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二章
7 不愉快な魔物【カインside】
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何が起こったのか。
咄嗟にティナの方を見ると、彼女の周囲に黒いモヤのようなものが広がっていた。そこから黒い手が2本生えている。
『あ、やっぱ見える?
流石腐ってもこの国の王ってことかー。あー腹立つ。』
モヤが蠢いて人の形をとった。女だ。
正気のないがらんどうの黒目。白いワンピースのようなものを着ているが、足から腰あたりまで黒モヤで覆われている。
「何者だ!ティナから離れろ!」
『えー、やだ。
あれ?クリスティーナのことこっそり愛称で呼んでるの?あらやだ青春~!
本人の前では呼ばないんだねえ?恥ずかしいんだねえ?』
おちょくる様な口調の女に殺意がわく。なんなんだこいつは。アンデット系の魔物なのだろうか。何故邪魔をするのか。
『それにさ。離れられないんだよねまだ。』
「は?」
急に真面目なトーンになったかと思うと、黒い手をティナの肩に回し抱きつく。そして見せつける様に、女がニヤニヤしながら言い放った。
『私、取り憑いてるのよ。クリスティーナに。我々は一心同体なんですよー。
残念でしたねーカインくん。
クリスティーナはいただいたー』
全身の血が沸騰した。
ボッ!
火の玉が現れ黒い女に向かって飛んでいく。
『ちょっ!!』
黒モヤが大きな手になり火の玉を握り潰した。
『おまっ、馬鹿か!火はやめろ!火事になるだろーが!
やるなら剣でかかってこいよ少年。』
女はひらりと寝台から飛び降りた。黒モヤを掴むと次第に細長い剣の形になる。
『木刀を模してみたよ。
刃はついてないから安心してねー。
久方ぶりの掛かり稽古だなぁ。』
またもや歌う様に挑発をしてくる。こいつは自分を侮辱している。子供だからと馬鹿にしている!まだ騎士の見習いだからって舐めやがって…。
魔物に物理が効くのかとか考える余裕はなく、立て掛けてあった自分の練習用の剣を取り出した。
「うらぁ!!!」
ぶんっと魔物目掛けて降りかかる。
が、魔物は剣の横をぶつけて軌道を変えた。
くそっ!体制を戻そうと戻そうとして、慌てて避けた。
ビュンッ!黒刀が頭を掠める。速い。
何度も何度も剣を振りかぶったが、避けられるか軌道を変えられる。
打ち込んだ後や体制が崩れたところを狙われる。悪趣味な魔物だ。
「ぜぇ…はぁ…くそっ!!
ちょこまかしやがって!」
肩で息をする俺を魔物はなんの感情も映らない目で見つめた。
『お前さークリスティーナの事本気で好きなわけ?
お前の騎士ごっこに付き合わせようとしてない?王女だからって理想の姫役にしてんじゃーー』
「ちがうっ!!」
それは絶対に違う。俺自身、自問自答したこともある。でも、
「ティナが王女であろうがなかろうが関係ねえ!俺だって元々の好みと真反対の、ティナが好きになったのかわかんねえ!でもしょーがねーだろ!?惚れちまったんだよ!悪いかっ!!」
俺は目の前の魔物を睨みつけて言った。
「だからティナはお前には渡さねーし、俺が守る。第一王子に連絡済だ。殿下は光属性だから魔物はひとたまりもないだろ。」
前に第一王子から渡された、緊急連絡用の魔道具を使った。
かっこ悪いが、今の俺は弱くてコイツを倒せない。せめてティナだけでも守らなければ。
『…ふーん。
かっこいーね。
じゃあ魔物らしくお前を先に食べちゃおうかなーー』
「悪ふざけはそこまでよ!悪霊!!」
ぼふっと小さな巾着が飛んできて中身が空に舞う。
粉?いや、塩?
魔物がぎゃあっ!!っと悲鳴を上げた。
「カイン様は…私の婚約者ですのよ!ちょっかいをかけるなんて許しませんことよ!」
俺の隣に立ったティナが顔をトマトの様に真っ赤にさせて言い放った。
咄嗟にティナの方を見ると、彼女の周囲に黒いモヤのようなものが広がっていた。そこから黒い手が2本生えている。
『あ、やっぱ見える?
流石腐ってもこの国の王ってことかー。あー腹立つ。』
モヤが蠢いて人の形をとった。女だ。
正気のないがらんどうの黒目。白いワンピースのようなものを着ているが、足から腰あたりまで黒モヤで覆われている。
「何者だ!ティナから離れろ!」
『えー、やだ。
あれ?クリスティーナのことこっそり愛称で呼んでるの?あらやだ青春~!
本人の前では呼ばないんだねえ?恥ずかしいんだねえ?』
おちょくる様な口調の女に殺意がわく。なんなんだこいつは。アンデット系の魔物なのだろうか。何故邪魔をするのか。
『それにさ。離れられないんだよねまだ。』
「は?」
急に真面目なトーンになったかと思うと、黒い手をティナの肩に回し抱きつく。そして見せつける様に、女がニヤニヤしながら言い放った。
『私、取り憑いてるのよ。クリスティーナに。我々は一心同体なんですよー。
残念でしたねーカインくん。
クリスティーナはいただいたー』
全身の血が沸騰した。
ボッ!
火の玉が現れ黒い女に向かって飛んでいく。
『ちょっ!!』
黒モヤが大きな手になり火の玉を握り潰した。
『おまっ、馬鹿か!火はやめろ!火事になるだろーが!
やるなら剣でかかってこいよ少年。』
女はひらりと寝台から飛び降りた。黒モヤを掴むと次第に細長い剣の形になる。
『木刀を模してみたよ。
刃はついてないから安心してねー。
久方ぶりの掛かり稽古だなぁ。』
またもや歌う様に挑発をしてくる。こいつは自分を侮辱している。子供だからと馬鹿にしている!まだ騎士の見習いだからって舐めやがって…。
魔物に物理が効くのかとか考える余裕はなく、立て掛けてあった自分の練習用の剣を取り出した。
「うらぁ!!!」
ぶんっと魔物目掛けて降りかかる。
が、魔物は剣の横をぶつけて軌道を変えた。
くそっ!体制を戻そうと戻そうとして、慌てて避けた。
ビュンッ!黒刀が頭を掠める。速い。
何度も何度も剣を振りかぶったが、避けられるか軌道を変えられる。
打ち込んだ後や体制が崩れたところを狙われる。悪趣味な魔物だ。
「ぜぇ…はぁ…くそっ!!
ちょこまかしやがって!」
肩で息をする俺を魔物はなんの感情も映らない目で見つめた。
『お前さークリスティーナの事本気で好きなわけ?
お前の騎士ごっこに付き合わせようとしてない?王女だからって理想の姫役にしてんじゃーー』
「ちがうっ!!」
それは絶対に違う。俺自身、自問自答したこともある。でも、
「ティナが王女であろうがなかろうが関係ねえ!俺だって元々の好みと真反対の、ティナが好きになったのかわかんねえ!でもしょーがねーだろ!?惚れちまったんだよ!悪いかっ!!」
俺は目の前の魔物を睨みつけて言った。
「だからティナはお前には渡さねーし、俺が守る。第一王子に連絡済だ。殿下は光属性だから魔物はひとたまりもないだろ。」
前に第一王子から渡された、緊急連絡用の魔道具を使った。
かっこ悪いが、今の俺は弱くてコイツを倒せない。せめてティナだけでも守らなければ。
『…ふーん。
かっこいーね。
じゃあ魔物らしくお前を先に食べちゃおうかなーー』
「悪ふざけはそこまでよ!悪霊!!」
ぼふっと小さな巾着が飛んできて中身が空に舞う。
粉?いや、塩?
魔物がぎゃあっ!!っと悲鳴を上げた。
「カイン様は…私の婚約者ですのよ!ちょっかいをかけるなんて許しませんことよ!」
俺の隣に立ったティナが顔をトマトの様に真っ赤にさせて言い放った。
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