.1)
体力:1(最大10)
技能:言語理解
状態:側面に凹み×7+頭部に歪み+側面の潰れ(大)+かっちゃんの足に挟まり中
現在地:缶蹴りが物凄く流行っている公園
・・・・・・・
『既に瀕死だね』
「体力1ぃいいいいい!?」
見事なまでに、生命の危機に陥っているカンであった。
「直接的に、悪意を盛り込むでない。ナレーション風に言えば、許されると思うでないわ」
カンはイチカに文句を述べているが、実際問題として意思疎通を言葉で取れる生物が、嬉々として自分を踏んでくれと頼んできたら、変態だと認定されてもおかしくなかった。
「そんなことよりも、さぁさぁ! 我を踏み潰せ! かっちゃんよ!」
「……気持ち悪い……」
「え?」
カンは、少年の半泣きになりながらの呟きを聞き、この時点で漸く自分の要求した事の特殊性に考えが思い至った。
自分から進んで踏んで下さいと懇願するという事が、どういう方達の特殊スキルかという事を。
「本当に変態認定なのカァアアアン!? しかし、この際何でも良いのだ! 蜜柑と共に並んで立ちたければ、我を踏むのだぁああ!」
カンは、純粋な少年の心に自分がトラウマを植え付ける様な事を要求していたが、蜜柑を助ける為には必要な犠牲だと割り切って、かっちゃんに対して追い込みをかけていた。
「わかったよ! わかったから! えぃ!」
「ぐしゃぺきゃ!?」
かっちゃんは勇気を持って、気持ち悪い空き缶の側部を思いっきり右足で踏みつぶした。
虫相手であれば、割と残酷な事が出来てしまうような歳の頃でも、流石にゴミとは言え人語を話してくる存在を踏み潰すのは、かっちゃんの心に決して小さくない傷を与えたのだった。
『少年の心に、一生消えない傷を与えたんだね、カンは……見た目通りのゴミ屑だね』
「くぺ……きゃ……貴様……言葉でトドメを……刺しにくるで……ないわ……」
かっちゃんの右足で見事なまでにボディを踏みつけられながらも、カンはイチカの辛辣な言葉に苦しみながらも反応していた。
そして、カンを見事に踏み潰したかっちゃんは、右足に違和感を感じていた。
「あ!? 足に挟まっちゃった! 取らなきゃ!」
「ま……待つのだ! そのままで良いのだ!」
「え?」
かっちゃん少年が右足にカンが挟まった事に困惑し、思わず右足に挟まったカンを取ろうとした時、カンがそれを遮るように叫んだ。
カンの言葉に驚き、かっちゃんがその動きを止めた瞬間、彼の身に更なる変化が起きた。
それは、頭の中に突然声が聞こえてきたことだった。
"かっちゃんは、カンを装備した"
"かっちゃんは、攻撃力が1あがった"
"かっちゃんは、素早さが1さがった"
「誰の声!?」
「素早さはダウンカァアン!? 」
かっちゃんは、直接頭の中に響いてきた声に驚き、そして強烈な恐怖に襲われていた。
カンを踏み潰し装着した事により、カンと同一の存在と"世界の理"に認識された為に、かっちゃんにも"世界の声"が聞こえたのだった。
当然、その事を知らないただの一般人の少年にとっては、理解出来ない現象が増えただけであり、恐怖のあまり涙が目に溜まり、その場で固まってしまうのも仕方のない事であった。
『カンは、呪いの装備だったんだね』
「教会で浄化されてしまう!?」
カンは、呪われた装備の末路を想像した結果、安易に教会を思い浮かべ自身の存在が消える所まで想像していた。
その様子にイチカは呆れながら、現実的な対処策を述べた。
『普通に足から外してゴミ箱にポイで、呪われた"空き缶装備"は廃棄できるよ』
「理不尽!?」
どちらかと言うと、かっちゃんの方が理不尽な体験をしているのだが、カンは自分を装備した相手の能力がダウンした事にショックを受けており、少年を気遣う余裕さは皆無だった。
『そう言えば、ちゃんと自分のステータスは確認しているかい? 随分と自分を簡単に傷付けている様だけど、"自分が死なないとでも思っているのか"?』
「お主、その台詞が言いたいだけであろう……というか、ステータスの確認だと? どうやって確認するのだ?」
『今、カンも頭の中……いや、蓋材の中……カンの頭にあたるところってどこ? カンが見える様にステータス表記のイメージを送ってあげようかと思ったんだけど、送信先がわからないな』
「我に頭という部分があるかどうか一晩かけて議論したいところだが、我にもわからぬわ。どこでもイチカのイメージしやすいところを、頭にすればよい』
固まっているかっちゃんの右足に踏まれながら、カンは自身のステータスを確認しようとしていた。そしてカンの言葉にイチカは〝まぁ、どこでもいっか〟と適当にカンのステータスを送信したのだった。
「ぬ……何やらざわざわと身体に何か入ってくる感覚が……ぬ? これが我のステー……カァアアアアアン!?」
・・・・・・・
名前:カン
種族:空き缶(Lv.1)
体力:1(最大10)
技能:言語理解
状態:側面に凹み×7+頭部に歪み+側面の潰れ(大)+かっちゃんの足に挟まり中
現在地:缶蹴りが物凄く流行っている公園
・・・・・・・
『既に瀕死だね』
「体力1ぃいいいいい!?」
見事なまでに、生命の危機に陥っているカンであった。
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