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第一章 陰謀編
陰謀Ⅶ 邂逅
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アムリスが落ち着きを取り戻したのは、それから2時間ほど経過してからであった。今はルーグが汲んできた水を飲んでいる。
「すまない。」
「……いえ、私がいつまでも引きずっているのが悪いのです。私が未熟なばかりにこんな事態を招いてしまったのですから。」
言葉が出ない。出したい言葉に責任が追いつく気がしない。
「あなたたちも、私に用があったんでしょう?気を揉んでしまって本当に申し訳ございません。」
「その……」
「そうです。ぜひ俺達の仲間になって欲しいんですよ!」
アルエットが言葉を選ぼうとしている中、ルーグが遮って声をかける。アルエットは大慌てでルーグの脇腹を殴る。
「痛っ!?」
「ば、ばかたれぇー!!!おまっ、空気を読みなさいよ!!」
アルエットが恐る恐るアムリスの方を向くと、彼女はきょとんと二人を見ていた。
「いやー、あは、今のは忘れてもらって結構ですので……、ああいや、実際その目的で来てるから、ほんとは頭の片隅に置いてて欲しいんだけど……」
アルエットはそう誤魔化しつつ、小声で
(ちょっとルーグ!本当に何考えてんのよ!今の流れでいい返事貰えるわけないでしょ!!)
(何って、俺たちの目的を聞かれたわけなんですし、いずれ仲間になってもらうように頼むんですから、早い方がいいじゃないですか!)
(ばか!こういうのは順序と雰囲気があるの!最短距離が正しいわけじゃないのよ!!)
(そんなの知りませんよ!手短に済むならそれがお互いのためでしょう!)
二人でそんな言い合いをしていると、アムリスがクスリ、と笑った。
「あ、笑った。」
「あ……すみません。あまりおかしいものですから、つい。」
アルエットが思った通り、アムリスはかなりの美少女であった。笑顔となれば尚更。
((まあ、できるなら、その笑顔のままでいて欲しいわね/よな))
アルエットとルーグの思惑は一致した。
「……差し支えなければ、件の夜の真実を聞いてもいいかい?」
アルエットの質問に、アムリスの顔が曇る。
「いや、不躾なことを聞いたね、すまない。」
「……いえ、大丈夫です。話します。」
アムリスは彼女の知る全てを語った。村長の代わりに差し入れをアレックスとやらに持って行ったこと、その後に彼と思い出話をしたこと、翌日変わり果てた姿のアレックスが見つかったこと、嫌疑をかけられ聖剣を没収され投獄されたこと。
「なるほどね……。」
「アルエット様、本当に彼女の犯行ならこれ、あまりにも杜撰すぎないですか?」
「そうだね。差し入れに毒を盛って殺すつもりなら、隊長に正直な報告する方が不自然だ。少なくとも差し入れとやらを村長から受け取ったのも間違いないだろう。」
「ということは……村長が?でもなぜ?それに、だとしたら村長も殺されているわけですし……。」
まずい、考えれば考えるほどわけがわからない。というか、なにか大事な可能性を忘れている気がする……。
「信じてくれるんですか?」
そんなことを考えていたとき、アムリスが呟いた。
「だって、君にしか真実は分からないのだろう?少なくとも、今生きている人間では。」
「アルエット様ったら、素直じゃないんですから。」
「あんたねぇ……」
アムリスは、大粒の涙をぼろぼろと流しながら、何度もありがとうと続けた。
「貴女は美人なんだから、いい加減泣き止みなさいな。その何倍も、笑って過ごしてくれた方が私も嬉しいから。」
「はい……ありがとうございます!」
「うん、いい顔になった。ルーグ!」
「なんでしょうか」
「野営の準備をしなさい。」
「ええ!?ここで!?」
「当たり前でしょ!さっさとしなさーい!」
ルーグはしぶしぶテントと焚き火の準備を始める。
「そんな、悪いですよ。ちゃんとした宿屋に泊まってください。」
「いいのいいの。私達がここが良くてやってんだから。悪いと思ってるならあんたの話、もっと聞かせなさいよ。」
「今日こそはベッドで寝られると思ったのに……」
三者三様、賑やかな夜が始まった。
真夜中、牢獄前の三人は既に寝静まり、村からの明かりも消えた頃。突如、轟音が響く。
「なんだ!?」
アルエット、アムリス、ルーグの三人は飛び起きる。蜂に仕掛けられた…?いや、村の中は静かだ。
「夜襲か……」
「そんな、作戦は明日の朝からでは!?」
「嘘だった、ってことだな。我々が信用できないと言われればそれまでだ。」
突如、アムリスが顔面蒼白になる。
「アムリス、どうした?」
「ダメです……」
「何があったんだ?」
「そうでした……。ずっとアレクが夜の番だったから、あの人達は知らなかったんだ……。」
「どういうことです?夜だと、何がいけないんですか?」
「……あの蜂は、夜行性なんです。ただのスパイン・ホーネットじゃないんです。」
「すまない。」
「……いえ、私がいつまでも引きずっているのが悪いのです。私が未熟なばかりにこんな事態を招いてしまったのですから。」
言葉が出ない。出したい言葉に責任が追いつく気がしない。
「あなたたちも、私に用があったんでしょう?気を揉んでしまって本当に申し訳ございません。」
「その……」
「そうです。ぜひ俺達の仲間になって欲しいんですよ!」
アルエットが言葉を選ぼうとしている中、ルーグが遮って声をかける。アルエットは大慌てでルーグの脇腹を殴る。
「痛っ!?」
「ば、ばかたれぇー!!!おまっ、空気を読みなさいよ!!」
アルエットが恐る恐るアムリスの方を向くと、彼女はきょとんと二人を見ていた。
「いやー、あは、今のは忘れてもらって結構ですので……、ああいや、実際その目的で来てるから、ほんとは頭の片隅に置いてて欲しいんだけど……」
アルエットはそう誤魔化しつつ、小声で
(ちょっとルーグ!本当に何考えてんのよ!今の流れでいい返事貰えるわけないでしょ!!)
(何って、俺たちの目的を聞かれたわけなんですし、いずれ仲間になってもらうように頼むんですから、早い方がいいじゃないですか!)
(ばか!こういうのは順序と雰囲気があるの!最短距離が正しいわけじゃないのよ!!)
(そんなの知りませんよ!手短に済むならそれがお互いのためでしょう!)
二人でそんな言い合いをしていると、アムリスがクスリ、と笑った。
「あ、笑った。」
「あ……すみません。あまりおかしいものですから、つい。」
アルエットが思った通り、アムリスはかなりの美少女であった。笑顔となれば尚更。
((まあ、できるなら、その笑顔のままでいて欲しいわね/よな))
アルエットとルーグの思惑は一致した。
「……差し支えなければ、件の夜の真実を聞いてもいいかい?」
アルエットの質問に、アムリスの顔が曇る。
「いや、不躾なことを聞いたね、すまない。」
「……いえ、大丈夫です。話します。」
アムリスは彼女の知る全てを語った。村長の代わりに差し入れをアレックスとやらに持って行ったこと、その後に彼と思い出話をしたこと、翌日変わり果てた姿のアレックスが見つかったこと、嫌疑をかけられ聖剣を没収され投獄されたこと。
「なるほどね……。」
「アルエット様、本当に彼女の犯行ならこれ、あまりにも杜撰すぎないですか?」
「そうだね。差し入れに毒を盛って殺すつもりなら、隊長に正直な報告する方が不自然だ。少なくとも差し入れとやらを村長から受け取ったのも間違いないだろう。」
「ということは……村長が?でもなぜ?それに、だとしたら村長も殺されているわけですし……。」
まずい、考えれば考えるほどわけがわからない。というか、なにか大事な可能性を忘れている気がする……。
「信じてくれるんですか?」
そんなことを考えていたとき、アムリスが呟いた。
「だって、君にしか真実は分からないのだろう?少なくとも、今生きている人間では。」
「アルエット様ったら、素直じゃないんですから。」
「あんたねぇ……」
アムリスは、大粒の涙をぼろぼろと流しながら、何度もありがとうと続けた。
「貴女は美人なんだから、いい加減泣き止みなさいな。その何倍も、笑って過ごしてくれた方が私も嬉しいから。」
「はい……ありがとうございます!」
「うん、いい顔になった。ルーグ!」
「なんでしょうか」
「野営の準備をしなさい。」
「ええ!?ここで!?」
「当たり前でしょ!さっさとしなさーい!」
ルーグはしぶしぶテントと焚き火の準備を始める。
「そんな、悪いですよ。ちゃんとした宿屋に泊まってください。」
「いいのいいの。私達がここが良くてやってんだから。悪いと思ってるならあんたの話、もっと聞かせなさいよ。」
「今日こそはベッドで寝られると思ったのに……」
三者三様、賑やかな夜が始まった。
真夜中、牢獄前の三人は既に寝静まり、村からの明かりも消えた頃。突如、轟音が響く。
「なんだ!?」
アルエット、アムリス、ルーグの三人は飛び起きる。蜂に仕掛けられた…?いや、村の中は静かだ。
「夜襲か……」
「そんな、作戦は明日の朝からでは!?」
「嘘だった、ってことだな。我々が信用できないと言われればそれまでだ。」
突如、アムリスが顔面蒼白になる。
「アムリス、どうした?」
「ダメです……」
「何があったんだ?」
「そうでした……。ずっとアレクが夜の番だったから、あの人達は知らなかったんだ……。」
「どういうことです?夜だと、何がいけないんですか?」
「……あの蜂は、夜行性なんです。ただのスパイン・ホーネットじゃないんです。」
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