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第一章 幕開け
異世界への召喚
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「ふぁああ……眠い……」
四月も半ばになり新しいクラスにも慣れ始め、そろそろ落ち着き出した今日この頃。
「矢那! さっきめっちゃ可愛い子みたぞ!」
……落ち着いていなかった。
「朝っぱらからなんだよ……?」
「だから! めっちゃ! かわいい! 女子! いたぞ!」
「そら、可愛い子ならいるだろうよ。ここは、男女共学の普通科高校だぞ」
「ばっ! お前、あの子の可愛さレベルはカンストしてたぞ! その辺のモブと比べるな!」
「……あとここは、朝のホームルームを待つ教室であるわけだ……俺は……何も言っていないぞ……」
「ん?」
「ほれ、後ろを振り返る勇気があるなら見てみろ」
「……ひぃ!」
クラスの女子の大半が、友人を半眼で睨みつけている。
青くなっている友人をほっといて、また微睡んでいると先生が入ってきた。
「みんな、おはよう。今日は皆にお知らせがあってな……入ってきなさい」
教室のドアから、淡い朱色の髪を揺らしながら、一人の美少女が入ってきた。
担任から自己紹介を促されて、その子はこちらを向き、碧い瞳で全体を見合わした。日本人離れしたモデルの様な体型と無表情が相まって、ざわざわとしていた教室内は一気に静かになる。
「初めまして、今日からこちらの高校に通うことになった柊 白雪です。よろしくお願いしましゅ」
(((噛んだ……?)))
「……あ~うん。皆よろしく頼むぞ。席はどこ空いてたっけな?……おっ、矢那の隣が空いてるな。目は悪くないか?」
「だ……大丈夫です」
(見た目と違って結構緊張してんのかな?)
「あと、今日の日直は誰だ? あ~矢那か。あとで校内を案内してやってくれないか?」
「まぁ……いいですよ」
隣の空いてる席に座った柊さんが、こちらを向き「お願いね」と伝えてきた。
「……あぁうん、よろしく」
近くで柊さんの顔を見たときに、一瞬違和感というか何だかよくわからない感じがして、返事が遅れてしまった。柊さんは特に気にしていなかった様で、正面に顔を向けると教室は若干のざわつきが残っていたが、ホームルームは進んでいった。
授業の合間の休み時間や昼休みでは、柊さんが質問責めにあっていた。
席が隣なので聞こえてきた感じだと、
ハーフであること
小学生に入る前に一時期この街に住んでいたこと
転校が多いので、決まった部活は入っていなかったこと
彼氏はいない等など
約束通り授業も終わり、周りが帰宅や部活へ向かう中で、俺は柊さんを学校の中を案内していた。
「結構広いのね」
「そうだなぁ、まぁ、この辺じゃ一番大きい高校だしな」
少し時間がかかってしまったが、とりあえず一通り案内して、誰もいない教室に戻ってきた。
「今日はありがとう。助かったわ」
「どういたしまして。あとは慣れれば大丈夫だろ。じゃあ、俺は帰るわ。また明日」
「ええ、さよなら。また明日」
若干気疲れを感じながら、でもまぁ可愛いかったし役得だったかなと思いつつ教室を出ようとした。
「うわ! なんだ!」
「なにこれ動けない!?」
「眩しい! なんなの!?」
急に廊下から悲鳴と強い光が、教室に飛び込んできた。
「なんだ!?」
急いで教室を飛び出そうとした瞬間に、後ろからも悲鳴が聞こえきた。
「えっ!? ちょっ!? なになに!?」
教室にいた柊さんの足元から、幾何学的な模様が彼女を中心に円形にひろがっており、強烈な光が溢れ出ていた。
「何かおかしい! そこから離れろ!」
「無理なの! 足が動かない!」
(くそ! なんなんだよ! 俺は模様の外だから動けるみたいだけど、どうしたら!?)
柊さんは腰が抜けたように、その場にへたり込んでしまっていた。
更に身体が徐々にその円の中に沈んでいく。
「イヤ!……なに?……どうなってるのよ……」
混乱してパニックとなっていた柊さんのその瞳は、動けないでいる俺へと向けられた。
諦めて絶望した瞳で。
……助けて……ヒロ君……
何故だか俺は、その呟きを聞いた瞬間に飛び出していた。
「ふっざけるなー! くそったれ! なんなんだよ! 手を出せ柊さん!」
縋る様に出してきた柊さんの手を強く握り、沈む柊さんの身体を力の限り引っ張り出そうとした。
「ぐあぁああ!」
手を掴んで引っ張り出そうとした時、突然俺に電撃のような衝撃を身体に受けて、吹っ飛んでしまった。
「富東君! 大丈夫!?」
俺はなんとか立ち上がり、再度柊さんを引っ張りだそうとした。
「ぐあぁああ! くそったれー!」
再び吹っ飛びそれでも起き上がる俺に向かって柊さんが叫ぶ。
「もういいから!……もういいよ……もう起き上がらなくていいから……」
「俺がよくねぇんだよ! そんなわけもわからんもんに、俺が倒れるわけねぇだろぉ!」
再び柊さんの手を掴み叫ぶ。
「うおぉおおお!……何かわからんが……連れていくなら……俺も連れて行け! でないといくらでも俺は起き上がって、邪魔をするぞ!」
力の限り叫び、そして再び強烈な光が教室の包んだ。
光が収まった時、教室には誰もいなくなっていた。
「っつ……痛ててて……どうなったんだ?」
周りを見ると、俺と柊さん以外にも三人倒れていた。
すぐに俺以外の四人も目が覚めたらしく、頭を抑えたりしながら、周りの様子を確認していた。
そして、俺達に一人の女性が近づいてきた。まるで女神の様な美しい顔と映画でしか見たことないお姫様のような格好で、俺らに向かって声を出す。
「ようこそおいで下さいました、勇者様。魔王を倒し、この世界をお救いください」
無表情な顔で、俺の大嫌いなあの全てに諦め絶望している目で、いかにもゲームのような台詞を。
「くそったれ……なんなんだよ、あの目は……」
その呟きは、その女性の告げた内容に驚く他の四人の声にかき消されて、誰にも聞こえることはなかった。
四月も半ばになり新しいクラスにも慣れ始め、そろそろ落ち着き出した今日この頃。
「矢那! さっきめっちゃ可愛い子みたぞ!」
……落ち着いていなかった。
「朝っぱらからなんだよ……?」
「だから! めっちゃ! かわいい! 女子! いたぞ!」
「そら、可愛い子ならいるだろうよ。ここは、男女共学の普通科高校だぞ」
「ばっ! お前、あの子の可愛さレベルはカンストしてたぞ! その辺のモブと比べるな!」
「……あとここは、朝のホームルームを待つ教室であるわけだ……俺は……何も言っていないぞ……」
「ん?」
「ほれ、後ろを振り返る勇気があるなら見てみろ」
「……ひぃ!」
クラスの女子の大半が、友人を半眼で睨みつけている。
青くなっている友人をほっといて、また微睡んでいると先生が入ってきた。
「みんな、おはよう。今日は皆にお知らせがあってな……入ってきなさい」
教室のドアから、淡い朱色の髪を揺らしながら、一人の美少女が入ってきた。
担任から自己紹介を促されて、その子はこちらを向き、碧い瞳で全体を見合わした。日本人離れしたモデルの様な体型と無表情が相まって、ざわざわとしていた教室内は一気に静かになる。
「初めまして、今日からこちらの高校に通うことになった柊 白雪です。よろしくお願いしましゅ」
(((噛んだ……?)))
「……あ~うん。皆よろしく頼むぞ。席はどこ空いてたっけな?……おっ、矢那の隣が空いてるな。目は悪くないか?」
「だ……大丈夫です」
(見た目と違って結構緊張してんのかな?)
「あと、今日の日直は誰だ? あ~矢那か。あとで校内を案内してやってくれないか?」
「まぁ……いいですよ」
隣の空いてる席に座った柊さんが、こちらを向き「お願いね」と伝えてきた。
「……あぁうん、よろしく」
近くで柊さんの顔を見たときに、一瞬違和感というか何だかよくわからない感じがして、返事が遅れてしまった。柊さんは特に気にしていなかった様で、正面に顔を向けると教室は若干のざわつきが残っていたが、ホームルームは進んでいった。
授業の合間の休み時間や昼休みでは、柊さんが質問責めにあっていた。
席が隣なので聞こえてきた感じだと、
ハーフであること
小学生に入る前に一時期この街に住んでいたこと
転校が多いので、決まった部活は入っていなかったこと
彼氏はいない等など
約束通り授業も終わり、周りが帰宅や部活へ向かう中で、俺は柊さんを学校の中を案内していた。
「結構広いのね」
「そうだなぁ、まぁ、この辺じゃ一番大きい高校だしな」
少し時間がかかってしまったが、とりあえず一通り案内して、誰もいない教室に戻ってきた。
「今日はありがとう。助かったわ」
「どういたしまして。あとは慣れれば大丈夫だろ。じゃあ、俺は帰るわ。また明日」
「ええ、さよなら。また明日」
若干気疲れを感じながら、でもまぁ可愛いかったし役得だったかなと思いつつ教室を出ようとした。
「うわ! なんだ!」
「なにこれ動けない!?」
「眩しい! なんなの!?」
急に廊下から悲鳴と強い光が、教室に飛び込んできた。
「なんだ!?」
急いで教室を飛び出そうとした瞬間に、後ろからも悲鳴が聞こえきた。
「えっ!? ちょっ!? なになに!?」
教室にいた柊さんの足元から、幾何学的な模様が彼女を中心に円形にひろがっており、強烈な光が溢れ出ていた。
「何かおかしい! そこから離れろ!」
「無理なの! 足が動かない!」
(くそ! なんなんだよ! 俺は模様の外だから動けるみたいだけど、どうしたら!?)
柊さんは腰が抜けたように、その場にへたり込んでしまっていた。
更に身体が徐々にその円の中に沈んでいく。
「イヤ!……なに?……どうなってるのよ……」
混乱してパニックとなっていた柊さんのその瞳は、動けないでいる俺へと向けられた。
諦めて絶望した瞳で。
……助けて……ヒロ君……
何故だか俺は、その呟きを聞いた瞬間に飛び出していた。
「ふっざけるなー! くそったれ! なんなんだよ! 手を出せ柊さん!」
縋る様に出してきた柊さんの手を強く握り、沈む柊さんの身体を力の限り引っ張り出そうとした。
「ぐあぁああ!」
手を掴んで引っ張り出そうとした時、突然俺に電撃のような衝撃を身体に受けて、吹っ飛んでしまった。
「富東君! 大丈夫!?」
俺はなんとか立ち上がり、再度柊さんを引っ張りだそうとした。
「ぐあぁああ! くそったれー!」
再び吹っ飛びそれでも起き上がる俺に向かって柊さんが叫ぶ。
「もういいから!……もういいよ……もう起き上がらなくていいから……」
「俺がよくねぇんだよ! そんなわけもわからんもんに、俺が倒れるわけねぇだろぉ!」
再び柊さんの手を掴み叫ぶ。
「うおぉおおお!……何かわからんが……連れていくなら……俺も連れて行け! でないといくらでも俺は起き上がって、邪魔をするぞ!」
力の限り叫び、そして再び強烈な光が教室の包んだ。
光が収まった時、教室には誰もいなくなっていた。
「っつ……痛ててて……どうなったんだ?」
周りを見ると、俺と柊さん以外にも三人倒れていた。
すぐに俺以外の四人も目が覚めたらしく、頭を抑えたりしながら、周りの様子を確認していた。
そして、俺達に一人の女性が近づいてきた。まるで女神の様な美しい顔と映画でしか見たことないお姫様のような格好で、俺らに向かって声を出す。
「ようこそおいで下さいました、勇者様。魔王を倒し、この世界をお救いください」
無表情な顔で、俺の大嫌いなあの全てに諦め絶望している目で、いかにもゲームのような台詞を。
「くそったれ……なんなんだよ、あの目は……」
その呟きは、その女性の告げた内容に驚く他の四人の声にかき消されて、誰にも聞こえることはなかった。
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