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業務終了後1
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結局、舞香を慰めて、会社に戻ると四時を回っていた。
一晩徹夜したので、すぐに家に帰して欲しかったのだが、滝崎から、「記憶が新しいうちに今回の報告書まとめてくれるかな」
と言われて結局定時の6時まで働いた。鬼かな?
書きなれない報告書を何度も書きなし提出してボロボロになる。
社長はあの綺麗顔でにっこり微笑んで「明日はゆっくり休んでくださいね」など言っていたが、葵は暗澹たる気持ちになった。この人は鬼だ。鬼や悪魔は古来から美しいものと決まっている。
「私、こんなんじゃあ、いつか悪霊に取りつかれるかも知れない」
社長室をでると一人小さく呟き、ぶるりと震える。
たとえ、それを社長が祓ってくれるとしても、だいたい憑りつかれること事態未経験だし、嫌だし、その前にとり殺されたりしたらどうしようかと考えてしまう。
鬱々としてデスクにもどると後ろから出し抜けに声をかけられた
「水原さん、お疲れ! どうしたの、若いのにそんな疲れた顔しちゃって」
と勝田が声をかけてきてくれる。どうしたも何も社長にこき使われたからで。しかし、そんな事言えるわけもなく。
「勝田さん、ここらへんでご利益がありそうな神社とかお寺ってありますか? たとえば、悪霊、じゃなくて厄払い的な」
「あるっちゃあるけど。ちょっと見つかりにくいところにあるからなあ」
そう言って勝田が書いてくれた地図に従って、小久保神社を目指す。小久保というのはここらあたりの地名で、勝田によると氏神様だと言う話だ。なんだか効きそうだ。
表通りを駅と反対方向に歩き、裏路地に入りすぐのところにあった。新旧混ざった雑居ビルに入口以外の三方向を囲まれ忽然と鮮やかな朱色にぬられた鳥居が現れる。
そう言えばここらあたりは会社のお使いで通ったことはあった。しかし、こんなところに神社があったことに気が付かなった。
やはり、占い師とか神社とか、弱っているときに見つけやすいのだろう。
街灯や看板のネオンが灯る中、薄暗い神社の石段がちょっと怖い。一歩足を踏み入れると参道の両脇に並ぶ石燈篭に一斉に明かりが灯り、どきりとした。
夜になりちょうど点灯する時間だったのだろう。
淡く揺れる火影に足元を照らされ、狭い石段上る。両側に笹が群生していていた。入口にあったものよりも少し小さな朱色の鳥居を抜け境内に入る。
一晩徹夜したので、すぐに家に帰して欲しかったのだが、滝崎から、「記憶が新しいうちに今回の報告書まとめてくれるかな」
と言われて結局定時の6時まで働いた。鬼かな?
書きなれない報告書を何度も書きなし提出してボロボロになる。
社長はあの綺麗顔でにっこり微笑んで「明日はゆっくり休んでくださいね」など言っていたが、葵は暗澹たる気持ちになった。この人は鬼だ。鬼や悪魔は古来から美しいものと決まっている。
「私、こんなんじゃあ、いつか悪霊に取りつかれるかも知れない」
社長室をでると一人小さく呟き、ぶるりと震える。
たとえ、それを社長が祓ってくれるとしても、だいたい憑りつかれること事態未経験だし、嫌だし、その前にとり殺されたりしたらどうしようかと考えてしまう。
鬱々としてデスクにもどると後ろから出し抜けに声をかけられた
「水原さん、お疲れ! どうしたの、若いのにそんな疲れた顔しちゃって」
と勝田が声をかけてきてくれる。どうしたも何も社長にこき使われたからで。しかし、そんな事言えるわけもなく。
「勝田さん、ここらへんでご利益がありそうな神社とかお寺ってありますか? たとえば、悪霊、じゃなくて厄払い的な」
「あるっちゃあるけど。ちょっと見つかりにくいところにあるからなあ」
そう言って勝田が書いてくれた地図に従って、小久保神社を目指す。小久保というのはここらあたりの地名で、勝田によると氏神様だと言う話だ。なんだか効きそうだ。
表通りを駅と反対方向に歩き、裏路地に入りすぐのところにあった。新旧混ざった雑居ビルに入口以外の三方向を囲まれ忽然と鮮やかな朱色にぬられた鳥居が現れる。
そう言えばここらあたりは会社のお使いで通ったことはあった。しかし、こんなところに神社があったことに気が付かなった。
やはり、占い師とか神社とか、弱っているときに見つけやすいのだろう。
街灯や看板のネオンが灯る中、薄暗い神社の石段がちょっと怖い。一歩足を踏み入れると参道の両脇に並ぶ石燈篭に一斉に明かりが灯り、どきりとした。
夜になりちょうど点灯する時間だったのだろう。
淡く揺れる火影に足元を照らされ、狭い石段上る。両側に笹が群生していていた。入口にあったものよりも少し小さな朱色の鳥居を抜け境内に入る。
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