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二章

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 私は今回の件は不問にしてくださるようお兄様に頼み込んだ。私も勘違いして彼を傷つけてしまったもの。彼を罰して欲しくはなかった。

 お兄様は何か言いたげだったけれど、承諾して下さった。
 黒い笑みを浮かべて「まだ彼とは話足りないから」と、カイン様を王城の訓練場まで引き摺っていったけれど。

…骨は拾って差し上げるわ。

※※※※※※※

「久しいな、ティナ!」
「ご機嫌ようカイン様。…って一昨日会ったばかりじゃない。」
 
 私達はその後も変わりなく婚約者として、交流を続けている。
 わだかまりが解け、また幼馴染と昔のように話せる事が出来てちょっと嬉しい。
 カイン様は騎士になる訓練を本格的にし始めた。悪霊にしてやられた事が堪えたらしい。次はコテンパンにしてやると息巻いていた。
 あら?冷静に考えたら、悪霊あいつは霊体だから物理攻撃効かなかったんじゃないかしら…?カイン様やる気になってるし、この事は私の心の中にしまっておきましょーー


むにゅ!
「おい、何考えてんだ?」

 ぎゃっ!乙女のほっぺをむにむにするのはやめなさい!
「…貴方の事考えてたのよ。」

 しぶしぶ答えると、真紅の目がまんまるに見開かれる。

「お前さー」
彼の形の良い唇が意地の悪そうに釣り上がった。
「俺の事、結構好きだよなぁ?」

 顔にかっと熱が灯る。

 はあああ!?
なにいってんの!?自意識過剰!!ばっかじゃないの!??

「はは。顔赤いぞ、ティナ。」
 カイン様は上機嫌で私のほっぺを更にぐりぐり揉み解す。顔が近い…近いわ!
 
 あの事件以降、カイン様の事を変に意識してしまう。ゴツゴツした手に触れられると男の子なんだなぁとドキッとさせられる。
 その事にカイン様も気が付いているのか、スキンシップが以前より増えた気がする。
 これは…由々しき事態よ!
主導権を握られてる気がするわ!このクリスティーナ様が!
 
 「あ、これ」
 カイン様が木にくくりつけられた短冊を手に取って、ククッと笑った。
 あの後書き直した短冊だ。ちょっと恥ずかしくて顔をぷいっと背けた。


【これからもお兄様やカイン様と仲良く過ごせます様に

 ついでに悪霊も以下略】

 


 
 

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