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第六章 偽り
物語の続き
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「さぁ、話を始めようか、婿殿」
「ぐっ、何だこの威風堂々たる風格は……流石、西都一の豪商キンナリという事か」
「マスター、この場合は間違いなく勝ち目ありませんよ?」
ヤナビが俺に非情な宣告をしてくるが、俺は負けない!
「取り敢えず、その婿殿ってのを先ずはやめようか。キンナリに、婿殿と呼ばれる理由は無いはずだぞ」
俺は応接間の椅子に座り、テーブルの上で手を組みながら、そう口にした。
「ふむ、流石に曖昧にとは流してはくれませんか。流した瞬間、婿入り確定だったのですがね」
豪商キンナリは自分の顎髭を触りながら、そんな恐ろしい事をさらっと述べる。
「その事は、取り敢えず置いておくとしますか。先に今回の、ライを狙った暗殺に関する詳細を、教えて貰っても良いですかな」
キンナリは、俺の横に座るライを見た後、視線を俺に戻し説明を求めた。
「先ず今回の賊の正体だが、誘拐犯も暗殺犯も共に魔族だ」
「魔族!? 見た目は普通の青年に見えたが、しかしあの強さは確かに……しかし、何故魔族がライを?」
キンナリが当然の疑問を俺に向けてくる。俺は少し考えた後、ライを横目に見ると、ライは俺の防具の端を持って身体を僅かに強張らせていた。
「俺は、腹芸や嘘が下手では無いと思っているが、凄腕の商人のあんたには敵うとは思っていない。だから、話せる事は正直に話すことにする」
「ヤナ……」
「大丈夫だ。何があっても、俺が何とかするから」
俺は、子供の様に心配そうな目で、目を向けてくるライの頭を撫でる。
「してヤナ殿、正直とは?」
「あぁ、今回の事は魔族に洗脳されていたライが、『恋』をする為に起こした謂わば演出だ。それに、今回偶々あんたらは巻き込まれたという事だ」
「魔族に洗脳……そして、『恋』……ですと?」
「ライはこの世界に生まれた瞬間から、魔族に洗脳を受けていた。そして、今回俺がその洗脳を解いたんだが、洗脳中の記憶がほぼ曖昧で覚えていないらしい。恐らく、その洗脳されていた頃のライが、魔王城でかつての勇者が書いたと思われる本を読んで、『恋』に興味をもったらしい」
キンナリは黙って俺の説明を聞いていたが、ある事に興味をもったらしい。
「勇者様が書いた本……ですか。洗脳されていたライにさえ『恋』に興味を持たせるとは、さぞ素晴らしく心に響くような物語だったのでしょうな」
「確かに、そう言われてみればそうだな。よく、あの状況で『恋』なんていうものに興味を持ったな」
キンナリに言われて初めて気付いたが、魂まで瘴気を受け入れ、前世の記憶を見せられ絶望に支配されていたライが『恋』に興味を持ったのだ。これは、絶望に対する抵抗だったのでは無いだろうか。
「ライ、それはどんな本だったんだい? もしくは、今も持っているかい?」
キンナリは優しく微笑みながら、ライに本があるかを尋ねた。
「部屋にあると……思う」
「取ってきてらえるかい?」
「うん」
ライは、セバスと共に自分の部屋へと向かって応接間を出て行った。
「ヤナ殿、ライのあの様子は何なのでしょう?」
「あの様子とは?」
「ヤナ殿、分かっているでしょう? 今のライは……幼い」
「あぁ……そうだな。見た目は以前のライと同じだが、精神的には10歳にもなっていなさそうな感じを受けるな」
俺がそう言うと、キンナリは俺を真っ直ぐ見ながら口を開く。
「何故そうなったのか、ヤナ殿は知っているという事ですな?」
「流石の観察力という所だが、明確に知っている訳ではない。原因の予測は、出来るがな」
「それは、話せないと?」
「俺は、あんたを全く知らない。知らない人間を、信用する事は出来ないだろう? 要は、そう言う類の予測さ」
「確かに、ヤナ殿は私の事を全く知らないですな」
キンナリが険しい顔をしながら少し考え込んでいると、再びライがセバスに連れられ応接間へと戻ってきた。
「その本か?」
俺は、ライが大事そうに胸に抱える本を見ながら、確認した。
「うん、これ」
俺は、ライから本を手渡されタイトルを目にした。
「『結ばれぬ恋~私の正体はバレちゃいけない~』か、確かに勇者が書きそうな、ラノベのタイトルみたいだな」
俺がタイトルを見て、かつての勇者が書いたものだろうと予想した。そして、俺は作者の記載を探したが、見当たらなかった。
「ん? 作者名が書いてないな」
「……ヤナ殿……その本を、見せて貰えますかな」
キンナリが手を震わせながら、手を伸ばしてきた。
「あぁ、いいぞ。どうした?」
俺が本を手渡すと、キンナリは黙ってページを捲り中身を確認していた。
「おいおい、本当にどうした? 涙なんか流して。まだ、全然読んでないのに、そんなに泣ける本なのか?」
最初のページを読んだ所で、いきなりキンナリが涙を流し始めたのだ。
「これは……この本は、勇者様が書いたものではありません……」
「そうなのか? 勇者が書きそうな題目だが」
「えぇ、この本を書いた者は、勇者様に憧れておりました。その為、勇者様の書いた物語が大好きだったのです」
「やけに詳しいな。作者を知っているのか?」
「……はい、この本を書いた作者は……私なのです」
「は?」
この物語は、ある少年とある少女の物語
少年が命をかけて、少女を救おうとする物語
とても切なくも幸せな恋の物語
「マスター、作者が遠い目をして、静かになりましたが?」
「そっとしといてやれ……きっとキンナリの頭の中では、この本に関する何らかの回想シーンが、今まさに展開されている筈だ」
涙を流しながら、遠い目で空を見ているキンナリを、取り敢えず放っておいてライに、この本について尋ねる。
「ライは、魔王城でこの本を読んで、此処に来たんだよな?」
「そうだと……思う」
「あぁ、魔王城での記憶はやっぱり曖昧か」
首を傾げながら、ライは自信なさげに俺に答えた。
「でも……この街、知ってるから来たのかも」
「ん? 知ってる?」
「うん、前の私が最後にいた街だったから」
「そうか……」
俺は、ライの話を聞き終わり、キンナリに話しかける。
「おぉい、そろそろ回想終わったかぁ?」
「は!?……これは失礼をしました」
「結局、その本は何なんだ?」
「この本は、かつての私が亡き親友の少女の運命を憂い、少しでも物語では幸せになって欲しいと書いたものです。自分で旅に出る時も常に持ち歩いていたのですが、最近移動中に魔族に襲われた事がありましてな。その際に、紛失してしまったのです」
雇っていた上級冒険者のおかげで命は何とか免れたが、それ以外の荷物は襲われた場所に放置したらしい。兎に角、逃げる事に徹したとの事だった。
「それが、魔王城にいたライの手元に届くとは、中々面白いな」
俺が、本の数奇な運命に関心を寄せていると、静かにキンナリは口を開いた。
「その本の中では、最後に二人は結ばれます」
「ほぉ、題目とは、違うんだな」
「ふふ、そうですな」
キンナリは、少し悲しげに笑っていたが、次の瞬間には居た堪れないといった表情で言葉を吐き出した。
「私が憂いた親友の少女と言うのは、ドワーフの少女でした」
「ドワーフ? あぁ、そうか、この西都は他の種族も割といるんだったな」
「えぇ、彼女の家族は、旅をしていたドワーフの鍛治師の一家でした……そして……彼女は悪神の巫女だった……」
「は!? なんだと!」
俺は、いきなり出てきた悪神の巫女という言葉に思わず声を荒げた。
「私は、ある事がきっかけで彼女と知り合い、数少ない親友と呼べる間柄となりました。そして、私はある時、偶然にも彼女に聖痕がある事を知った……」
「それで、どうなったんだ?」
「私は当然、彼女の秘密を守りましたとも。しかし、ある時彼女達一家が魔族に見つかり、事もあろうかその魔族は、周囲にいた者達にその事を告げました。その結果は、言わなくても想像がつくでしょう。この世界の悪神の巫女の扱いを、知っていれば」
「あぁ、話さなくていいから、そんな苦しむ顔をするな」
キンナリは、今にも血の涙を流しそうな苦悶の表情をしていた。
「私は助けることができなかった! 親友を! その家族を!」
キンナリは、天に向かい慟哭していた。
まるで、自分の罪だと言うように。
親友を救い出すことが出来なかった男が書いた物語
幸せになって欲しかったと、救いを求め書いた物語
そして、その物語が新たな物語を紡ぎ出した
絶望に一度は負け、瘴気を受け入れた巫女の魂は
誰かの幸せを夢見た物語に導かれ、ある男に出会った
その男は、絶望に抗い決して倒れることのない男だった
そして、絶望へと堕ちていた巫女は、その男の手を取った
「キンナリ、そんなに苦しむな。あんたの物語にはな、実は続編がある」
「え?……続きなんて……」
俺は、キンナリの目を真っ直ぐと見据えながら言葉を続ける。
「絶望に堕ちた少女の魂は、転生したものの、その魂は既に絶望に染まっていた。しかし、ある時誰かの書いた物語に何故か心が揺さぶられ、導かれるようにこの屋敷へとやって来た」
「はい?……まさか…」
「そうだ、キンナリの救えなかった少女の魂は、再び此処に現れた。まるで、一時の安息を求めるように」
俺は勘違いしていた。
ライはここに『嘘』を付きに来たではなかった
ライはここに『休む』為に来たのだろう
無意識だとしても、かつて自分を救おうとし、そして今なおその後悔を抱き続ける男の元へ
そして、今度こそ救われる為に
「ぐっ、何だこの威風堂々たる風格は……流石、西都一の豪商キンナリという事か」
「マスター、この場合は間違いなく勝ち目ありませんよ?」
ヤナビが俺に非情な宣告をしてくるが、俺は負けない!
「取り敢えず、その婿殿ってのを先ずはやめようか。キンナリに、婿殿と呼ばれる理由は無いはずだぞ」
俺は応接間の椅子に座り、テーブルの上で手を組みながら、そう口にした。
「ふむ、流石に曖昧にとは流してはくれませんか。流した瞬間、婿入り確定だったのですがね」
豪商キンナリは自分の顎髭を触りながら、そんな恐ろしい事をさらっと述べる。
「その事は、取り敢えず置いておくとしますか。先に今回の、ライを狙った暗殺に関する詳細を、教えて貰っても良いですかな」
キンナリは、俺の横に座るライを見た後、視線を俺に戻し説明を求めた。
「先ず今回の賊の正体だが、誘拐犯も暗殺犯も共に魔族だ」
「魔族!? 見た目は普通の青年に見えたが、しかしあの強さは確かに……しかし、何故魔族がライを?」
キンナリが当然の疑問を俺に向けてくる。俺は少し考えた後、ライを横目に見ると、ライは俺の防具の端を持って身体を僅かに強張らせていた。
「俺は、腹芸や嘘が下手では無いと思っているが、凄腕の商人のあんたには敵うとは思っていない。だから、話せる事は正直に話すことにする」
「ヤナ……」
「大丈夫だ。何があっても、俺が何とかするから」
俺は、子供の様に心配そうな目で、目を向けてくるライの頭を撫でる。
「してヤナ殿、正直とは?」
「あぁ、今回の事は魔族に洗脳されていたライが、『恋』をする為に起こした謂わば演出だ。それに、今回偶々あんたらは巻き込まれたという事だ」
「魔族に洗脳……そして、『恋』……ですと?」
「ライはこの世界に生まれた瞬間から、魔族に洗脳を受けていた。そして、今回俺がその洗脳を解いたんだが、洗脳中の記憶がほぼ曖昧で覚えていないらしい。恐らく、その洗脳されていた頃のライが、魔王城でかつての勇者が書いたと思われる本を読んで、『恋』に興味をもったらしい」
キンナリは黙って俺の説明を聞いていたが、ある事に興味をもったらしい。
「勇者様が書いた本……ですか。洗脳されていたライにさえ『恋』に興味を持たせるとは、さぞ素晴らしく心に響くような物語だったのでしょうな」
「確かに、そう言われてみればそうだな。よく、あの状況で『恋』なんていうものに興味を持ったな」
キンナリに言われて初めて気付いたが、魂まで瘴気を受け入れ、前世の記憶を見せられ絶望に支配されていたライが『恋』に興味を持ったのだ。これは、絶望に対する抵抗だったのでは無いだろうか。
「ライ、それはどんな本だったんだい? もしくは、今も持っているかい?」
キンナリは優しく微笑みながら、ライに本があるかを尋ねた。
「部屋にあると……思う」
「取ってきてらえるかい?」
「うん」
ライは、セバスと共に自分の部屋へと向かって応接間を出て行った。
「ヤナ殿、ライのあの様子は何なのでしょう?」
「あの様子とは?」
「ヤナ殿、分かっているでしょう? 今のライは……幼い」
「あぁ……そうだな。見た目は以前のライと同じだが、精神的には10歳にもなっていなさそうな感じを受けるな」
俺がそう言うと、キンナリは俺を真っ直ぐ見ながら口を開く。
「何故そうなったのか、ヤナ殿は知っているという事ですな?」
「流石の観察力という所だが、明確に知っている訳ではない。原因の予測は、出来るがな」
「それは、話せないと?」
「俺は、あんたを全く知らない。知らない人間を、信用する事は出来ないだろう? 要は、そう言う類の予測さ」
「確かに、ヤナ殿は私の事を全く知らないですな」
キンナリが険しい顔をしながら少し考え込んでいると、再びライがセバスに連れられ応接間へと戻ってきた。
「その本か?」
俺は、ライが大事そうに胸に抱える本を見ながら、確認した。
「うん、これ」
俺は、ライから本を手渡されタイトルを目にした。
「『結ばれぬ恋~私の正体はバレちゃいけない~』か、確かに勇者が書きそうな、ラノベのタイトルみたいだな」
俺がタイトルを見て、かつての勇者が書いたものだろうと予想した。そして、俺は作者の記載を探したが、見当たらなかった。
「ん? 作者名が書いてないな」
「……ヤナ殿……その本を、見せて貰えますかな」
キンナリが手を震わせながら、手を伸ばしてきた。
「あぁ、いいぞ。どうした?」
俺が本を手渡すと、キンナリは黙ってページを捲り中身を確認していた。
「おいおい、本当にどうした? 涙なんか流して。まだ、全然読んでないのに、そんなに泣ける本なのか?」
最初のページを読んだ所で、いきなりキンナリが涙を流し始めたのだ。
「これは……この本は、勇者様が書いたものではありません……」
「そうなのか? 勇者が書きそうな題目だが」
「えぇ、この本を書いた者は、勇者様に憧れておりました。その為、勇者様の書いた物語が大好きだったのです」
「やけに詳しいな。作者を知っているのか?」
「……はい、この本を書いた作者は……私なのです」
「は?」
この物語は、ある少年とある少女の物語
少年が命をかけて、少女を救おうとする物語
とても切なくも幸せな恋の物語
「マスター、作者が遠い目をして、静かになりましたが?」
「そっとしといてやれ……きっとキンナリの頭の中では、この本に関する何らかの回想シーンが、今まさに展開されている筈だ」
涙を流しながら、遠い目で空を見ているキンナリを、取り敢えず放っておいてライに、この本について尋ねる。
「ライは、魔王城でこの本を読んで、此処に来たんだよな?」
「そうだと……思う」
「あぁ、魔王城での記憶はやっぱり曖昧か」
首を傾げながら、ライは自信なさげに俺に答えた。
「でも……この街、知ってるから来たのかも」
「ん? 知ってる?」
「うん、前の私が最後にいた街だったから」
「そうか……」
俺は、ライの話を聞き終わり、キンナリに話しかける。
「おぉい、そろそろ回想終わったかぁ?」
「は!?……これは失礼をしました」
「結局、その本は何なんだ?」
「この本は、かつての私が亡き親友の少女の運命を憂い、少しでも物語では幸せになって欲しいと書いたものです。自分で旅に出る時も常に持ち歩いていたのですが、最近移動中に魔族に襲われた事がありましてな。その際に、紛失してしまったのです」
雇っていた上級冒険者のおかげで命は何とか免れたが、それ以外の荷物は襲われた場所に放置したらしい。兎に角、逃げる事に徹したとの事だった。
「それが、魔王城にいたライの手元に届くとは、中々面白いな」
俺が、本の数奇な運命に関心を寄せていると、静かにキンナリは口を開いた。
「その本の中では、最後に二人は結ばれます」
「ほぉ、題目とは、違うんだな」
「ふふ、そうですな」
キンナリは、少し悲しげに笑っていたが、次の瞬間には居た堪れないといった表情で言葉を吐き出した。
「私が憂いた親友の少女と言うのは、ドワーフの少女でした」
「ドワーフ? あぁ、そうか、この西都は他の種族も割といるんだったな」
「えぇ、彼女の家族は、旅をしていたドワーフの鍛治師の一家でした……そして……彼女は悪神の巫女だった……」
「は!? なんだと!」
俺は、いきなり出てきた悪神の巫女という言葉に思わず声を荒げた。
「私は、ある事がきっかけで彼女と知り合い、数少ない親友と呼べる間柄となりました。そして、私はある時、偶然にも彼女に聖痕がある事を知った……」
「それで、どうなったんだ?」
「私は当然、彼女の秘密を守りましたとも。しかし、ある時彼女達一家が魔族に見つかり、事もあろうかその魔族は、周囲にいた者達にその事を告げました。その結果は、言わなくても想像がつくでしょう。この世界の悪神の巫女の扱いを、知っていれば」
「あぁ、話さなくていいから、そんな苦しむ顔をするな」
キンナリは、今にも血の涙を流しそうな苦悶の表情をしていた。
「私は助けることができなかった! 親友を! その家族を!」
キンナリは、天に向かい慟哭していた。
まるで、自分の罪だと言うように。
親友を救い出すことが出来なかった男が書いた物語
幸せになって欲しかったと、救いを求め書いた物語
そして、その物語が新たな物語を紡ぎ出した
絶望に一度は負け、瘴気を受け入れた巫女の魂は
誰かの幸せを夢見た物語に導かれ、ある男に出会った
その男は、絶望に抗い決して倒れることのない男だった
そして、絶望へと堕ちていた巫女は、その男の手を取った
「キンナリ、そんなに苦しむな。あんたの物語にはな、実は続編がある」
「え?……続きなんて……」
俺は、キンナリの目を真っ直ぐと見据えながら言葉を続ける。
「絶望に堕ちた少女の魂は、転生したものの、その魂は既に絶望に染まっていた。しかし、ある時誰かの書いた物語に何故か心が揺さぶられ、導かれるようにこの屋敷へとやって来た」
「はい?……まさか…」
「そうだ、キンナリの救えなかった少女の魂は、再び此処に現れた。まるで、一時の安息を求めるように」
俺は勘違いしていた。
ライはここに『嘘』を付きに来たではなかった
ライはここに『休む』為に来たのだろう
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