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第七章 悠久
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「クハハハ! 落ち始めた絶望は、もう誰にも止められはせぬ! 女神の加護も消えた街に、明日など来ぬわ!」
キリュウの高笑いに呼応するかの様に、瘴気狂煉獄竜が咆哮を上げた。
「シェンラ、俺をあのデカイ塊の前まで運んでくれ」
「どうする気なのじゃとは、聞かぬぞ?」
「そんな当たり前の事など、言わなくても分かるだろ。頼むよ」
俺の神火の大翼では、落下速度を増している『煉獄瘴気巨巌塊』の前方に回り込むのには、間に合いそうになかった。傷ついているとしてもシェンラの飛行速度の方が早く、間に合わせるにはシェンラに運んでもらうしか無かった。
「最後の悪あがきという訳なのじゃな」
「は? 何言っているんだ? 最後はあいつらだろ」
俺は、既に勝ち誇った顔で、俺たちを見下しているキリュウ達を指差した。
「……く……くっくっく……そうであった……それが、お主じゃったの」
「笑ってないで、さっさと運んでくれよ」
「わかったのじゃ! さぁ、参るのじゃ!」
シェンラは、何故だか嬉しそうに笑いながら、俺を乗せ『煉獄瘴気巨巌塊』を追いかけ始めた。
「無駄な足掻きを何故ヒトはするのだ。どれだけ今を守ろうと、この世界に先はないというのに」
キリュウのバカにしたような呟きを残し、ヤナとシェンラは一切の迷いなく絶望へと向かっていくのであった。
「こりゃ、学校の校舎よりでかそうだな」
俺は、シェンラに乗りながら『煉獄瘴気巨巌塊』を追い越す時に大きさを確認したが、近くで見るとその馬鹿みたいな大きさに思わず笑ってしまう。
「もう少し距離を取れる所まで、行くのじゃ」
「あぁ、頼む」
シェンラは、時折苦しそうな呻き声を出しながらも、しっかりと『煉獄瘴気巨巌塊』を追い越していった。街に落ちてくるまで僅かながらだが、時間を取れたのは幸運だった。俺は、再び神火の大翼を広げシェンラの背から飛び立とうとすると、シェンラが声をかけてきた。
「お主、何処へ行く気なのじゃ?」
「ん? もちろん、アレを止めに行くんだが?」
「それはわかっておるのじゃ。何故、妾から降りようとしておるのじゃ」
シェンラは、怒気を含んだ声を俺に向けてきた。
「お前は何言ってるんだ。シェンラは、街で休んでいればいい。あとは俺に任せろ」
シェンラは口には出さないが、その身体は竜殺しの武器の傷により相当弱っている筈だった。魔力にしても、背に乗って分かったが、残りも既に僅かといった所だろう。
「お主は、先ほど妾の背の上で竜騎士だと宣言しよったのじゃ」
「あぁ、それがどうした」
「そして、妾もその宣言に対して、お主を振り落としたりしなかったのじゃ」
「……なんだ、この流れは……くっ……嫌な予感しかしないぞ」
俺は、燃える小山が落ちてくるという時に、急に言質を確認しだしたシェンラに、既視感を感じ、背中に冷や汗をかき出していた。
「竜の世界ではの、古来より人を背に乗せ共に戦うという事は、互いに命を預け合うという『今生の盟約』を交わしたことになるのじゃ」
「『今生の盟約』……どんなものだ?」
「共に全てを捧げあうというものじゃ」
「……全て?」
「全てなのじゃ」
「……因みにこれまで、シェンラとその『今生の盟約』と言うのを、交わした相手はいるのか?」
「交わしたい相手がおったのじゃが、『今生の盟約』と言うのがあるという事を話した時に、断られてしまったのじゃ。生きる時間が違う自分に、縛られてほしくないと言われての」
シェンラは、寂しそうな声で俺に告げていたが、俺には疑問があった。
「なぁ? 事前に、俺にその『今生の盟約』の説明なかったよな?」
「しておらぬからの」
「……何故?」
「説明してたら、もしかしたら断られるやもしれんではないか」
「は?」
「お主達と宿に泊まった時に、ヤナビから話を色々聞いておってな」
俺はヤナビの名が出た時点で、心が折れそうになった。
「『先ずは言質を取るのです。それさえ押さえれば、あの人は確保出来たも同然です』なのじゃ!」
「あほかぁあああああ!」
俺は見ていないその場の風景を、完全に頭の中にイメージする事が出来た。ヤナビの腹黒い嗤い顔が、鮮明に脳裏に浮かんだ。
「して、確認じゃが、お主は竜騎士の格好をして、誰の背に乗り、あの魔族に何と名乗ったのじゃ?」
「……シェンラに乗って、神火竜騎士と名乗りました……」
「妾は、お主を振り落としたりしたか?」
「……してません」
「うむ、『今生の盟約』成立なのじゃ」
「因みに、破棄や契約期間の終わりとか…」
「『今生』だと言っておるのじゃ」
「絶対、ヤナビに何か言われる……」
俺は、ガックリと肩を落としながらも、気持ちを切り替えた。
「ふっ……なんのこれしき……これしきのことは、もう慣れたぞ……ならば、俺と『今生の盟約』を結ぶ古代竜『天空の覇者』よ! 俺と共に命を賭けろ!」
「格好良く決めようとする心意気は良いが、さっきのを慣れたと言う所がのぉ……妾が嵌めておいてなんじゃが、哀れだの」
「……うるせぇ! 俺と共に命を賭けるのか、賭けないのかどっちだ!」
「それこそ、答えを聞く必要があるのかの?」
「答えを聞きたい時も、あるのさ」
「……ふふふ、勿論貴方と共にこの命、何処までも」
「あぁ、何処までも」
そして、目の前に迫る悪意と絶望の塊に『天空の覇者』に乗る『神火の竜騎士』は立ちはだかる。
悠久の刻を経て、今生の盟約を結びし二人は、どちらかでもなく笑っていた。
「あれは、『天空の覇者』なのか?……まさか、俺の代で目にする事になるとはな。初代と共に旅をし、初代と共にこの街を作り、そして迷宮の最奥でこの街を護りつづけた現役Sランク冒険者にして、古代竜シェンラ」
キョウシロウは、空を見上げ落ちてくる瘴気と業火を灯した山のような塊を前に、一度は死を覚悟した。しかし、その確実な死を前に立ち塞がる竜と竜騎士を見ると、再び瘴気纏火竜を斬り倒し始めた。
「あの白い竜騎士はヤナだな。ふっふっふ、あいつは本当に面白い奴だな。古代竜さえも、堕とすのか? くくく、あっはっはっは!」
キョウシロウは、大笑いしながら楽しそうに今まで以上の速度で、周りの瘴気纏い竜達を殲滅し始めたのだった。
「ね? ほら。ヤナがお空で、わたし達を守ってくれるよ」
「あ……あれは、なんでしょう? 竜? それにしては、竜が鎧を身につけている? しかも、あの竜の強大な気は一体……」
「きっと、シェンラちゃんをヤナが格好良くしたんだよ」
「格好いい? え? あれが?」
「うん、格好いい」
大聖堂の出口から空を見上げながら、ユーフュリアの何処か困惑する声と、同じく空を見上げながら羨望の眼差しを二人に向けるライだった。
「ねぇ? アリス、特撮映画の撮影の予定あったっけ?」
「コウヤは、何をバカなことを言っ……あぁ、うん、アレね……」
「絶対ヤナ君の趣味だよね、アレ」
「マジ格好いい……格好いいよ! 見たい! もっと近くで見たい!」
「ルイ様! 落ち着いてください! 勇者様も止めてください! はしゃぐ勇者を、従者騎士が一人で止めれるわけないんですから! はやくぅうう!」
ヤナの所へ駆け出そうとしているルイを、ミレア団員が必死に腰にしがみつき止めながら、悲鳴をあげていた。それを聞いた勇者達三人が呆れ顔で、ルイを止めて宥めていた。
「マスター……また、予想通りにしてやられてますね、全く……帰ってきたらまた、可愛がってあげないと」
口では呆れながらも、ヤナビの優しい微笑みは、しっかりと空へと向けられていた。
「あの人好みの格好した白い竜って、私たちの知っている竜なのかしら?」
「エディスもそう感じていましたか。わたしも何処かで会ったことあるような、そんな懐かしさがこみ上げます」
「あのような強大な気を持つ竜ならば、一度会えば忘れなさそうなのですが……確かに、何処かで会ったことがある気はしますね」
三人の巫女は、ヤナと共に煉獄瘴気巨巌塊のまえに立ち塞がる白き鎧を身にまとう古代竜を見ながら、不思議な感覚を覚えるのであった。
「さてシェンラ、確認なんだが、お前念話は出来るよな?」
「うむ、妾程になると大抵の事は出来るのじゃ。それがどうかしたのかの?」
「それでは、もう一つ質問だ。念話状態で『魔力制御』は出来るか?」
「お主……妾と『接続』したいというつもりか?……初めてなんじゃが、優しくしてくれるかの……」
「……ツッコまねぇぞ……」
俺は、こちらに顔を向けてモジモジしている古代竜に、ジト目を向けた。
「なんじゃ、ノリが悪い男じゃの。まぁ、全部本気じゃがな。お主の『接続』は、恐らくアリスの時から察するに、魔力により相手と一時的な強い繋がりを形成し、魔力を介して情報の得ているのじゃろ。それならばお主に妾の情報が過剰に流れ込まぬ様には出来るじゃろうが、魔力自体が繋がっておるからの。完全にお主に妾の記録情報等が行かぬ様にするのは、無理じゃろうな」
「さらっと、恐ろしいことを言うな……完全には無理か、ヤナビがこの場にいないのが痛いな。まぁ、だがアリスの時みたいには、ならなさそうって事だな」
俺は、時間さえあればヤナビを呼んでから行いたい所だったが、そんな時間はない為決断した。
「なるべく『接続』の時間は減らしたいから、アレを受け止めたらヤるぞ」
「別に構わんのじゃが、『接続』が何の意味があるのじゃ?」
「説明している時間はなさそうだからな、あとはぶっつけで指示を出すから、よろしく」
「それもまた、面白そうで良しじゃな」
俺とシェンラは共に笑いながら、煉獄瘴気巨巌塊を受け止めるべく身構える。
「さぁ、こっからだ。準備はいいか?」
「いつでも来いなのじゃ!」
そして、俺とシェンラと煉獄瘴気巨巌塊は、遂に迷宮都市国家デキスのすぐ上空で、激突した。
神の火を纏し竜騎士は、絶望に抗い絶望を受け止める
決して自分の後ろに行かせぬと言わんばかりに
キリュウの高笑いに呼応するかの様に、瘴気狂煉獄竜が咆哮を上げた。
「シェンラ、俺をあのデカイ塊の前まで運んでくれ」
「どうする気なのじゃとは、聞かぬぞ?」
「そんな当たり前の事など、言わなくても分かるだろ。頼むよ」
俺の神火の大翼では、落下速度を増している『煉獄瘴気巨巌塊』の前方に回り込むのには、間に合いそうになかった。傷ついているとしてもシェンラの飛行速度の方が早く、間に合わせるにはシェンラに運んでもらうしか無かった。
「最後の悪あがきという訳なのじゃな」
「は? 何言っているんだ? 最後はあいつらだろ」
俺は、既に勝ち誇った顔で、俺たちを見下しているキリュウ達を指差した。
「……く……くっくっく……そうであった……それが、お主じゃったの」
「笑ってないで、さっさと運んでくれよ」
「わかったのじゃ! さぁ、参るのじゃ!」
シェンラは、何故だか嬉しそうに笑いながら、俺を乗せ『煉獄瘴気巨巌塊』を追いかけ始めた。
「無駄な足掻きを何故ヒトはするのだ。どれだけ今を守ろうと、この世界に先はないというのに」
キリュウのバカにしたような呟きを残し、ヤナとシェンラは一切の迷いなく絶望へと向かっていくのであった。
「こりゃ、学校の校舎よりでかそうだな」
俺は、シェンラに乗りながら『煉獄瘴気巨巌塊』を追い越す時に大きさを確認したが、近くで見るとその馬鹿みたいな大きさに思わず笑ってしまう。
「もう少し距離を取れる所まで、行くのじゃ」
「あぁ、頼む」
シェンラは、時折苦しそうな呻き声を出しながらも、しっかりと『煉獄瘴気巨巌塊』を追い越していった。街に落ちてくるまで僅かながらだが、時間を取れたのは幸運だった。俺は、再び神火の大翼を広げシェンラの背から飛び立とうとすると、シェンラが声をかけてきた。
「お主、何処へ行く気なのじゃ?」
「ん? もちろん、アレを止めに行くんだが?」
「それはわかっておるのじゃ。何故、妾から降りようとしておるのじゃ」
シェンラは、怒気を含んだ声を俺に向けてきた。
「お前は何言ってるんだ。シェンラは、街で休んでいればいい。あとは俺に任せろ」
シェンラは口には出さないが、その身体は竜殺しの武器の傷により相当弱っている筈だった。魔力にしても、背に乗って分かったが、残りも既に僅かといった所だろう。
「お主は、先ほど妾の背の上で竜騎士だと宣言しよったのじゃ」
「あぁ、それがどうした」
「そして、妾もその宣言に対して、お主を振り落としたりしなかったのじゃ」
「……なんだ、この流れは……くっ……嫌な予感しかしないぞ」
俺は、燃える小山が落ちてくるという時に、急に言質を確認しだしたシェンラに、既視感を感じ、背中に冷や汗をかき出していた。
「竜の世界ではの、古来より人を背に乗せ共に戦うという事は、互いに命を預け合うという『今生の盟約』を交わしたことになるのじゃ」
「『今生の盟約』……どんなものだ?」
「共に全てを捧げあうというものじゃ」
「……全て?」
「全てなのじゃ」
「……因みにこれまで、シェンラとその『今生の盟約』と言うのを、交わした相手はいるのか?」
「交わしたい相手がおったのじゃが、『今生の盟約』と言うのがあるという事を話した時に、断られてしまったのじゃ。生きる時間が違う自分に、縛られてほしくないと言われての」
シェンラは、寂しそうな声で俺に告げていたが、俺には疑問があった。
「なぁ? 事前に、俺にその『今生の盟約』の説明なかったよな?」
「しておらぬからの」
「……何故?」
「説明してたら、もしかしたら断られるやもしれんではないか」
「は?」
「お主達と宿に泊まった時に、ヤナビから話を色々聞いておってな」
俺はヤナビの名が出た時点で、心が折れそうになった。
「『先ずは言質を取るのです。それさえ押さえれば、あの人は確保出来たも同然です』なのじゃ!」
「あほかぁあああああ!」
俺は見ていないその場の風景を、完全に頭の中にイメージする事が出来た。ヤナビの腹黒い嗤い顔が、鮮明に脳裏に浮かんだ。
「して、確認じゃが、お主は竜騎士の格好をして、誰の背に乗り、あの魔族に何と名乗ったのじゃ?」
「……シェンラに乗って、神火竜騎士と名乗りました……」
「妾は、お主を振り落としたりしたか?」
「……してません」
「うむ、『今生の盟約』成立なのじゃ」
「因みに、破棄や契約期間の終わりとか…」
「『今生』だと言っておるのじゃ」
「絶対、ヤナビに何か言われる……」
俺は、ガックリと肩を落としながらも、気持ちを切り替えた。
「ふっ……なんのこれしき……これしきのことは、もう慣れたぞ……ならば、俺と『今生の盟約』を結ぶ古代竜『天空の覇者』よ! 俺と共に命を賭けろ!」
「格好良く決めようとする心意気は良いが、さっきのを慣れたと言う所がのぉ……妾が嵌めておいてなんじゃが、哀れだの」
「……うるせぇ! 俺と共に命を賭けるのか、賭けないのかどっちだ!」
「それこそ、答えを聞く必要があるのかの?」
「答えを聞きたい時も、あるのさ」
「……ふふふ、勿論貴方と共にこの命、何処までも」
「あぁ、何処までも」
そして、目の前に迫る悪意と絶望の塊に『天空の覇者』に乗る『神火の竜騎士』は立ちはだかる。
悠久の刻を経て、今生の盟約を結びし二人は、どちらかでもなく笑っていた。
「あれは、『天空の覇者』なのか?……まさか、俺の代で目にする事になるとはな。初代と共に旅をし、初代と共にこの街を作り、そして迷宮の最奥でこの街を護りつづけた現役Sランク冒険者にして、古代竜シェンラ」
キョウシロウは、空を見上げ落ちてくる瘴気と業火を灯した山のような塊を前に、一度は死を覚悟した。しかし、その確実な死を前に立ち塞がる竜と竜騎士を見ると、再び瘴気纏火竜を斬り倒し始めた。
「あの白い竜騎士はヤナだな。ふっふっふ、あいつは本当に面白い奴だな。古代竜さえも、堕とすのか? くくく、あっはっはっは!」
キョウシロウは、大笑いしながら楽しそうに今まで以上の速度で、周りの瘴気纏い竜達を殲滅し始めたのだった。
「ね? ほら。ヤナがお空で、わたし達を守ってくれるよ」
「あ……あれは、なんでしょう? 竜? それにしては、竜が鎧を身につけている? しかも、あの竜の強大な気は一体……」
「きっと、シェンラちゃんをヤナが格好良くしたんだよ」
「格好いい? え? あれが?」
「うん、格好いい」
大聖堂の出口から空を見上げながら、ユーフュリアの何処か困惑する声と、同じく空を見上げながら羨望の眼差しを二人に向けるライだった。
「ねぇ? アリス、特撮映画の撮影の予定あったっけ?」
「コウヤは、何をバカなことを言っ……あぁ、うん、アレね……」
「絶対ヤナ君の趣味だよね、アレ」
「マジ格好いい……格好いいよ! 見たい! もっと近くで見たい!」
「ルイ様! 落ち着いてください! 勇者様も止めてください! はしゃぐ勇者を、従者騎士が一人で止めれるわけないんですから! はやくぅうう!」
ヤナの所へ駆け出そうとしているルイを、ミレア団員が必死に腰にしがみつき止めながら、悲鳴をあげていた。それを聞いた勇者達三人が呆れ顔で、ルイを止めて宥めていた。
「マスター……また、予想通りにしてやられてますね、全く……帰ってきたらまた、可愛がってあげないと」
口では呆れながらも、ヤナビの優しい微笑みは、しっかりと空へと向けられていた。
「あの人好みの格好した白い竜って、私たちの知っている竜なのかしら?」
「エディスもそう感じていましたか。わたしも何処かで会ったことあるような、そんな懐かしさがこみ上げます」
「あのような強大な気を持つ竜ならば、一度会えば忘れなさそうなのですが……確かに、何処かで会ったことがある気はしますね」
三人の巫女は、ヤナと共に煉獄瘴気巨巌塊のまえに立ち塞がる白き鎧を身にまとう古代竜を見ながら、不思議な感覚を覚えるのであった。
「さてシェンラ、確認なんだが、お前念話は出来るよな?」
「うむ、妾程になると大抵の事は出来るのじゃ。それがどうかしたのかの?」
「それでは、もう一つ質問だ。念話状態で『魔力制御』は出来るか?」
「お主……妾と『接続』したいというつもりか?……初めてなんじゃが、優しくしてくれるかの……」
「……ツッコまねぇぞ……」
俺は、こちらに顔を向けてモジモジしている古代竜に、ジト目を向けた。
「なんじゃ、ノリが悪い男じゃの。まぁ、全部本気じゃがな。お主の『接続』は、恐らくアリスの時から察するに、魔力により相手と一時的な強い繋がりを形成し、魔力を介して情報の得ているのじゃろ。それならばお主に妾の情報が過剰に流れ込まぬ様には出来るじゃろうが、魔力自体が繋がっておるからの。完全にお主に妾の記録情報等が行かぬ様にするのは、無理じゃろうな」
「さらっと、恐ろしいことを言うな……完全には無理か、ヤナビがこの場にいないのが痛いな。まぁ、だがアリスの時みたいには、ならなさそうって事だな」
俺は、時間さえあればヤナビを呼んでから行いたい所だったが、そんな時間はない為決断した。
「なるべく『接続』の時間は減らしたいから、アレを受け止めたらヤるぞ」
「別に構わんのじゃが、『接続』が何の意味があるのじゃ?」
「説明している時間はなさそうだからな、あとはぶっつけで指示を出すから、よろしく」
「それもまた、面白そうで良しじゃな」
俺とシェンラは共に笑いながら、煉獄瘴気巨巌塊を受け止めるべく身構える。
「さぁ、こっからだ。準備はいいか?」
「いつでも来いなのじゃ!」
そして、俺とシェンラと煉獄瘴気巨巌塊は、遂に迷宮都市国家デキスのすぐ上空で、激突した。
神の火を纏し竜騎士は、絶望に抗い絶望を受け止める
決して自分の後ろに行かせぬと言わんばかりに
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