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全てから解放されるような、そんな気分になる放課後が好きだ。
決められたスケジュールにそって行動し、拘束される。学校も勉強もそこまで毛嫌いしているわけでもないのだが、それでもこの解放感は大きい。
「好きな人っているの?」
色恋話が盛り上がる歳頃、俺は解放感を得た後、そう声をかけられることが増えた。
大抵は、顔と名前を知ってはいるが、今回はまともに話したことも無く印象さえもない女子に、だ。
よって、突然そんなことを聞かれても俺は「…は?」としか言いようがなかった。
「あ、急にごめんね…」
色んな女子がいる。なおも質問責めのやつ、今回みたく勝手に傷つきました~って顔するやつ。
しかしながらなんと今回はセットで来ている、
「好きな人もいない付き合ってる子もいないっていうなら、この子と少し仲良くしてあげてもいいかな?」
みたいな代弁者を連れてくるやつ。
「仲良く…と、言われても。…俺は意識して仲良くなるように人と接したことがないなあ。自然に仲良くなれるやつしか知らない。その時点で、その人とは仲良くはなれないんじゃないかと思うんだけど?」
ながれる沈黙。理想の言葉、想像していた言葉と違った物が発された場合、黙るのはやめて欲しい。先程得た解放感が一気に重く雰囲気の悪い空間に変わる。
欲しかった言葉がなんなのか俺には分からないし、それを考えさせられるのも嫌いに近く苦手だ。
「おまえなぁ…」
女子たちの後ろから声が聞こえ、ガシガシと頭を掻きむしりながら姿を現したのは、同級生の村瀬だ。
「村瀬、いつからいたの!」
女子たちが驚いて振り返る。
「森に声掛けてたとこから」
村瀬が困った顔で答える。
「小さくて気づかなかった。なぁ?」
くくくっと堪えきれない笑いを噛み締めながら俺は女子たちに同意を求めた。
村瀬の登場で空気が動きだした。解放感だ。俺に期待される言葉が無くなったに等しい。
女子たちは、力強く頷き急にごめんね、また明日ね。と足早に去っていった。教室を出るなりキャーキャーと騒いで行ったので離れていく様が分かりやすかった。
「森~そういうとこだぞ?」
大きなため息と共に村瀬が椅子に座っている俺の肩に手を置いた。
「どういうとこだよ?ってか何のことだよ」
俺の問いかけを聞いて村瀬がため息を吐いた。
「いや、いい。それが森のいい所だからな。」
それより帰ろうぜ。そう言って村瀬が俺に背を向けた。おう。と答え俺も立ち上がり村瀬の背中を追った。
「ってかさー、彼女いらねーの?」
帰宅ラッシュの電車の中で村瀬が吊革に手を伸ばしふらふら揺られながら言った。
「ん~…いるとかいらないとかで考えるものかー?」
村瀬の肩に肘を置いて吊革につかまりつつ答える。
「考え方までイケメンかよ~…せめてその身長俺にくれよ~」
ちっ。と舌打ちをして頭に乗せた肘を払い落とされた。
「まあ~30歳まで童貞だったら魔法使いになれるらしいじゃん?そっちの方が興味あるわ、むしろ」
俺の発言に村瀬が大きくため息を吐く。
「宝の持ち腐れかよ!俺がお前なら女なんて取っかえ引っ変えだ」
「そんなのだからじゃないのか」
「黙れよ!あ、次か~今日はマシだったら良いな」
悔しい顔をしていた村瀬が、今度は嫌そうな表情をした。次の駅から、さらに混み、よく見る押し込め乗車となるのだ。
「まあ、運命の出会いってのがあるのかもな。ここまで彼女作らなかったお前にはさ」
少し電車がガタつき、止まる。
「急にロマンチストだな~」
俺がそう答えたところでプシューっと電車の扉が開かれた。
まず、降りる人が降りていく。その列が途切れるや否や乗車客の波が押し寄せてくる。降りるタイミングが遅れた人、逃した人が必ず1人は現れ車内はぐちゃぐちゃになっていく。
俺の真横に立っていたはずの村瀬の姿は見えなくなっていた。人の流れに流されただけだし、さほど遠くへは流されていないと思うのだが小柄とあってよく姿を消すのだ。降りる駅も同じため、ホームへ出てから合流するのがお決まりだ。
それにしても、今日は特別にぎゅうぎゅう詰めというか後ろの人との距離が無い。
と、いうか、ん?
距離感が…んんん??
混乱する頭の中で俺は距離感という単語を何度も繰り返していた。
臀部にピタリと貼り付いているのはしっかりとした人間の掌だ。
距離感が無いとか言う以前に、そのような形になるのは些か変だろう。
なぜ、そんな形になってしまったんだか。自分の臀部の違和感もそうだが男のケツなんかに手が触れてしまったこの人も俺も不可抗力なのだが、なんとなく気まずい。少し身体をよじってその掌から臀部の位置をずらした。
が、その掌は追うようについてきて、なんともぞもぞと動き始めた。全身に鳥肌が立った。動き出した電車の揺れを考慮したとしても、不自然な動きだ。
可能な範囲で首を動かし周囲の人の顔を見てみるも俺の周りはサラリーマンのような男ばかりだった。
この掌の主も手の位置を変えようともがいているのかもしれない。もう一度身体をよじって、さらに離れよう。そう思い身体を少し動かそうとした時その掌にグイッと腰を引き寄せられ身体がぐらついた。体制を立て直す隙間もなく立っているために俺の背中が掌の主の身体に寄りかかるかたちに無抵抗のままなってしまった。腰を捕んでいた掌が俺の股間へと移動した。
これが痴漢か!鳥肌に鳥肌が重なるような感覚だ。気持ちが悪い。
だが犯人よ気づいただろう、俺は残念ながら男だ。股間をまさぐるように触られながら俺はそう思ったのだがその手はすぐに止まらなかった。
は??
瞬時に離れると思っていたその手がまだ俺の股間を触り続けていることに驚き身体が固まっていたが、その手の動きが変わり制服のボトムのファスナーを探しているのだと気づき慌ててその手を掴んでやめさせようとした。
「もっと、気持ちよくさせてあげる」
息を荒らげた臭い息とともに吐き出されたその言葉に俺は鳥肌の限界を感じ吐き気を催した。
つーか、
俺がヒョロヒョロだからって舐めやがって…畜生が。
ぐぐぐぐとチカン野郎の手を動かないように抑えるのが精一杯になりながら俺は悪態をついていた。
怒鳴るか?やめてください!ってか?この人チカンです!で良いのか?女みてえだな。いや、そんなこと言ってられっか…よし、
叫ぼうとしたとき、車体が少し揺れ身体がぐらついた。チャンスとばかりにチカン野郎の股間が俺のケツに押し当てられた。俺よりおそらく少し背の低いやつだろう。首だけ動かしたくらいではこの人混みの中至近距離の背後では顔の確認が出来なかった。
勃ってる…まじかよ気持ち悪い…吐きそ…
叫ぼうとした喉から別の物が込み上げ声にならず、まず嗚咽が出た。次は絶対吐く。反射的に手を口に当てた時チカン野郎が股間を押し付けたまま今だとばかりにファスナーを開けた。手がするりと入ってきた。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
吐く。。。
そう思ったとき、俺の手首が誰かに掴まれ、気がついた頃には堅い腕の中にいた。頭が真っ白になった。仲間がいたのか?
「おい、おっさんやめろ」
そこそこ身長の高い俺より少し大きいくらいの男の声が俺の耳元で発された。
俺は抱きしめられた形になっている。自分の性別なんだっけ?めっちゃ守られてんじゃん俺。
「すみません、無理矢理入り込んで。怪我しませんでしたか?」
ガッチリした体格の男が片腕で俺を抱き締めたまま周りにいたサラリーマンに詫びを入れている。
もう片方の手はチカン野郎の手首を掴んでいるようだ。
「離せ!何だよ?」
チカン野郎はもがきながら声を荒らげた。俺の体も左右に揺れるが、しっかりと抱き寄せられているため安定感は抜群だ。
そうこうしているうちに、電車内に次の駅のアナウンスが流れる。
早く、降りたい。
俺の視界には今、たくましい胸板しか見えていないのだ。状況が分からないが、そんなに目立っていないことを望む…
次の駅では結構な人が降りていく。その流れにそって、俺も降りた。と、いうか抱き寄せられたまま降ろされた。
足早に出口へ向かう人々の邪魔にならないよう隅で、未だに俺の視界は胸板。
「なんだよ、もう離せよ」
「ここの駅には交番があるから、一緒に来てもらう。駅員に言うよりてっとりばやい」
「は??」
音声だけが聞こえてくる。
もぞもぞと俺が動くと、より強く抱き寄せられた。その間も、2人は言い合いをしている。
「あ、あの~、もう離してくれませんか」
控えめに発言してみる。
「駄目だ、顔がバレると報復されるかもしれない。」
「え~…だからってこのままは…」
「あんたもチカンみたいなもんじゃないか!嫌がってるだろ」
チカン野郎が言った。ビクリと震えを感じた直後、胸板の圧が軽くなった。
「んな、わけねぇだろ」
思わず、俺が吐き捨てるように言うと胸板が安心したように、圧を強くした。
いや、なんだよ胸板の圧って。
「謝る気もなさそうだし話にならない。交番に行こうと思うが良いか?」
胸板が俺に声に聞くのと同時にチカン野郎は、今までよりさらに暴れだした。
「大人しくしろ!チカンだと肯定する事になるぞ!」
「うるせえ!」
強引に手を振りほどこうとチカン野郎がもがいている。
それを、離すまいと胸板は恐らく力がはいってしまっている。
俺を締めるつもりか…!というくらいに、余波はこちらの腕にもきていた。
く、くるし…
バシバシと胸板の背中を叩くと、胸板は俺を見下ろすように視線をくれたのを感じた。少しだけ見上げる形で俺は呻くように訴えた。
「く、苦しい…力…強い…」
胸板と、視線が合い、顔をそこではじめて見た。
一瞬息が止まった気がした。
同時に視線を外し、胸板の力が緩んだ。
「あ、ああ、ごめん。つい、力が…」
「あっ、別に!えっと、、大丈夫だけど!」
なぜか、胸板の顔を見れなくなり俺は俯いて答えた。
急に暑くなり、汗が滲む。
「おいっ」
胸板が大声を出し、涼しい風が俺の身体を撫で汗ばんだ身体を冷やしていく。不意に胸板が俺から離れたのだ。
チカン野郎が隙を見て振りほどき逃げ出したのだ。胸板が目にもとまらぬ速さで後を追いかけていった。
すごく置いていかれた感がする…なんだったんだ…呆然と見えなくなっていく背中を見ていた。
「森!大丈夫か?」
突然に声をかけられ、俺はビクッと体をふるわせた。
「え、おい…大丈夫かよ?」
「む、らせ…」
視線をやや下に向けると心配そうに覗き込んでいる村瀬の表情がみえた。
「なんか、声かけるタイミングわからなくてさ。守られてるみたいだったし様子見てた。つか、なんか火照った顔してるぞ?」
村瀬は背中をさすってくれている。
「なんか、チカンにあった…」
ボソボソと俺が言うと村瀬は俺の股間へ視線を移しながら言った。
「え、だから火照ったの?」
「違う!断じて勃ってねーわ。むしろ鳥肌もんだったわ!」
思い出しただけで、ぞわぞわと鳥肌がたった。
「お、青ざめた顔になった。」
「気持ち悪…」
「おいおいおいおい!!」
次第に身体は前屈みになりしゃがみこむ俺を見て慌てながらも、背中をさすってくれている村瀬。
「よし!俺の背中に乗れ!」
村瀬が、ほれ!と背中を差し出してくれるが、
「無理…腹圧迫されたら俺、出すよ…」
「かまわねえよ!大丈夫だから!」
村瀬…ジーン。と感動しながら背中におずおずと乗ろうとすると、
「肩かしましょうか…」
と、これまた見ず知らずの少年が、おずおずと現れた。
「ありがとうございます!」
言葉を発することが辛くなってきた俺に変わって村瀬が礼を言ってくれた。
「あ、いえ。あの…足ついちゃうかな…って…」
少年が言った一言に俺は少し吐きそうになった。これは、笑いが込み上げたせいだ。村瀬は少々不機嫌になったようだが、致し方ない。と肩を借りて俺を便所へと連れていってくれた。
ひとしきり吐き出した俺は椅子に座っている。村瀬は水を買いにいってくれている。
俺が…痴漢にあうだと…?
悶々と硬い背もたれに背を預け掌で顔をおおいながら考えていた。
男なのに?男だからか?
村瀬の方が小柄だし可愛いぞ?いや、そういうことか?
もう、訳分かんねえ…
「大丈夫か?」
村瀬の、弾んだような声音とは違う低音が耳に響いた。先程は直接聞こえているような微かな振動さえ感じながら聞いていた声だ。
驚き、慌てて顔から手を離すと、背もたれの方から顔を覗き込む胸板が立っていた。
実際に顔を見ていた時間は少しだったが、忘れるわけがなかった。
顔の位置がまたまた思いのほか近く、直ぐには声が出なかった。
「戻ったら居なかったから、ちゃんと帰れたか心配していた。具合悪いか?」
「あ、いや。大丈夫…でもないけど。
ありがとう、助かった。」
胸元が俺の正面にまわってくる。
「あいつだが、逃がしてしまった…」
悔しそうな表情。
「あ、いや。変に追いかけて怪我でもされたらこっちとしても申し訳ないし。…助けて貰っただけで有り難い。」
視線が合わせられず、会話も続かず俯いてしまった。
もっとしっかりお礼を伝えた方が絶対いいのに。なぜか、抱き締められた感覚を思い出して照れくさくなり目が合わせられない。
「あ!さっきはどうも!こいつを助けてくれて有難うございました!」
小走りで駆け寄ってきた村瀬が胸板に声をかけた。
「一緒に乗ってたんだけど、俺、流されちゃってて!」
水を俺に手渡しながら、村瀬が礼を言ってくれている。
「結局、逃がしてしまったんだ。…不甲斐ない。君も気をつけた方がいい。この線は男へのチカンが多いようだから。」
「え?」
村瀬がパチクリと大きな目を瞬かせた。
「男を狙った?」
「男だからと油断しない方がいい。君たちは、魅力的だぞ。ゲイ目線から言わせてもらうと」
思わず俺は顔をあげた。少し寂しいような、不安げなような表情の胸板と目が合った。
「あいつと同族とは思いたくないが。今は特に、同じ癖をもった人種は気持ち悪いよな。もう大丈夫そうだし。俺は帰るよ。気を付けてな」
穏やかだが、少し早口で胸板が言い去っていく。俺は咄嗟に立ち上がり胸板の背を追った。
「おい、森?!」
驚く村瀬の声が後ろから聞こえた。
俺はというと、胸板の腕を両手でがっちりと掴んだとこで自分の行動に気づいた。
「…あ!?」
驚いた顔の胸板と再び目が合う。
「なんで君が驚いてるんだよ」
厳つい身体付きとは裏腹に胸板は、小さめの笑い声で柔らかく笑った。
その顔をみて、俺の思考は再び止まり、そして赤くなる顔の熱で我に返った。
「あ、そっか!急にごめん!ごめんな!」
慌てて手を離し、そのまま顔をぱたぱたと手であおいだ。全く風は送られてこない。村瀬が近づいてきて不思議そうな顔をしている。もちろん、胸板も不思議そうな顔だ。
「上手く言えないけどさ!俺、気持ち悪いとか思わなかった!助けてくれてありがとうございました!」
思い切り勢いをつけて早口にやたら大声でまくし立てるような言い方になってしまった。
胸板は、キョトンとした顔の後、ニカッと笑った。
「ありがとう。明日から気をつけろよ」
そう言って、胸板は去っていく。ありがとうはこっちが言ったセリフなのに、かえってきてしまった。
背を見送り、俺は再びベンチに座り込んだ。
はぁあぁと大きな溜息が出る。
「そんな、お礼言うの恥ずかしかった?まぁ、痴漢だもんな、まさかの。」
村瀬が、横に腰掛ける。
「まさかのな。」
相槌を打つ。だが、それが理由ではない気がして腑に落ちない。顔にその感情が出ていたのか村瀬が考え込むような顔をした。
「なぁ、もしかして…さ。」
「ん?」
何かを言いたげな村瀬の発言を待つ。
「あの人に一目惚れってやつ?」
思考停止。
「…え!?」
思わず立ち上がった。
「…え…?なに?…ちょ…っと、何言ってるのかよくわからない」
直ぐに、座った。自分の発言の意味も分からない。
「森…さらに動揺させていい?」
村瀬が俺の顔を覗きこんだ。
「なんだよ?もう、これ以上に動揺することなんてあんのかよ」
「まあ、たぶんね」
なんだよ?目線だけで問いかける
「俺さ、さっき肩貸してくれた奴いるじゃん?」
ガシガシと頭を描きながら村瀬が言いにくそうに話し始める。
「ああ、あの人な。助かったけど面白かった」
足がつくって思ってても言わないだろ普通。思い出し笑いを堪えていると村瀬が俺を肘で小突いた。
「笑ってんなよ」
「悪い悪い、で?あの人がどうかしたのか」
「…実はさ。告白されて。」
「そうなんだ、良かったじゃん、お前彼女彼女うるさかっ…彼女…じょ…jo」
じいっと、上目遣いで俺を見上げる村瀬
「う、うん。お前可愛いもんな??」
「やっぱ、俺ってそっち側!?…じゃなくて!!」
「お、お前も混乱してるとこだったんだな!!だから、俺が、あいつに一目惚れとかいう思考回路にいきついたんだな?!」
「なんか、男とか女とか関係なく好きになれるって考えたらさ。お前の反応がそこに結びついちゃってさ!」
2人で、はははと笑いあったあと黙り込んだ。
「考えようぜ、お互い。ちょっと落ち着こう」
「色んな人がいるんだな。」
村瀬が呟くように言った。俺は無言で頷いた。
決められたスケジュールにそって行動し、拘束される。学校も勉強もそこまで毛嫌いしているわけでもないのだが、それでもこの解放感は大きい。
「好きな人っているの?」
色恋話が盛り上がる歳頃、俺は解放感を得た後、そう声をかけられることが増えた。
大抵は、顔と名前を知ってはいるが、今回はまともに話したことも無く印象さえもない女子に、だ。
よって、突然そんなことを聞かれても俺は「…は?」としか言いようがなかった。
「あ、急にごめんね…」
色んな女子がいる。なおも質問責めのやつ、今回みたく勝手に傷つきました~って顔するやつ。
しかしながらなんと今回はセットで来ている、
「好きな人もいない付き合ってる子もいないっていうなら、この子と少し仲良くしてあげてもいいかな?」
みたいな代弁者を連れてくるやつ。
「仲良く…と、言われても。…俺は意識して仲良くなるように人と接したことがないなあ。自然に仲良くなれるやつしか知らない。その時点で、その人とは仲良くはなれないんじゃないかと思うんだけど?」
ながれる沈黙。理想の言葉、想像していた言葉と違った物が発された場合、黙るのはやめて欲しい。先程得た解放感が一気に重く雰囲気の悪い空間に変わる。
欲しかった言葉がなんなのか俺には分からないし、それを考えさせられるのも嫌いに近く苦手だ。
「おまえなぁ…」
女子たちの後ろから声が聞こえ、ガシガシと頭を掻きむしりながら姿を現したのは、同級生の村瀬だ。
「村瀬、いつからいたの!」
女子たちが驚いて振り返る。
「森に声掛けてたとこから」
村瀬が困った顔で答える。
「小さくて気づかなかった。なぁ?」
くくくっと堪えきれない笑いを噛み締めながら俺は女子たちに同意を求めた。
村瀬の登場で空気が動きだした。解放感だ。俺に期待される言葉が無くなったに等しい。
女子たちは、力強く頷き急にごめんね、また明日ね。と足早に去っていった。教室を出るなりキャーキャーと騒いで行ったので離れていく様が分かりやすかった。
「森~そういうとこだぞ?」
大きなため息と共に村瀬が椅子に座っている俺の肩に手を置いた。
「どういうとこだよ?ってか何のことだよ」
俺の問いかけを聞いて村瀬がため息を吐いた。
「いや、いい。それが森のいい所だからな。」
それより帰ろうぜ。そう言って村瀬が俺に背を向けた。おう。と答え俺も立ち上がり村瀬の背中を追った。
「ってかさー、彼女いらねーの?」
帰宅ラッシュの電車の中で村瀬が吊革に手を伸ばしふらふら揺られながら言った。
「ん~…いるとかいらないとかで考えるものかー?」
村瀬の肩に肘を置いて吊革につかまりつつ答える。
「考え方までイケメンかよ~…せめてその身長俺にくれよ~」
ちっ。と舌打ちをして頭に乗せた肘を払い落とされた。
「まあ~30歳まで童貞だったら魔法使いになれるらしいじゃん?そっちの方が興味あるわ、むしろ」
俺の発言に村瀬が大きくため息を吐く。
「宝の持ち腐れかよ!俺がお前なら女なんて取っかえ引っ変えだ」
「そんなのだからじゃないのか」
「黙れよ!あ、次か~今日はマシだったら良いな」
悔しい顔をしていた村瀬が、今度は嫌そうな表情をした。次の駅から、さらに混み、よく見る押し込め乗車となるのだ。
「まあ、運命の出会いってのがあるのかもな。ここまで彼女作らなかったお前にはさ」
少し電車がガタつき、止まる。
「急にロマンチストだな~」
俺がそう答えたところでプシューっと電車の扉が開かれた。
まず、降りる人が降りていく。その列が途切れるや否や乗車客の波が押し寄せてくる。降りるタイミングが遅れた人、逃した人が必ず1人は現れ車内はぐちゃぐちゃになっていく。
俺の真横に立っていたはずの村瀬の姿は見えなくなっていた。人の流れに流されただけだし、さほど遠くへは流されていないと思うのだが小柄とあってよく姿を消すのだ。降りる駅も同じため、ホームへ出てから合流するのがお決まりだ。
それにしても、今日は特別にぎゅうぎゅう詰めというか後ろの人との距離が無い。
と、いうか、ん?
距離感が…んんん??
混乱する頭の中で俺は距離感という単語を何度も繰り返していた。
臀部にピタリと貼り付いているのはしっかりとした人間の掌だ。
距離感が無いとか言う以前に、そのような形になるのは些か変だろう。
なぜ、そんな形になってしまったんだか。自分の臀部の違和感もそうだが男のケツなんかに手が触れてしまったこの人も俺も不可抗力なのだが、なんとなく気まずい。少し身体をよじってその掌から臀部の位置をずらした。
が、その掌は追うようについてきて、なんともぞもぞと動き始めた。全身に鳥肌が立った。動き出した電車の揺れを考慮したとしても、不自然な動きだ。
可能な範囲で首を動かし周囲の人の顔を見てみるも俺の周りはサラリーマンのような男ばかりだった。
この掌の主も手の位置を変えようともがいているのかもしれない。もう一度身体をよじって、さらに離れよう。そう思い身体を少し動かそうとした時その掌にグイッと腰を引き寄せられ身体がぐらついた。体制を立て直す隙間もなく立っているために俺の背中が掌の主の身体に寄りかかるかたちに無抵抗のままなってしまった。腰を捕んでいた掌が俺の股間へと移動した。
これが痴漢か!鳥肌に鳥肌が重なるような感覚だ。気持ちが悪い。
だが犯人よ気づいただろう、俺は残念ながら男だ。股間をまさぐるように触られながら俺はそう思ったのだがその手はすぐに止まらなかった。
は??
瞬時に離れると思っていたその手がまだ俺の股間を触り続けていることに驚き身体が固まっていたが、その手の動きが変わり制服のボトムのファスナーを探しているのだと気づき慌ててその手を掴んでやめさせようとした。
「もっと、気持ちよくさせてあげる」
息を荒らげた臭い息とともに吐き出されたその言葉に俺は鳥肌の限界を感じ吐き気を催した。
つーか、
俺がヒョロヒョロだからって舐めやがって…畜生が。
ぐぐぐぐとチカン野郎の手を動かないように抑えるのが精一杯になりながら俺は悪態をついていた。
怒鳴るか?やめてください!ってか?この人チカンです!で良いのか?女みてえだな。いや、そんなこと言ってられっか…よし、
叫ぼうとしたとき、車体が少し揺れ身体がぐらついた。チャンスとばかりにチカン野郎の股間が俺のケツに押し当てられた。俺よりおそらく少し背の低いやつだろう。首だけ動かしたくらいではこの人混みの中至近距離の背後では顔の確認が出来なかった。
勃ってる…まじかよ気持ち悪い…吐きそ…
叫ぼうとした喉から別の物が込み上げ声にならず、まず嗚咽が出た。次は絶対吐く。反射的に手を口に当てた時チカン野郎が股間を押し付けたまま今だとばかりにファスナーを開けた。手がするりと入ってきた。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
吐く。。。
そう思ったとき、俺の手首が誰かに掴まれ、気がついた頃には堅い腕の中にいた。頭が真っ白になった。仲間がいたのか?
「おい、おっさんやめろ」
そこそこ身長の高い俺より少し大きいくらいの男の声が俺の耳元で発された。
俺は抱きしめられた形になっている。自分の性別なんだっけ?めっちゃ守られてんじゃん俺。
「すみません、無理矢理入り込んで。怪我しませんでしたか?」
ガッチリした体格の男が片腕で俺を抱き締めたまま周りにいたサラリーマンに詫びを入れている。
もう片方の手はチカン野郎の手首を掴んでいるようだ。
「離せ!何だよ?」
チカン野郎はもがきながら声を荒らげた。俺の体も左右に揺れるが、しっかりと抱き寄せられているため安定感は抜群だ。
そうこうしているうちに、電車内に次の駅のアナウンスが流れる。
早く、降りたい。
俺の視界には今、たくましい胸板しか見えていないのだ。状況が分からないが、そんなに目立っていないことを望む…
次の駅では結構な人が降りていく。その流れにそって、俺も降りた。と、いうか抱き寄せられたまま降ろされた。
足早に出口へ向かう人々の邪魔にならないよう隅で、未だに俺の視界は胸板。
「なんだよ、もう離せよ」
「ここの駅には交番があるから、一緒に来てもらう。駅員に言うよりてっとりばやい」
「は??」
音声だけが聞こえてくる。
もぞもぞと俺が動くと、より強く抱き寄せられた。その間も、2人は言い合いをしている。
「あ、あの~、もう離してくれませんか」
控えめに発言してみる。
「駄目だ、顔がバレると報復されるかもしれない。」
「え~…だからってこのままは…」
「あんたもチカンみたいなもんじゃないか!嫌がってるだろ」
チカン野郎が言った。ビクリと震えを感じた直後、胸板の圧が軽くなった。
「んな、わけねぇだろ」
思わず、俺が吐き捨てるように言うと胸板が安心したように、圧を強くした。
いや、なんだよ胸板の圧って。
「謝る気もなさそうだし話にならない。交番に行こうと思うが良いか?」
胸板が俺に声に聞くのと同時にチカン野郎は、今までよりさらに暴れだした。
「大人しくしろ!チカンだと肯定する事になるぞ!」
「うるせえ!」
強引に手を振りほどこうとチカン野郎がもがいている。
それを、離すまいと胸板は恐らく力がはいってしまっている。
俺を締めるつもりか…!というくらいに、余波はこちらの腕にもきていた。
く、くるし…
バシバシと胸板の背中を叩くと、胸板は俺を見下ろすように視線をくれたのを感じた。少しだけ見上げる形で俺は呻くように訴えた。
「く、苦しい…力…強い…」
胸板と、視線が合い、顔をそこではじめて見た。
一瞬息が止まった気がした。
同時に視線を外し、胸板の力が緩んだ。
「あ、ああ、ごめん。つい、力が…」
「あっ、別に!えっと、、大丈夫だけど!」
なぜか、胸板の顔を見れなくなり俺は俯いて答えた。
急に暑くなり、汗が滲む。
「おいっ」
胸板が大声を出し、涼しい風が俺の身体を撫で汗ばんだ身体を冷やしていく。不意に胸板が俺から離れたのだ。
チカン野郎が隙を見て振りほどき逃げ出したのだ。胸板が目にもとまらぬ速さで後を追いかけていった。
すごく置いていかれた感がする…なんだったんだ…呆然と見えなくなっていく背中を見ていた。
「森!大丈夫か?」
突然に声をかけられ、俺はビクッと体をふるわせた。
「え、おい…大丈夫かよ?」
「む、らせ…」
視線をやや下に向けると心配そうに覗き込んでいる村瀬の表情がみえた。
「なんか、声かけるタイミングわからなくてさ。守られてるみたいだったし様子見てた。つか、なんか火照った顔してるぞ?」
村瀬は背中をさすってくれている。
「なんか、チカンにあった…」
ボソボソと俺が言うと村瀬は俺の股間へ視線を移しながら言った。
「え、だから火照ったの?」
「違う!断じて勃ってねーわ。むしろ鳥肌もんだったわ!」
思い出しただけで、ぞわぞわと鳥肌がたった。
「お、青ざめた顔になった。」
「気持ち悪…」
「おいおいおいおい!!」
次第に身体は前屈みになりしゃがみこむ俺を見て慌てながらも、背中をさすってくれている村瀬。
「よし!俺の背中に乗れ!」
村瀬が、ほれ!と背中を差し出してくれるが、
「無理…腹圧迫されたら俺、出すよ…」
「かまわねえよ!大丈夫だから!」
村瀬…ジーン。と感動しながら背中におずおずと乗ろうとすると、
「肩かしましょうか…」
と、これまた見ず知らずの少年が、おずおずと現れた。
「ありがとうございます!」
言葉を発することが辛くなってきた俺に変わって村瀬が礼を言ってくれた。
「あ、いえ。あの…足ついちゃうかな…って…」
少年が言った一言に俺は少し吐きそうになった。これは、笑いが込み上げたせいだ。村瀬は少々不機嫌になったようだが、致し方ない。と肩を借りて俺を便所へと連れていってくれた。
ひとしきり吐き出した俺は椅子に座っている。村瀬は水を買いにいってくれている。
俺が…痴漢にあうだと…?
悶々と硬い背もたれに背を預け掌で顔をおおいながら考えていた。
男なのに?男だからか?
村瀬の方が小柄だし可愛いぞ?いや、そういうことか?
もう、訳分かんねえ…
「大丈夫か?」
村瀬の、弾んだような声音とは違う低音が耳に響いた。先程は直接聞こえているような微かな振動さえ感じながら聞いていた声だ。
驚き、慌てて顔から手を離すと、背もたれの方から顔を覗き込む胸板が立っていた。
実際に顔を見ていた時間は少しだったが、忘れるわけがなかった。
顔の位置がまたまた思いのほか近く、直ぐには声が出なかった。
「戻ったら居なかったから、ちゃんと帰れたか心配していた。具合悪いか?」
「あ、いや。大丈夫…でもないけど。
ありがとう、助かった。」
胸元が俺の正面にまわってくる。
「あいつだが、逃がしてしまった…」
悔しそうな表情。
「あ、いや。変に追いかけて怪我でもされたらこっちとしても申し訳ないし。…助けて貰っただけで有り難い。」
視線が合わせられず、会話も続かず俯いてしまった。
もっとしっかりお礼を伝えた方が絶対いいのに。なぜか、抱き締められた感覚を思い出して照れくさくなり目が合わせられない。
「あ!さっきはどうも!こいつを助けてくれて有難うございました!」
小走りで駆け寄ってきた村瀬が胸板に声をかけた。
「一緒に乗ってたんだけど、俺、流されちゃってて!」
水を俺に手渡しながら、村瀬が礼を言ってくれている。
「結局、逃がしてしまったんだ。…不甲斐ない。君も気をつけた方がいい。この線は男へのチカンが多いようだから。」
「え?」
村瀬がパチクリと大きな目を瞬かせた。
「男を狙った?」
「男だからと油断しない方がいい。君たちは、魅力的だぞ。ゲイ目線から言わせてもらうと」
思わず俺は顔をあげた。少し寂しいような、不安げなような表情の胸板と目が合った。
「あいつと同族とは思いたくないが。今は特に、同じ癖をもった人種は気持ち悪いよな。もう大丈夫そうだし。俺は帰るよ。気を付けてな」
穏やかだが、少し早口で胸板が言い去っていく。俺は咄嗟に立ち上がり胸板の背を追った。
「おい、森?!」
驚く村瀬の声が後ろから聞こえた。
俺はというと、胸板の腕を両手でがっちりと掴んだとこで自分の行動に気づいた。
「…あ!?」
驚いた顔の胸板と再び目が合う。
「なんで君が驚いてるんだよ」
厳つい身体付きとは裏腹に胸板は、小さめの笑い声で柔らかく笑った。
その顔をみて、俺の思考は再び止まり、そして赤くなる顔の熱で我に返った。
「あ、そっか!急にごめん!ごめんな!」
慌てて手を離し、そのまま顔をぱたぱたと手であおいだ。全く風は送られてこない。村瀬が近づいてきて不思議そうな顔をしている。もちろん、胸板も不思議そうな顔だ。
「上手く言えないけどさ!俺、気持ち悪いとか思わなかった!助けてくれてありがとうございました!」
思い切り勢いをつけて早口にやたら大声でまくし立てるような言い方になってしまった。
胸板は、キョトンとした顔の後、ニカッと笑った。
「ありがとう。明日から気をつけろよ」
そう言って、胸板は去っていく。ありがとうはこっちが言ったセリフなのに、かえってきてしまった。
背を見送り、俺は再びベンチに座り込んだ。
はぁあぁと大きな溜息が出る。
「そんな、お礼言うの恥ずかしかった?まぁ、痴漢だもんな、まさかの。」
村瀬が、横に腰掛ける。
「まさかのな。」
相槌を打つ。だが、それが理由ではない気がして腑に落ちない。顔にその感情が出ていたのか村瀬が考え込むような顔をした。
「なぁ、もしかして…さ。」
「ん?」
何かを言いたげな村瀬の発言を待つ。
「あの人に一目惚れってやつ?」
思考停止。
「…え!?」
思わず立ち上がった。
「…え…?なに?…ちょ…っと、何言ってるのかよくわからない」
直ぐに、座った。自分の発言の意味も分からない。
「森…さらに動揺させていい?」
村瀬が俺の顔を覗きこんだ。
「なんだよ?もう、これ以上に動揺することなんてあんのかよ」
「まあ、たぶんね」
なんだよ?目線だけで問いかける
「俺さ、さっき肩貸してくれた奴いるじゃん?」
ガシガシと頭を描きながら村瀬が言いにくそうに話し始める。
「ああ、あの人な。助かったけど面白かった」
足がつくって思ってても言わないだろ普通。思い出し笑いを堪えていると村瀬が俺を肘で小突いた。
「笑ってんなよ」
「悪い悪い、で?あの人がどうかしたのか」
「…実はさ。告白されて。」
「そうなんだ、良かったじゃん、お前彼女彼女うるさかっ…彼女…じょ…jo」
じいっと、上目遣いで俺を見上げる村瀬
「う、うん。お前可愛いもんな??」
「やっぱ、俺ってそっち側!?…じゃなくて!!」
「お、お前も混乱してるとこだったんだな!!だから、俺が、あいつに一目惚れとかいう思考回路にいきついたんだな?!」
「なんか、男とか女とか関係なく好きになれるって考えたらさ。お前の反応がそこに結びついちゃってさ!」
2人で、はははと笑いあったあと黙り込んだ。
「考えようぜ、お互い。ちょっと落ち着こう」
「色んな人がいるんだな。」
村瀬が呟くように言った。俺は無言で頷いた。
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