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第五章 刀と竜
刀工
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「ふぅ、中々良い汗かけたな」
俺は一人、村の入り口で呟いた。
盗賊から商人一家を助けた所から、兎に角ダッシュで村まで急いで来たのだ。
「マスター、三人を思いっきり引き離してきましたが? それに、そこまで必死に逃げないで下さい。みっともないですよ」
「……まぁ、ここまで一本道だし迷うことないだろ。万が一、何かあったら呼出があるしな。先に『刀工』の居場所を、探しておこう」
俺は村の中に入ると、少し驚いた。
「何かやけに人が多いな。しかも冒険者っていうより、武芸者って感じの雰囲気なんだが、いつもこんな感じなのか?」
俺が村の入り口から入って直ぐ、その光景に驚いていると、村の門番らしき人間に声をかけられた。
「よう、あんちゃん、そのナリだと、冒険者になったばかりってとこだろ? 近々この村で闘剣大会ってのがあってな、そのお陰で今は賑わってるのさ」
話を聞いてみると、あと二週間程で四年に一度の闘剣大会と呼ばれるものが開かれるらしい。鍛冶屋と冒険者や武芸者がタッグを組んで挑む大会で、この大会で良い成績を収めることは、一種のステータスの様なものになっているという。
「ロイド伯爵様も、大会を見に来るしな。士官したい者が、力を示す良い機会って所だ。まぁ、あんちゃんは関係なさそうだがな、ハッハッハ」
俺は、オリンピックみたいなものかと納得し、肝心の事を尋ねた。
「この村に『刀工』が居ると聞いてきたんだが、何処にいけば会える?」
「『刀工』?」
「え? タケミという人だと聞いてるんだが、もしかして居ないのか?」
タケミという名を出すと、門番は納得顔になった。
「あぁ、タケミの隠居爺か。そんな大層な名で言うもんだから、わかんなかったぜ。あんな爺さんになんか用なのか?」
「知り合いの爺さんからの紹介でな。武器を仕立てて貰えないかと、頼みに来たんだ」
「武器? アッハッハ! そうか! まぁ、あんちゃんぐらいの初心者なら、アレくらいが丁度いいかもな! まぁ、兎に角行ってみな。この道を真っ直ぐ行って、突き当りを右に曲がった先の村外れに、居るはずだ」
何故か爆笑されたが、ここらで見かけない三人組の少女達が来たら、俺が先に行っている事と、タケミの隠居爺さんの家までの道を伝えて貰う事をお願いした。門番は、快く快諾してくれた為、俺は教えられた道を歩き出した。
「闘剣大会ってのが迫ってるせいか、空気がピリピリしているな」
「マスター、私は周りからはただのサングラスにしか見えませんから、ブツブツ独り言を行っていると、危ない人に見えますよ?」
「ちょいちょい入れてくるその毒は、何なの?」
「好きなくせにぃ」
「……お前の俺の、評価って何なの?」
「苛められ弄られ叩かれることに、喜びを感じる変態ヘタレマスターでは?」
「ふざけんな! お前、絶対叩き斬ってやるからな!」
俺は、大声で目にかけてあるサングラスに向かって、文句を言った。
「「「あぁ?」」」
「ほら、マスター、お約束ですよ」
俺の前を歩いていた武芸者の集団に、一斉に睨まれた。だが、俺の格好を一瞥すると鼻で笑いながら、大声で馬鹿にされた。
「なんだ、雑魚か。粋がるのは部屋の中だけにしとけよ? アッハッハ」
「俺の宿の隣部屋とかでは、やめてくれよ? 笑い死にするからな、ブワッハッハッハ」
「「「ギャハハハ」」」
その言葉に、周りにいた十数人いた武芸者達も一斉に笑い出した。
「フフフフフフ……ウメテヤル」
俺は、嗤いながら呟いた。
「あなた、先に行ったんじゃなかったの?」
「主様、ソレお花じゃないですよ?」
「……ソレもまた、有りかしら……」
俺は道の両脇を彩る様に、でかい薄汚れた鼻を植えていた。
「ふぅ、良い汗かいたな。さっ、みんな揃ったことだし、そろそろ行くか」
その様子を見ていた村民や、運良く笑わなかった武芸者は口々に言葉を発した。
「『鬼の園芸』…」
俺たち一行は、村外れにポツンと佇む家に着いた。
俺は玄関前に立ち、声をかける。
「ごめんくださぁい! アメノ爺さんの紹介で来た者ですがぁ、どなたか、いらっしゃいませんかぁ!」
少し待っていると、誰かが歩いてくる気配が近づいて来た。
「はぁい、何のご用ですかぁ?」
ガラガラと玄関の引き戸が開き、作業着を来た女性が現れた。
「「「「………」」」」
「何か?」
俺たちは、一瞬固まったが俺は意地で目線を上げて挨拶をする。
「え、えっと、そうそう! 頼みがあって、やって来たんだ」
「私と同じくらいかしら?」
「作業着が……苦しそう」
「何を食べたら、あんなに大きく……」
後ろで、初対面の女性に失礼極まりない呟きをしている三人を無視して、必死に相手の顔より目線を下げない様に話を続ける。
「知り合いの爺さんからの、紹介でな。刀を打ってもらえないか頼みに来たんだ」
「刀? ここは金物屋よ? ほら」
その女性は玄関の上にかかっている看板を指差した。
そこには確かに、『カヤミ金物屋』と看板に文字が書いてあった。
「あれ?……カヤミってのは、あんたか?」
「えぇ、私がカヤミよ」
「確かにあんたは金具道具屋かもしらんが、俺は『刀工』のタケミという爺さんに用があるんだが?」
その言葉に一瞬眉間に皺を寄せ、苛立ったような表情を見せたが、すぐさま普通の表情になった。
「あと、これは俺の師匠から『刀工』への紹介状だ。一先ず、これを渡してくれないか?」
「……えぇ、いいわよ」
カヤミは、少し考えた後に、了承してくれた。
「じゃあ、また明日の朝に来る事も伝えといてくれ」
俺はそう言うと、もと来た道を引き返し、村の中心部へと歩き出した。
「どう思う?」
「そうね、少し気になる目をしてたわね」
「やっぱり、そう思うか……何だかなぁ、『刀工』の引退とか抜きにして、面倒な事になりそうな予感がしてならないんだが」
刀工への用事があると伝えた時のカヤミの様子は、怒りと苛立ちと言った感じが一瞬だけ表情に表れた。直ぐに表情は戻ったが、目だけはその感情を隠しきれない様子だった。
「主様が渡したアメノ様の紹介状は、ちゃんと渡して貰えるでしょうか?」
「そこまで陰湿な感じでも無かったし、渡してはくれると思いたいけどな」
先ずは紹介状を渡してくれる事を、信じる事にした。
「ブラウンの髪に、目鼻立のしっかりした美女でありながら、作業服を押し上げるほどのエディスにも匹敵するアレの存在感……同じ人族であるのに、何を食べたらあれほどのモノになるのでしょうか?」
「知らんがな……セアラ? お前、どんどん酷くなってないか? 前は、そんな子じゃ無かったよな? どうした? 何があった?」
俺が、あまりのセアラのポンコツぶりに狼狽していると、他の二人が俺の目を見つめる。
「あ? 俺じゃな……はっ! ヤナビ! お前か!」
「マスター、黙秘権を行使したいのですが……ただ、思った以上に王女と言うのは、素直過ぎる人種みたいで……」
「やめろ! 本気で『失敗しました』みたいな声出すな! 色々怖い!」
その日の宿屋での部屋割りでは、三人がヤナビと一緒に寝たいと言い出したが、先程のセアラの件があった為、却下した。
「そんな!? ヤナ様、ご無体な! ヤナビ様に勉強の続きを、教えてもらわないと!」
「ダメだ! 明らかにセラは、何かの影響を受けすぎだ! エイダに続き、ヤナビにまでも変な教育受けたら、後戻り出来なくなるだろ!」
「そんなぁ!?」
俺は、エディスとアシェリにアイコンタクトをして、セラをがっしりホールドして貰い、自分たちの部屋へと連れて行って貰った。
「マジで……どうするのアレ……」
「なんか……すみません……マスター……」
「謝るな……泣きたくなる……」
そして、次の日の朝、いつも通りに村内をジョギングし、朝食を食べた後に再度『刀工』の家に訪れた。
「ごめんくださぁい」
俺が、昨日と同じように声をかけると、昨日とは違う気配が近づいて来た。
「来たか、アメノの奴が書状に書いていたあのヤナだな?」
「あぁ、どんな事が書いてあったか知らないが、そのヤナだ。あんたが、『刀工』のタケミか?」
アメノ爺さんと同じくらいの老人が、そこに立っていた。アメノ爺さんと違い、頭は輝いていたが。
「あぁ、引退してるが、儂がタケミだ。ここでもなんだ、中に上がれ。後ろの三人もついてきていいぞ」
中に入り、案内された部屋は畳の部屋だった。
「畳か……」
「やはり、知っておったか。アメノの奴が書いてあった通りなんだな?」
タケミ爺さんは、ちらりと三人の方を伺いながら、聞いてくる。
「この三人は、俺の素性を知っている仲間だ。気を使わなくても、大丈夫だ」
「パートナー『契約』をしている、エディスです」
「奴隷『契約』をしている、アシェリです」
「同伴『契約』をしている、セラです」
「何故、そこを強調してくる……」
「お前さん、こんなべっぴんと三人も契約してるのか、中々豪気だな」
タケミ爺さんが、ニヤニヤしながら茶化してくるが、スルーして本題に入る。
「それはいいから、どうなんだ? 俺の刀を打ってくれるのか?」
「そりゃ、無理だな」
「即答かよ……もうちょっと交渉の余地はないのか?」
俺が、若干落ち込みながら食い下がると、タケミ爺さんが口を開いた。
「お前さん持っている『烈風』と『涼風』を、見せてみろ」
俺は、二刀をタケミ爺さんに手渡した。タケミ爺さんは黙って、一本ずつ鞘から抜いてじっくり見ていた。
「こりゃ、刀がお前さんの力に耐えられとらんな。儂は、この程度の刀しか打てん。じゃが、お前さんにはこれ以上の刀がないと全力は出せん。ほらな?儂じゃ無理じゃろう?」
丁度そこへ、お茶らしきものを持ってカヤミが部屋に入ってきた。
「タケミ爺さんじゃ無理ってことは、他の人間なら出来るかも知れんのか?」
俺は、カヤミを一瞥しながらタケミ爺さん問う。
「そうじゃの、材料さえ揃えば、カヤミなら……」
「無理よ。お師匠が出来ないものを、私が出来る訳ないじゃない」
一瞬にして、その場がピリピリした空気に染まる。
「私は、決して二人を超えることなんて出来ない」
それだけ言うと、カミヤは部屋を静かに出て行ってしまった。
俺は、カミヤ爺さんに目線で説明を促した。
カミヤ爺さんは、深い息を吐き出した後に、静かに口を開いた。
そして、鍛治師と二人の弟子の話を語り出した。
一人の少女の、希望と夢が失われるまでの物語を
俺は一人、村の入り口で呟いた。
盗賊から商人一家を助けた所から、兎に角ダッシュで村まで急いで来たのだ。
「マスター、三人を思いっきり引き離してきましたが? それに、そこまで必死に逃げないで下さい。みっともないですよ」
「……まぁ、ここまで一本道だし迷うことないだろ。万が一、何かあったら呼出があるしな。先に『刀工』の居場所を、探しておこう」
俺は村の中に入ると、少し驚いた。
「何かやけに人が多いな。しかも冒険者っていうより、武芸者って感じの雰囲気なんだが、いつもこんな感じなのか?」
俺が村の入り口から入って直ぐ、その光景に驚いていると、村の門番らしき人間に声をかけられた。
「よう、あんちゃん、そのナリだと、冒険者になったばかりってとこだろ? 近々この村で闘剣大会ってのがあってな、そのお陰で今は賑わってるのさ」
話を聞いてみると、あと二週間程で四年に一度の闘剣大会と呼ばれるものが開かれるらしい。鍛冶屋と冒険者や武芸者がタッグを組んで挑む大会で、この大会で良い成績を収めることは、一種のステータスの様なものになっているという。
「ロイド伯爵様も、大会を見に来るしな。士官したい者が、力を示す良い機会って所だ。まぁ、あんちゃんは関係なさそうだがな、ハッハッハ」
俺は、オリンピックみたいなものかと納得し、肝心の事を尋ねた。
「この村に『刀工』が居ると聞いてきたんだが、何処にいけば会える?」
「『刀工』?」
「え? タケミという人だと聞いてるんだが、もしかして居ないのか?」
タケミという名を出すと、門番は納得顔になった。
「あぁ、タケミの隠居爺か。そんな大層な名で言うもんだから、わかんなかったぜ。あんな爺さんになんか用なのか?」
「知り合いの爺さんからの紹介でな。武器を仕立てて貰えないかと、頼みに来たんだ」
「武器? アッハッハ! そうか! まぁ、あんちゃんぐらいの初心者なら、アレくらいが丁度いいかもな! まぁ、兎に角行ってみな。この道を真っ直ぐ行って、突き当りを右に曲がった先の村外れに、居るはずだ」
何故か爆笑されたが、ここらで見かけない三人組の少女達が来たら、俺が先に行っている事と、タケミの隠居爺さんの家までの道を伝えて貰う事をお願いした。門番は、快く快諾してくれた為、俺は教えられた道を歩き出した。
「闘剣大会ってのが迫ってるせいか、空気がピリピリしているな」
「マスター、私は周りからはただのサングラスにしか見えませんから、ブツブツ独り言を行っていると、危ない人に見えますよ?」
「ちょいちょい入れてくるその毒は、何なの?」
「好きなくせにぃ」
「……お前の俺の、評価って何なの?」
「苛められ弄られ叩かれることに、喜びを感じる変態ヘタレマスターでは?」
「ふざけんな! お前、絶対叩き斬ってやるからな!」
俺は、大声で目にかけてあるサングラスに向かって、文句を言った。
「「「あぁ?」」」
「ほら、マスター、お約束ですよ」
俺の前を歩いていた武芸者の集団に、一斉に睨まれた。だが、俺の格好を一瞥すると鼻で笑いながら、大声で馬鹿にされた。
「なんだ、雑魚か。粋がるのは部屋の中だけにしとけよ? アッハッハ」
「俺の宿の隣部屋とかでは、やめてくれよ? 笑い死にするからな、ブワッハッハッハ」
「「「ギャハハハ」」」
その言葉に、周りにいた十数人いた武芸者達も一斉に笑い出した。
「フフフフフフ……ウメテヤル」
俺は、嗤いながら呟いた。
「あなた、先に行ったんじゃなかったの?」
「主様、ソレお花じゃないですよ?」
「……ソレもまた、有りかしら……」
俺は道の両脇を彩る様に、でかい薄汚れた鼻を植えていた。
「ふぅ、良い汗かいたな。さっ、みんな揃ったことだし、そろそろ行くか」
その様子を見ていた村民や、運良く笑わなかった武芸者は口々に言葉を発した。
「『鬼の園芸』…」
俺たち一行は、村外れにポツンと佇む家に着いた。
俺は玄関前に立ち、声をかける。
「ごめんくださぁい! アメノ爺さんの紹介で来た者ですがぁ、どなたか、いらっしゃいませんかぁ!」
少し待っていると、誰かが歩いてくる気配が近づいて来た。
「はぁい、何のご用ですかぁ?」
ガラガラと玄関の引き戸が開き、作業着を来た女性が現れた。
「「「「………」」」」
「何か?」
俺たちは、一瞬固まったが俺は意地で目線を上げて挨拶をする。
「え、えっと、そうそう! 頼みがあって、やって来たんだ」
「私と同じくらいかしら?」
「作業着が……苦しそう」
「何を食べたら、あんなに大きく……」
後ろで、初対面の女性に失礼極まりない呟きをしている三人を無視して、必死に相手の顔より目線を下げない様に話を続ける。
「知り合いの爺さんからの、紹介でな。刀を打ってもらえないか頼みに来たんだ」
「刀? ここは金物屋よ? ほら」
その女性は玄関の上にかかっている看板を指差した。
そこには確かに、『カヤミ金物屋』と看板に文字が書いてあった。
「あれ?……カヤミってのは、あんたか?」
「えぇ、私がカヤミよ」
「確かにあんたは金具道具屋かもしらんが、俺は『刀工』のタケミという爺さんに用があるんだが?」
その言葉に一瞬眉間に皺を寄せ、苛立ったような表情を見せたが、すぐさま普通の表情になった。
「あと、これは俺の師匠から『刀工』への紹介状だ。一先ず、これを渡してくれないか?」
「……えぇ、いいわよ」
カヤミは、少し考えた後に、了承してくれた。
「じゃあ、また明日の朝に来る事も伝えといてくれ」
俺はそう言うと、もと来た道を引き返し、村の中心部へと歩き出した。
「どう思う?」
「そうね、少し気になる目をしてたわね」
「やっぱり、そう思うか……何だかなぁ、『刀工』の引退とか抜きにして、面倒な事になりそうな予感がしてならないんだが」
刀工への用事があると伝えた時のカヤミの様子は、怒りと苛立ちと言った感じが一瞬だけ表情に表れた。直ぐに表情は戻ったが、目だけはその感情を隠しきれない様子だった。
「主様が渡したアメノ様の紹介状は、ちゃんと渡して貰えるでしょうか?」
「そこまで陰湿な感じでも無かったし、渡してはくれると思いたいけどな」
先ずは紹介状を渡してくれる事を、信じる事にした。
「ブラウンの髪に、目鼻立のしっかりした美女でありながら、作業服を押し上げるほどのエディスにも匹敵するアレの存在感……同じ人族であるのに、何を食べたらあれほどのモノになるのでしょうか?」
「知らんがな……セアラ? お前、どんどん酷くなってないか? 前は、そんな子じゃ無かったよな? どうした? 何があった?」
俺が、あまりのセアラのポンコツぶりに狼狽していると、他の二人が俺の目を見つめる。
「あ? 俺じゃな……はっ! ヤナビ! お前か!」
「マスター、黙秘権を行使したいのですが……ただ、思った以上に王女と言うのは、素直過ぎる人種みたいで……」
「やめろ! 本気で『失敗しました』みたいな声出すな! 色々怖い!」
その日の宿屋での部屋割りでは、三人がヤナビと一緒に寝たいと言い出したが、先程のセアラの件があった為、却下した。
「そんな!? ヤナ様、ご無体な! ヤナビ様に勉強の続きを、教えてもらわないと!」
「ダメだ! 明らかにセラは、何かの影響を受けすぎだ! エイダに続き、ヤナビにまでも変な教育受けたら、後戻り出来なくなるだろ!」
「そんなぁ!?」
俺は、エディスとアシェリにアイコンタクトをして、セラをがっしりホールドして貰い、自分たちの部屋へと連れて行って貰った。
「マジで……どうするのアレ……」
「なんか……すみません……マスター……」
「謝るな……泣きたくなる……」
そして、次の日の朝、いつも通りに村内をジョギングし、朝食を食べた後に再度『刀工』の家に訪れた。
「ごめんくださぁい」
俺が、昨日と同じように声をかけると、昨日とは違う気配が近づいて来た。
「来たか、アメノの奴が書状に書いていたあのヤナだな?」
「あぁ、どんな事が書いてあったか知らないが、そのヤナだ。あんたが、『刀工』のタケミか?」
アメノ爺さんと同じくらいの老人が、そこに立っていた。アメノ爺さんと違い、頭は輝いていたが。
「あぁ、引退してるが、儂がタケミだ。ここでもなんだ、中に上がれ。後ろの三人もついてきていいぞ」
中に入り、案内された部屋は畳の部屋だった。
「畳か……」
「やはり、知っておったか。アメノの奴が書いてあった通りなんだな?」
タケミ爺さんは、ちらりと三人の方を伺いながら、聞いてくる。
「この三人は、俺の素性を知っている仲間だ。気を使わなくても、大丈夫だ」
「パートナー『契約』をしている、エディスです」
「奴隷『契約』をしている、アシェリです」
「同伴『契約』をしている、セラです」
「何故、そこを強調してくる……」
「お前さん、こんなべっぴんと三人も契約してるのか、中々豪気だな」
タケミ爺さんが、ニヤニヤしながら茶化してくるが、スルーして本題に入る。
「それはいいから、どうなんだ? 俺の刀を打ってくれるのか?」
「そりゃ、無理だな」
「即答かよ……もうちょっと交渉の余地はないのか?」
俺が、若干落ち込みながら食い下がると、タケミ爺さんが口を開いた。
「お前さん持っている『烈風』と『涼風』を、見せてみろ」
俺は、二刀をタケミ爺さんに手渡した。タケミ爺さんは黙って、一本ずつ鞘から抜いてじっくり見ていた。
「こりゃ、刀がお前さんの力に耐えられとらんな。儂は、この程度の刀しか打てん。じゃが、お前さんにはこれ以上の刀がないと全力は出せん。ほらな?儂じゃ無理じゃろう?」
丁度そこへ、お茶らしきものを持ってカヤミが部屋に入ってきた。
「タケミ爺さんじゃ無理ってことは、他の人間なら出来るかも知れんのか?」
俺は、カヤミを一瞥しながらタケミ爺さん問う。
「そうじゃの、材料さえ揃えば、カヤミなら……」
「無理よ。お師匠が出来ないものを、私が出来る訳ないじゃない」
一瞬にして、その場がピリピリした空気に染まる。
「私は、決して二人を超えることなんて出来ない」
それだけ言うと、カミヤは部屋を静かに出て行ってしまった。
俺は、カミヤ爺さんに目線で説明を促した。
カミヤ爺さんは、深い息を吐き出した後に、静かに口を開いた。
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