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第10話 世代を超えた遊び
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『ロリカンは、目の前に自分をかばうように少年達に立ち塞がる女の子を、地面からスカートを見上げて、その中を覗こうと頑張っているんだね。単刀直入に、クズだね』
「どちらかと言うと、我を冤罪に仕立て上げる貴様が、クズ野郎だがな。そもそも見上げる瞳は、我の何処にあるといのうか……は!? そんな事より、我を助ける天使が、今まさに舞い降りたという事が重要なのだ!」
『魔王を目指すカンは、天使のような少女に助けられて興奮しているんだね。引くわぁ……』
「悪意しか感じない言い方だの……」
カンはイチカの言葉で、メンタルにダメージを蓄積させながらも、実際問題として、今の状況を客観的に見れば、少女のスカートを覗き込む位置に転がっている為に、強く否定する事が出来ないでいた。
どうするものかとカンが考えている間にも、状況は刻一刻と変化していくのだった。
「退けよ、蜜柑! そいつ返せよ!」
「ダメだよ! なんか嫌がってるもん!」
蜜柑と呼ばれた少女は、自分より大きな男の子に対して、一歩も引かずにその場に踏み止まっていた。
そして、蜜柑に対してカンの引き渡しを要求している少年は、その少女の知り合いの様だった。
「ん? 何やら様子がおかしい感じが……」
カンが二人の様子を見ていると、特に少年の方が何やら戸惑っている様な表情をしており、自分の今の行動が理解出来ていない様子だった。
「いつも缶蹴りなんか、"かっちゃん"しないじゃん!」
「うるさい! なんか知らないけど、無性に今日は缶蹴りがしたんだよ!」
『蜜柑に"かっちゃん"と呼ばれた少年は、蜜柑にそう言われちゃうと、自分でも何故こんなにも缶ケリがしたいのかの理由を説明出来ないだろうねぇ。この公園に遊びに入ると、無性に缶蹴りがしたくなるように"限定的強制誘導エリア"に指定して、カンを通して術を僕が施してあるんだから。まぁ、この子達にとっては、"不思議な事"といった感じじゃないかな』
「この外道がぁああああ!」
その時、少年少女達に声をかける者達が現れた。
「え?」
少年少女が振り返ると、そこには見るからにヤンチャそうな高校生達が立っていたのだった。
五人組の高校生は、肩にバッグを担ぎながら蜜柑を見下ろしていた。
「よぉよぉ、その空き缶お兄さん達に貸してくれよ。缶蹴りしてぇからよ」
髪を茶髪に染めた男子生徒が、蜜柑の前でしゃがみこみ、ぶっきらぼうに言いながらカンを指差していた。
『真打ち登場だね、カン。彼らはきっと、特に公園に用事もなかっただろうに、"缶蹴りが無性にしたくなる限定的強制誘導エリア"のおかげで、園内に誘われたんだろう。蜜柑ちゃんにとっては、不運だったね』
「我にとっても、十分不運だがなぁああ!」
自分よりも大きい高校生に、突然声をかけられた蜜柑は完全に固まっていた。
そして、声をかけている男子高校生の後ろでは、既に他の男子高校生達が荷物を降ろして準備体操を始めていた。
一見やんちゃ見えた高校生達の念入りな準備の様子は、まるで何処かのサッカー部の様であった。
「半端ない系カァアアアアアン!?」
そして、気づくと蜜柑の周りには、先ほどまで一緒に遊んでいた子供達がいなくなっていた。
子供達は高校生が蜜柑に話しかけているタイミングで、公園の隅の方へと逃げていたのだ。
『蜜柑ちゃん以外は、みんなカンを捨てて逃げちゃったね、空き缶だけに』
「遊んでいた空き缶は、きちんとゴミ箱に……ではないわ、たわけ。仕方ない事であろう、あの年齢の子供にはあの五人は恐ろしく見えるであろう。実際、準備運動が終わり蹴りの素振りをしている様子は、我でも恐ろしいのだからな」
『確かにそうだろうね。という事は、如何に蜜柑ちゃんが勇敢であり、尚且つ心優しい子供だという事が際立つね。そんな少女に護ってもらう気持ちは、ねぇねぇ、どんな気持ち?』
「貴様……必ずブン殴ってやるからの」
カンがイチカに対する制裁を心に固く決意した頃、入念なウォーミングアップを終えた高校生達が蜜柑の元へと近づいてきていた。
蜜柑を説得していた高校生も、固まっていた蜜柑に対して、最初はぶっきらぼうながらも目線を合わせ、彼なりに優しく語りかけていたが、蜜柑が全くカンを渡そうとする仕草が見えなかった為に、既に譲って貰う事は諦めていた。
そして、片膝をついていた男子高校生はおもむろに立ち上がると、突然公園の入り口の方向に顔を向けると、驚いた様に叫んだ。
「あ!? お嬢ちゃん! あんな所に、空き缶の大群が整列して綺麗に踊ってるぞ!」
「え!? 空き缶が踊ってるの!? どこ!?」
蜜柑は思わず男子高校生が指差した方向へと目線を移してしまった。
「は!? いかん! 蜜柑! それは罠カァアアアアアン!?」
『カン、叫んでないで衝撃に備えた方が良い様だよ』
イチカが派手なリアクションを取っているカンに助言した直後、気を取られた蜜柑を後ろでウォーミングアップを完了した俊足自慢の男子高校生が、一瞬の隙を見逃さずに駆け出した。
そして、一歩目の踏み込みから瞬時にトップスピードに達していた。
『これは……流石、"瞬神"の二つ名を持つフォワードの高柳君だね』
「一体、何の情報カァアアアアアン!?』
イチカの感心する様な呟きが聞こえ、カンがその情報にツッコミを入れた瞬間、その時は訪れた。
"空き缶が、空を翔んだのだった"
「どちらかと言うと、我を冤罪に仕立て上げる貴様が、クズ野郎だがな。そもそも見上げる瞳は、我の何処にあるといのうか……は!? そんな事より、我を助ける天使が、今まさに舞い降りたという事が重要なのだ!」
『魔王を目指すカンは、天使のような少女に助けられて興奮しているんだね。引くわぁ……』
「悪意しか感じない言い方だの……」
カンはイチカの言葉で、メンタルにダメージを蓄積させながらも、実際問題として、今の状況を客観的に見れば、少女のスカートを覗き込む位置に転がっている為に、強く否定する事が出来ないでいた。
どうするものかとカンが考えている間にも、状況は刻一刻と変化していくのだった。
「退けよ、蜜柑! そいつ返せよ!」
「ダメだよ! なんか嫌がってるもん!」
蜜柑と呼ばれた少女は、自分より大きな男の子に対して、一歩も引かずにその場に踏み止まっていた。
そして、蜜柑に対してカンの引き渡しを要求している少年は、その少女の知り合いの様だった。
「ん? 何やら様子がおかしい感じが……」
カンが二人の様子を見ていると、特に少年の方が何やら戸惑っている様な表情をしており、自分の今の行動が理解出来ていない様子だった。
「いつも缶蹴りなんか、"かっちゃん"しないじゃん!」
「うるさい! なんか知らないけど、無性に今日は缶蹴りがしたんだよ!」
『蜜柑に"かっちゃん"と呼ばれた少年は、蜜柑にそう言われちゃうと、自分でも何故こんなにも缶ケリがしたいのかの理由を説明出来ないだろうねぇ。この公園に遊びに入ると、無性に缶蹴りがしたくなるように"限定的強制誘導エリア"に指定して、カンを通して術を僕が施してあるんだから。まぁ、この子達にとっては、"不思議な事"といった感じじゃないかな』
「この外道がぁああああ!」
その時、少年少女達に声をかける者達が現れた。
「え?」
少年少女が振り返ると、そこには見るからにヤンチャそうな高校生達が立っていたのだった。
五人組の高校生は、肩にバッグを担ぎながら蜜柑を見下ろしていた。
「よぉよぉ、その空き缶お兄さん達に貸してくれよ。缶蹴りしてぇからよ」
髪を茶髪に染めた男子生徒が、蜜柑の前でしゃがみこみ、ぶっきらぼうに言いながらカンを指差していた。
『真打ち登場だね、カン。彼らはきっと、特に公園に用事もなかっただろうに、"缶蹴りが無性にしたくなる限定的強制誘導エリア"のおかげで、園内に誘われたんだろう。蜜柑ちゃんにとっては、不運だったね』
「我にとっても、十分不運だがなぁああ!」
自分よりも大きい高校生に、突然声をかけられた蜜柑は完全に固まっていた。
そして、声をかけている男子高校生の後ろでは、既に他の男子高校生達が荷物を降ろして準備体操を始めていた。
一見やんちゃ見えた高校生達の念入りな準備の様子は、まるで何処かのサッカー部の様であった。
「半端ない系カァアアアアアン!?」
そして、気づくと蜜柑の周りには、先ほどまで一緒に遊んでいた子供達がいなくなっていた。
子供達は高校生が蜜柑に話しかけているタイミングで、公園の隅の方へと逃げていたのだ。
『蜜柑ちゃん以外は、みんなカンを捨てて逃げちゃったね、空き缶だけに』
「遊んでいた空き缶は、きちんとゴミ箱に……ではないわ、たわけ。仕方ない事であろう、あの年齢の子供にはあの五人は恐ろしく見えるであろう。実際、準備運動が終わり蹴りの素振りをしている様子は、我でも恐ろしいのだからな」
『確かにそうだろうね。という事は、如何に蜜柑ちゃんが勇敢であり、尚且つ心優しい子供だという事が際立つね。そんな少女に護ってもらう気持ちは、ねぇねぇ、どんな気持ち?』
「貴様……必ずブン殴ってやるからの」
カンがイチカに対する制裁を心に固く決意した頃、入念なウォーミングアップを終えた高校生達が蜜柑の元へと近づいてきていた。
蜜柑を説得していた高校生も、固まっていた蜜柑に対して、最初はぶっきらぼうながらも目線を合わせ、彼なりに優しく語りかけていたが、蜜柑が全くカンを渡そうとする仕草が見えなかった為に、既に譲って貰う事は諦めていた。
そして、片膝をついていた男子高校生はおもむろに立ち上がると、突然公園の入り口の方向に顔を向けると、驚いた様に叫んだ。
「あ!? お嬢ちゃん! あんな所に、空き缶の大群が整列して綺麗に踊ってるぞ!」
「え!? 空き缶が踊ってるの!? どこ!?」
蜜柑は思わず男子高校生が指差した方向へと目線を移してしまった。
「は!? いかん! 蜜柑! それは罠カァアアアアアン!?」
『カン、叫んでないで衝撃に備えた方が良い様だよ』
イチカが派手なリアクションを取っているカンに助言した直後、気を取られた蜜柑を後ろでウォーミングアップを完了した俊足自慢の男子高校生が、一瞬の隙を見逃さずに駆け出した。
そして、一歩目の踏み込みから瞬時にトップスピードに達していた。
『これは……流石、"瞬神"の二つ名を持つフォワードの高柳君だね』
「一体、何の情報カァアアアアアン!?』
イチカの感心する様な呟きが聞こえ、カンがその情報にツッコミを入れた瞬間、その時は訪れた。
"空き缶が、空を翔んだのだった"
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