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神社での出会い

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「いや、俺たちは別にそんなもん平気だよ。それより葵ちゃんが心配だ。ここで縁きりでもしてもらったらどうだい」
「え? この時間に御祈祷とかやっているんですか?」
「そりゃあ、この時間からここは始まるからね」
「ええと、ぜひお願いしたんですが、いくらくらいかかるものなんですか?」
「うーん、縁切りの範囲とか縁の深さにもよるよね」

「縁の深さですか? 良くわからないけれど、自分ではそれほど深いとは思えないんですよね」

 付きまとわれているだけ、実際付き合っていた期間は一年にも満たない。

 しかし、その間に貯金を取り崩し、いつの間にか金がなくなり、職もなくなり、住む場所もなくなった。彼と付き合い始めてから不幸の連鎖が怒っていたような気がする。

「じゃあちょっと待ってて、今、神主よんでくるから」

 葵が止める間もなく重田は行ってしまった。祈祷料はどれくらいするものなのだろうと心配になる。

「おや、水原さんじゃないですか?」
「え?」

 後ろから声を架けられ、振り返るとダークスーツの瀧崎だった。この時間だと言うに彼は疲れた様子もなく、しゃきっと背筋を伸ばしている。

「社長?」

 彼とこの神社で会うのは二回目だ。会社にも神棚があるし、この若くて綺麗な社長は信心深いようだ。それとも代々の氏子なのだろうか。

 やはり、悪霊を祓うような裏家業を持っていると自身も呪われるのだろうか。ちょっと背筋が寒くなる。

「今時間にどうかしたんですか? 」

 それはお互い様だと思うのだが、

「はい、ちょっとしつこい人がいて縁切りをしたいと思いまして来ちゃいました」
「なぜ、そんなに全身ボロボロなんです。傷だらけのようだし」

 今起こった逃走劇については話す気になれない。葵は慌てて話を逸らす。

「それより、ここ重田さんの職場だったんですね」

「ああ、彼は随分長く仕えていてくれている」
「そうなんですか。え? 仕えてくれている?」
「ここは僕の家だよ」
「え、神社が家って 本物の住職さんだったんですか?」

 そういうと瀧崎が苦笑する。

「ここは寺ではないから住職ではないよ。それで何の用ですか?」

 いつもの丁寧な口調に安心する。
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