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腹ペコインフルエンサー璃子の事情
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「ねえ、璃子、そのリップかわいいね」
真麻に褒められたが、市販の安いものだ。学校はメイク禁止なので、日焼け止めを下地代わりぬり、眉を整え薄い色つきのリップをしている。
「ああこれ? ドラックストアで買ったの」
「うそ、インフルエンサーでもデパコス以外も使うの?」
「もちろん! 私メイク動画とか参考にして、コスメ高いときは似たようなの買ってるよ」
「マジで、どのサイト見てるの?」
目をきらきらさせてきいてくるから、教えてあげた。ほんとにネットは情報の宝庫だ。
そのとき、亜矢が余計な口をはさむ。
「真麻、あんたじゃ無理だよ。璃子とは土台が違うから」
また余計なことを言う。目に見えて真麻はがっくりきていた。きっとすごく傷ついてる。
「そんなことないよ。真麻、絶対に自分に似合うメイクがあるって!」
「いいなあ、何もしなくても璃子はかわいいから、そういうこと言えるんだよ」
真麻がほんのりとひがみのこもった声でいう。
やだな、真麻とは仲良くしたいのに。亜矢みたいな子は小中学校を通していた。それで、アンチ璃子軍団が出来てしまうのだ。「あの子、ちょっとかわいいからって調子にのってるよね」とか。ほんとやっかい。
未だにこういうタイプの子って。どう扱うのか正解かわからない。
八方美人の璃子ちゃんも疲れる。
思えば私の受難は小学校のころから始まった。
まずは幼馴染のゆきちゃんだ。小学校の入学式で、「璃子ちゃんと並んで写真撮りたくない」と言い出した。それからしばらくして時々靴を隠されたり、ペンが盗まれていたり、いろいろあった。表面ではみんな「璃子ちゃん」「璃子ちゃん」ってにこにこしているのにね。
そうして小学5年の春にお母さんと一緒に東京に出てきた。「璃子ちゃん、お父さんがいなくてかわいそうだから、遊んであげなさい」、「璃子ちゃんち、お母さんがあんまりよくない人だから、付き合っちゃだめよ」そんなふうにいう近所おばさん達の目がなくてせいせいしたし、みんな最初は転校生をちやほやしてくれた。
でも今度は別の試練がまってた。
「ごめん、璃子ちゃん、長栄団地の子とつきあうなって言われた」
東京に来て、初めてできた友達が離れていった。結局、東京も田舎も一緒で自由になんかなれない。何をするにも家がついえまわる。どこに住んでいるのか、家族はどんな人か。残念ながら、私の家は東京でも普通の家庭に入らないらしい。
団地の子供たちと遊ぼうと思っても、万引きしたり、集会所のガラス割って騒いだり、たばこ吸ってたり、よそ家の郵便受けにいたずらしたり、そういう子ばかりだった。
真面目な子はどこにいるのかと思ったら、彼らは地味に目立たないようして、団地の外に数人の友達をつくり、後は部屋の中でひっそりしている。
だから、そういう子と友達になろうとしたのに、「璃子ちゃんみたいにかわいい子がなんで私と? 別の子と遊べばいいじゃん」「いわれたんだ。あんたは璃子の引き立て役だって、璃子ちゃんそういうつもりで私とつきあってたの?」
全然違うのに。
だから、中学校になったら、頑張ろうと思った。
さすがに中学生になると親の言うことを聞く子供もへってくる。
徐々に友達を増やしていき、別にかわいいことは不利じゃないことにも気づいた。
適当の相手を合わせ、気を遣えばいい。
要は顔色見ているんだけれどね。
真麻に褒められたが、市販の安いものだ。学校はメイク禁止なので、日焼け止めを下地代わりぬり、眉を整え薄い色つきのリップをしている。
「ああこれ? ドラックストアで買ったの」
「うそ、インフルエンサーでもデパコス以外も使うの?」
「もちろん! 私メイク動画とか参考にして、コスメ高いときは似たようなの買ってるよ」
「マジで、どのサイト見てるの?」
目をきらきらさせてきいてくるから、教えてあげた。ほんとにネットは情報の宝庫だ。
そのとき、亜矢が余計な口をはさむ。
「真麻、あんたじゃ無理だよ。璃子とは土台が違うから」
また余計なことを言う。目に見えて真麻はがっくりきていた。きっとすごく傷ついてる。
「そんなことないよ。真麻、絶対に自分に似合うメイクがあるって!」
「いいなあ、何もしなくても璃子はかわいいから、そういうこと言えるんだよ」
真麻がほんのりとひがみのこもった声でいう。
やだな、真麻とは仲良くしたいのに。亜矢みたいな子は小中学校を通していた。それで、アンチ璃子軍団が出来てしまうのだ。「あの子、ちょっとかわいいからって調子にのってるよね」とか。ほんとやっかい。
未だにこういうタイプの子って。どう扱うのか正解かわからない。
八方美人の璃子ちゃんも疲れる。
思えば私の受難は小学校のころから始まった。
まずは幼馴染のゆきちゃんだ。小学校の入学式で、「璃子ちゃんと並んで写真撮りたくない」と言い出した。それからしばらくして時々靴を隠されたり、ペンが盗まれていたり、いろいろあった。表面ではみんな「璃子ちゃん」「璃子ちゃん」ってにこにこしているのにね。
そうして小学5年の春にお母さんと一緒に東京に出てきた。「璃子ちゃん、お父さんがいなくてかわいそうだから、遊んであげなさい」、「璃子ちゃんち、お母さんがあんまりよくない人だから、付き合っちゃだめよ」そんなふうにいう近所おばさん達の目がなくてせいせいしたし、みんな最初は転校生をちやほやしてくれた。
でも今度は別の試練がまってた。
「ごめん、璃子ちゃん、長栄団地の子とつきあうなって言われた」
東京に来て、初めてできた友達が離れていった。結局、東京も田舎も一緒で自由になんかなれない。何をするにも家がついえまわる。どこに住んでいるのか、家族はどんな人か。残念ながら、私の家は東京でも普通の家庭に入らないらしい。
団地の子供たちと遊ぼうと思っても、万引きしたり、集会所のガラス割って騒いだり、たばこ吸ってたり、よそ家の郵便受けにいたずらしたり、そういう子ばかりだった。
真面目な子はどこにいるのかと思ったら、彼らは地味に目立たないようして、団地の外に数人の友達をつくり、後は部屋の中でひっそりしている。
だから、そういう子と友達になろうとしたのに、「璃子ちゃんみたいにかわいい子がなんで私と? 別の子と遊べばいいじゃん」「いわれたんだ。あんたは璃子の引き立て役だって、璃子ちゃんそういうつもりで私とつきあってたの?」
全然違うのに。
だから、中学校になったら、頑張ろうと思った。
さすがに中学生になると親の言うことを聞く子供もへってくる。
徐々に友達を増やしていき、別にかわいいことは不利じゃないことにも気づいた。
適当の相手を合わせ、気を遣えばいい。
要は顔色見ているんだけれどね。
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