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第六章 決戦編
決戦Ⅶ VSデステール④
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「作戦会議は終わったかな?」
魔王城前、デステールがアルエット達一行に言葉を投げかける。ルーグとアムリスがハッとデステールの方へと目線を送り、アルエットは魔力を集中させていた。
「ええ、第二ラウンドといきましょうか。」
アルエットは全身を駆け巡る魔力を爆発させるように放ち、一瞬でデステールへと迫る。デステールの反応よりも速く巨大な爪を振り下ろし、デステールの体を切り裂いた。
「おごぉっ……」
「まだまだぁ!!」
アルエットの拳が唸り、デステールの頬、腹、そして再び顔面へと突き刺さった。地面を転げるデステールにアルエットはさらに間合いを詰め追撃を仕掛ける。デステールはなんとか態勢を整え腕を真っ直ぐ伸ばしアルエットに手のひらを向け、防御用の結界を展開する。しかしアルエットは、
「うおおおおお!!」
と叫びながら一撃で結界ごとデステールを貫いた。デステールは顔を歪めながら上体を捻るように拳を避け、アルエットにカウンターの拳を打ち込む。
「ぐはぁっ!」
デステールのカウンターのアッパーが決まり、アルエットが後方へよろめく。地面を蹴り間合いを詰めるデステールの前へ、二人の剣士が割って入った。
「アルエット様!」
「三人で戦いましょう!」
「あ……ああ、二人とも、ありがとう。」
「……どうやら、僕も出し惜しみをしている場合では無さそうだな。」
デステールはそっと刀を構え目を閉じ、息を吐きながら刀に魔力を通していく。徐々に刀身が怪しく光り始め、異様な雰囲気が場を包んでいく。アルエットは冷や汗を滲ませながら、デステールに向けて叫んだ。
「な……なんなの、何をしようとしているの!?」
「今から見せるのはかつて神が封じたとされる外法……アルエット、ここには僕が殺した魔族の霊がうようよと浮いているよねぇ。」
「ま、まさか!!」
「この魔法は、周囲の死者の魂を無理やり魔力に変換し、全身に纏う。だからここで大量に魔族を殺しておいたのだ……本当は、魔王相手の切り札だったんだがな。」
デステールの周囲の空気が黒く澱んでいく。その空気がデステールの体を包み体に吸収されていく。その光景に、三人は息を呑み見つめるしかなかった。
「赫灼け、死喰炎剣!!」
叫びと共に黒い雲が晴れ、デステールがその姿を現した。刀身がぼんやりと薄い紫に輝く刀をゆっくりともたげ、切っ先の狙いをアルエットに定めデステールは突進する。
「ひっ!」
アルエットが反応したのもつかの間、刀がアルエットの肩を刺し貫いた。
「うぐっ……」
「アルエット様!!今お助けします!」
「だ、大丈夫……これくらい!!」
アルエットは歯を食いしばり、刀を引き抜くべく刀身を握った。その瞬間、
「うわぁぁぁ!」
「助けて、助けてぇぇぇぇ!」
アルエットの脳内に、城内で殺された魔族たちの記憶が流れ込んでいく。アルエットに縋るように迫り来る亡者たちの幻影、その恐怖がアルエットの心を恐怖で支配する。
「なっ、うわぁぁぁ!!」
アルエットは思わず絶叫し、慌てて刀身を掴んだ手を離してしまう。その様子を見ながら、デステールは不気味に微笑んでいた。
「ふふ……これが外法である理由が分かったであろう?この魔法に触れた者は亡者の魂によって精神力を削られていく。攻撃を食らっても受け止めても、それだけはどうしようもないのさ!」
不敵な笑みでアルエットに語るデステール。その額には脂汗が浮かび、眉は険しく吊り上がり、目の隈が徐々に、徐々に濃く刻まれていく。美しく整っていた顔の面影がどんどん無くなっていった。
「外法に触れた者……まさかデステール、貴方まで……」
「我慢比べといこうか、アルエット。僕の心が壊れるのが先か、お前を仕留めるのが先か……」
デステールはそう言い、アルエットに刺した刀を一息に引き抜く。そのままアルエットの身体を蹴り飛ばし、さらなるコンビネーションをかけるべく地面を蹴った。そこへ割って入るは二振りの聖剣、ルーグとアムリスがデステールの両サイドから挟撃し足止めする。争いは混戦の様相を呈していた。
魔王城前、デステールがアルエット達一行に言葉を投げかける。ルーグとアムリスがハッとデステールの方へと目線を送り、アルエットは魔力を集中させていた。
「ええ、第二ラウンドといきましょうか。」
アルエットは全身を駆け巡る魔力を爆発させるように放ち、一瞬でデステールへと迫る。デステールの反応よりも速く巨大な爪を振り下ろし、デステールの体を切り裂いた。
「おごぉっ……」
「まだまだぁ!!」
アルエットの拳が唸り、デステールの頬、腹、そして再び顔面へと突き刺さった。地面を転げるデステールにアルエットはさらに間合いを詰め追撃を仕掛ける。デステールはなんとか態勢を整え腕を真っ直ぐ伸ばしアルエットに手のひらを向け、防御用の結界を展開する。しかしアルエットは、
「うおおおおお!!」
と叫びながら一撃で結界ごとデステールを貫いた。デステールは顔を歪めながら上体を捻るように拳を避け、アルエットにカウンターの拳を打ち込む。
「ぐはぁっ!」
デステールのカウンターのアッパーが決まり、アルエットが後方へよろめく。地面を蹴り間合いを詰めるデステールの前へ、二人の剣士が割って入った。
「アルエット様!」
「三人で戦いましょう!」
「あ……ああ、二人とも、ありがとう。」
「……どうやら、僕も出し惜しみをしている場合では無さそうだな。」
デステールはそっと刀を構え目を閉じ、息を吐きながら刀に魔力を通していく。徐々に刀身が怪しく光り始め、異様な雰囲気が場を包んでいく。アルエットは冷や汗を滲ませながら、デステールに向けて叫んだ。
「な……なんなの、何をしようとしているの!?」
「今から見せるのはかつて神が封じたとされる外法……アルエット、ここには僕が殺した魔族の霊がうようよと浮いているよねぇ。」
「ま、まさか!!」
「この魔法は、周囲の死者の魂を無理やり魔力に変換し、全身に纏う。だからここで大量に魔族を殺しておいたのだ……本当は、魔王相手の切り札だったんだがな。」
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「赫灼け、死喰炎剣!!」
叫びと共に黒い雲が晴れ、デステールがその姿を現した。刀身がぼんやりと薄い紫に輝く刀をゆっくりともたげ、切っ先の狙いをアルエットに定めデステールは突進する。
「ひっ!」
アルエットが反応したのもつかの間、刀がアルエットの肩を刺し貫いた。
「うぐっ……」
「アルエット様!!今お助けします!」
「だ、大丈夫……これくらい!!」
アルエットは歯を食いしばり、刀を引き抜くべく刀身を握った。その瞬間、
「うわぁぁぁ!」
「助けて、助けてぇぇぇぇ!」
アルエットの脳内に、城内で殺された魔族たちの記憶が流れ込んでいく。アルエットに縋るように迫り来る亡者たちの幻影、その恐怖がアルエットの心を恐怖で支配する。
「なっ、うわぁぁぁ!!」
アルエットは思わず絶叫し、慌てて刀身を掴んだ手を離してしまう。その様子を見ながら、デステールは不気味に微笑んでいた。
「ふふ……これが外法である理由が分かったであろう?この魔法に触れた者は亡者の魂によって精神力を削られていく。攻撃を食らっても受け止めても、それだけはどうしようもないのさ!」
不敵な笑みでアルエットに語るデステール。その額には脂汗が浮かび、眉は険しく吊り上がり、目の隈が徐々に、徐々に濃く刻まれていく。美しく整っていた顔の面影がどんどん無くなっていった。
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デステールはそう言い、アルエットに刺した刀を一息に引き抜く。そのままアルエットの身体を蹴り飛ばし、さらなるコンビネーションをかけるべく地面を蹴った。そこへ割って入るは二振りの聖剣、ルーグとアムリスがデステールの両サイドから挟撃し足止めする。争いは混戦の様相を呈していた。
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