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真実
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結局警察署を出た後、私たちは近くのがファミレスに入った。
そして、親子そろって頭を下げシャツインには謝った。
シャツインは所在なさげに、ウーロン茶を飲んでいる。
私はそんなシャツインの隣に座り、父と向かい合わせになった。
「それで、なんで今更、私の後をつけたりしたの? お父さん女のひと作って出て行ったのに」
今度はふつふつと怒りがわいてきた。
だいたい父が外に女を作ったのが原因でお母さんと離婚したのだ。
「お前が荒れた場所に住んでいて心配だったから。それに璃子、お前は誤解しているようだ。お父さんは浮気なんてしてないよ」
「でも、お母さんが」
「違う。お母さんは私が仕事ばかりしているから、それが不満で出て行ったんだ」
「え? でも、お母さんは……」
初めて聞く話で、母の話と食い違う。
「友美が、いやお前のお母さんがなんといおうとも本当のことだ。お母さんは月に三回璃子と会わせてくれると約束をしていた。それなのに一度も会わせてくれないばかりか、黙って引っ越してしまった」
「そんな……」
いまさら言われても頭は混乱するばかりだ。
「それでお母さんはどうしている? なぜ、お前たちはあんな古い団地に住んでいるんだ?」
父が心配そうに聞く。
「なんでって、お金がないからに決まっているじゃない! それにお母さんは仕事にいってあまり帰ってこない」
「仕事に出ているのか。帰ってこないとはどれくらい?」
「週に一回帰ってくればいい方かな」
なんか告げ口しているみたいで、お母さんの悪口言っているみたいで、胸がちくりと痛む。
「なんだと。その間お前は一人なのか? ご飯はどうしている?」
私は俯いた。
たまに帰っても金を置いて行ってくれないこともしばしばだ。
「家に食べるものがないから、バイト代とかSNSつながりで稼いだお金でしのいでる」
「そんな馬鹿な。養育費はきちんと振り込んでいる。離婚後も璃子を会わせてもらえる約束だったのに、お前たちはいつの間に引っ越してしまって、どれだけ璃子を探したか」
お父さんが涙ぐんだ。
私は、お母さんが嘘をつくことを私は知っている。
そのうえ、生活がきついからと言って、私の稼いだお金を勝手にとることもわかっている。
でも長年しみついてしまった考えはそうそう変わらない。
「養育費なんて聞いたことないよ。お母さんはお父さんに捨てられたって言ってた。だから、生活費が足りないから、働きに出てるって」
私が言うと、お父さんがカバンから通帳を出してテーブルに広げた。
そこに振り込みの記録が記載されていた。確かに父はナルセトモミ名義の口座に月々20万円以上振り込んでいた。ボーナス月には60万だ。
「え? こんなにいっぱい……どういいこと」
お母さんは、どうしてお金がないなんて言っていたの?
混乱しつつも私はその答えを知っている。
お母さんの箪笥の中身を。
高い化粧品に洋服、ブランド物のバッグ。
見たくなかった事実から、目を背ける時間は終わったんだ。
そして、親子そろって頭を下げシャツインには謝った。
シャツインは所在なさげに、ウーロン茶を飲んでいる。
私はそんなシャツインの隣に座り、父と向かい合わせになった。
「それで、なんで今更、私の後をつけたりしたの? お父さん女のひと作って出て行ったのに」
今度はふつふつと怒りがわいてきた。
だいたい父が外に女を作ったのが原因でお母さんと離婚したのだ。
「お前が荒れた場所に住んでいて心配だったから。それに璃子、お前は誤解しているようだ。お父さんは浮気なんてしてないよ」
「でも、お母さんが」
「違う。お母さんは私が仕事ばかりしているから、それが不満で出て行ったんだ」
「え? でも、お母さんは……」
初めて聞く話で、母の話と食い違う。
「友美が、いやお前のお母さんがなんといおうとも本当のことだ。お母さんは月に三回璃子と会わせてくれると約束をしていた。それなのに一度も会わせてくれないばかりか、黙って引っ越してしまった」
「そんな……」
いまさら言われても頭は混乱するばかりだ。
「それでお母さんはどうしている? なぜ、お前たちはあんな古い団地に住んでいるんだ?」
父が心配そうに聞く。
「なんでって、お金がないからに決まっているじゃない! それにお母さんは仕事にいってあまり帰ってこない」
「仕事に出ているのか。帰ってこないとはどれくらい?」
「週に一回帰ってくればいい方かな」
なんか告げ口しているみたいで、お母さんの悪口言っているみたいで、胸がちくりと痛む。
「なんだと。その間お前は一人なのか? ご飯はどうしている?」
私は俯いた。
たまに帰っても金を置いて行ってくれないこともしばしばだ。
「家に食べるものがないから、バイト代とかSNSつながりで稼いだお金でしのいでる」
「そんな馬鹿な。養育費はきちんと振り込んでいる。離婚後も璃子を会わせてもらえる約束だったのに、お前たちはいつの間に引っ越してしまって、どれだけ璃子を探したか」
お父さんが涙ぐんだ。
私は、お母さんが嘘をつくことを私は知っている。
そのうえ、生活がきついからと言って、私の稼いだお金を勝手にとることもわかっている。
でも長年しみついてしまった考えはそうそう変わらない。
「養育費なんて聞いたことないよ。お母さんはお父さんに捨てられたって言ってた。だから、生活費が足りないから、働きに出てるって」
私が言うと、お父さんがカバンから通帳を出してテーブルに広げた。
そこに振り込みの記録が記載されていた。確かに父はナルセトモミ名義の口座に月々20万円以上振り込んでいた。ボーナス月には60万だ。
「え? こんなにいっぱい……どういいこと」
お母さんは、どうしてお金がないなんて言っていたの?
混乱しつつも私はその答えを知っている。
お母さんの箪笥の中身を。
高い化粧品に洋服、ブランド物のバッグ。
見たくなかった事実から、目を背ける時間は終わったんだ。
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