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深まる疑問
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あのあと俺は家に戻り、描きかけの絵を膝に乗せたまま、ぼんやりと眺めていた。
それは、小川の風景。
……そして、あの言葉がどうしても頭から離れない。
『昔から好きなんだよ、ここが』
影山の、あの時の声と表情。
あんな場所に頻繁に通ってるなんて、少し意外だった。
——まさか、とは思うけど。
心のどこかでうっすら考えていた。
影山が、昔のあの夏に出会った少年なんじゃないかって。
でも、それはないか。
だってもしそうなら、あんな風に俺を弄んだりはしない……よな。
俺は名前すら聞き取れなかった“あの頃の影山”を、思い出の中から引っ張り出そうとした。
記憶の奥はぼやけていて、顔も声も、曖昧で……ただ、“優しかった”という印象だけが、鮮明に残っていた。
今の影山と、昔の“彼”が重なるはずがない。
でも、この違和感は、なんだ。
答えの出ないまま、俺はスケッチブックを閉じてベッドに倒れ込んだ。
翌日、学校。
教室に入ると、いつものように篠田が声をかけてきた。
「土屋、おはよー!映画の感想、昨日言い足りなかったわ!」
元気に笑う篠田のテンションにつられて、俺も少し笑った。
「ああ、篠田の感想、監督並だったからな」
「だろ?あのシーンの伏線、気づいてたか?」
喋ってるうちに、少し気が楽になってきた。
影山のことを考えていた重さが、ほんの少しだけ薄れていく。
そんな何気ない時間が、今の俺には本当にありがたかった。
授業の合間、俺はトイレへ向かうために廊下へ出た。
するとちょうど前から金髪の男子——東堂が出てきて、思わず立ち止まる。
久々に見る彼の姿に、身体が反応してしまった。
呼吸が浅くなり、鼓動が速くなる。
絶対に気付かれたくない。
下を向いてすれ違おうとした時、不意に声が飛んだ。
「おい」
その声に心臓が跳ねる。
どうしていつも絡まれるんだ…。
「っ……な、何?」
身をすくませる俺に、東堂は短く言った。
「……その、悪かった」
え……謝った?今、謝った?
理解が追いつかない。
「影山に言われたんだよ、謝っとけって」
「え……影山に?」
さらに混乱する。
「俺は、あいつには逆らえねぇからな」
東堂は、ちょっとバツが悪そうに目を逸らしていた。まるで謝罪に慣れてない人間の、不器用な態度だった。
逆らえないってどういうことなんだ…。
そのまま去ろうとした東堂に、俺は声をかけられず立ち尽くした。
影山が、俺のために……謝れって?
突き放したり、守るようなこと言ったり。何を考えてるのか、全然わからない。
けど。
どこかで、その言葉を信じたいと思ってる自分がいるのが……一番ムカつく。
薄れていた気持ちの重さが、さらに濃くなるのを感じた。
それは、小川の風景。
……そして、あの言葉がどうしても頭から離れない。
『昔から好きなんだよ、ここが』
影山の、あの時の声と表情。
あんな場所に頻繁に通ってるなんて、少し意外だった。
——まさか、とは思うけど。
心のどこかでうっすら考えていた。
影山が、昔のあの夏に出会った少年なんじゃないかって。
でも、それはないか。
だってもしそうなら、あんな風に俺を弄んだりはしない……よな。
俺は名前すら聞き取れなかった“あの頃の影山”を、思い出の中から引っ張り出そうとした。
記憶の奥はぼやけていて、顔も声も、曖昧で……ただ、“優しかった”という印象だけが、鮮明に残っていた。
今の影山と、昔の“彼”が重なるはずがない。
でも、この違和感は、なんだ。
答えの出ないまま、俺はスケッチブックを閉じてベッドに倒れ込んだ。
翌日、学校。
教室に入ると、いつものように篠田が声をかけてきた。
「土屋、おはよー!映画の感想、昨日言い足りなかったわ!」
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「ああ、篠田の感想、監督並だったからな」
「だろ?あのシーンの伏線、気づいてたか?」
喋ってるうちに、少し気が楽になってきた。
影山のことを考えていた重さが、ほんの少しだけ薄れていく。
そんな何気ない時間が、今の俺には本当にありがたかった。
授業の合間、俺はトイレへ向かうために廊下へ出た。
するとちょうど前から金髪の男子——東堂が出てきて、思わず立ち止まる。
久々に見る彼の姿に、身体が反応してしまった。
呼吸が浅くなり、鼓動が速くなる。
絶対に気付かれたくない。
下を向いてすれ違おうとした時、不意に声が飛んだ。
「おい」
その声に心臓が跳ねる。
どうしていつも絡まれるんだ…。
「っ……な、何?」
身をすくませる俺に、東堂は短く言った。
「……その、悪かった」
え……謝った?今、謝った?
理解が追いつかない。
「影山に言われたんだよ、謝っとけって」
「え……影山に?」
さらに混乱する。
「俺は、あいつには逆らえねぇからな」
東堂は、ちょっとバツが悪そうに目を逸らしていた。まるで謝罪に慣れてない人間の、不器用な態度だった。
逆らえないってどういうことなんだ…。
そのまま去ろうとした東堂に、俺は声をかけられず立ち尽くした。
影山が、俺のために……謝れって?
突き放したり、守るようなこと言ったり。何を考えてるのか、全然わからない。
けど。
どこかで、その言葉を信じたいと思ってる自分がいるのが……一番ムカつく。
薄れていた気持ちの重さが、さらに濃くなるのを感じた。
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